パスワード管理アプリとは
パスワード管理アプリとは、パソコンやスマートフォンなどの端末を利用し、IDやパスワードを自動で生成・入力するソフトウェアです。さまざまなITサービスのIDやパスワードを記憶し、強力な暗号化技術によって簡単かつ安全に保存します。ユーザーは一つのマスターパスワードを用いて、すべてのアカウントを管理できます。
まずは、パスワード管理アプリの必要性や機能など基本概要を見ていきましょう。
パスワード管理アプリの必要性
パスワード管理アプリは、さまざまなアカウントのパスワードを安全に保存し管理するうえで必要とされています。社内で利用するクラウドサービスでは機密情報を扱う場合もあり、強力なパスワードが必要です。パスワードを設定するには、大文字小文字や数字、特定の記号を組み合わせなければなりません。複数のクラウドサービスを利用する場合、それぞれのIDやパスワードを記憶することは困難でしょう。
パスワード管理アプリは、強力なパスワードを自動生成できるほか、セキュアな環境下でIDとパスワードを保存します。必要時に自動でパスワードが入力されるので、ログインに時間もかからないのがメリットです。
パスワード管理アプリの機能
パスワード管理アプリには、一般的に以下のような機能が搭載されています。
- ■パスワードの保存
- アカウントのIDとパスワードを安全に保存する
- ■自動入力
- クラウドサービスのログイン画面でID・パスワードを自動で入力する
- ■自動生成
- セキュリティ性の高い強力なパスワードを自動で生成する
- ■パスワードの評価
- 独自のパスワードを作成した場合、強度を評価する
- ■クラウド同期
- 複数のOSや端末でパスワードを同期する
パスワード管理を怠ることの危険性
パスワード管理が煩雑になり、同じパスワードを使いまわすなど管理を怠ると、不正アクセスや金銭的被害、アカウント乗っ取りなど以下のようなリスクが生じます。
- ■不正アクセス・情報漏えい
- パスワードを使いまわしている場合、一つのパスワードが盗まれるとほかのサービスにおいても不正アクセスを受ける可能性があるため、情報漏えいなどの被害が拡大する。
- ■金銭的損失
- 金融機関やオンラインショッピングのパスワードが流出した場合、不正な取引や金銭的被害を被る可能性がある。
- ■アカウントの乗っ取り
- パスワードを悪用してアカウントを乗っ取られると、データ改ざんや情報盗難などの被害が発生するケースもある。
なおこれらのリスクが発生した場合、企業の信頼性低下につながるほか、アカウントの回復のために業務を中断せざるを得ず経済的損失も大きくなる可能性があります。
パスワード管理アプリの選び方
ネット上のさまざまな脅威から情報資産を守るには、自社にあったパスワード管理アプリの選定が重要です。そのためのポイントは以下の5つです。
- ●利用中の端末やOSに対応しているか
- ●セキュリティ機能が充実しているか
- ●データ喪失を防ぐバックアップ機能はあるか
- ●利用料は無料か有料か
- ●登録できるパスワード数はどのくらいか
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
利用中の端末やOSに対応しているか
パスワード管理アプリのなかには、iOSやAndroidなど利用可能なOSや端末が限られていたり、WindowsやmacOSなどのパソコンOSにのみ対応していたりする場合があります。
OSが対応していない場合、その端末では手動でパスワードを入力する必要が生じるため利便性が低下するでしょう。またデータ同期が不可になるため新しいパスワードを追加・変更した際に反映されず、データの一貫性が失われます。さまざまな端末を利用している場合は、可能な限りマルチデバイスに対応したアプリを選択するとよいでしょう。製品のなかには、Apple Watchとサービス連携可能なものもあります。
セキュリティ機能が充実しているか
パスワード管理アプリを選ぶ際には、セキュリティ性が高い製品を選びましょう。例えば、二要素認証機能があれば、ログイン時にSMSや認証アプリでの追加認証を要するため、よりセキュリティを強化できます。また一定の時間アプリが作動していなければ自動でロックする機能や、パスワードのコピーアンドペーストを防ぐクリップボードガード機能が搭載されているとより安心でしょう。
製品によっては「AES-256」暗号方式を採用したり、セキュリティ強化のためパスワードを変換するハッシュ化を行ったりと、安全性を高めるためさまざまなセキュリティ対策が取られています。
※AES-256方式とは暗号化アルゴリズムの一種であり、2の256乗(78桁)の鍵パターンをもつ最も強固な暗号化方式
データ喪失を防ぐバックアップ機能はあるか
バックアップ機能があるかどうかも、重要な選定ポイントです。ほとんどのパスワード管理アプリに付いている機能で、データをパソコンやクラウド上に自動保存します。複数のバックアップ先があると、デバイスの故障や災害などによって万が一端末が故障してもデータを失うことなく復元も可能です。
また、機種変更によるデータ移行の際にも新しいデバイスへスムーズに引き継げます。しかしアプリによっては、有料オプションになる場合もあるため事前に確認しましょう。
利用料は無料か有料か
パスワード管理アプリの料金形態は、無料と有料があります。無料のパスワード管理アプリはコストを抑えて利用できるものの、有料版と比較すると暗号化の強度などセキュリティ性に劣る場合があるでしょう。
また無料のパスワード管理アプリには、広告が表示されるものもあります。広告はユーザーの個人情報が収集され、興味や関心にもとづいて表示されるため、プライバシーを重視する場合は有料版を検討しましょう。なお、有料版でも無料のお試し期間が設けられているものもあるため、実際に利用し操作性を確かめてみることをおすすめします。
登録できるパスワード数はどのくらいか
パスワードの登録数は、アプリによって異なります。登録可能なパスワード数が多いほど、すべてのサービスにおいて強力なパスワードを生成し保存できるためセキュリティ性や利便性が向上します。
自社のユーザー数が多い場合や複数のクラウドサービスを利用している場合は、登録数が無制限の製品がよいでしょう。なお登録数に制限がなければ、アカウントのパスワードを失念したりアカウントがロックされたりした場合でもパスワードをスムーズに再発行できます。
また、パスワードと同じくID管理も重要です。以下のボタンからおすすめのID管理ツールの資料を一括請求(無料)できます。あわせて検討してみましょう。
\ ID管理ツール の製品を調べて比較 /
製品をまとめて資料請求!
資料請求フォームはこちら
資料請求した製品の比較表が無料で作成できます
人気のパスワード管理アプリを比較
ここでは、人気のパスワード管理アプリを紹介します。iPhoneやAndroidなどの対応端末や月額料金、機能などをまとめているので、さっそく比較してみましょう。
《Zoho Vault》のPOINT
- パスワードのセキュリティ状況を一元把握できるダッシュボード!
- 多彩なクラウドアプリと連動しシングルサインオンを実現!
- 専用アプリでスマホのパスワードも徹底的に管理!
「Zoho Vault」は、ゾーホージャパン株式会社が提供しており、専用アプリで個人やチーム、企業のパスワードを管理します。軍隊でも使用されるAES-256の暗号化と生体認証の活用で、徹底的な保護が可能です。
適切なパスワードポリシーを作成し、脆弱性のあるパスワードは排除するため、サイバー攻撃の防止に役立つでしょう。また、パスワードを管理するフォルダーを操作する際は、タイムスタンプを付与することで情報の追跡がしやすく、不正行為も防止します。
対応OS |
Windows/Linux/Mac OS/Android/iOS/Chrome OS |
主な機能 |
パスワード保護/パスワード共有/Webサイト自動サインイン/アラート/リアルタイム監査など |
参考価格 |
スタンダード:月額100円/ユーザー プロフェッショナル:月額540円/ユーザー エンタープライズ:月額860円/ユーザー 無料プランあり |
1Password
AgileBits Inc.が提供する「1Password」は、IBMやSlackなど大手を含む10万社以上の企業で利用実績がある定番のパスワード管理アプリです。マスターパスワードと呼ばれる一つのパスワードで、さまざまなサービスのアカウントにアクセスできます。マスターパスワードは指紋認証も利用可能なため、万が一パスワードを忘れてしまったときにも安心です。
また、暗号化にはAES-256方式が採用されており、新規デバイスからのアクセスでは解読するために必要なデータが複数必要など、強固なセキュリティに定評があります。
対応OS |
Windows/Mac/Linux/iOS/Android |
主な機能 |
パスワード保護/パスワード共有/リスク検出/レポート/ブラウザ拡張など |
参考価格 |
individual:月額2.99USドル Families:月額4.99USドル Teamsスターターパック:月額19.95USドル Business:月額7.99USドル |
LastPass
LogMeIn, Inc. が提供するパスワード管理アプリ「LastPass」は、10万社以上の企業で利用実績があり、2023年の「Fortress Cyber Security Award」を受賞しています。管理しているパスワードを分析し、変更を推奨するパスワード判別機能を搭載しています。
また、OSが同じデバイス間であれば同期も可能です。指紋認証でのログインが採用されているため、端末を紛失した場合もパスワード流出のリスクを低減できます。
対応OS |
Mac/Windows/Linux/iOS/Android |
主な機能 |
パスワード保護/パスワード共有/緊急アクセス/自動ログインなど |
参考価格 |
Premium:月額3USドル Family:月額4USドル 無料プランあり |
Bitwarden
Bitwarden, Inc.が提供する「Bitwarden」は、クラウドで同期するタイプのパスワード管理アプリです。ユーザー数や登録パスワード数が無制限であることが特徴です。
パスワード保管庫に情報を保存・同期し、同じ情報を複数の端末で共有できます。海外企業のアプリですが、日本語にも対応しているため利用しやすいでしょう。
対応OS |
Mac/Windows/Linux/iOS/Android |
主な機能 |
パスワード保護/パスワード共有/API連携など |
参考価格 |
Teams Starter:月額20USドル/10ユーザー Enterprise:月額6USドル/ユーザー |
True Key
McAfeeが提供するパスワード管理アプリ「True Key」は、多要素認証を標準搭載しAES-256方式の強固な暗号化によってパスワードを保護します。認証方法は、ID・パスワードか顔認証、または2段階認証から選択可能です。
ウォレット機能ではパスワードだけでなく、クレジットカードやID、パスポート番号などの情報も保存できます。料金プランは15個のパスワードを登録できる無料版と、パスワード登録数無制限のプレミアム版の2種類です。
対応OS |
Mac/Windows/iOS/Android |
主な機能 |
パスワード保護/パスワード共有/生体認証/デジタルウォレットなど |
参考価格 |
ー |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
Trend Microパスワードマネージャー
トレンドマイクロ株式会社が提供する「Trend Microパスワードマネージャー」は、管理情報がダークウェブに流出していないか監視する機能を搭載しています。万が一流出した場合は、警告と対処方法を通知可能です。なおパスワード登録数は、パソコン版とスマートフォン版で異なります。
Windows・Mac版ではパスワードを5つまで無料で利用でき、スマートフォン版では登録数無制限プランを30日間お試し可能です。
対応OS |
Mac/Windows/iOS/Android |
主な機能 |
パスワード管理/ログインサポート/セキュアメモ/プロフィール管理/データ抽出など |
参考価格 |
ー |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
無料のパスワード管理アプリを比較
ここからは、無料で利用できるパスワード管理アプリを紹介します。無料版はコストを抑えて利用できる一方で、機能やサポートの面で制限がある場合があるため、不十分と感じる場合は有料版も検討してみましょう。
Microsoft Authenticator
Microsoftが提供する「Microsoft Authenticator」は、すべての管理サービスが無料で利用できます。スマートフォン端末の顔認証や指紋認証を利用し、Microsoftアカウントへ簡単にログイン可能なため、毎回パスワードを入力する手間が省けます。
また、パソコンからMicrosoftアカウントへログインする際にスマートフォンに通知が来るため、不正ログインを防止できるでしょう。はじめてパスワード管理アプリを利用するユーザーにおすすめです。
対応OS |
iOS/Android |
主な機能 |
パスワード保護/二要素認証/アカウント情報バックアップなど |
参考価格 |
ー |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
ノートンパスワードマネージャー
ジェン デジタルが提供する「ノートンパスワードマネージャー」は、マスターパスワード一つですべてのアカウントIDやパスワードを管理できる無料アプリです。暗号化されたパスワードをオンラインデータ保管庫に保存し、マスターパスワードを使用して保管庫にアクセスします。
セキュリティソフトである「ノートン」と併用することで、総合的なセキュリティ対策ができます。
対応OS |
Mac/Windows/iOS/Android |
主な機能 |
パスワード保護/パスワード作成機能/生体認証/ログイン脆弱性特定など |
参考価格 |
ー |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
パスワード管理アプリの活用イメージ
パスワード管理アプリは、強力なパスワードの生成とセキュリティ機能を用いて、システムアクセスの安全性を高めることはもちろん、以下のようなシーンでも活用できます。
- ■チームでのパスワード共有
- 複数の従業員が一つのアカウントやシステムにアクセスする際に、従業員間でパスワードを安全に共有し、ログインが簡素化される。
- ■ISMS認証の取得
- 組織が情報セキュリティ管理体制を整備し適切に運用していることを証明するISMS認証を取得する際、要素の一つとして考慮される場合もある。
- ■パスワード以外の機密情報を管理
- 銀行口座情報やクレジットカード番号などパスワード以外の情報も、安全に一元管理できる。
パスワード管理時の注意点
パスワードを管理する際には、同じパスワードを使いまわさないことが重要です。サイバー攻撃では、脆弱なパスワードやよく利用される組み合わせなどを使用して不正アクセスを試みます。定期的なパスワードの変更はもちろんのこと、パスワード管理アプリを利用し、強力なパスワードの生成を心がけましょう。
また偽サイトへパスワードを入力するよう誘導し、パスワードを窃盗するフィッシング攻撃もあります。メールに添付されたURLには警戒し、信頼できるサイトかどうか確認したうえでログインしましょう。
法人利用にはID管理ツールもおすすめ
組織内のITセキュリティを強化したい場合には、ID管理ツールもおすすめです。ID管理ツールとは、システムやサービス利用者のIDやパスワードなどのユーザー情報を一元管理するツールです。
従業員が多い場合、移動や入退社に際してIDを追加・削除するなど管理も煩雑になりがちでしょう。シングルサインオンや特権ID管理、ID管理台帳など、ID管理効率化に役立つ機能が搭載されています。
以下の記事では、おすすめのID管理ツールについて比較紹介しています。情報システム管理者の負担軽減のためにも、あわせてチェックしてみましょう。
関連記事
パスワード管理アプリを比較し、目的に合った製品を見つけよう
パスワード管理アプリを導入する際は、機能やセキュリティ対策など、製品をそれぞれ比較したうえで検討しましょう。パスワード管理アプリのメリットを享受するためには、自社に最適な製品を選ぶ必要があります。
また、パスワード管理とともにID管理も強化したい方は、以下より関連製品の資料請求ができるので、ぜひご利用ください。