クラウド型電子カルテとは
クラウド型電子カルテとは、院内にサーバを置かずにクラウド上に電子カルテを保存するシステムのことです。
患者の基本情報や処方薬などが記入された紙カルテをデータ化するために電子カルテが誕生し、当初はオンプレミス型電子カルテが主流でした。しかし、サーバを院内に置かなければならず、導入コストはもちろん保守管理にかかるコストも必要であるため、中小規模の病院では導入が進まなかったのです。
実際に、厚生労働省の調査を見てみると、2017年の時点で一般病院での普及率は46.7%でした。病床別にみると200床未満では37%しか導入が進んでいません。こうした背景から、コストを抑えて導入できるクラウド型電子カルテが注目されるようになったのです。
参考:医療分野の情報化の推進について|厚生労働省
クラウド型電子カルテのメリット
ではもう少し具体的に、クラウド型電子カルテのメリットを見ていきましょう。
導入が簡単になる
まず最大のメリットはコストを抑えてすぐに導入できる点です。先ほど説明したように、クラウド型電子カルテの場合は院内にサーバを設置しないので、サーバの購入費や保守管理を行う人員は不要です。初期費用無料で導入できる製品も多数あります。
これまでに使っていたPCをそのまま使えるケースが多いので、新たに端末を買い換える必要もありません。さらに、ORCA(日医標準レセプトソフト)を内包しているクラウド型電子カルテなら、コストを抑えて会計業務まで効率化できます。
場所を選ばず利用できる
院内にサーバを設置するオンプレミス型電子カルテの場合、当然ながら院内でしか電子カルテを利用できません。クラウド型電子カルテなら、インターネットにつながる環境であればどこにいても、タブレット端末やスマートフォンから電子カルテを閲覧・操作できます。特に在宅医療では紙カルテを持ち運ぶ必要がなく、重宝されています。
BCP対策やセキュリティ対策になる
BCPとは「事業継続計画」のことです。緊急事態発生時にその被害を最小限に抑え、できるだけ早く復旧するための対策のことをいいます。
クラウド型電子カルテは、ベンダーが管理するデータセンターでデータを管理し、バックアップを行います。データセンターは24時間365日監視されており、サーバなどにトラブルがあってもすぐにベンダー側で対処してくれます。自社内にデータを置くよりも災害の影響も受けにくく、早期の復旧が可能です。
また、診療報酬の改定や薬価改定によるシステムのバージョンアップもベンダーに任せられます。常に最新状態のシステムを使える点も魅力でしょう。
クラウド型電子カルテのデメリット
クラウド型は良いこと尽くめのように感じますが、デメリットもあります。場合によってはオンプレミス型のほうが合っていることもあるので注意が必要です。
インターネット接続しないと使えない
クラウドサービスはインターネットを介して利用できるので、ネット環境がない場所では使えません。しかし、モバイルルータやスマートフォンのテザリング機能を用意しておけば対応できるでしょう。また、万が一に備えて院内にバックアップをとっておくと安心です。
ランニングコストが高くなる可能性も
オンプレミス型電子カルテの場合は、サーバやソフトの購入費が高額ですが、導入後はソフトの利用料は必要なく、院内で保守管理を行うのでランニングコストを抑えることは可能です。一方、クラウド型だとベンダーがサーバの保守管理を行うので、導入後に毎月サービスの利用料金がかかります。
また、クラウド型はリプレースが不要で、オンプレミス型は5~10年で買い替えなければなりません。どちらのタイプがコストを抑えられるかはケースバイケースなので、導入前によく検討してみましょう。
おすすめのクラウド型電子カルテ
クラウド型電子カルテをお探しの方向けに、まずはITトレンドで人気の製品を見ていきましょう。
CLIUS (クリアス) の比較ポイント
- 無料トライアル&オンラインデモンストレーション受付中
- カルテ入力時間を短縮できるUI・UX。オンライン診療機能あり
- iPadでも操作可能!コストを抑えた柔軟な診療に役立ちます
株式会社Donutsが提供する「CLIUS (クリアス)」は、直感的な操作で簡単にカルテを作成できる電子カルテです。ORCA(日医標準レセプトソフト)との連携や地域医療連携も可能です。そのほか、サポート窓口は無料で利用でき、導入前に無料トライアルで操作感を試せます。
Medicom-HRf の比較ポイント
- 豊富な機能のカスタマイズでクリニック独自のオリジナルカルテ
- 一体型の強みを生かした各種チェック機能が充実
- 全国展開かつ地域密着で安心のサポート体制
「Medicom-HRf」は、PHC株式会社が提供する電子カルテです。クラウド型だけでなくオンプレミス型とハイブリットで利用できるシステムです。災害時にはクラウド型に切り替えられるなど、万一の際にも利用できる体制が整えられます。メディコムの販売代理店や保守サービス会社が全国の複数の箇所にあり、サポート体制が万全です。
BrainBoxCloud の比較ポイント
- データ分析・予測が可能なAI INSIGHT機能搭載
- 一目で患者の状態が把握できる診察パネル搭載
- 医薬品データベースMDbankVⅢ搭載(歯科対応不可)
株式会社ユヤマの「BrainBoxCloud」は、AI INSIGHT機能により、診察の待ち時間や再来院率などの分析が可能です。患者の状況をひとつの画面上に表示し、診療をスムーズにします。医薬品データベースであるMDbankVⅢを搭載し、処方のチェック体制も強化できます。
セコム・ユビキタス電子カルテ の比較ポイント
- クラウド型 導入実績No.1
- 在宅、外来、入院機能を標準搭載
- 医科対応(歯科対応不可) 端末ライセンスフリー
セコム医療システム株式会社の「セコム・ユビキタス電子カルテ」は、在宅診療にも使えるクラウド型の電子カルテです。訪問スケジュール作成機能を搭載し、在宅診療を支援します。また、紙カルテと同じように記入でき、他院や連携施設でカルテの共有が可能です。
セコムOWEL の比較ポイント
- クラウド型電子カルテ
- 医科対応(歯科対応不可) 簡単操作
- 在宅クリニック向け機能も充実
「セコムOWEL」もセコム医療システム株式会社が提供しており、直感的な操作が可能なクラウド型の電子カルテです。小規模診療所や在宅クリニック向けに特化したシステムで、シンプルで使いやすい画面設計が特徴です。ヘルプガイドや動画マニュアルも搭載しています。
CLINICSカルテ の比較ポイント
- 【グッドデザイン賞受賞】ORCA内包型電子カルテで事務作業を削減
- オンライン診療と連携「患者とつながるカルテ」
- SSL暗号化通信+証明書認証により安心・安全のセキュリティ
株式会社メドレーが提供する「CLINICSカルテ」は患者用アプリと連動して、検査結果の送信や予約管理を行えます。同社のCLINICS予約やCLINICSオンライン診療と連携すると、キャッシュレス会計も実現します。国際標準規格に適合するISMSクラウドセキュリティ認証を取得しており、データの管理も安心です。
QUALIS の比較ポイント
- わかりやすい・操作しやすい画面レイアウト
- 電子カルテとしての使いやすさ、機能性を追求
- 電子カルテを知り尽くした安心のサポート
株式会社ビー・エム・エルが提供する「QUALIS」は、ユーザーごとに好みの画面レイアウトを登録できます。オンラインでカルテを共有し、外注検査の依頼がしやすくなります。サポートは、充実したリモートサポートがあり、オンラインでのマスタ更新など、安心して長く使えるシステムです。
「PrimeKarte」は株式会社SBS情報システムが提供する電子カルテで、中小規模の病院で導入実績が豊富です。処理能力が高く、レスポンスが速いのが特徴的で、直感的な操作ができる画面にこだわって作られています。手書きで書いた同意書や説明書をスキャンし、カルテと一緒に電子化することができ、オプションで電子署名機能も使えます。
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ほかにも、電子カルテのクラウド型製品がありますので簡単に紹介します。比較検討する際、参考にしてみてください。
CLIPLA
「CLIPLA」は株式会社クリプラが提供する電子カルテで、複数人でカルテの同時編集が可能です。よく使う処方パターンなどを事前登録しておくと、素早くカルテを作成できます。また、スマートフォンやタブレットで撮影した画像を取り込むことも可能です。
きりんカルテ
きりんカルテシステム株式会社が提供する「きりんカルテ」は、無料で使えるクラウド型電子カルテです。ORCA(日医標準レセプトソフト)との連携をする場合は別途費用がかかりますが、初期費用、月額費用はかかりません。高額なコストがネックで電子カルテを導入できなかったというクリニックに最適です。
HOPE Cloud Chart
富士通株式会社が提供する「HOPE Cloud Chart」は、導入時や運用のコスト負担を抑えたクラウド型の電子カルテシステムです。あらゆる災害に備えた堅牢なデータセンターでデータは保管されるため、安心して利用できるでしょう。
Withエポック
「Withエポック」はメディア株式会社が提供する、歯科に特化した診療支援システムです。ISMS認証、プライバシーマークを取得しており、堅牢なシステムのもと万全な情報管理体制で使用できます。また、薬剤情報データベースは常に更新され、最新状態のものを使えます。
クラウド型電子カルテを導入して業務を効率化させよう
クラウド型電子カルテ製品を紹介しました。電子カルテは高額で導入をためらっている人も多いでしょう。しかしクラウド型であれば、従来の導入運営型に比べてコストを抑えられます。
ぜひクラウド型電子カルテの導入を検討してみてください。