マニュアルに関わる主な法律と、それぞれのポイントは以下の表のとおりです。
| 法律 | マニュアルとの関係 | 主なポイント |
|---|---|---|
| 個人情報保護法 | 顧客や従業員の個人情報をマニュアルに書く、またはツールに保存する場合 | 利用目的をできる限り特定する。個人データの安全管理のため、必要かつ適切な措置を講じる |
| 会社法・金融商品取引法 | 内部統制の体制整備 | 大会社である取締役会設置会社は、取締役会で業務の適正を確保する体制の整備を決める(会社法)。上場会社などは内部統制報告書を提出する(金融商品取引法) |
| 製造物責任法(PL法) | 製品の取扱説明書・操作マニュアル | 製造業者などは、引き渡した製造物の欠陥で人の生命・身体・財産に損害を与えたとき、賠償する責任を負う。警告の不足が欠陥と判断される場合がある |
| 著作権法 | マニュアルの著作者、生成AIの利用 | 会社などの発案で従業員が仕事として作成し、会社などの名義で公表する著作物は、別の定めがない限り会社などが著作者になる |
| 電子帳簿保存法 | 業務マニュアルは対象ではない | 国税関係帳簿書類(国税に関する法律で保存が義務付けられた帳簿・書類)の保存方法の特例を定める法律 |
マニュアル作成ツールと法律の基本
マニュアル作成ツールは業務効率化に役立つ一方、法律との関係を理解せずに使うとリスクにつながる場合があります。まずは、どのような法律が関係し、なぜ対応が求められるのかを整理します。
関連する法律の概要
マニュアルの作成や管理に関わる主な法律は、次のとおりです。個人情報を書く場合は個人情報保護法、企業の内部統制の体制整備は会社法と金融商品取引法が関わります。製品の取扱説明書は製造物責任法(PL法)、文章や図の権利は著作権法が関わります。
これらは、法律ごとに当てはまる範囲が違います。マニュアルに業務手順や顧客対応の内容を記載する場合、情報の内容次第で複数の法律が関係します。ツール導入前に、どの法律が自社に該当するかを把握することが重要です。
参考:個人情報の保護に関する法律|e-Gov 法令検索
参考:会社法|e-Gov 法令検索
参考:金融商品取引法|e-Gov 法令検索
参考:製造物責任法|e-Gov 法令検索
参考:著作権法|e-Gov 法令検索
法律対応が求められる理由
マニュアルは社内で共有される情報であり、閲覧できる範囲が広がりやすい点が特徴です。その結果、情報の扱い方を誤ると、情報漏えいやコンプライアンス違反につながるおそれが生じます。
法律対応が求められる背景には、企業に対する社会的責任の意識が高まっていることや、情報管理に関する監督が強化されている状況があります。マニュアル作成ツールによって管理しやすくなる一方で、設定や運用が不十分な場合、かえってリスクが表面化しやすくなる点には注意が必要です。
企業に求められる責任
企業には、従業員や取引先に関する情報を適切に管理する責務があります。マニュアルに記載された内容が原因となってトラブルが発生した場合、情報管理の体制そのものが問われるケースも考えられます。
ツールを導入するだけでは十分とは言えず、運用ルールを整備したうえで、法律に沿った管理が行われているかを継続的に見直す姿勢が重要です。マニュアル作成ツールは、そのような責任を果たすための補助的な仕組みとして活用することが望ましいでしょう。
マニュアル作成ツール利用時の法制度対応
法律を理解したうえで、実際にマニュアル作成ツールを利用する際には、具体的な対応が必要です。ここでは代表的な五つの観点から整理します。
個人情報保護への対応
業務マニュアルには、顧客対応手順や従業員情報が含まれることがあります。個人情報保護法は、個人情報を取り扱うときに、利用目的をできる限り特定することを求めています。また、個人データの漏えいや紛失、破損などを防ぐため、必要かつ適切な安全管理の措置を講じなければなりません。具体的な内容は、個人情報保護委員会のガイドラインで確認できます。
マニュアル作成ツールでは、閲覧権限を部署や役職ごとに設定できるかが重要です。全社員が閲覧できる状態ではなく、必要な人だけが確認できる仕組みを整えることで、情報管理のリスクを抑えやすくなります。
内部統制への対応
内部統制とは、企業活動が適切に行われるようにするための仕組みです。会社法では、大会社である取締役会設置会社の取締役会は、業務の適正を確保する体制の整備を決定しなければなりません。この体制には、取締役の職務が法令や定款に沿って行われるようにするための体制などが含まれます。金融商品取引法では、上場会社などが内部統制報告書を有価証券報告書とあわせて提出します。
業務手順を文書にして共有することは、こうした体制を運用する取り組みの一つです。マニュアル作成ツールを使うことで、業務手順を統一し、誰がいつ内容を更新したかを記録しやすくなります。更新履歴が残る仕組みは、不正防止や監査対応の観点でも有効です。内部統制を意識する企業ほど、ツールの管理機能が重要になります。
記録管理への対応
業務に関する記録は、一定期間保存することが法律で求められる場合があります。たとえば労働基準法では、労働者名簿や賃金台帳などを、現在は3年間保存する必要があります。
業種や業務によっては、法令が手順を文書で定めることを求めています。労働安全衛生規則は、熱中症のおそれのある作業について、作業場ごとに手順を定めるよう求めています。手順には作業からの離脱や身体の冷却などを含め、作業者に知らせる必要があります。医薬品の製造業者などには、製造所ごとに、製造工程や出荷の管理などの手順を書いた文書(手順書)を作成し、備えておくことが求められます。
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類の保存方法の特例を定める法律です。国税関係帳簿書類とは、国税に関する法律で保存が義務付けられた帳簿や書類のことで、業務マニュアルそのものは対象ではありません。手順書のように、マニュアルそのものが法令上の文書になる場合は、削除や改ざんが簡単にできない仕組みが望まれます。
マニュアル作成ツールでは、過去版の保存や復元が可能かを確認することが大切です。記録管理の観点からも、ツール選定時に保存機能を確認しておく必要があります。
参考:労働基準法|e-Gov 法令検索
参考:労働安全衛生規則|e-Gov 法令検索
参考:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令|e-Gov 法令検索
参考:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律|e-Gov 法令検索
製品の取扱説明書とPL法への対応
製品をつくる企業では、取扱説明書や操作マニュアルも法律に関わります。製造物責任法(PL法)では、製造業者などが、引き渡した製造物の欠陥で人の生命、身体、財産に損害を与えたとき、賠償する責任を負います。欠陥とは、その製造物に本来求められる安全性が欠けていることです。
消費者庁のQ&Aによると、PL法は製造物への注意表示を義務付けていません。ただし、危険を避けるための適切な情報を製造者が与えなかった場合は、いわゆる指示・警告上の欠陥と判断されることがあります。取扱説明書の警告や使い方の記載は、改訂の履歴とあわせて管理しましょう。
マニュアルの著作権と生成AIの利用
マニュアルの文章や図は、著作権法の保護を受ける場合があります。会社などの発案で従業員が仕事として作成し、会社などの名義で公表する著作物は、原則として会社などが著作者になります。ただし、契約や勤務規則で別の定めをした場合は除きます。
生成AIでマニュアルを作るときは、著作権の扱いも確認することが重要です。著作権法は、著作物の表現を楽しむことを目的としない利用(情報解析など)を、一定の範囲で認めています。AIと著作権の関係は、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)が参考になります。詳しくは、以下の記事で解説しています。
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法制度対応を意識したマニュアル作成ツールの選定ポイント
法制度対応を前提にマニュアル作成ツールを選ぶことで、導入後の不安を減らしやすくなります。ここでは選定時に確認したい視点を紹介します。
セキュリティ機能
セキュリティは、法制度対応の土台となる要素です。通信の暗号化やログイン時の認証機能、アクセス制限の有無などを確認しましょう。これらの機能が整っていることで、情報漏えいリスクを下げることにつながります。
運用管理機能
マニュアルは作って終わりではなく、継続的な更新が必要です。誰が編集できるのか、承認フローを設定できるのかといった運用管理機能は、法制度対応にも影響します。運用ルールをツール上で形にできるかを確認することで、社内ルールと法律の両立がしやすくなります。
サポート体制
法律や制度は定期的に見直されます。そのため、ツール提供事業者のサポート体制も重要です。法改正時に情報提供があるか、運用相談ができるかといった点は、長期的な安心感につながります。
よくある質問
- Q1:マニュアル作成ツールとは?
- 業務の手順やルールを、作成・共有・更新するためのツールです。詳しくは、マニュアル作成ツールとは?属人化や更新漏れの解消から新人教育の工数見直しまで解説をご覧ください。
- Q2:業務マニュアルは誰が作るの?
- 業務をよく知る担当者や、管理を担う部門が作ることが多いです。法令が関わる内容は、法務・総務・情報システムなど、関係する部門に確認することが重要です。
- Q3:マニュアルに書いてはいけないことはありますか?
- 個人情報保護法では、特定した利用目的に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱う場合、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です。他人の著作物を無断で転載しないことも重要です。
まとめ
マニュアル作成ツールは、業務効率化だけでなく、法制度対応を支える仕組みとしても重要な存在です。個人情報保護、内部統制、記録管理を理解したうえで、製品の取扱説明書ではPL法、文章や図の権利では著作権法も確認すれば、リスクを抑えながら活用しやすくなります。ツールごとに機能やサポート体制は異なるため、複数の資料を比較する方法が有効です。
自社に合ったマニュアル作成ツールを見つけるためにも、ITトレンドでまとめて資料請求し、具体的な違いを確認してみてはいかがでしょうか。


