トヨタ生産方式(TPS)とは
まずは、トヨタ生産方式の概要を簡単に説明します。
ムダを徹底的に排除する生産方式
トヨタ生産方式とは、ムダがない生産体制を構築するためにトヨタ自動車が生み出した生産方式です。
かつて戦後のころに弱小メーカーだったトヨタは、技術以外の面で工夫する必要がありました。そこで当時の副社長がムダを省くためにトヨタ生産方式を生み出したといわれています。
トヨタ生産方式は「ジャストインタイム」と「自働化」の2つの理念でムダを排除し、生産を合理化します。理想的な生産体制を実現しやすい生産方式です。
一般的な生産方式とは違い、在庫が最小限
一般的な生産方式では大量生産によってコスト削減を行い、在庫を持つことで販売機会を獲得します。在庫を抱える運用だと、顧客からの要望に応えられます。しかし、過剰在庫になりやすく、生産のムダはもちろん管理コストなどのムダが発生しやすいのが特徴です。
トヨタ生産方式は、顧客の要望によって生産計画が決まり、必要な分を必要なタイミングで生産します。そのため在庫は最小限で済み、生産と管理のムダが発生しにくい生産方式といえるでしょう。
また、企業は利益を確保するために原価低減を行いますが、トヨタ生産方式ならさまざまなムダを排除するのでコスト削減ができ、原価低減を実現しやすくなります。
トヨタ生産方式の基本思想
つづいて、トヨタ生産方式の基本思想を詳しく見ていきましょう。
自働化
トヨタ生産方式では「自動化」ではなく「自働化」が使われています。「ニンベン」の自動化、つまり人の手が加えられた自動化という意味です。
生産ラインは機械化が進んでおり、各工程は自動化されていますが、機械の異常によりミス(不良品)が発生します。そこで、トヨタ生産方式では生産ラインに異常が発生したとき、生産を止めて原因を究明します。
機械が異常を自動的に検知した場合、その内容を迅速にライン管理の担当者に通知します。ラインを止めるのはこのタイミングです。この後は担当者が原因究明にあたります。
このような改善活動を行えば不良品の発生を抑え、品質を向上させることが可能です。つまり自働化とは、生産の大きなムダである不良品を作らない仕組みを構築する仕組みのことを指します。
ジャストインタイム
ジャストインタイムとは、トヨタを代表とする「必要なものを必要な分だけ」生産する方式のことです。
徹底的に生産に関するムダをなくすだけでなく、品質の低下やばらつきをなくせます。生産に必要なものが不足することで作業が停滞すると、大きなムダが発生してしまいます。逆に必要なものでも数が多ければ管理コストというムダが発生するでしょう。
ジャストインタイムを実現するために「かんばん方式」が採用されています。かんばん方式とは、部品の納入時間や数量が記載された作業指示書を使う方式です。このかんばん方式を使うことで、計画どおりにムダなく商品を生産でき、生産効率が上がります。
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トヨタ生産方式を実現する4つの手法
トヨタ生産方式を採用し実現するためには、どのような手法を用いればよいか見ていきましょう。
1.カイゼン
カイゼンとは、トヨタが目指す「より良いものを、より早く、より安く」を実現するための改善活動です。今の生産体制に満足することなく、生産の効率や安全性を見直すことが主な目的です。
漢字で表記する「改善」は悪い点・欠点を修正するという意味です。トヨタ生産方式では「現場の作業効率を良くする」という意味で使われます。そのため、トヨタ生産方式では「改善」ではなく「カイゼン」とカタカナで表記し、区別しています。また、この手法は海外でも浸透しており、「Kaizen」と表現されます。
2.問題の見える化
何かトラブルや問題が発生した場合、その内容を全員で共有し見えるようにする考え方です。トヨタ生産方式は、生産ラインに問題が発生すればラインを止めるルールがあります。このようなルールがあれば、問題が発生したことが分かりやすくなり、全員が知恵を出して改善活動に取り組めます。
このように問題を見える化していれば、早期解決が可能なだけでなく再発を防止できるでしょう。より問題が発生しにくい生産体制の構築が可能となります。
3.なぜなぜ分析
何か問題が発生したとき、それを解決するためには、その問題の原因を見つけなければなりません。しかし、一般的な原因は表面的なものが多く、真の原因でないことが多くあります。つまり、原因の原因を改善しなければ、再発する可能性が残ってしまうのです。
そこで、「なぜなぜ分析」を行うと、真因を発見できます。なぜなぜ分析とは、1つの問題の原因に対して「なぜ」と5回質問を繰り返す方法です。1つの要因に対して深く追究することで、根本の原因の特定と改善が可能となります。
4.7つのムダどり
トヨタ生産方式はムダを徹底的に排除することが目的であり、そのためには7種類のムダを省きます。このトヨタ生産方式における「ムダ」とは、付加価値を生まない作業と定義されています。
トヨタ生産方式における7つのムダは以下のとおりです。
- ■つくりすぎのムダ
- ■手持ちのムダ
- ■運搬のムダ
- ■加工のムダ
- ■在庫のムダ
- ■動作のムダ
- ■不良をつくるムダ
なお、ムダを排除する際は、全体の生産性を考えなければなりません。主に生産現場のムダを排除しますが、間接部門にも同じようなムダが発生していることも多いため、注意しましょう。
トヨタ生産方式を導入するポイント
トヨタ生産方式は生産のムダを排除できるため、企業にとってメリットが多いです。多くの企業が採用を試みますが、失敗も少なくありません。
実際に、ジャストインタイムで生産した場合、運用を誤ると在庫切れになってしまい機会損失となります。一度に大量に生産することでコストメリットが出る製品だと、ジャストインタイムは原価が高くなるため向いていません。
また、現在の生産体制を大幅に変更するため、現場スタッフが反発する可能性もあります。まずは、トヨタ生産方式が万能な方式ではないことを理解するところから始めましょう。自社に取り入れるかどうかは、経営陣だけでなく現場とも相談しなければなりません。トヨタ生産方式のすべてを取り入れるのではなく、現場に適した内容を採用し体制を見直すことが大切です。
体制変更には各工程が変化に耐えられるか、見直し対応ができるかなどの懸念もあります。工程管理システムを活用して、それぞれの工程が可視化された状態になっていると安心でしょう。
トヨタ生産方式を理解し、社内のムダを削減しよう
トヨタ生産方式はムダを排除し、生産品質や効率を上げ、原価低減を可能にします。「自働化」と「ジャストインタイム」という基本思想で成り立ちます。実際にトヨタ生産方式を取り入れるには、カイゼン、問題の見える化、なぜなぜ分析、7つのムダどりを行いましょう。
しかし、既存の生産体制と相性が悪ければ失敗してしまうことも多いです。トヨタ生産方式の考え方を理解したうえで導入しましょう。