ID管理システムの費用が想定を超える仕組み
提示された単価と実際の請求額に差が出る場合、料金の計算方法や対象範囲の理解にずれがあることがあります。ここでは、費用の見え方が変わる3つの要素を整理します。
課金単位の確認
ID管理システムの料金は、登録アカウント数を単位とするものと、実際にログインした利用者数を単位とするものがあります。同じ月額単価でも、どちらを基準にするかで請求額が変わります。休職者や退職手続き中の従業員を登録したままにしている場合、その分も課金の対象になることがあります。
見積もりを受け取ったら、単価の横にある単位の記載を確認してください。あわせて、月の途中でアカウントを追加した場合の日割り計算の有無や、締め日時点の登録数で計算するのかも聞いておくとよいでしょう。単位が製品ごとに異なると、単価だけを並べても比較にならないためです。
初期費用と月額費用の切り分け
初期費用には、環境の準備や初期設定の支援、既存データの取り込み作業などが含まれる場合があります。どこまでが初期費用に含まれ、どこからが別途の作業費になるのかは製品によって異なります。連携するサービスの数が多いと、設定作業の費用が加算されることもあります。
確認したいのは、初期費用に含まれる作業の一覧と、含まれない作業の単価です。自社で作業する場合と依頼する場合の費用差も聞いておくと、社内の工数と比べて判断できます。導入時だけでなく、後から連携先を追加する際の費用についても、あわせて確認しておきましょう。
見積もり時点と運用開始後の差
見積もりは、その時点で想定した利用者数や構成をもとに作られます。組織の拡大や、対象システムの追加によって条件が変われば、費用も変わります。導入から時間が経つほど、当初の前提と実態が離れていく可能性があります。
この差を抑えるには、見積もり時に前提条件を明記してもらい、条件が変わった場合の費用の変化も示してもらう方法があります。例えば、利用者数が一定数を超えた場合の単価や、上位プランへ移る条件を確認しておくと、将来の判断がしやすくなります。年度ごとに費用を見直す機会を設けておくとよいでしょう。
ID管理でオプション費用として加算されやすい項目
基本料金に含まれない機能は、オプションとして別料金が設定されている場合があります。ここでは、費用が加算されやすい代表的な3つの項目を取り上げます。
多要素認証をオプションとして追加する
多要素認証(MFA)とは、パスワードに加えてスマートフォンのアプリや専用の機器を使い、複数の要素で本人確認を行う仕組みです。ID管理システムでは標準機能として含まれる場合と、オプションとして提供される場合があります。オプションの場合、利用者ごとの月額が加算されるため、全社で使うと総額への影響が大きくなります。
検討時には、多要素認証が基本料金に含まれるかを確認し、含まれない場合は利用者あたりの単価を聞いてください。あわせて、認証方式ごとに費用が変わるかも確認したい項目です。専用の機器を配布する方式では、機器の購入費用や紛失時の再発行費用も見込んでおく必要があります。
連携先の数によって費用が変わる
連携できるサービスの数に上限が設けられ、上限を超える分に追加料金が発生する料金体系があります。導入時は数件の連携でも、社内で使うクラウドサービスが増えるにつれて上限に近づくことがあります。
現在の連携予定数だけでなく、今後の追加も見込んで上限を確認しておきましょう。上限を超えた場合に上位プランへ移るのか、1件ごとに加算されるのかで費用の増え方が変わります。標準の連携一覧にないサービスへ接続する場合は、個別の開発費用が発生することもあるため、確認しておくと安心です。
サポートの範囲によって費用が分かれる
サポートは、マニュアルの提供、問い合わせ窓口での案内、設定方法の助言、設定作業の代行というように内容の幅があります。基本料金に含まれるのが問い合わせ窓口までで、それ以上は有償のサービスという構成も見られます。
自社に専任の担当者がいない場合は、どこまで依頼できるかが運用の負荷を左右します。対応時間帯や回答までの目安時間、日本語での対応可否も確認しておきたい内容です。有償サポートを利用する前提であれば、その費用も含めて総額を比べる必要があります。
アカウント数の変動と料金の関係
従業員数が変動する組織では、アカウント数の増減がそのまま費用に反映されるかが気になる点です。ここでは、増減時の扱いについて確認したい内容を整理します。
アカウント追加時の課金の扱い
アカウントを追加する際、契約したライセンス数の範囲内であれば追加費用が発生しない製品と、1件ごとに課金される製品があります。前者の場合でも、ライセンス数を超える追加は、契約の変更手続きが必要になることがあります。
確認しておきたいのは、契約ライセンス数を超えて追加した場合の扱いです。自動で加算されるのか、上限に達すると追加できなくなるのかで、繁忙期の対応が変わります。ライセンス数を減らす場合の条件も、あわせて聞いておくとよいでしょう。減数は次回更新時のみという条件が付く場合もあります。
休職者や退職者のアカウントの数え方
退職者のアカウントを一定期間残しておく運用では、その間も課金の対象になるかどうかが費用に影響します。停止状態のアカウントを課金対象から外せる製品もあれば、登録されている限り対象となる製品もあります。
データの保全のためにアカウントを残す必要がある場合は、停止状態での扱いを事前に確認してください。あわせて、アカウントを削除した後もデータを保管できるか、保管に別途費用がかかるかも確認項目です。社内の文書管理の規程とも照らしあわせて判断するとよいでしょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でID管理の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
契約期間と乗り換え時に確認したい条件
導入後に別の製品へ移る可能性を考えると、契約の期間や解約の条件も判断材料です。ここでは契約面で確認しておきたい内容をまとめます。
最低契約期間の有無を確認する
クラウド型の製品では、月単位で契約できるものと、年単位や複数年単位での契約が前提のものがあります。長期契約を選ぶと単価が下がる一方、期間内に解約した場合の扱いが契約書に定められていることがあります。
契約前に、最低契約期間の有無と、期間内に解約する場合の条件を確認してください。残存期間分の支払いが必要になるのか、所定の手数料が定められているのかは、契約書の該当条項に記載されています。判断に迷う場合は、社内の法務担当や契約を管理する部署にも内容を確認してもらうとよいでしょう。
解約の申し出時期と手続きを確かめる
自動更新の条項が設けられている場合、更新日の一定期間前までに申し出をしないと、次の期間の契約が継続することがあります。申し出の期限は契約書に記載されているため、更新日とあわせて社内で管理しておく必要があります。
乗り換えを検討する際は、データの持ち出しについても確認しておきましょう。アカウント情報や操作履歴を出力できるか、出力できる形式は何か、解約後にデータがどのくらいの期間保管されるかは、移行計画に関わる項目です。これらは契約前に聞いておくことをおすすめします。
3年間の総額で比べる試算の進め方
月額の単価だけでは製品ごとの差が見えにくいため、一定期間の総額に置き換えて比べる方法があります。ここでは試算の手順と、比較の際に気をつけたい点を説明します。
試算に含めたい費目の整理
総額を試算する際は、月額料金だけでなく、初期費用やオプション、想定される作業費まで含めて計算します。費目を並べておくと、製品ごとに含まれる範囲が違っても比べやすくなります。想定する期間は、契約更新の単位にあわせて3年とする例が見られます。
下記の費目を目安に、自社の条件を当てはめて整理してみてください。すべての費目が発生するとは限らないため、該当しないものは対象外として記録しておくと、後から見直す際に判断の経緯が分かります。
| 費目 | 確認しておきたい内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 含まれる作業の範囲と、含まれない作業の単価 |
| 月額の基本料金 | 課金の単位と、利用者数が増えた場合の単価 |
| オプション料金 | 多要素認証や連携数の上限を超えた分の費用 |
| サポート費用 | 基本料金に含まれる範囲と、有償対応の単価 |
| 移行や更新の費用 | 連携先追加時の作業費と、データ出力の可否 |
複数製品を同じ条件で並べる比較
製品ごとに料金体系が異なるため、同じ前提条件を伝えたうえで見積もりを依頼すると、比較がしやすくなります。利用者数、連携するサービス名、必要な認証方式、想定する契約期間を書き出して、各社へ同じ内容で渡す方法が有効です。
受け取った見積もりは、費目ごとに並べて総額を出します。単価が低くてもオプションが多く必要な製品と、単価は高いが基本料金に多くが含まれる製品では、総額の順位が入れ替わることがあります。費用だけでなく、運用にかかる自社の工数も含めて検討すると、判断の精度が上がります。
費用の条件を比べたいID管理システム
アカウント数の増減や機能の追加で費用がどう変わるかは、契約前に確かめておきたい項目です。料金の考え方が異なる製品を紹介します。
GMOトラスト・ログイン
- 社内システム、業務アプリ、複数SaaSのIDを効率的に一元管理
- シングルサインオンで情報漏えいのリスクを減らし、利便性も向上
- 迅速に多要素認証を導入し、セキュリティを強化
GMOグローバルサイン株式会社が提供する「GMOトラスト・ログイン」は、シングルサインオンとID管理を行うクラウドサービスです。複数のサービスへのログインを一度の認証でまとめられ、利用者の登録や停止を管理画面から扱えます。必要な機能に応じて構成を選ぶ形のため、まず使いたい範囲を整理したうえで条件を確認するとよいでしょう。
ジョーシス
- バラバラだったSaaS・デバイスを一元化管理し、管理工数を削減
- 入退社時のアカウント発行・削除を自動化し、業務の効率化を実現
- シャドーITや削除漏れアカウントを検知し、ITセキュリティを向上
ジョーシス株式会社が提供する「ジョーシス」は、従業員に紐づくクラウドサービスと端末の台帳を管理するクラウドサービスです。削除されずに残っているアカウントや、把握していないサービスの利用を検知する仕組みを備えています。入退社の手続きを予約して自動で実行する運用にも対応します。
SeciossLink(セシオスリンク)
- シングルサインオンであらゆるサービスに連携
- IDの一元管理で業務効率化
- FIDO認証や証明書認証などの多要素認証で認証を強化
株式会社セシオスが提供する「SeciossLink(セシオスリンク)」は、クラウド型のID管理およびシングルサインオンのサービスです。利用者の情報を集約して管理し、複数のサービスへのログインをまとめられます。利用する機能の範囲によって構成が変わるため、必要な項目を伝えて見積もりを取ることをおすすめします。
Microsoft Entra ID (日本マイクロソフト株式会社)
- ゼロトラストでアクセスを条件付き制御。
- SSOなどでUXを簡素化しセキュリティを強化。
- クラウド・オンプレミスを包括し大規模環境にも対応可能。
ID管理システムの費用に関するFAQ
ID管理システムの費用についてよくある質問と回答をまとめました。
- Q1: 月額の単価が安ければ総額も安くなりますか?
- 必ずしもそうとは限りません。オプション料金やサポート費用の設定によって、総額の順位が入れ替わる場合があります。一定期間の総額に置き換えて比べることをおすすめします。
- Q2: 多要素認証は追加費用がかかりますか?
- 製品によって異なり、基本料金に含まれる場合とオプションの場合があります。オプションの場合は利用者ごとの単価が設定されていることが多いため、対象人数を伝えたうえで見積もりを依頼してください。
- Q3: 退職者のアカウントも課金対象になりますか?
- 停止状態のアカウントを対象外にできる製品もあれば、登録されている限り対象となる製品もあります。データ保全のために残す期間がある場合は、事前に扱いを確認しておきましょう。
- Q4: 途中で解約する場合に費用は発生しますか?
- 契約の条件によって異なります。最低契約期間が定められている場合、残存期間の扱いが契約書に記載されています。申し出の期限とあわせて、契約前に確認してください。
まとめ
ID管理システムの費用は、月額の単価だけでなく、課金の単位やオプションの構成、サポートの範囲、契約期間の条件によって総額が変わります。追加費用が生じやすい項目を事前に洗い出し、同じ前提条件で複数社へ見積もりを依頼すれば、比較の精度を高められます。自社の利用者数や連携予定にあう製品を比べたい方は、資料請求を活用してください。

