工程管理における「負荷計画」とは
まずは、工程管理における負荷計画がどのようなものか見ていきましょう。
生産能力と生産負荷を調整した計画のこと
工程管理を適切に行うためには、その工程にどれくらいの生産負荷(仕事量)があるか把握する必要があります。生産負荷は工数計画によって決められており、その仕事をこなせるだけの生産能力が必要です。生産能力と生産負荷が見合っていなければ、生産が追いつかず、納期に遅れが生じるかもしれません。生産能力が余っているとムダが生じて、生産効率が下がってしまいます。
そこで負荷計画を立てます。負荷計画とは、生産能力と生産負荷を調整して、生産計画を実行可能なものにすることです。人材や工場の機械に不足があった場合は、人員の適正配置やラインの追加などの対策を事前に行います。生産計画の作成と同じ段階で負荷計画を行うので、生産能力に見合った生産計画を立てられるのです。
「月次」と「日別」の2種類がある
基本的に生産計画は月次で作成されるため、月次の負荷計画が必要になります。その月にどれくらいの数量を生産するか決めたら、生産能力を把握して月次の負荷計画を作成します。しかし、毎日一定のリズムで生産ができるとは限らないため、月次の負荷計画は日別の負荷計画に落とし込むことが必要です。
生産するために必要な原料の納入時期や顧客の受注数、季節変動などによって、日別の負荷計画は大きく変わる場合もあります。そのため、月次の負荷計画では問題なくとも、週単位や日別で見ると過不足が発生する可能性があるのです。日別の負荷計画では、生産計画を達成できるように日ごとの仕事量を調整しましょう。
このように月次から日別の負荷計画へ落とし込むことで、より納期を守りやすくなります。
工程管理における「負荷配分」とは
負荷配分とは、負荷計画における生産能力と生産負荷を比較し、仕事の配分を調整することです。負荷配分は負荷計画の一部であり、負荷配分を行うことで最終的な生産計画を作成できます。
負荷配分は負荷調整とも呼ばれており、生産能力の過不足のバランスを取る重要な役割を担っています。日別の調整を行いますが、月次単位でも対策することが求められます。
生産能力が足りず、残業などで対応できない場合は、人員を新たに採用し仕事ができるように訓練しなければなりません。このように必要な対応を取れるようにするために、月次の負荷計画から負荷配分を行う必要があるのです。
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負荷配分のやり方
つづいて、具体的にどのようにして負荷配分を行うのか見ていきましょう。
山積みを行う
負荷配分を行うためには、まず期間別にそれぞれの負荷を積み重ねる「山積み」をします。生産工程に必要な資材・人員・機材といった資源と、負荷を明確にするために山積み表を作成しましょう。基本的に横軸に期間(「月」または「週」)、縦軸に工程別の負荷を示したグラフを作成し、全体の仕事量を洗い出してください。
山積み表を作成したら、次にその期間ごとの生産能力を反映させた「能力線」を引いてください。この能力線から溢れている負荷は、負荷配分が必要な対象となります。
負荷がこの能力線を下回っている場合は、生産能力に対して仕事が足りておらず、企業の損失となってしまうので注意しましょう。このような負荷が少ない期間に仕事を入れることも山積みと呼びます。
山崩しを行う
効果的に生産を行うためには、生産能力に対して過不足ない負荷に調整する必要があります。作成した山積み表の中で、対策が必要な負荷が超過した分を能力線に合わせることを、「山崩し」と呼びます。
簡単にいえば、生産能力が超過している部分があったとき、仕事が足りていない期間に負荷を割り当てることです。このように、生産能力に対する負荷を平準化し、最終的な生産計画を作成します。
もし山積み表を作成した際に、能力線を下回る期間がない場合は山崩しができません。この場合は、絶対的なキャパシティ不足になるため、人員を確保して生産能力を向上させる必要があります。
なお、山崩しは2つのやり方があるのでそれぞれ紹介します。
フォワード方式
フォワード方式とは、今手元にある受注・販売計画に対する製造計画をある基準日から前詰めで計画していく方法です。山崩しの中のフォワード方式は「順行負荷法」とも呼ばれ、加工する工程の順番に負荷を追加していきます。
過剰な負荷を余力がある工程に割り振ることで、全体の負荷を平準化する方式です。計画の基準日から負荷を追加していくため、納期を決めるときに使われる手法でもあります。
フォワード方式は負荷と生産能力のバランスが良いため生産効率が高くなります。しかし、余力がある部分に仕事を割り当てるため、在庫が発生しやすい点には注意しなければなりません。
バックワード方式
バックワード方式とは、納期を基準にして生産日数を決めて負荷を配分していく手法です。「逆行負荷法」とも呼ばれ、基本的に受注し納期が決まっている場合の負荷配分に適用されます。
この方式で在庫が発生するような負荷であれば、納期に間に合わなくなる可能性が高くなります。そのため、在庫を削減する必要がある生産工程に適している方式です。
無駄な在庫が発生しないため、フォワード方式よりもバックワード方式の方が優れているように感じる方もいらっしゃると思いますが、注文に変更が生じた場合や、急な受注には対応しにくい側面があります。イレギュラーな事態はどの生産体制でも発生し得るため、柔軟な対応が必要になるでしょう。
負荷計画・配分を効率よく実施する方法
負荷計画や負荷配分は生産計画を成功させる非常に大きな役割を担っています。しかし、計画の中で機械の故障や急な受注といったように状況が大きく変わることもあるのではないでしょうか。
このような要素が加わると、負荷配分の計算は非常に複雑になるため、アナログな手法では対応しきれないでしょう。負荷計画・配分を効率良く実施するためには、工程管理システムの利用がおすすめです。
工程管理システムの中には、日別の負荷を把握しやすいだけでなく、山積み・山崩しを自動で行える製品もあります。複雑な計算を簡略化し、効率良く負荷配分を実施することで、適切な負荷計画を策定できます。より正確な計算をシステムで行えれば、担当者の業務負担を軽減も可能になります。
工程管理の負荷配分を実施し、余裕ある負荷計画の作成を!
生産計画を立てる際に、工場の生産能力と負荷を比較しバランスを取る負荷計画は、非常に重要です。もし負荷計画に不備があれば、過負荷な状態になることも考えられるでしょう。生産能力に対して負荷が少ないとムダが発生します。生産する製品や納期、受注のタイミングといった要素を考慮し、適切な負荷計画を立てる必要があります。効率的な負荷計画を策定するために工程管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。