SPC(統計的工程管理)とは
SPC(Statistical Process Control)とは、日本語で「統計的工程管理」または「統計的プロセス制御」と訳されます。「統計的プロセス管理」と呼ばれる場合もありますが、いずれも意味は同じで、製品の品質保証と工程管理の改善のために、各製造工程のデータを統計的に処理を行う方法のことです。以下で概要を解説します。
工程を改善するための統計的な管理手法
従来の工程管理は、製造工程が完了してから完成品をすべてチェックし、異常があるものを排除するという方法でした。しかし、この方法では品質検査に時間と手間を要します。
そこで導入されたのがSPCです。SPCは、完成品の品質を左右するデータを各製造工程で測定・監視して、最終段階で不良品が出ないようにする方法です。具体的には、製造工程でさまざまなデータを取得し、統計学的に処理することで、工程異常を検出します。
各工程での製造段階において不具合を発見・対処できるため、最終段階での不良品発生を防止できます。チェックに要する時間の削減だけでなく、費用の無駄をなくせるメリットもあるでしょう。
管理図を用いて管理する
SPCでは主に「管理図」と呼ばれるグラフを用います。偶発的に生じた品質のばらつきと、何かしらの異常に起因するばらつきを区別するために使われます。
偶発的に生じたばらつきは、原因を調べても仕方がありません。しかし異常に起因するものは、迅速に特定し、原因を除去する必要があります。
管理図にはいくつかの種類がありますが、代表的なのはX管理図とR管理図を上下に並べたXbarーR(エックスバー・アール)管理図です。双方の図には管理限界線が上下に引かれ、間には品質(長さや重さ)の平均値や範囲(最大値-最小値)が表されます。
平均値や範囲が管理境界線を超えたり、特定の状態(異様な偏りなど)が見られたりした場合、異常が発生したといえます。
Cpkを用いて管理する
管理図のほかにも、製造工程が健全か判断できる「Cpk」を用います。Cpkは「工程能力指数」とも呼ばれ、規格を満たす製品を安定して作り続ける製造工程の能力を指します。
製品の品質管理の際には、上限規格値と下限規格値を設け、規格の合否基準として利用するのが一般的です。Cpkを用いると、上限規格値と下限規格値の規格幅における、実データのばらつきの位置を確認できます。Cpkの値は、1.33~1.66あれば十分とされています。
Cpkは以下の計算式で求められ、数値が小さいほうを採用します。
- Cpk=(上限規格値-平均値)/3σ
- Cpk=(平均値-下限規格値)/3σ
※σ:標準偏差
Cpkの数値は、製品品質が不安定になる(平均値が限界値に近づく)につれ、小さくなります。
SPCとSQCの違い・共通点
SPCと似た概念に、SQCがあります。SQCとは「Statistical Quality Control」の略で、「統計的品質管理」と訳されます。SPCとSQCの違いや共通点について解説するので理解を深めましょう。
SQCは工程ではなく品質を管理する
SPCが「統計的工程管理」なのに対し、SQCは「統計的品質管理」です。つまり、両者は管理対象が工程か品質かという点で異なります。
SQCの目的は、製造業において材料や従業員が製品の品質に与える影響を管理・改善することです。そのために、製造工程や製品からデータを収集し、統計学的な処理を行います。
目的は違えど、作業自体はSPCと非常に似通っており、統計学的な手法を用いて品質を管理する点で実質同じものといえます。
いずれもQC七つの道具を用いる
SPCとSQCはどちらも統計的手法を用いる方法であり、データ分析やデータ管理にはQC七つの道具を使うという共通点があります。主に製造現場で用いられるQC七つの道具とは以下の7つです。
- チェックシート
- 現場での作業状況をチェックする際に使うシート
- パレート図
- 不良やクレーム件数を棒グラフと累積曲線で示した図
- 管理図
- 品質の推移を示す折れ線グラフに管理境界線を加えた図
- ヒストグラム
- ばらつきの全容を把握するための図
- 特性要因図
- 結果と原因を矢印で示す図
- 散布図
- 2つの変数を軸としたグラフ上に打点し、データの傾向を把握するための図
- 層別
- データをいくつかの層に分類し、それぞれの特徴を探る考え方
データ収集や図表化をすべて手動で行うとなると、専門知識が求められるだけでなく、管理工数もかかってしまいます。ITツールの導入で解決を図りましょう。工程管理システムは品質管理の向上や各工程の可視化、効率化に役立つシステムです。製品を比較したい場合は以下のボタンから資料請求をご利用ください。
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SPC管理を行う方法
プロセス制御ツールやSPC管理ソフトなどのITシステムを導入することで、SPC管理を適切に実施できるでしょう。
プロセス制御ツールのなかには、センサーやコントローラから自動で製品情報を収集し、管理図を表示する機能が備わったものもあります。これにより、データの収集と管理にかかる手間の大幅な削減が期待できるでしょう。
SPC管理ソフトは、SPCに必要な機能を多数搭載しており、データ収集や計算の自動化、解析をサポートします。
また、品質向上や生産性向上を第一の目的とするのであれば、工程管理システムも選択肢の一つになるでしょう。工程管理システムは、各工程の進捗状況をリアルタイムで把握できるため、異常発生時においても迅速な対応が可能です。工程の可視化により無駄をなくし業務効率を高め、技術の標準化にも寄与します。結果として品質や生産性の向上につながるでしょう。
ITツールだけでなく、データ解析やコンサルティング、セミナーまで提供するサービスもあります。有効活用することで、管理負担を抑えつつ、高度なSPCが実現するでしょう。
工程管理システムに興味のある方は、以下の記事もぜひ一読ください。導入メリットやおすすめ製品を紹介しています。
SPCを理解し工程管理を適切に行おう
SPCは統計的工程管理という意味で、統計的手法を用いて製造工程を管理することを指します。管理図やCpkを用いて、製造工程の正常性を管理します。また、SQCは品質を管理する概念であり、SPCはその一部を担う管理手法です。どちらもQC七つの道具を用い、統計的手法でデータを処理する点は共通しています。
品質や工程管理を改善したいものの、ノウハウやリソースに課題を感じている場合は、工程管理システム導入も選択肢の一つです。業務効率化によるコスト削減なども見込めるでしょう。システム導入を検討したい方には、資料請求がおすすめです。