スパイラル開発とは
スパイラル開発とは、計画・リスク分析・開発・テスト・評価などの工程を繰り返しながら、システムを段階的に完成させていく開発手法です。「スパイラルモデル」と呼ばれることもあります。最初からシステム全体の仕様を細部まで確定させるのではなく、一定のサイクルごとに開発内容やリスクを確認し、必要に応じて計画を見直しながら開発を進めるのが特徴です。
特にスパイラル開発では、単に開発工程を繰り返すだけでなく、各サイクルで技術面・コスト面・スケジュール面などのリスクを分析することが重要です。必要に応じてプロトタイプを作成し、実現可能性や仕様を確認する場合もあります。そのため、要件が複雑なシステムや、開発途中で大きな問題が発生した場合の影響が大きいプロジェクトなどに適しています。
スパイラル開発の進め方・4つの工程
スパイラル開発では、一度の工程ですべてを完成させるのではなく、複数のサイクルを繰り返してシステムの完成度を高めます。基本的な流れは、以下の4つに整理できます。
1.目標・要件を決める
まず、そのサイクルで何を実現するのかを決めます。開発する機能や性能、予算、スケジュールなどを整理し、達成すべき目標を明確にします。
初回のサイクルですべての仕様を細かく決める必要はありません。開発を進めるなかで得られた情報をもとに、次のサイクルで要件を具体化していきます。
2.リスクを分析する
次に、設定した目標を実現するうえで想定されるリスクを洗い出します。例えば、技術的に実現可能か、想定したコストに収まるか、納期までに開発できるかなどを確認します。
大きなリスクが見つかった場合は、プロトタイプを作成して検証したり、別の技術や仕様を検討したりして、問題が深刻化する前に対策します。
3.開発・テストを行う
リスクへの対応方針が決まったら、設計・実装・テストを進めます。サイクルによっては、完成版の機能ではなく、仕様や技術を確認するためのプロトタイプを作成することもあります。
小さな単位で開発・検証することで、問題点を早期に発見しやすくなります。
4.評価して次のサイクルを計画する
開発した成果物をユーザーやクライアントと確認し、要件を満たしているか、修正すべき点がないかを評価します。
評価結果をもとに次のサイクルで開発する内容や優先順位を決め、再び「目標設定→リスク分析→開発・テスト→評価」の流れを繰り返します。この反復によって、システム全体の完成度を高めていきます。
スパイラル開発のメリット・デメリット
スパイラル開発のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット:仕様やスケジュール変更がしやすい
綿密にスケジュールを組んで進めるウォーターフォール開発と違い、スパイラル開発は最初にプロダクト全体の設計をしません。機能ごとに設計や開発、評価を進めていくので、途中でクライアントから仕様変更や機能追加の要望があっても、スケジュールを調整して柔軟に対応できます。さらに、評価と改善を短期的に繰り返し、機能ごとに完成させていくので手戻りが最小限になります。
デメリット:プロジェクト全体像を把握しにくい
最初に綿密な計画を立てないことは、デメリットにもなり得ます。プロジェクトの全体像が見えないので、最終的にどのくらいの時間・開発コストが必要になるのか把握しにくいのです。仕様変更を繰り返すとその分作業量や開発コストが増えるうえ、リリースまでに時間がかかってしまいプロジェクトが遅延するケースもあるので要注意です。
スパイラル開発が向いているプロジェクト
スパイラル開発は、プロトタイプを作成して評価・改善を繰り返しながらシステムの品質を高めていく開発手法です。そのため、すべてのプロジェクトに適しているわけではなく、特に次のようなケースで効果を発揮します。
要件が明確に定まっていないプロジェクト
システム開発では、初期段階では要件が曖昧で、開発を進めながら仕様が固まっていくケースも少なくありません。スパイラル開発では、プロトタイプを作成して評価・改善を繰り返すため、クライアントとすり合わせながら要件を整理できます。開発途中で仕様変更が発生する可能性が高いプロジェクトでも、柔軟に対応しやすい点がメリットです。
高い品質や信頼性が求められるシステム
スパイラル開発は、テストと評価を繰り返しながら完成度を高めていくため、品質や信頼性が重視されるシステムに適しています。例えば、金融システムや医療システム、公共インフラ関連のシステムなどでは、不具合が大きな影響を及ぼす可能性があります。こうしたプロジェクトでは、段階的に検証を行えるスパイラル開発が有効です。
大規模で複雑なシステム開発
機能が多く構造が複雑なシステムでは、最初からすべての仕様を完全に決めることが難しい場合があります。スパイラル開発では機能ごとに開発と検証を進めるため、問題点を早期に発見しながら段階的にシステムを完成させることが可能です。大規模な業務システムや研究開発型のプロジェクトなどで採用されることがあります。
このように、スパイラル開発は柔軟な仕様変更への対応や高い品質の確保が求められるプロジェクトに向いています。一方で、開発コストや期間が増える可能性もあるため、プロジェクトの目的や規模を踏まえて適切な開発手法を選ぶことが重要です。
スパイラル開発とアジャイル開発の違い
スパイラル開発とアジャイル開発の主な違いは、開発で重視する点と反復の目的です。スパイラル開発はリスク分析や検証を重視し、問題を段階的に解消しながら完成度を高めます。一方、アジャイル開発は短いサイクルで開発・評価を繰り返し、変化に対応しながら利用可能な機能を継続的に提供します。以下で、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
| 比較項目 | スパイラル開発 | アジャイル開発 |
|---|---|---|
| 重視する点 | リスク分析・検証 | 素早い価値提供・変化への対応 |
| 開発の進め方 | 計画・リスク分析・開発・評価を繰り返す | 短い期間で設計・実装・テスト・評価を繰り返す |
| 仕様変更への対応 | 評価やリスク分析の結果をもとに次のサイクルへ反映する | ユーザーのフィードバックを取り入れながら柔軟に対応する |
| リリースのタイミング | 各サイクルで検証・改善を行い、プロジェクトに応じてリリースする | 利用可能な機能を短いサイクルで段階的にリリースする |
| 特徴 | リスクを抑えながら段階的に完成度を高める | 短期間で開発・提供を繰り返しながら改善する |
開発で重視する点が異なる
スパイラル開発は、リスク分析や検証を重視する開発手法です。
各サイクルで技術面やコスト面、スケジュール面などのリスクを分析し、必要に応じてプロトタイプを作成して実現可能性や仕様を確認します。その結果をもとに開発・評価・改善を繰り返し、リスクを抑えながらシステムの完成度を高めていきます。
一方、アジャイル開発は、短いサイクルで価値を提供し、変化に柔軟に対応することを重視する開発手法です。
短い期間で設計・実装・テスト・評価を繰り返し、ユーザーやクライアントから得たフィードバックを次の開発サイクルへ反映します。そのため、開発途中で要件やニーズが変化するプロジェクトにも対応しやすい点が特徴です。
リリースの考え方が異なる
スパイラル開発では、各サイクルでリスク分析や開発、評価を行い、段階的にシステムの完成度を高めます。プロトタイプによる検証を目的とするサイクルもあるため、各サイクルの成果物を必ずユーザー向けにリリースするとは限りません。リリースの時期や方法は、プロジェクトの目的や開発計画によって異なります。
一方、アジャイル開発では、短い開発サイクルごとに利用可能な機能を完成させ、段階的に提供していくことを重視します。ユーザーの反応を確認しながら機能の追加や改善を繰り返すことで、変化するニーズに対応しながらプロダクトを成長させていきます。
スパイラル開発とアジャイル開発の実情
つづいて、スパイラル開発とアジャイル開発の実情を見ていきましょう。
スパイラル開発の普及率は低い
スパイラル開発の普及率が低い主な原因は、開発コストです。スパイラル開発は、プロトタイプを作成して評価を行い、評価後に再び追加開発・改良を繰り返す開発手法です。
プロトタイプで適切な評価を行うために、必要な機能はひと通り動作しなければなりません。つまり、プロトタイプの追加開発・改良をする度に、コストが膨らんでしまうのです。
限られた予算で開発するプロジェクトが多いため、コストが大きくなりやすいスパイラル開発はあまり普及していません。
アジャイル開発が主流になりつつある
ウォーターフォール開発は、システム全体について要件定義や機能の設計を詳細なレベルまで固めてから、各工程を完了させていくので予算や納期を遵守しやすいでしょう。しかし、途中で仕様変更があると手戻りする範囲が大きくなってしまいます。
そこでウォーターフォール開発よりも仕様変更に対応しやすいことから、スパイラル開発が登場しました。さらにWebの普及に伴い、ソフトウェア開発においてより迅速な対応が求められるようになったため、アジャイル開発が広まっています。
アジャイル開発は仕様変更に対応できるだけでなく、リリースの期間も短くできるため、国内でも徐々に広まり、現在の主流となっています。
アジャイル開発の注意点
アジャイル開発にもデメリットがあります。適切に開発を進めるためにも、アジャイル開発の注意点を見ていきましょう。
開発の方向性がブレる可能性がある
アジャイル開発は柔軟に仕様変更に対応できるように、設計段階では詳細まで決めません。それゆえ、開発のゴールを明確に決めていなければ、繰り返される仕様変更により方向性がブレてしまいます。結局どのようなシステムを開発したいのか分からなくなり、完成品の品質を落としてしまうでしょう。
このような事態を防ぐためには、アジャイル開発の理解を深めることと、目的を明確にする必要があります。開発を依頼するクライアントがアジャイル開発について正しく理解していないと、たびたび仕様変更してしまう事態になりかねません。
クライアントとのコミュニケーションを密にし、どのように開発を進めていけば良いかよく話し合いましょう。また、同時にどのようなシステムを開発したいのか目的も明確にしてください。
納期に間に合わない可能性がある
アジャイル開発は仕様や細部の機能変更が容易であるため、必要以上に修正する事態に陥りやすいです。また、開発とリリースを繰り返せば、全体のスケジュールも把握しにくくなります。結果的に納期に遅れてしまう可能性が高いです。
開発段階で、納期や全体のスケジュールは決めなくてはなりません。開発期間が長くなればコストもかかるため、全体の計画を細かく設定しましょう。
開発の方向性がブレたり納期が遅れたりしないようにするには、タスクや進捗を可視化し、チームで共有できる仕組みが欠かせません。自社に合う開発ツールを整理したい方は、無料診断もご活用ください。
スパイラル開発に活用できるおすすめの開発ツール
スパイラル開発では、計画・開発・テスト・評価・改善を繰り返すため、各サイクルの進捗管理や仕様変更への対応、テストの効率化が重要です。開発ツールを活用すれば、反復的な開発や検証を進めやすくなり、品質向上や開発負担の軽減につながります。ここでは、スパイラル開発に活用しやすいおすすめの開発ツールを紹介します。
楽々Framework3
- EOL(サポート終了)を気にせず長く使える開発基盤
- 部品活用で高品質・標準化されたシステム開発
- 開発から運用保守まで支え、継続改善と内製化を実現
住友電工情報システム株式会社が提供する「楽々Framework3」は、部品を組み合わせて業務システムを構築できる純国産のローコード開発プラットフォームです。開発から運用・保守までを支援し、機能追加や改修などの継続的な改善にも対応します。部品活用によって開発を標準化し、品質のばらつきを抑えられるため、評価と改善を繰り返しながらシステムの完成度を高めるスパイラル開発にも活用しやすいでしょう。
Magic xpa Application Platform
- 【クロスプラットフォーム】ワンソース・マルチデバイス
- 基幹業務システムの運用基盤としてグローバルで40年の実績
- 【超高速開発!】CやJavaの10倍の開発生産性
マジックソフトウェア・ジャパン株式会社が提供する「Magic xpa Application Platform」は、Webやモバイル、クライアント/サーバなどの業務アプリケーションをローコードで開発できるプラットフォームです。ワンソース・マルチデバイスに対応し、仕様変更や機能追加にも柔軟に対応できます。短期間で開発と改良を進めやすいため、プロトタイプの作成・評価・改善を繰り返すスパイラル開発にも活用できます。
複数製品の資料をまとめて取り寄せることで、導入後の運用イメージや費用感を効率よく確認できます。
スパイラル開発に関するよくある質問
スパイラル開発について理解を深めるために、よくある質問をまとめました。開発手法の特徴やメリット・デメリット、アジャイル開発との違いなど、導入を検討する際に気になるポイントをわかりやすく解説します。
スパイラル開発とはどのような開発手法ですか?
スパイラル開発とは、要件定義・設計・開発・テスト・評価・改善といった工程を繰り返しながら、システムの完成度を段階的に高めていく開発手法です。プロトタイプを作成してクライアントの評価を受けながら改善を重ねるため、品質の高いシステムを構築できる点が特徴です。
スパイラル開発とアジャイル開発の違いは何ですか?
スパイラル開発は、リスク分析や検証を重視し、必要に応じてプロトタイプを活用しながら開発・評価・改善を繰り返す手法です。一方、アジャイル開発は短い開発サイクルで利用可能な機能を段階的に提供し、ユーザーのフィードバックを反映しながら改善していく点が特徴です。
スパイラル開発のメリットは何ですか?
スパイラル開発の主なメリットは、仕様変更に柔軟に対応できる点です。機能ごとに開発と評価を繰り返すため、問題点を早期に発見しやすく、大きな手戻りを防ぎながら開発を進められます。また、プロトタイプを使ってクライアントと認識をすり合わせながら開発できる点もメリットです。
スパイラル開発のデメリットはありますか?
スパイラル開発は評価と改善を繰り返すため、開発期間が長くなる可能性があります。また、プロトタイプの作成や検証にコストがかかるため、予算が限られているプロジェクトでは採用しにくい場合があります。
スパイラル開発はどのようなプロジェクトに向いていますか?
スパイラル開発は、高い品質や信頼性が求められるシステムや、大規模で複雑なシステム開発に向いています。また、開発途中で仕様変更が発生する可能性が高いプロジェクトにも適しています。
それぞれの開発手法の違いを理解して、適切な選択を!
アジャイル開発とスパイラル開発は、どちらも開発工程を繰り返しながらシステムを完成させる手法ですが、重視するポイントが異なります。
スパイラル開発は、リスク分析や検証を行いながら段階的に完成度を高める手法です。一方、アジャイル開発は短い開発サイクルで利用可能な機能を提供し、ユーザーのフィードバックを反映しながら継続的に改善します。
プロジェクトの規模や要件、想定されるリスク、求められる開発スピードなどを踏まえ、それぞれの特徴に合った開発手法を選びましょう。


