周波数帯の種類
無線LANの規格を理解するには、周波数帯を知ることが欠かせません。では、3種類の周波数帯を見ていきましょう。
2.4GHz:障害物に強い
2.4GHzは壁や天井など障害物の影響を受けにくいのが特徴です。そのため、電子レンジやBluetooth、コードレス電話など、多くの機器で2.4GHzが使われています。
ただし、それが裏目に出ることがあります。同じ周波数帯を使っている機器が多いと電波の干渉が生じ、通信の停滞や遅延が発生します。
また、1~13までのチャンネルがありますが、各チャンネルは5MHzずつしか離れていません。無線LANの通信を行う場合は20MHz必要なため、隣接するいくつかのチャンネルは帯域が被り、干渉が生じます。チャンネルを割り当てる際には帯域が重ならないように注意が必要です。
5GHz:電波干渉が少ない
5GHzは無線LAN専用の周波数帯です。したがって、2.4GHzのように電子レンジやコードレス電話の電波と干渉することがありません。
5GHzには19チャンネルありますが、それぞれのチャンネルの帯域が充分に離れています。そのため、隣接するチャンネル同士での干渉が生じません。また、通信速度が早いため、動画や音楽など大容量のデータをやり取りするのに向いているのも特徴です。
ただし、壁や天井などの障害物から影響を受けやすいという弱点もあります。障害物が多い環境では2.4GHzのほうが快適に使えるでしょう。
60GHz:通信速度が速い
60GHzは最大で7Gbpsもの通信速度が実現する高速通信規格です。5GHzでも理論上は7Gbps近い速度が出るものの、それを達成するには複雑な技術や特定の環境を必要とします。
それに対して、60GHzは大きな負担なく高速通信を実現できるのが特徴です。さらに、あまり使われない周波数帯であるため、ほかの電波から干渉を受けにくいという長所もあります。
ただし、60GHzは5GHz以上に障害物の影響を受けやすいのが難点です。通信が可能な距離も10メートル程度しかないため、屋外や部屋を跨いでの利用には向いていません。
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無線LAN通信規格の種類
つづいて、無線LAN通信規格の種類を見ていきましょう。
IEEE802.11b:無線LANの初代通信規格
IEEE802.11bは2.4GHz帯を使用する無線LANの通信規格として初めて登場したものです。11Mbpsの最大通信速度を実現しています。
IEEE802.11bの前には、同じく2.4GHz帯を使うIEEE802.11がありましたが、そちらは速度が1~2Mbps程度しか出ませんでした。
IEEE802.11bが標準化されたことで通信速度が飛躍的に上がり、それが無線LANの普及を後押ししています。このことから、IEEE802.11bが実質的に初代通信規格として扱われています。
IEEE 802.11a:5GHz帯の初代通信規格
IEEE802.11aは5GHz帯を使う無線LANの通信規格として初めて登場しました。最大通信速度は54Mbpsです。
IEEE 802.11aの標準化はIEEE802.11bと同時期に始まりました。しかし、IEEE802.11bはIEEE802.11と同じ2.4GHz帯を使うのに対し、IEEE 802.11aは5GHz帯を使うことから、標準化が遅れました。
その結果、アルファベット順に反してIEEE 802.11aのほうが後に登場しています。
IEEE802.11g:IEEE802.11bの上位互換規格
IEEE802.11gは2.4GHz帯を使いながらも、IEEE 802.11aと同じ54Mbpsの最大通信速度を実現しています。IEEE802.11bの上位互換を目指して標準化されました。
IEEE 802.11aと同じ速度を出せますが、5GHz帯ではなく2.4GHz帯を使うため、障害物に強いのが特徴です。ただし、その分電波の干渉を受けやすいという難点があるため、どちらが良いかは環境次第になります。
IEEE802.11n:2.4GHz・5GHz帯対応規格
IEEE802.11nは2009年に標準化された規格です。2.4/5GHzの両方に対応し、最大通信速度は600Mbpsです。
MIMOや複数のチャンネルを結合するチャンネルボンディングなど、技術を組み合わせることで高速通信を実現しています。中でも特徴的なMIMOは、複数のアンテナを同時に使って通信を行うための技術で、速度向上に大きく貢献しています。
IEEE802.11ac:10倍以上の速度を実現した高速規格
IEEE802.11acはより高速化され、最大6.9Gbpsもの通信速度が実現した規格です。周波数帯域は5GHzを使っています。2013年に第一世代、2015年にはさらに高速化された第二世代が登場しています。
IEEE802.11acはIEEE802.11nと比べて、帯域幅が広くなっています。さらに、電波に高密度な情報を乗せる技術である256QAMを採用したことで、大幅な高速化が実現しました。
IEEE802.11ad:60GHz帯の初代通信規格
60GHz帯を使った初めての無線LAN通信規格で、最大通信速度は6.8Gbpsです。WiGig(Wireless Gigabit Alliance)という名前で標準化が進められましたが、結局IEEE 802.11adと呼ばれることになりました。
60GHz帯は通信が高速ですが、通信可能な範囲が狭いうえ、対応機器が高額なためあまり普及していません。
IEEE 802.11ax:混雑時でも快適な最新規格
IEEE 802.11axは2020年に標準化される予定の、2.4/5GHzの両方に対応した通信規格です。この規格の特徴は、実効速度の向上を目指している点です。
従来の通信規格は理論上での最大通信速度の向上が目指されてきました。しかし、実際の通信速度は利用する環境の影響を受けます。特に空港や駅など、大人数が通信を行う環境では、通信速度が大きく低下します。
IEEE 802.11axはこの問題を解決するために、高密度環境での速度を重視します。理論上の最大速度は9.6GbpsでIEEE802.11acの1.4倍程度ですが、高密度環境では4倍以上の速度が期待されています。
無線LAN通信規格を選択する際の注意点
無線LAN通信規格を選ぶ際の注意点を2つ紹介します。
親機と子機を接続できるか
親機(無線LAN)と子機(パソコンやスマートフォンなどの端末)で接続できなければ意味がありません。無線LANルーターを購入する前に、子機がどの無線LAN通信規格に対応しているのか確認しましょう。
特に、IEEE802.11acやIEEE802.11adなど、新しい規格は普及が進んでいません。高速無線LAN環境で、未対応のテレビやデスクトップパソコンなどを使いたい場合は、外付けの無線子機を利用する必要があります。
逆に、あまり古い規格ではスムーズな通信が実現しません。光回線で快適にインターネットを使いたい場合は、IEEE802.11n以降の規格に対応したルータや子機を選びましょう。
規格を切り替えて使用できるか
子機を選ぶ際は、複数の通信規格に対応し、それを切り替えて使用できるか確認しましょう。通信規格を使い分けられるほうが、幅広い利用環境に対応できます。
2.4GHzと5GHzの両方に対応した製品は多くあります。この場合、無線LANの近くで使う場合は高速な5GHz、障害物が多い環境では2.4GHzといった使い分けが可能です。また、複数の子機を接続する際には、周波数帯を使い分けたほうが電波の干渉が生じにくくなります。
用途にあった無線LAN規格を選び、快適な通信環境を!
無線LANの周波数帯は3種類あり、それぞれ速度や通信可能な距離に違いがあります。また、通信規格は7種類あり年々高度に成長しています。規格の種類や変遷を理解して、最適な規格を選びましょう。