業務におけるスパムメール対策の難しさ
個人のスマートフォン等で使用しているキャリアメールのアドレスなら、定期的に変更することで受信するスパムメールの数を減らせます。連絡を取りたい友人に変更を知らせるメールを送り、利用しているサービスで変更の手続をすればいいでしょう。
ところが、業務用のメールアドレスでは、変更することは困難です。その理由としてまず、名刺へ印刷されている等、外部へ広く周知しているアドレスであることが挙げられます。名刺交換した人のみが自分のメールアドレスを知っているとは限らないため、アドレスの変更には一定の周知期間が必要になります。
突然告知なしでアドレスを変更すると、せっかくの発注メールが届かず、ビジネスチャンスをふいにしてしまうということもあり得るからです。
このため、一度スパムメールの送信者達にメールアドレスがわたってしまうと、徹底対策しない限り、ずっとスパムメールの処理に悩まされることになります。
スパムメールによる損失を算出する
それでは、ここからは具体的な数字とともにスパムメールが与える損害について解説していきます。
1日のスパムメールの数をカウントする
例えば、自社のメールサーバに1日5,000通のメールが届くとします。
メール全体に対するスパムメールの比率が80%とすると、
5,000×0.8=4,000
実に4,000通がスパムメールです。この比率は、決して大げさなものではありません。インターネットメール全体の97%がスパムメールだという統計をマイクロソフトが発表したこともあります。
出典: Spam overwhelms e-mail messages|BBC NEWS
スパムメールが業務上問題となるのは、メールサーバで対策が採られていなければ「社員それぞれにスパムメールが届く」という点です。
社員数が200人なら
4,000÷200=20
社員1人が平均20通のスパムメールを処理しなければならないことになります。貴重な社員の就労時間が、本来必要ない作業に割かれてしまうのです。
スパムメールの処理コストを算出する
最近のスパムメールが厄介なのは、件名や差出人を見ただけでは、確度の高い判別ができない点です。件名は「いかにもスパム」というものだけではなく、ビジネスで良く使われる件名を使ったものもあります。
また、差出人もすぐスパムと分かるようなものばかりとは限りません。この場合は、本文まで閲覧して「広告メールだ」「迷惑メールだ」と判別することになります。
「件名の確認」「差出人の確認」「本文の確認」「削除の実行」「削除の確認」といった一連の動作には、1通あたり10秒かかると想定してもいいでしょう。
全体の処理時間は、スパムメールの総数から
10×4,000=40,000
40,000秒の処理時間が使われることが分かります。40000秒は、約11.1時間です。また社員の時給は企業によって様々なですが、平均を2,500円と仮定すると、
2,500×11.1=27,750
2万7,750円強がスパムメールの処理という、非生産的な活動に浪費されていることになります。これは1日のみの数値です。
営業日を1ヶ月22日とした場合、1年間では
27,750×22×12=7,326,000
1年間に実に732万6,000円もの費用が、スパムメールのために無駄になっているのです。
社員の生産性低下以外のスパムメールによる影響
スパムメールを全文受信する場合にも、社のネットワーク帯域が消費されてしまいます。また、一時的にではありますが、メール用のストレージも不要なスパムのために大きな容量を確保しなければなりません。いずれも本来はいらない投資なのです。
さらに、アダルト系のスパムが多数社員のメールボックスに届くことになり、ちゃんとした対策を講じないと女性社員からセクシャルハラスメントで訴えられるかもしれません。スパムメールのために会社の資産をムダにしないよう、しっかりとした対策を講じておきましょう。