標準時間とは
工程管理における標準時間とは、標準的な環境の下で一般的な作業者が、決められた方法と一定の速さで作業した場合の1単位にかかる作業時間を指します。簡単にいうと「普通の人が普通に作業をこなした場合に要する時間」のことです。
実際は、その作業時間に「余裕時間」を加えたものが正確な標準時間となります。なぜなら、作業を行う際に避けられない時間の消費(用足しなど)が発生するからです。ただし、余裕時間はゆとり時間ではない点に注意しましょう。
標準時間の構成要素
標準時間には「作業標準時間」と「準備標準時間」があり、それぞれ標準時間の構成内容が異なります。ここからは、その構成内容に関して詳しく解説します。
作業標準時間
作業標準時間は、正味作業時間と余裕時間に分けられます。
正味作業時間
正味作業時間は以下の2つに分類されます。
- 主体時間
- 製品の形状や寸法を変更させる作業に要する時間。切削、組立作業など
- 付随時間
- 主体作業に付随して発生する作業に要する時間。検測作業など
余裕時間
一方、余裕時間は以下の4つに分けられます。
- 作業余裕時間
- 主作業に伴い不規則に発生する作業に要する時間。刃研ぎ、清掃など
- 職場余裕時間
- 作業に直接関係しない作業に要する時間。材料待ち、朝礼など
- 個人余裕時間
- 作業者の生理現象に要する時間。用足し、水飲みなど
- 疲労余裕時間
- 作業者の疲労回復に要する休憩時間。
準備標準時間
準備標準時間は、準備正味時間と準備余裕時間に分けられます。準備正味時間はその作業特有の準備や後始末に要する時間です。部品や材料、治工具などの準備・片づけが該当します。
一方、準備余裕時間は作業標準時間における余裕時間と同じですが、主に疲労余裕時間を指します。作業とは別に、準備にも疲れを回復する時間を設けましょう。
標準時間の計算方法
続いて、標準時間の具体的な計算方法を見ていきましょう。
標準時間の計算に必要な要素は、正味時間と余裕時間の2つです。計算式は以下のようになります。
標準時間=正味時間+余裕時間
それでは、必要な各要素の求め方を解説していきます。
正味作業時間を求める
正味作業時間を求める方法には、以下の2種類があります。
1.ワークサンプリング法などで実際の作業時間を測定
実際の作業時間を測定することで、正味作業時間を明らかにする方法です。以下の2種類に大別されます。
- 【直接観測法】
- その名のとおり、作業時間を直接観測する方法です。ビデオカメラやストップウォッチなどを活用します。ただし、観測した時間をそのまま正味作業時間にはできません。
- たとえば、普通の作業員の1.3倍で作業できる人を観測対象とした場合、正味作業時間とするには1.3で割る必要があります。この処理をレイティングと呼びます。
- 【ワークサンプリング法】
- 統計的手法を用いて正味作業時間を推定する方法です。あらかじめランダムに指定した時刻における、作業者や機械の瞬間的な状態の記録を何度か繰り返します。
- その結果明らかになるのは、各作業の発生頻度です。その頻度を統計的に処理することで、総実働時間における各作業の割合が分かり、結果として所要時間が判明します。
2.PTS法などで論理的な作業時間を測定
計測したデータから、論理的に作業時間を求める方法です。PTS法・標準資料法・実績資料法の3つを見ていきましょう。
- 【PTS法】
- PTS法は「Predetemined Time Standard system」の略で、日本語に訳すと「既定時間標準法」となります。各作業を構成する動作に要する時間を組み合わせることで、作業全体に要する時間を算出します。以下の2つの方法が代表的です。
-
- WF法:手や腕、胴などの動作の距離と困難性を加味して算出
- MTM法:「運ぶ」「掴む」などの動作を記述し、定められた数値を適用して算出
- 【標準資料法】
- 作業を要素作業に分解し、それらにPTS法などで求めた作業時間を当てはめることで、元の作業の時間を特定します。
- 【実績資料法】
- 作業日報などの実績を基に作業時間を求めます。
余裕率を設定して余裕時間を求める
標準時間は正味作業時間と余裕時間の合計です。したがって、余裕時間も算出しなければなりません。その際に役立つのが余裕率です。余裕率は作業によって異なります。軽作業では10%、中作業では20%、重作業では30%程度に設定するのが一般的です。
余裕率を設定すると、以下の計算式で余裕時間を算出できます。
余裕時間=正味作業時間×余裕率
したがって、標準時間は以下の計算式で算出できます。
標準時間
=正味作業時間+余裕時間
=正味作業時間+正味作業時間×余裕率
=正味作業時間×(1+余裕率)
たとえば、軽作業(余裕率=0.1)の場合、正味作業時間を1.1倍したものが標準時間となります。
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標準時間の活用方法
標準時間の活用方法は、評価と計画に大別されます。
作業を評価するための基準としては、以下の形で活用可能です。
- 作業効率の評価
- 標準時間と実際の作業時間を照らし合わせることで、どのくらいの効率を実現しているか評価できます。
- 改善効果の評価
- 従来の作業における標準時間と、新しい設備や方法の導入後の標準時間を比較することで、改善の程度を把握できます。また、訓練プログラムの効果や休憩時間による疲労回復効果の評価にも役立ちます。
- 人事評価
- 作業の評価結果を従業員のインセンティブなどに反映させられます。
一方、計画の資料としては、以下の形で活用できます。
- ■納期や数量の計画
- ■作業者のアサイン
- ■費用見積もり
- ■設備計画・要員計画
標準時間を計算し、工程管理で効果的な業務改善を!
標準時間とは、熟練度が標準の作業員が標準の手順・速さ・環境で作業した際に要する時間のことです。作業標準時間と準備標準時間に大別されます。標準時間は以下の手順で算出できます。
- 1.正味作業時間を求める(直接観測法、PTS法など)
- 2.余裕率を設定する
- 3.「標準時間=正味作業時間×(1+余裕率)」で算出
以上を踏まえて適切に標準時間を算出し、工程管理に活かしましょう。