ID管理ツールとは
ID管理とは、社内システムやクラウドサービスなどの利用時に必要なアカウント情報を適切に管理することです。アカウント数が多くなるほどID・パスワードなどのアカウント情報は膨大になり、適切なID管理が難しくなります。
ID管理ツールは、自社内のアカウント情報をシステムで一元管理することで、企業のID管理業務を効率化します。セキュアな環境でのアカウント情報収集・保存を実現するほか、アカウントの作成から編集・削除なども可能です。多数のID・パスワード管理を適切に行えるよう支援し、セキュリティ強化に貢献します。
以下の記事では、ID管理についてより詳しく解説しています。ID管理について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
ID管理ツールの機能
ID管理ツールに搭載されている機能は、以下のとおりです。
- ■ID管理台帳作成
- 自社内システムのID・パスワード情報を一元管理する機能。
- ■ID管理の自動化
- 自社内システムと連携し、アカウントの発行・設定を自動で行う機能。
- ■ライフサイクル管理
- IDやパスワードの生成・変更・削除を管理できる機能。
- ■ワークフローシステム
- システム上でアカウント発行や変更の申請をする機能。
- ■監査レポート
- 誰が・いつ・どこから・何を認証したのかを記録・監視する機能。
- ■シングルサインオン(SSO)
- 1回のユーザー認証で複数システムへログインする機能。
- ■権限管理・特権ID管理
- 一般ユーザーにはない強力な操作権限・情報参照権限の付与や、権限をもつアカウントの管理をする機能。
ID管理ツールをお探しの方へ
ITトレンドでは、業務効率化やセキュリティ強化に役立つID管理ツールを多数掲載しています。この記事では、人気のID管理ツールを以下の3タイプに分類して紹介するので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
▼製品を一覧でチェックしたい方はこちら!
【比較表】おすすめのID管理ツール
ID管理ツールの導入メリット
ID管理ツールの導入により、以下のメリットが得られます。
- ●セキュリティ対策・コンプライアンスの強化
- ●ID管理業務の効率化
- ●従業員の利便性向上
ID管理ツールで自社内のアカウント情報を一元管理することで、社内アカウントの把握・管理を適切に行えるようになります。アクセス権限・管理権限の付与やアカウント認証の監視機能によって、不正アクセスの防止や内部統制の強化にも貢献します。また、アカウント情報の一元化でID管理業務の効率化や、シングルサインオンによる従業員の利便性向上も期待できるでしょう。
以下の記事では、ID管理の重要性や目的について解説しています。ID管理ツールのメリットとあわせて知っておくことで、自社の課題や導入効果がより明確になるでしょう。ぜひ参考にしてください。
ID管理ツールのタイプ
ID管理ツールは、搭載機能によって以下の3タイプに分類できます。それぞれに特徴が異なるため、自社の利用目的にあったタイプの製品を選定するとよいでしょう。
- ■アカウント情報の一元管理に特化したタイプ
- 自社内にあるアカウント情報の収集・管理に特化したタイプです。シングルサインオンや多要素認証のほか、アクティブディレクトリからのアカウント情報抽出などに対応できるものもあります。
- ■アカウントのライフサイクル管理が可能なタイプ
- アカウント情報の一元管理にくわえ、アカウント作成・更新・削除が可能なタイプです。アカウントの自動作成や退職者アカウントの検知、シャドーIDの自動検知など、豊富な機能を搭載している製品が多くあります。
- ■権限管理や特権ID管理に対応できるタイプ
- ユーザーごとに権限を付与できる機能や、特権ID管理機能を搭載しているタイプです。アカウント情報・ライフサイクル管理機能も備えた多機能な製品から、特権ID管理のみに特化したシンプルな製品もあります。
ID管理ツールの選び方
自社に最適なID管理ツールを選ぶには、以下のポイントを意識して製品を比較するとよいでしょう。ここでは、ID管理ツールの比較ポイントについて詳しく解説します。
- ●自社の規模や業種に適しているか
- ●提供形態は自社に適しているか
- ●利用目的にあった機能を搭載しているか
自社の規模や業種に適しているか
ID管理ツールは、個人用から大企業用まで、さまざまな規模に対応した製品が販売されています。例えば、比較的規模が小さい中小企業ではID管理業務の専任担当者が少なく、多数のIDを管理する仕組みが整っていない場合もあるでしょう。その場合は、パスワード期限通知など、少人数でも効率的なID管理を支援するメンテナンス補助機能が付帯していると便利です。管理権限を利用者アカウントにも付与でき、業務負担軽減を図れる製品を導入するのもよいでしょう。
また、業種に特化した機能を備えた製品も提供されています。例えば金融向けの製品は、金融ならではの法規制や仕組みに対応したID管理機能が搭載されています。ID管理ツールを選定する際は自社の規模や業種にあった製品かを確認しましょう。
提供形態は自社に適しているか
ID管理ツールの提供形態には、「オンプレミス型」「アプライアンス型」「クラウド型」があります。
オンプレミス型は自社サーバにシステムを導入する製品です。導入にはサーバ構築や初期設定が必要になります。カスタマイズ性の高さや既存システムと連携しやすいことが特徴です。
アプライアンス型は、システムとサーバがセットで提供される形態です。自社でサーバを用意する必要がないため、オンプレミス型よりも導入コストを抑えられます。
クラウド型は、インターネットを介してサービスを提供する形態です。クラウド上にシステムが構築されるため、比較的安価に導入できます。拡張性が高いのが特徴で、企業規模の増大やその後の事業展開にも柔軟に対応可能です。また、ほかのクラウドサービスとの連携やシングルサインオンによる認証もできます。
クラウド型のID管理ツールについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
利用目的にあった機能を搭載しているか
ID管理ツールを選定する際には、自社の利用目的や課題から必要な機能を明確にし、単一機能のツールと総合ソリューションのどちらが適しているかを選びましょう。単一機能のツールとは、1つの機能に特化した製品です。一方統合ソリューションは、複数の機能が統合された製品となります。
現状の課題を把握し、必要な機能を優先順位付けすることで、導入すべき製品が見えてくるでしょう。例えば一人の従業員で複数のID管理が必要な場合は、シングルサインオンが搭載されているものがおすすめです。
以下の記事では、ID管理ツールの選び方についてより詳しく解説しています。導入検討前に選定ポイントをよく知っておきたい方は、あわせてご一読ください。
【比較表】おすすめのID管理ツール
ITトレンドおすすめのID管理ツールを2023年の年間ランキング順に比較表にまとめました。また、この記事で紹介している主要な製品を細かく調査して見えてきた、ID管理ツールの特徴や傾向を以下にまとめています。ぜひ製品の比較検討にお役立てください。
- ●アカウントの一元管理に特化したタイプのなかには、アカウント作成・無効化やパスワードリセットなどが可能な製品が一部ある。しかし、アカウント削除に対応しているものはない。
- ●ライフサイクル管理が可能なタイプは、搭載機能が豊富でID管理業務全般の効率化に役立つ統合ID管理型の製品が多い。
- ●権限管理・特権ID管理に対応するタイプは、ほとんどが多機能な統合ID管理型の製品。
- ●シングルサインオン機能を搭載している製品は約3割。特定のタイプや多機能な製品に搭載されているわけではない。
- ●ワークフロー機能を搭載している製品は約2割。権限管理・特権ID管理に対応するタイプに多い傾向。少数だが、ワークフローシステムとの連携が可能な製品もあり。
- ●スケジューリング機能を搭載している製品は少数。ライフサイクル管理機能を搭載している製品に付随している傾向にある。
- ●約8割の製品がクラウド型での提供に対応。クラウド型のみで提供の製品でも、代理認証機能でオンプレミス型システムのシングルサインオンが可能なものもある。
最新のランキングを確認したい方は、以下のボタンからランキングページをご覧ください。
▶アカウント情報の一元管理に特化したID管理ツール
ここでは、アカウント情報の一元管理に特化したシンプルなID管理ツールを紹介します。自社内に存在するアカウント情報の把握やIDの棚卸しなどを目的とする場合におすすめです。
《Gluegent Gate》のPOINT
- 連携対象システムとのシングルサインオン設定を簡単に行える
- SAML 2.0 SPに対応したサービスとフレキシブルに連携設定が可能
- 構築が不要なクラウドサービスのため簡単に導入ができる
「Gluegent Gate」は、サイオステクノロジー株式会社が提供するID管理システムです。Google WorkspaceやMicrosoft365など、さまざまなクラウドサービスでシングルサインオンや多要素認証、統合ID管理を実現します。SAML 2.0に対応したサービスともフレキシブルに連携できるほか、スマホやタブレットなどのマルチデバイスにも対応します。
《AD-easy》のPOINT
- 表形式での操作画面で分かりやすく、一括での検索・反映が可能
- 夜間での作業対応等運用状況に応じた柔軟なアカウント管理が可能
- Microsoft 365のアカウント管理・ライセンス付与が簡単に行える
SCSK Minoriソリューションズ株式会社が提供する「AD-easy」は、Active Directory/Azure ADのアカウント管理ツールです。わかりやすい表形式の操作画面で、一括検索・反映が可能です。夜間作業など運用状況に応じた柔軟な管理ができ、Microsoft 365のアカウント管理・ライセンス付与も簡単に行えます。
《AXIOLE》のPOINT
- ネットワーク認証に必要なスキーマ構築済みの認証アプライアンス
- LDAP/RADIUS認証に対応し様々なネットワーク機器から認証が可能
- 「時間」や「場所」を考慮した、より厳密な複合認証が可能
株式会社ネットスプリングが提供する「AXIOLE」は、認証機能に特化したLDAPベースの認証アプライアンスサーバです。設置するだけですぐに運用をはじめられ、単体で認証サーバとして利用できます。くわえて、別のLDAPサーバやActive Directory上にあるユーザー情報との連携も可能です。
OneWelcome Identity Platform - リスク管理
製品・サービスのPOINT
- デジタルバンキングのライフサイクル全体を保護
- 包括的なリスク管理技術で高度なセキュリティを提供
- リスク管理テクノロジーの4つのレイヤーが連携
「OneWelcome Identity Platform - リスク管理」は、タレスDISジャパン株式会社が提供するクラウドベースのID・リスク管理ソリューションです。金融機関やビジネスパートナー向けに設計されています。リスクベース認証や行動的生体認証により、セキュリティとユーザー体験を両立。トラストコンソーシアムを活用したリスク評価や、PSD2やGDPRなど各種規制への対応で、高度なセキュリティと規制準拠を実現します。
LDAP Manager
「LDAP Manager」は、株式会社アシストが提供するID管理ツールです。パスワード期限切れ警告メールなど、メンテナンスを補助するツールが搭載されています。なお、ユーザーのID情報は一元管理後、企業内のさまざまなシステムへ配布できます。導入設定が容易に行えるため、迅速にID管理を行いたい方におすすめです。
▶アカウントのライフサイクル管理が可能なID管理ツール
ここでは、アカウントの作成・編集・削除に対応できるID管理ツールを紹介します。多機能な製品でID管理業務全般の効率化を図りたい企業におすすめです。
《ジョーシス》のPOINT
- デバイスやSaaS利用状況が可視化され、管理工数削減が可能
- 情シスの把握していないシャドーIT・SaaSアカウントも自動検知
- 自動反映されるITデバイス台帳により更新漏れ防止。作業効率化
「ジョーシス」は、ジョーシス株式会社が提供するITデバイス・SaaS統合管理サービスです。デバイスやSaaSの利用状況を把握し、管理工数の削減とセキュリティ強化に貢献します。また、情シスの把握していないシャドーIT・SaaSアカウントの自動検知も可能。自動反映されるITデバイス台帳により更新漏れの防止もできるため、ID管理業務の効率化が図れます。
《D-PLAMS》のPOINT
- 組織のアカウント情報を一元管理
- 様々なシステムとの連携が可能
- 管理業務の負荷を軽減する数々の機能を搭載
「D-PLAMS」は、株式会社ディライトテクノロジーが提供するプロビジョニング管理システムです。組織の規模を問わずアカウント管理のニーズに柔軟に対応します。フォーマットを問わずデータを取り込めるうえ、名寄せ作業も容易です。また、不要アカウントのメンテナンスにも対応しています。
Secioss Identity Manager Enterprise(SIME)
製品・サービスのPOINT
- 複数のシステムに散在するIDを一元管理
- パスワードポリシーの管理も可能
- あらゆるサービス・システムと連携できる
「Secioss Identity Manager Enterprise(SIME)」は、株式会社セシオスが提供する統合ID管理システムです。Google Workspace、Microsoft 365、Selesforceなどの多彩なツールとの連携が可能。Web管理画面からユーザーの追加や変更が容易で、一括登録やシステムごとのユーザー指定にも対応します。
《Thales IdCloud》のPOINT
- 顧客体験を向上させ、複雑な手続きでもスムーズな処理が可能
- リスクベース認証でセキュリティを強化しながら、利便性を維持
- 運用コスト削減と保険契約のライフサイクル全体の最適化が実現
タレスDISジャパン株式会社が提供する「Thales IdCloud」は、保険会社向けに設計されたクラウドベースのID管理ソリューションです。ID証明・認証・リスク管理を統合し、安全なオンボーディングとアクセスを実現。GDPRやPSD2などの規制に対応し、エンドツーエンドの暗号化でデータを保護します。
▶権限管理や特権ID管理に対応できるID管理ツール
ここでは、権限管理機能や特権ID管理機能を搭載したID管理ツールを紹介します。強力なアクセス権限管理によるセキュリティ対策・内部統制の強化を重視する企業におすすめです。
《SeciossLink》のPOINT
- シングルサインオンであらゆるサービスに連携
- IDの一元管理で業務効率化
- FIDO認証や証明書認証などの多要素認証で認証を強化
「SeciossLink」は、株式会社セシオス提供のID管理システムです。ID管理や認証/アクセス制御・シングルサインオン(SSO)・多要素認証などのIDaaS機能を搭載。くわえて、ダッシュボードやリスク検知などのセキュリティ機能が充実している点も魅力です。ログイン画面やユーザー専用のポータル画面もカスタマイズでき、安全かつ快適な環境を実現します。
《Keyspider》のPOINT
- クラウドID管理と効率化を実施し、変化に対応できるシステム運用
- “引継ぎ期間”を想定した対応が可能
- 組織情報に紐づけ、各システムの権限付与が自動的に行える。
株式会社アクシオが提供する「Keyspider」は、クラウドサービスとオンプレミス社内システムのID管理を容易にするシステムです。ポリシーにもとづいた自動権限付与機能や、権限変更の予約設定機能をもち、引継ぎ期間を考慮した運用に対応。100ユーザーから利用でき、無料トライアルも利用可能です。
Okta Workforce Identity Cloud
製品・サービスのPOINT
- オンプレミスやクラウドなど散在するアイデンティティを統合
- ディレクトリ環境の統合や人事システムとの連携を簡単に実装可能
- 豊富な連携機能によって業務アプリ側の設定を即座に完了
Okta Japan株式会社が提供する「Okta Workforce Identity Cloud」は、シングルサインオンと多要素認証でセキュリティと利便性を両立します。人事システムとの連携によるID管理の自動化や、ゼロトラストセキュリティを促進する厳格な認証基盤を構築。特権アクセス管理やアクセス記録機能で柔軟な運用を実現します。
《CloudGate UNO》のPOINT
- 認証機能とアクセス条件機能を組み合わせた柔軟なアクセス制限
- 3つのカテゴリに属する認証方式でユーザーの利便性向上
- ユーザーの活動状況などを一元管理することで管理コストの削減
「CloudGate UNO」は、株式会社インターナショナルシステムリサーチ提供のシングルサインオンソリューションです。ゼロトラストモデルを採用した安全なクラウドアクセスを実現します。多彩な認証方式によりユーザーの利便性を向上し、柔軟なアクセス制限で情報資産を保護。平均稼働率99.99%以上の安定した運用と24時間対応のサポート体制を備え、高い信頼性とセキュリティを提供します。
統合認証・アクセス管理ソリューション
「統合認証・アクセス管理ソリューション」は、株式会社日立ソリューションズが提供しています。アカウント情報を一元管理し、権限に応じたアクセス権付与が可能。バイオメトリクスなどの生体認証・ICカード・ワンタイムパスワード・PKIなど、ユーザー認証機能も豊富です。
Evidian Identity Governance&Administration
Evidianが提供する「Evidian Identity Governance&Administration」は、アカウントごとにアクセス権限と管理者権限を付与できます。アクセス権の割り当て・アプリケーション監視の自動化や、さまざまなデータファイルのエクスポートも可能です。
以下のボタンから、ITトレンド編集部がおすすめするID管理ツールの一括資料請求ができます。さっそく製品の比較検討を行いたい方は、ぜひご活用ください。
\ ID管理ツール の製品を調べて比較 /
製品をまとめて資料請求!
資料請求フォームはこちら
ID管理ツールのデメリットと注意点
ID管理ツールの導入には多くのメリットがある一方で、導入にはいくつか注意すべき点があります。
まず、ID管理ツールの導入時の設定に手間がかかることが挙げられます。ツールの導入時にはシステムの初期設定や自社内のID・パスワードの登録、アカウントごとのアクセス権限の設定など、運用開始前に準備が必要です。管理したいアカウントの数が多いほど設定に時間がかかるため、導入検討時から運用体制の検討をしておくとよいでしょう。
また、ID管理ツールは自社内のアカウントを一元管理するため、システムにトラブルが発生すると多くの業務に支障をきたす可能性があります。導入前にベンダーのサポート体制や障害発生時の対処法を確認しておくことで、業務の混乱を最小限に抑えられるでしょう。
まとめ
ID管理ツールにはセキュリティ対策の強化や業務効率化など、さまざまな導入メリットがあります。自社のID管理や情報漏えい対策などに課題があると感じている方は、この機会にID管理ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
下のボタンから、ID管理ツールの各社製品資料の一括請求が可能です。ID管理ツールの導入検討にぜひお役立てください。