介護業界における電子カルテの重要性
介護現場では、日々の膨大な業務量に対して、現場スタッフの負担が大きいことが深刻な課題となっています。記録業務に多くの時間が取られ、本来の介護業務に集中できないという声も少なくありません。こうした現場の課題として、具体的には以下の点が挙げられます。
- ●手書き作業では記入漏れや誤記入のリスクが高い。過去の記録を探すのにも時間がかかるため、必要な情報にすぐアクセスできない。
- ●訪問介護では、現場での情報確認や記録が難しい。事務所に戻ってからの作業が増え、業務の効率が低下する。
- ●介護保険制度にもとづく帳票作成や請求業務は複雑で、ミスが発生しやすい。
- ●情報が分散していると、利用者一人ひとりにあわせたケアプランの作成や、緊急時の迅速な対応が難しくなる。
- ●慢性的な人材不足により、一人あたりの業務負担が大きくなっている。
これらの課題を解決するために、電子カルテの導入が有効です。
介護業界向け電子カルテの機能
介護業界向け電子カルテは、利用者の「生活支援・日常ケア管理」に特化した機能が充実しています。
- ●利用者情報管理:日常生活動作(ADL)や心理状態など、利用者の詳細な情報を記録・管理する。
- ●ケアプラン管理:ケアプランの作成から進捗管理までをサポートする。
- ●業務記録管理:食事、排泄、服薬など利用者の日々のケアを細かく記録する。
- ●スケジュール管理:訪問介護や通所介護の計画・予約、スタッフのシフトや業務割り当ての管理。
- ●家族連携:家族に利用者の健康状態や日々の様子を共有。緊急時や定期報告時に家族へ自動通知する。
- ●リハビリ管理:リハビリテーションの計画と評価を効率的に行う。
- ●通所・訪問・宿泊サービスの統合管理:複数のサービスを一元的に管理する。
- ●多職種間での情報共有:介護職員、看護師、ケアマネージャーなど職種間の連携を円滑にする。
- ●介護保険制度や法定帳票への対応:介護保険制度にもとづく帳票や報告書の自動生成。介護報酬請求業務をシステム上で自動化し、事務作業を効率化する。
介護業界で電子カルテを導入するメリット
介護業界が電子カルテを導入して得られる主な3つのメリットを解説します。
介護記録の効率化
電子カルテの導入によって、介護現場でのデータ入力や検索、集計が大幅に効率化されます。例えば、タブレット端末を活用したリアルタイム記録により、記録漏れや転記ミスを防止し、二重作業が削減されます。
また、過去の記録や健康状態を瞬時に確認できるため、迅速かつ的確なケア判断が可能に。業務効率が向上することで、スタッフは本来のケア業務に専念できるようになります。
スタッフ連携の強化
介護業界向け電子カルテは、利用者の健康状態やケア内容をデジタルで一元管理し、多職種間の情報共有をリアルタイムで行えます。介護職員、看護師、ケアマネージャーなど、異なる職種のスタッフがいつでも必要な情報にアクセスできるようになり、スムーズな連携と質の高いケアが実現します。
例えば、夜勤のスタッフが申し送り事項を電子カルテで正確に伝えることで、日中のケアの質が向上し、利用者満足度が高まります。
運営コストの最適化
電子カルテの導入は、介護施設の運営コスト最適化にも貢献します。具体的には、以下のようなコスト削減効果が期待できます。
- ●ペーパーレス化:印刷や紙の保管にかかるコストを削減できる。
- ●業務時間の短縮:記録や事務作業にかかる時間が短縮することで人件費の削減につながる。
- ●スペースの削減:書類の物理的な保管が不要になり、施設内のスペースを有効活用できる。
介護業界向け電子カルテシステムの選び方
介護業界向け電子カルテシステムを選ぶ際に着目すべき3つのポイントを解説します。
外部システムとのデータ連携がスムーズに行えるか
介護現場では、医療機関との連携や会計・労務管理システムとのデータ共有が不可欠です。電子カルテシステムを選ぶ際には、これらの外部システムとの連携がスムーズに行えるかを確認しましょう。
連携性の高いシステムを導入することで、データ入力の手間を削減し、人的ミスを減らせます。特に、訪問介護や施設間連携では、リアルタイムなデータ連携がサービス品質に直結するため、外部システムとの柔軟な連携は必須です。
スタッフにとって操作しやすいか
介護現場ではITスキルが高くないスタッフも多いため、システムの操作性は非常に重要です。スタッフの誰もが容易に操作できる直感的なインターフェースが求められます。
現場の利便性を重視するなら、モバイル対応があると便利でしょう。タブレットやスマートフォンで電子カルテにアクセスできれば、場所を選ばずに記録作業が行えます。
介護施設の業務フローにあっているか
介護施設の種類や目的により、電子カルテに求められる機能は異なります。以下に、主要な施設タイプごとに必要な機能をまとめました。
施設の種類 |
求められる機能 |
特別養護老人ホーム(特養) |
【ケア記録管理】日常生活動作(ADL)の記録を詳細に管理 【健康管理機能】服薬管理、体調変化の記録・モニタリング 【多職種連携】看護師、介護職員、ケアマネージャー間のリアルタイムな情報共有 |
介護老人保健施設(老健) |
【リハビリ記録管理】リハビリ計画と実施記録の管理 【医療連携】医療機関とのスムーズな情報連携 【退所支援】在宅復帰計画書の作成支援 |
デイサービス(通所介護) |
【通所者の出欠管理】出席・送迎管理機能 【ケア記録】日々の機能訓練・レクリエーションの記録 【請求業務】介護報酬請求の自動化 |
訪問介護 |
【モバイル対応】外出先での情報入力・確認機能 【訪問スケジュール管理】日ごとの訪問計画と記録 【緊急対応】緊急時の迅速な連絡機能 |
グループホーム |
【認知症ケア記録】日々の変化や症状の記録管理 【スタッフ間の共有】日常の些細な変化もリアルタイムで共有 【家族向け情報発信】利用者の状態や日常の様子を家族に伝える機能 |
小規模多機能型居宅介護 |
【サービス切り替え対応】通所・訪問・宿泊のサービス管理 【柔軟な記録入力】各サービスごとの記録・管理 【統合管理機能】複数サービスの情報を一元管理 |
各施設ごとの業務フローやニーズにあわせて適切な電子カルテを選ぶことで、業務効率化やサービス品質の向上が実現できます。
【介護業界向け】おすすめの電子カルテシステム
介護業界のニーズに応える電子カルテシステムは数多く存在します。ここでは、特におすすめのシステムを厳選して紹介します。
株式会社ワイズマンが提供する「電子カルテシステムER」は、介護施設特有の業務プロセスに対応し、ケア記録や日常生活動作(ADL)の管理を効率化します。多職種間での情報共有がスムーズに行え、現場スタッフの負担軽減に貢献します。
セコム医療システム株式会社が提供する「セコム・ユビキタス電子カルテ」は、訪問介護や在宅ケアにも対応し、モバイル端末を活用した現場記録が可能です。介護保険制度に準拠した帳票作成機能も備え、業務の効率化を実現します。
DXカルテ
株式会社LIGが提供する「DXカルテ」は、小規模多機能型施設やデイサービス事業所に最適化され、柔軟なケアプラン作成・管理が可能です。タブレット操作にも対応し、訪問先でも迅速に記録・参照できます。
i-MEDIC Plus 介護
株式会社レゾナが提供する「i-MEDIC Plus 介護」は、介護業務の複雑な記録や帳票作成をシンプルに管理し、スタッフの作業負担を軽減します。法令改定への迅速な対応や介護報酬請求機能も強化されています。
MeLL+
株式会社ワイズマンが提供する「MeLL+(メルタス)」は、介護施設と医療機関との連携を重視し、利用者情報を一元管理できるシステムです。訪問・通所・入居の各サービス形態に対応し、運用の柔軟性の高さも特徴です。
より多くの電子カルテシステムが知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
介護業界における電子カルテシステムの活用例
ここでは、ITトレンドに寄せられたユーザーの口コミから、介護業界での電子カルテシステム活用例を紹介します。
- ■介護・福祉業種(従業員数50名以上100名未満)
- 以前までは何十人のカルテを利用者様の隣で見守りをしながら書き込んでおり、利用者様からも利用者様の名前や既往歴などがどうしても見えてしまい、プライバシーを守れていなかった。電子カルテになりiPadで操作しているため、利用者様の隣で作業をしていても見えづらくプライバシーが守れるようになった。
参考:振り返りがしやすくなった | 電子カルテシステムER|ITトレンド
- ■介護・福祉業種(従業員数50名以上100名未満)
- 今まで患者カルテは量が多く、色々な書類にまとめられていたので探すのが大変だったが、電子カルテを導入したことで検索などがスムーズになった。慣れてくれば、書類カルテより断然電子カルテのほうが扱いやすいと感じる。
参考:会社で初めて導入した電子カルテ | セコム・ユビキタス電子カルテ|ITトレンド
まとめ
介護業界で電子カルテを導入すれば、業務効率化やサービス品質向上、コスト削減に大きく貢献します。操作性や機能、データ連携性に着目して、自分の施設に最適な電子カルテシステムの導入を検討してみてください。まずは各システムの資料請求を活用して、詳しい情報を把握することからはじめましょう。