ETLとELTの違い
まずは、ETLとELTの違いをそれぞれの特徴をもとに説明していきます。
ETL:さまざまなデータを抽出・変換してデータベースに統合
ETLとはさまざまなデータを利用しやすい形に変えて保管する工程のことです。この際、「Extract(抽出) Transform(変換) Load(書き出し)」の手順でデータを処理します。ETLという名称は、その頭文字から取られています。
社内で利用するデータは事業が長期化するほど膨大な量になります。また、保有するデータの形式や場所も別々になりがちで、スムーズに有効活用できません。
そこで、ETLでデータを収集・編集し、利用しやすい統一されたデータベースとして保存することで、効率化を図れるのです。このとき保存されるデータベースは主にDWH(データウェアハウス)です。
ETLは特に社内データを有効活用するためのBI(Business Intelligence)ツールで使われます。大量のデータを1つに集約して分析することで、企業の意思決定などに活用できます。
ELT:データが蓄積されたデータベース内でデータを変換
ELTとは、「Extract(抽出) Load(書き出し)Transform(変換)」の略です。LoadとTransformの順番がETLとは逆になっています。
ETLでは、専用ツールを使って変換したデータをDWHなどのデータベースに保存(Load)します。一方、ELTの場合はデータベースにデータを保存してから、データベース内で変換処理を行います。つまり、ETLとELTでは変換処理を行う順番と場所が異なるのです。
ELTでは変換処理を行うための専用エンジンは不要であり、データベースのリソースを使います。普段から利用しているデータベースの処理だけで良いため、新たなスキルを習得する手間を省けます。
一方、ETLの場合は変換処理のための専用ツールの使い方やプログラミングを習わなければなりません。
ETLとELTの使い分け
ETLとELTを比較した場合、ELTの方がデータの取り込みスピードが速く、必要なスキルも少ないなどのメリットがあります。
しかし、ELTの処理ではデータベースにかかる負荷が大きくなります。そのため、ELT処理を実行しているときは、ほかの人のデータベース利用に支障が出てしまうことがあります。
また、大量のデータを保存・処理するため、容量が圧迫されやすいです。ELTを実行するときは、必要な容量に適うデータベースを用意しなければなりません。つまり、「データベースの容量を拡張できない」といった場合はETL処理の方が良いでしょう。
近年ではオンライン上のデータベースでELT処理を行うケースが増えています。クラウドデータベースであれば、容量の問題を解決できます。しかし、クラウドは使用量によって料金が変わる点には注意しなければなりません。
ETLとELTを活用するポイント
最後に、ETLとELTを活用する際に意識したいポイントを見ていきましょう。
ETL:開発の基礎知識を習得する
ETLツールを活用すれば、データの連携・統合・システム間移行が容易になります。しかし、このような処理を全て自動で行ってくれるツールではありません。
そのため、データ分析の担当者はデータベースを処理する技術だけでなく、システム開発のスキルが必要です。中には知識や技術がなくても利用できるようなツールもありますが、高額になり導入の負担が大きいです。
反対に無償や低価格なツールはサポートがなく、専門知識がないと使いこなせません。
ETLを利用する際は、データを抽出するSQLの基礎知識に加えて、さまざまな種類のデータを収集・加工できるようにする開発スキルを習得しましょう。
ELT:データ処理のタイミングを考慮する
ELTは前述のとおり、処理中のデータベースの負担が大きいため、通常業務のデータベース処理が遅くなる恐れがあります。
そのため、すでにELTを導入しており容量を拡張できない場合は、通常業務と重ならないタイミングで処理を行うと良いでしょう。例えば、ELTの処理を夜間か休日に行うなどです。
就業時間帯が長いなど、ELTでデータベースを稼働する時間を分けて取れない場合は、ETLの方が向いているかもしれません。そのため、ELTを導入する前に自社の事業とマッチしているか確認しましょう。
ETLとELTの違いを理解して有効活用しよう!
ETLとELTはどちらも、社内に保管されている膨大な量のデータを分析・有効活用するために使われます。
この2つの処理を上手く使い分けることができれば、BIツールなどによるビッグデータ分析も効率化できるでしょう。基本的にELT処理の方がスピードも速く、新しい技術を習得せずに済むメリットがあります。しかし、データベースに大きな負担をかけてしまうため注意してください。
ETLとELTの違いをよく理解して、有効活用しましょう。