ITアウトソーシングサービスの運用が失敗する要因
運用がうまくいかない背景は、サービスの品質だけではなく、自社の体制や委託の進め方にも関係します。ここでは、失敗につながる要因と、早めに気づくための目安を整理します。運用の前提を確認しておきましょう。
| 要因 | 起こりうる状況 | 対策 |
|---|---|---|
| 役割分担の不明確さ | 依頼が滞り、対応の責任があいまいになる | 窓口と判断者を決める |
| 担当者への依存 | 不在時に対応が止まる | 手順の文書化と複数人での共有 |
| 情報の分散 | 資産や設定が把握できなくなる | 台帳と運用ルールの統一 |
委託すれば解決するという期待のずれ
ITアウトソーシングサービスとは、IT業務を外部の事業者に委託する形態ですが、委託によって自社の責任がなくなるわけではありません。方針の決定や最終的な判断は、自社で行う場合があります。
委託すればIT業務の悩みがなくなると期待して始めると、実際の対応範囲との差に戸惑う場合があります。契約前に、委託先が行う業務と自社が行う業務を、具体的な作業の単位で確認しましょう。曖昧な部分は、契約書に追記してもらうことも検討してください。
失敗の兆候を早く見つける目安
運用の不具合は、いきなり大きな問題として表れるとは限りません。依頼から対応までの時間が延びる、同じ問い合わせが繰り返される、報告の内容が薄くなるといった変化が、兆候になる場合があります。
月次の報告会などで、これらの変化を確認する機会を設けましょう。兆候に気づいた段階で、原因を製品側、自社側、連携先側のどこにあるのか切り分けると、早期の改善につながります。報告書の項目に、依頼件数の推移を加えるのも一案です。
運用開始後の見直しの進め方
導入時に決めた内容が、運用の途中で現場にあわなくなる場合があります。委託範囲、対応時間、報告の頻度などを、半年や1年といった区切りで見直す機会を設けておきましょう。
見直しの際は、依頼の件数、対応にかかった時間、社員からの意見をもとに話し合います。契約の更新時期にあわせて内容を調整できるよう、見直しの日程を事前に決めておくと進めやすくなります。見直しの結果は、記録として残しておきましょう。
情シス1人でITアウトソーシングサービスの運用が回らない場合
情シスとは、会社の情報システム部門のことです。担当者が1人の体制では、委託先とのやり取りが一人に集中し、運用が回らなくなる場合があります。原因と対策を、窓口、属人化、不在時の備えの3点から見ていきましょう。
委託先との窓口が1人に集中する負担
委託先への依頼、報告の確認、社内への説明を全て1人が担うと、本来の業務に使える時間が減る場合があります。委託したにもかかわらず、負担が軽くならないという状況も起こりえます。
依頼の受付や定型の報告を、委託先に整理してもらう方法があります。社内からの問い合わせは委託先が直接受け付ける仕組みにすると、担当者の対応件数を抑えられる場合があります。委託先の報告を週次にまとめて受け取る方法も選べます。
属人化を防ぐための文書化と共有
担当者が1人だと、委託先との取り決めや運用の経緯が、その人の記憶にしか残らない状態になりがちです。担当者が異動や休職をすると、運用が止まるおそれがあります。委託先との取り決めを他の人が読めない状態は、リスクといえます。
契約の内容、依頼の手順、過去の対応の記録を文書にまとめ、上司や関連部署とも共有しましょう。委託先に、手順書の作成や更新を依頼できるかも、確認しておきたい点です。文書は誰でも探せる場所に保管し、更新の履歴も残しましょう。
担当者の不在時に備えた代替の体制
担当者が休暇や出張で不在のとき、依頼や承認が止まると、障害対応の遅れにつながる場合があります。承認の権限をもつ代理を、あらかじめ決めておきましょう。
緊急時に委託先が自社の誰へ連絡するか、連絡がつかない場合の次の連絡先は誰かを、一覧にしておくと安心です。代理の担当者にも、定期的に運用状況を共有しておきましょう。担当者が替わった場合も、委託先へ速やかに連絡する流れを決めておくと安心です。
情シス不在で導入した後に起きるトラブル
情報システム部門がない企業では、委託先に任せる範囲が広くなりやすい傾向があります。一方で、依頼の判断や内容の確認が難しくなるため、不在ならではの注意点があります。判断、可視化、社内の役割の3点から整理します。
依頼内容を判断できない状況への対策
社内にIT担当者がいない場合、委託先から提案を受けても、その内容が妥当かを判断しにくくなります。必要のない機器の追加や、過剰な対応を提案されても、気づかない場合があります。内容を比べる材料がないと、見積もりの妥当性も判断しにくくなります。
提案を受けた際は、目的、費用、代替案を書面で示してもらいましょう。判断が難しい場合は、第三者の専門家に意見を求める方法もあります。社内で判断する担当者を、IT以外の部署から決めておくのも有効です。
運用の内容が見えなくなる問題
委託先に任せきりにすると、どのような作業が行われているのか、社内から見えなくなる場合があります。契約を見直す際の根拠や、社内への説明の材料が不足するおそれもあります。経営層への報告にも支障が出るでしょう。
作業の内容や件数を、定期的な報告書で確認できるようにしておきましょう。設定の変更や権限の付与といった重要な操作は、事前の承認を必要とする運用にすると、状況を把握しやすくなります。
社内に最低限残しておきたい役割
情報システム部門がなくても、社内に残しておきたい役割があります。委託先への依頼の窓口、費用の管理、情報セキュリティの方針の確認などは、自社の担当者が持つことが望ましい役割です。
ITの専門知識がなくても、窓口の役割は担えます。委託先に、専門用語を使わない説明を求めるとよいでしょう。
兼務の担当者でも運用できるよう、作業の量が過大にならないかも確認しましょう。定期的な打ち合わせの時間も、あらかじめ確保しておくと安心です。
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複数拠点で運用が混乱する失敗パターン
拠点が複数ある企業では、拠点ごとにIT機器や運用の方法が異なり、委託先が全体を把握しにくくなる場合があります。混乱の原因を、資産、ルール、窓口の3つに分けて整理します。統一できる部分から着手すると進めやすくなります。
- ■IT資産
- 拠点ごとの機器やライセンスが台帳に載っているか
- ■運用ルール
- 依頼や承認の手順が、拠点間でそろっているか
- ■窓口
- 各拠点が同じ連絡先に依頼できる状態か
拠点ごとにIT資産の把握が分かれる問題
拠点ごとに機器を購入したり、別々の管理方法を使ったりすると、全体の資産を把握できなくなります。例えば、拠点で購入した機器が台帳に載らず、棚卸しで見つからない場合があります。台帳の情報が古いと、委託先が作業の対象を誤る原因にもなります。
全拠点の機器やライセンスを、同じ形式の台帳にまとめましょう。更新の担当者と頻度を決め、機器の購入や廃棄の際に台帳へ反映する流れを整えると、情報のずれを抑えられます。拠点の担当者にも、記入の方法を案内しておきましょう。
運用ルールが拠点間でそろわない状況
依頼の方法や承認の手順が拠点ごとに異なると、委託先は拠点ごとに別の対応が必要になります。作業が複雑になり、対応の抜けや遅れが生じる場合があります。
基本となる運用ルールを統一し、拠点の事情で例外が必要な場合は、その内容を記録しておきましょう。ルールの変更は全拠点へ同時に周知し、委託先にも共有する運用が大切です。ルールの文書は、版数と更新日を付けて管理すると、古い手順の使用を防げます。
各拠点からの依頼を整理する窓口の設計
拠点ごとに別の連絡先へ依頼していると、優先順位の判断が難しくなります。同じ内容の依頼が重複したり、対応状況を誰も把握できなかったりする状況も起こりえます。例えば、障害の連絡が複数の宛先に分かれると、対応の抜けにつながるおそれがあります。
依頼の窓口を一本化し、依頼の状況を拠点の担当者も確認できる仕組みを用意しましょう。緊急度の判断基準を決めておくと、複数の拠点から同時に依頼があっても、対応の順序を決めやすくなります。基準は、委託先とも共有しておきましょう。
部門間の分業で生じる課題と防ぎ方
情報システム部門が全体を管理し、事業部門が個別の依頼を出す分業は、役割が曖昧になると運用が滞る場合があります。依頼の窓口、責任範囲、費用負担の3点から、課題と防ぎ方を整理します。分業そのものは有効な方法であり、取り決めの有無が運用を左右します。
依頼の窓口が複数に分かれる混乱
事業部門が委託先へ直接依頼し、情報システム部門が把握していない作業が発生する場合があります。同じ内容の依頼が重複したり、全社の方針とあわない設定が行われたりするおそれがあります。
依頼はいったん情報システム部門が受け付けるのか、事業部門が直接依頼できる範囲を設けるのかを決めておきましょう。直接依頼を認める場合も、内容を共有する仕組みが必要です。月に一度、依頼の一覧を確認する場を設けるのも有効です。
責任範囲のすき間への対応
情報システム部門と事業部門のあいだで、対応する責任の範囲が曖昧だと、誰も対応しない領域が生まれる場合があります。事業部門が独自に導入したツールの運用は、その典型です。
対象となるシステムごとに、運用の責任者、委託先に依頼する範囲、障害時の連絡先を一覧にしましょう。一覧は定期的に見直し、新しいツールを導入する際に追加する運用が有効です。委託先にも、一覧の最新版を渡しておきましょう。
費用負担と依頼の優先順位の調整
委託の費用を誰が負担するか、依頼が重なったときにどの依頼を優先するかは、部門間で意見が分かれやすい点です。基準がないと、声の大きい部署の依頼が優先される状況になりかねません。例えば、売り上げに直結する部門の依頼を先に扱うなど、基準を明文化します。
費用の按分方法と、優先順位を判断する基準を、あらかじめ文書で決めておきましょう。重要度や緊急度に応じた基準にすると、部門間の調整がしやすくなります。定期的な協議の場も設けておくと安心です。
属人化を防ぐ体制づくりを支えるサービス
担当者への依存を減らす体制や、手順の文書化、チームでの支援といった観点から、ITアウトソーシングサービスを取り上げます。
情シスSourcing(ソーシング)
- 必要時に必要な分だけ利用可能 | 運用コストを適正化
- 貴社情シスポジションで課題解決 | 単純アウトソース以上の効果
- 将来体制も考慮し成長まで支援 | 中長期視点でのサポート
ハイブリィド株式会社が提供する「情シスSourcing(ソーシング)」は、チケット制でIT関連業務を支援するサービスです。必要なリソース量のみを都度利用できるため、委託する業務の量が変動する企業は、コストを変動費として扱えます。情シスの立場に立って課題を解決し、将来の体制も考慮した中長期のサポートを案内しています。ヘルプデスクやシステム運用を依頼でき、対象は10名以上の企業で、提供エリアは全国です。
FLEXSY SUPPORT情報システム代行サービス
- 社内ITのお困り事やトラブル等、貴社の悩みに合わせて業務を代行
- 専門のチームがリモートで対応することで、安価で即解決!
- チームでのご支援で社内IT業務の属人化・ブラックボックスを払拭
フレックシステムズ株式会社が提供する「FLEXSY SUPPORT情報システム代行サービス」は、社内IT業務やシステムの課題を、専門のチームがリモートで解決するアウトソーシングサービスです。企業ごとの悩みにあわせて業務を代行し、チームで支援することで、社内IT業務の属人化やブラックボックス化の解消を図ります。ヘルプデスクやシステム運用、セキュリティ運用の依頼に対応します。対応する業務の範囲は、契約前に依頼内容と照らして確認しましょう。
IT顧問 情シス君
- 広範囲で情シス業務をカバーでき、何でも引き継ぎ可能
- 引き継ぎ資料・手順書・マニュアルの作成を行い、内製化も支援
- 3レイヤー体制による適材適所で脱属人化を無駄なくサポート
株式会社デジタルハックが提供する「IT顧問 情シス君」は、広い範囲で情シス業務をカバーでき、担当者が替わる際の引き継ぎにも対応するIT支援サービスです。引き継ぎ資料や手順書、マニュアルを作成するため、担当者が替わった場合に備えた記録を社内に残せます。役割を分けた体制で脱属人化の支援に取り組み、ヘルプデスクやシステム運用、セキュリティ運用も依頼でき、内製化の支援にも対応します。引き継ぎで残してもらう資料の種類は、依頼時に具体的に決めておきましょう。
まるごと情シス代行 (キューアンドエー株式会社)
- IT人材が情シスのルーチン業務を安定代行します。
- 問い合わせ対応の一元管理とデータ可視化で業務効率化
- FAQや自動化で標準化を支援し、業務の仕組み化を促す。
情シスフォースLite (DeepApex株式会社)
- 情シス経験者がヘルプデスクなどの定常業務を代行
- PCキッティングやアカウント管理など幅広い情シス業務に対応
- マニュアルが未整備でも導入でき、運用しながら業務を仕組み化
ITコンシェルジュ (チェックフィールド株式会社)
- IT黎明期からの20年以上の豊富な実績とノウハウ。
- プライバシーマーク10年継続
- 専任2名体制で退職・属人化リスクゼロ。
ITアウトソーシングサービスに関するよくある質問
ITアウトソーシングサービスの運用の失敗についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:担当者が1人でも運用できるよう、最初に決めることは何ですか?
- A:依頼や承認を担う代理の担当者と、委託先に連絡する順序を決めておきましょう。契約の内容や依頼の手順を文書にまとめ、関連部署とも共有すると、不在時も運用が止まりません。
- ■Q2:情報システム部門がなくても、ITアウトソーシングサービスを導入できますか?
- A:導入できますが、依頼の窓口や費用の管理など、社内に残す役割を決める必要があります。提案の内容を判断しにくい場合は、目的や費用、代替案を書面で示してもらいましょう。必要に応じて、第三者の専門家に意見を求める方法もあります。
- ■Q3:拠点ごとに運用ルールが違う場合、どこから統一しますか?
- A:まず、全拠点の機器やライセンスを同じ形式の台帳にまとめ、依頼の窓口を一本化することから始めると進めやすくなります。そのうえで、依頼や承認の手順をそろえます。拠点の事情による例外は、記録に残しておきましょう。
- ■Q4:事業部門が委託先へ直接依頼してもよいですか?
- A:直接依頼を認める範囲を決めておけば、可能な場合があります。その場合も、依頼の内容を情報システム部門や窓口へ共有する仕組みが必要です。全社の方針とあわない設定や、重複した依頼を防げます。
まとめ
ITアウトソーシングサービスの運用で失敗が起こる要因は、役割分担の不明確さ、担当者への依存、情報の分散などです。担当者が1人の体制や情報システム部門のない体制では、手順の文書化と窓口の整理が重要です。複数拠点や部門間の分業では、資産とルールの統一が欠かせません。複数のサービスの資料を請求し、運用体制にあうかを比較してください。

