誤検知による正常アクセス遮断の失敗
WAF運用で最もよく発生するトラブルの一つが、正常なユーザーのアクセスを攻撃と誤認して遮断する「誤検知」です。
誤検知が発生しやすい状況と原因
誤検知は、WAFのシグネチャ(攻撃パターンのルール)が広範すぎる場合や、自社Webアプリケーション固有のリクエスト形式がシグネチャに一致してしまう場合に発生します。例えば、フォームの自由記入欄にSQLのキーワード(「select」「where」等)が含まれるリクエストや、管理者用ツールからの複雑なクエリパラメータを持つアクセスが攻撃として誤検知されることがあります。ユーザーの問い合わせ内容やレビューコメントなど、自然言語の入力に特殊文字が含まれることで誤検知が生じる場合もあります。
誤検知を防ぐ対策として、WAFを最初から遮断モードで運用するのではなく、まず「検知モード(モニタリングモード)」で稼働させ、誤検知のパターンを把握してから例外ルールを設定することが重要です。新しいWebページや機能をリリースする前に、検知モードでのWAFのログを確認し、誤検知が発生しないかを事前に確認するプロセスを組み込むことをお勧めします。
誤検知対応を怠ることによる運用の停滞
誤検知が発生した際に対応を後回しにすると、ユーザーからの「サイトが使えない」「フォーム送信できない」といった問い合わせが積み重なり、最終的に「WAFを一時的に無効化する」という本末転倒な対処に至ることがあります。誤検知への対応を後回しにするリスクは、WAFが実質的に機能しない状態が続くことです。誤検知が発生したらすぐに原因のルールを特定し、例外設定(ホワイトリスト登録)を行う運用フローを定めておくことが重要です。
誤検知対応のフローとして「発生ログの確認→該当ルールの特定→例外設定の追加→例外設定の検証→本番適用」という手順を標準化しておくと、誤検知発生時に素早く適切に対処できます。例外設定の内容と理由を記録しておくことで、後から設定の意図を確認でき、不要になった例外ルールの見直しも計画的に行えます。
チューニング不足による防御品質の低下
WAFは初期設定後もチューニングを続けることで防御品質を維持できます。チューニングを怠ると、本来防げた攻撃を見逃すリスクが高まります。
初期設定のままで放置するリスク
WAFの初期設定は多くの場合、汎用的な攻撃パターンへの対応を基本とした標準ルールセットが適用されます。しかし、自社のWebアプリケーションが持つ固有のリスク(特定のパラメータへの入力制限・APIの仕様・管理者用URLの保護等)に対応した追加ルールを設定しないまま運用を続けると、自社固有の攻撃経路への防御が不十分になることがあります。特にWebアプリケーションの機能追加や改修を行った際に、WAFのルールを見直さないまま運用を続けることで防御の抜け穴が生じるリスクがあります。
Webアプリケーションのリリースサイクルに合わせてWAFのルールレビューを実施するプロセスを設けることが重要です。年に1~2回、または大きな機能追加のタイミングで、現在のルールセットが自社アプリケーションのリスクを適切にカバーしているかを確認することをお勧めします。WAFベンダーのセキュリティチームや外部のセキュリティ専門家によるルールレビューサービスを活用することも選択肢の一つです。
新機能リリース時のWAF設定更新漏れ
新しいWebページや機能をリリースした後にWAFのルールを更新しないことで、新機能が想定外の形でWAFの制限を受けてしまったり、新機能特有の攻撃ポイントがWAFの保護対象外になったりする問題が発生することがあります。例えば、新たにAPIエンドポイントを追加した際に、そのAPIへのリクエスト形式に対応したルールをWAFに設定しないまま運用を開始すると、そのAPIが防御の盲点になることがあります。
開発チームとWAF運用担当者の間で「新機能リリース時のWAFレビュー」をリリースプロセスのチェックリストに組み込むことが有効です。開発段階でWAFのルールを更新するか、新機能を検知モードで監視してから遮断モードに移行する2段階のリリースプロセスを採用することで、新機能リリース時のリスクを管理できます。
ログ監視の形骸化とシグネチャ更新の停滞
WAFを導入後に陥りやすいのが、ログ監視が形式的になってしまうことと、シグネチャのアップデート管理が疎かになることです。
ログ監視が形骸化するパターンと対処法
WAFの導入直後は担当者がログを熱心に確認するものの、攻撃検知が続くと「日常的な攻撃だから問題ない」という慣れが生じ、ログの確認が形式的になることがあります。その結果、実際には対処が必要な攻撃の増加やパターンの変化を見落とすリスクが生じます。アラートの閾値設定が甘いと大量の通知が届いてアラート疲れが起き、重要なアラートを見落とすという問題も発生します。
ログ監視の形骸化を防ぐには、確認すべき指標(攻撃件数の前日比・新しい攻撃元IPのランクイン・特定エンドポイントへのアクセス集中等)を定義し、異常値を自動検知してアラートを上げる仕組みを整えることが重要です。週次・月次のセキュリティレポートを自動生成する機能があると、ログ監視の継続的な実施が定着しやすくなります。
シグネチャ更新管理の停滞によるリスク
自動更新に非対応のWAFや、手動で更新作業が必要な製品では、担当者の作業が滞るとシグネチャが古くなり、新しい攻撃手法への防御が弱まるリスクがあります。特に新しい脆弱性(ゼロデイ脆弱性)が公表された際に、迅速に対応ルールを適用できなければ攻撃にさらされる期間が長くなります。シグネチャ更新作業が運用担当者の責任範囲にある場合、更新作業の抜け漏れが発生しやすいです。
シグネチャ更新の停滞を防ぐには、自動更新対応のWAFを選ぶことが最も効果的です。手動更新が必要な場合は、更新の通知をメールまたはダッシュボードで受け取り、更新作業のスケジュールと担当者を明確にしたプロセスを整備することをお勧めします。重大な脆弱性が公表された際の緊急更新手順を事前に確認し、ベンダーの緊急対応フローを把握しておくことも重要です。
WAF運用の失敗を防ぐための製品選定
WAFを継続的に活用するには、攻撃検知や遮断機能だけでなく、運用支援やルール管理、監視体制なども確認することが重要です。自社の運用体制に合う製品を比較しましょう。
Cloudbric WAF+
- 特許取得のロジック&AIエンジンを搭載、高い攻撃検知力
- WAF/DDoS攻撃遮断/API保護/ボット対策/Malicious IP遮断
- 24時間365日監視体制と専門家にお任せのマネージドサービス付帯
ペンタセキュリティ株式会社が提供する「Cloudbric WAF+」は、独自ロジックとAIエンジンを搭載したクラウド型WAFです。24時間365日の監視やマネージドサービスが付帯し、WAFの運用負荷を抑えられます。
PrimeWAF
- Webサイトへの攻撃を見える化し、不正な通信を遮断
- 脆弱性診断のノウハウを攻撃の検知・遮断ルールに反映
- 導入時の設定から日々の運用まで、丁寧にサポート
バルテス株式会社が提供する「PrimeWAF」は、低コストで導入しやすいクラウド型WAFです。簡単な設定で利用を開始でき、専門知識が少ない担当者でも運用しやすいサポート体制を備えています。
BLUE Sphere
- WAF/DDoS防御/DNS監視/サイバー保険がオールインワン
- ドメイン無制限で複数サイトを1つの契約で守る!
- 三井住友海上火災保険「サイバープロテクター」が無償で付帯!
株式会社アイロバが提供する「BLUE Sphere」は、WAFやDDoS防御、DNS監視などをまとめて利用できるクラウド型サービスです。複数ドメインにも対応し、Webサイトのセキュリティ運用を集約できます。
攻撃遮断くん(株式会社サイバーセキュリティクラウド)
- あらゆる規模のWebシステムへ導入できる最適なWAFを提供。
- DDoS対策プランや定額制プランなど多数のサービスプランを提供。
- 自社開発だからできる手厚いサポート体制。
株式会社サイバーセキュリティクラウドが提供する「攻撃遮断くん」は、Webサイトへの攻撃を検知・遮断する国産クラウド型WAFです。複数のプランと自社開発によるサポート体制を備え、運用を支援します。
Cloudbric WMS for AWS WAF
- 世界的な専門機関で証明された高度な攻撃検知能力
- 24時間365日モニタリングとエキスパートによる充実したサポート
- 運用負荷の軽減とコストの削減
ペンタセキュリティ株式会社が提供する「Cloudbric WMS for AWS WAF」は、AWS WAFの運用管理を支援するサービスです。24時間365日の監視に加え、ルール作成や新規脆弱性、誤検知への対応も支援します。
Cloud Application Protection Services
- 包括的なWAAPソリューションをクラウド上で提供
- 独自の自動化ポリシー生成技術
- OWASPトップ10の脅威に対して完全な保護を実現
株式会社アズジェントが提供する「Cloud Application Protection Services」は、WAFやAPI保護などを統合したクラウド型WAAPです。ポリシー生成の自動化により、セキュリティ運用の効率化を支援します。
Ray-SOC WAF
- 独自AIエンジンで未知の攻撃も検知・ブロック
- マネージドサービス付きなので、管理の手間はほとんど不要
- 月額3.5万円から。日本の技術チームがサポートします。
株式会社レイ・イージス・ジャパンが提供する「Ray-SOC WAF」は、独自AIエンジンを搭載したクラウド型WAFです。常時監視や誤検知対応を含むマネージドサービスにより、運用負荷を軽減できます。
Radware Products
- 未知の脅威や巧妙化するWeb攻撃に対応できる高い防御性能
- AI活用による分析や運用の自動化で運用負荷を軽減
- 大規模攻撃にも対応するグローバル防御基盤
株式会社日立ソリューションズが提供する「Radware Products」は、WAFやDDoS対策、Bot管理、API保護に対応するクラウド型WAAPです。AIによる分析や運用の自動化で、管理負荷の軽減を支援します。
WebS@T改ざん検知サービス (株式会社ホープス)
- 改ざん判定にシグネチャ型とアノマリ型の両方を採用。
- エージェントレスで監視ソフト不要
- URL指定のみで自動ページ選定
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でWAFの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
WAF運用の失敗に関するFAQ
WAF運用でよくある失敗と対策についての質問と回答をまとめました。
- ■Q1:WAFの誤検知が多い場合、すぐに遮断モードを解除すべきですか?
- 遮断モードの解除より、誤検知の原因ルールを特定して例外設定を追加する方が適切です。全体の遮断を解除すると攻撃が通過するリスクが生じます。ベンダーのサポートに問い合わせて原因ルールの特定を依頼することをお勧めします。
- ■Q2:WAFの運用を1人で担うことは可能ですか?
- マネージドWAFサービスを利用することで、1人での担当でも運用できます。ルール管理・ログ監視・インシデント初動対応をベンダーに代行してもらい、担当者は確認・承認に集中する分担が有効です。
- ■Q3:WAFのシグネチャ更新はどれくらいの頻度で行うべきですか?
- 自動更新が理想です。手動更新の場合、定期的な更新(週次以上)と重大脆弱性公表時の緊急更新の2つのフローを定めておくことをお勧めします。
まとめ
WAF運用の失敗は、誤検知への対応不足・チューニングの放置・ログ監視の形骸化・シグネチャ更新の停滞が主な原因です。これらの失敗を防ぐには、検知モードからの段階的移行・運用フローの標準化・自動更新対応製品の選択・マネージドサービスの活用が有効です。製品選定の段階で運用の継続性を見据えた機能とサポート体制を確認することで、長期にわたって効果的なWAF運用を実現できます。

