世界各国の医療現場におけるICT化の現状
ICT化とは、インターネットなど環境を整備し、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器を取り入れることです。さまざまな企業でICT化が導入され、医療現場でも注目されています。さらに、クラウド型の普及により電子カルテの普及率も上昇傾向です。しかし、日本と海外における電子カルテなどの医療ICT化に大きな差があるといわれています。
日本の電子化と比較し、アメリカ・イギリス・シンガポール・スウェーデンなどにおけるのICT化や医療情報における標準化について分析します。
アメリカ
アメリカの普及率は、病院の規模によって異なりますが、全体で約8割程度です。2011年からの政策的な取り組みを背景に、高い水準を達成しています。オバマ政権で医療保険の拡充とともに医療機関の合併が進み、データ共有がサービス向上につながっています。例えば介護医療への取り組みでは、日本の介護施設を参考にし病院との連携を強化しました。小児向けクリニックでは、入院している子ども向けに勉強や家族と食事ができるオーダサービスなどがあります。さらに、低所得者向けの医療サービスも現状の課題として注力されている傾向にあるでしょう。
アメリカでは、部分的・個別的なITインフラ構築が進んでいます。しかし統一的な医療情報のプラットフォームは存在せず、予算組みが難航しているのも事実です。一方で、ベンチャー企業によるIoTは、進んでいます。日本では、クラウド化による共有などアメリカのベンチャー発の技術を在宅医療などに応用しています。
イギリス
イギリスは電子カルテの普及率が100%近いといわれており、医療ITの先進国です。データセンターでの情報共有を実施し、地域医療ネットワークなど家庭医という窓口を通じた医療サービスが該当します。家庭医とは、プライマリ・ケアと呼ばれ些細な相談から緊急要件まで総合的にサポートする医療サービスです。
また、ヘルスケアサービスについて相談できるWebサービスも充実しています。地域ごとに連携し、病院各種・カウンセラー・介護・管理栄養士・スポーツインストラクターなど、あらゆるヘルスケアサービスを提供する取り組みが実施されています。
日本でも在宅医療のニーズが高まっているため、地域でのプライマリ・ケアの充実が求められているでしょう。イギリスをモデルとして、IT化などさまざまな取り組みが実施されています。
シンガポール
シンガポールは、診断結果・薬歴・検査結果・処置などの幅広い情報が管理されるEMRの導入がほぼ100%達成しているため、医療IT先進国のひとつです。診療時に 最新の患者情報にアクセスして、医者が適切な診療をできる環境整備に注力しています。また、自国の情報共有システムである「NEHR」を立ち上げ、2019年から2020年にかけ医療情報の共有と標準化を推進しています。しかし、EMRシステムの普及は整備されていますが、診療所などのEHR接続は10%未満にとどまる状況です。情報漏えいトラブルが発生したため、個人情報保護法の見直しや情報共有義務化に遅れがみられます。
日本でも、医療現場で個人情報の適切な取り扱いにおいてガイダンスが出されています。電子カルテ導入の際はもちろん、患者の個人情報の取り扱いにおいては十分な注意が必要といえるでしょう。
参考:厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等|厚生労働省
スウェーデン
スウェーデンでは、電子カルテと同じ役割をもつEMRの普及率は、90%以上の普及率です。スウェーデンの医療サービスは、国単位ではなく地域ごとに整備されていて、機能を絞ったEMRは無料で提供しています。処方箋を電子的に発行や送付する際に利便性の高いNPOへの接続も一部地方部を除き95%を超えています。
EMRの普及に続き、患者の診療記録を医療機関同士で共有できるEHRを推進しているようです。日本でも電子カルテの普及が、地域医療の連携へのひとつとして考えられています。
参考:諸外国における医療情報の標準化動向調査|厚生労働省
電子カルテの普及などICT化で変わる日本の医療
電子カルテやICT化の世界シェアを参考に、日本の医療現場でもさまざまな取り組みが実施されています。
在宅医療への応用
新型コロナウイルスの流行により、医療機関で使用できるベッドの制限などが発生しました。そのため、在宅医療や訪問医療を希望する患者が増加傾向にあります。円滑な在宅医療の実施には、シームレスな情報共有が必要です。電子カルテの導入により、在宅医療実施の体制構築につながるでしょう。日本の医療現場では、在宅医療の体制整備のひとつとしてICT化への注目度が高まっています。
参考:在宅医療の体制構築に係る指針の見直しに向けた意見のとりまとめ|厚生労働省
ヘルスケア支援の実現
電子カルテの普及推進は、予防医療や健康状態の向上などを最終的な目標として実施されています。より広い医療情報やヘルスケア支援の実施などが求められています。カルテの情報を共有するために、電子カルテシステムの導入が医療情報プラットフォームの基礎といえるでしょう。
予防医療の観点からは、正しいヘルスケア情報の取得が望ましいといえるでしょう。現状の医療現場で実施されているのは、手術・処置・処方です。しかし将来的には、病院と連携し食や運動、生活や仕事まで幅広くサポートできる可能性があるといえるでしょう。また、医薬品の効能を公的に比較しているサイトも有効です。ヘルスケア支援の実現のために、医療現場のICT化は重要です。
自院の環境整備として電子カルテの導入をおすすめします。以下のページでは、製品の特徴を比較しているのでご覧ください。
国内でも電子カルテの普及率が向上している
アメリカ・イギリス・シンガポール・スウェーデンのICT化の現状をふまえ、日本でも電子カルテなど医療現場でのICT化が進むと考えられています。電子カルテは、先進国を中心に地域医療システム構築の基礎となり、国民の健康状態を分析できる大規模な情報インフラへと発展していくでしょう。在宅医療への応用やヘルスケアに関連する多くのビジネスとともに拡大する市場です。電子カルテの導入を検討し、自院の環境構築に役立てましょう。