業種ごとにBCP対策の要点が異なる理由
同じBCP対策でも、守るべき資産や許される停止時間は業界によって違います。まず全業種に共通する考え方を押さえたうえで、なぜ業種別に検討する必要があるのかを確認します。
事業継続で守るべき対象は業種で変わる
BCPとは、自然災害や大規模なシステム障害が発生しても、重要な業務を継続または早期に復旧するための計画です。製造業なら生産ライン、医療機関なら患者データ、金融機関なら取引システムというように、止まると損害が大きい中核業務は業種によって異なります。守る対象が違えば、必要なソリューションの種類も変わります。
このため、汎用的な安否確認だけでは不十分な場合があります。医療機関を例にすると、人員の安否を確認できても、電子カルテが復旧しなければ通常の診療体制を再開しにくくなります。自社にとって何が止まると致命的かを洗い出すことが、製品選定の出発点といえます。事業影響度分析(BIA)を行い、優先して守る業務を明確にしておくと検討が進みます。
許容できる停止時間と復旧目標を定める
BCP対策では、どれだけ早く復旧すべきかを示すRTO(目標復旧時間)と、どの時点のデータまで戻すかを示すRPO(目標復旧時点)という指標が用いられます。この2つの数値が業種ごとの製品要件を左右する指標です。金融機関のように停止が許されない環境では、RTOもRPOも極めて短く設定されます。
一方、停止しても一定時間内に復旧できれば事業への影響が小さい業務もあります。すべてを最上位の水準で守ろうとすると費用が膨らむため、業務ごとに優先順位を付けることが現実的です。自社の各業務についてRTOとRPOを定義し、その目標値を満たせる製品かどうかを比較する流れが基本となります。
製造業・建設業・物流業のBCP対策
現場や拠点が広く分散し、外部の協力会社と連携して事業が成り立つ業種では、自社内だけでなく関係先まで含めた被災状況の把握が課題です。ここでは製造・建設・物流の3業種を見ていきます。
製造業はサプライチェーンの被災把握が要点
製造業では、自社の工場が無事でも、部品を供給するサプライヤーが被災すると生産が止まります。そのため、取引先を含めた被災状況を地図上で迅速に把握できる仕組みが欠かせません。気象情報や地震情報と連動し、影響を受けそうな拠点を自動で抽出する機能があると初動が早まります。
あわせて、代替調達先のリストや在庫情報を平時から整理しておくと、供給が途絶えた際の切り替えがスムーズです。サプライチェーンを可視化するソリューションは、複数階層の取引先まで管理できるかが比較の分かれ目です。自社の調達構造に合わせて、把握すべき範囲を検討しましょう。
建設業は分散する現場の安否集約が課題
建設業では、職人や協力会社が全国の工事現場に分かれて作業しています。災害時にはこの分散した人員の安否を素早く集める必要があるため、スマートフォンから回答を集約できる安否確認システムが役立ちます。一斉送信した安否確認に対し、現場ごとの回答状況を一覧で確認できると対応が進みます。
協力会社の作業員まで対象に含められるかも重要な観点です。自社の社員だけを管理する製品では、現場全体の状況を把握しきれません。元請けとして現場の安全を確保する立場であれば、外部要員も登録できる仕組みを選ぶと実態に即した運用ができます。位置情報と組み合わせられる製品もあります。
物流業は配送ルートとドライバーの安全確保
物流・運送業では、災害で交通網が寸断されると配送が滞ります。通行止めや渋滞の情報を取り込み、迂回ルートを再構築できる仕組みがあると、荷物の遅延を抑えられます。配送計画を動的に組み替える機能は、平時の効率化にも生かせる点が利点です。
同時に、走行中のドライバーの安全確保も欠かせません。位置情報を把握し、危険な地域を避けるよう指示を出せる体制が求められます。安否確認と運行管理を連携させ、車両と人の双方を一元的に管理できるかが選定の観点です。配送網の広さや車両台数に応じて必要な機能を見極めましょう。
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医療・金融・公共分野のBCP対策
停止が人命や社会基盤に直結する分野では、データの保護とシステムの可用性が厳しく問われます。医療、金融、自治体それぞれの要件と、検討時に確認したい点を整理します。
医療機関は電子カルテのデータ保護が最優先
病院やクリニックでは、停電やシステム障害が起きても電子カルテのデータを守り、診療を続けられることが重要です。DR(ディザスタリカバリ)と呼ばれる災害復旧の仕組みを用い、データを別の場所へ複製しておくと、被災時でも情報を失わずに済みます。非常用電源と組み合わせた設計も検討の対象です。
医療情報は機微な内容を含むため、複製先の保管環境にも配慮が要ります。クラウドへ複製する場合は、医療分野のガイドラインに適合しているかを確認するとよいでしょう。復旧手順を平時から訓練し、停電時に誰が何を操作するかを決めておくと安心です。
金融機関は止まらないシステム設計が必須
銀行や信用金庫など金融機関では、システム停止が顧客の取引に直結するため、極めて高い可用性が求められます。データをリアルタイムで複製し、設備を二重化する冗長構成により、片方に障害が起きても処理を続けられる設計が基本です。複数拠点にシステムを分散させる手法も用いられます。
こうした環境では、切り替えにかかる時間をどこまで短くできるかが比較の要点です。自動で待機系へ切り替わる仕組みであれば、復旧の遅れを抑えられます。監督官庁の求める基準を満たすことも前提となるため、遵守すべき要件を整理したうえで対応できる構成を選びましょう。
自治体は災害対策本部の一元管理がポイント
自治体や官公庁では、災害発生時に対策本部を速やかに立ち上げ、職員の参集状況を把握する必要があります。本部の運営から職員の招集、被害情報の集約までを一つの画面で管理できる防災システムがあると、混乱の中でも判断を支えられます。住民への情報発信機能を備えた製品も選択肢に挙がります。
平時の訓練でも使えるかどうかは見落とせない観点です。日頃から操作に慣れておくことで、実際の災害時に迷わず運用できます。庁内の既存システムや国の情報伝達網と連携できるかも確認しておくとよいでしょう。自治体の規模や想定する災害に合わせて、必要な機能の範囲を定めることが大切です。
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ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でBCP(事業継続計画)対策ソリューションの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品の比較検討を進めましょう。
IT企業の業務継続を支えるリモート環境
オフィスが被災しても業務を止めないためには、場所に縛られず働ける環境が欠かせません。IT企業を中心に普及するVDIやリモートワークの仕組みを、BCPの視点から確認します。
VDIで場所を選ばない業務環境を整える
VDI(仮想デスクトップ基盤)は、業務に使うパソコンの画面と処理をデータセンター側に集約し、手元の端末から呼び出して使う仕組みです。オフィスが被災しても、社員は自宅やサテライトオフィスから同じ環境にアクセスして業務を続けられます。データが端末に残らないため、機器の紛失による情報流出の心配を抑えられる点も利点です。
導入時は、同時にアクセスする人数に耐えられる処理能力を確保することが大切です。災害時には多くの社員が一斉に接続するため、平時の想定だけで設計すると性能が不足します。回線の太さや認証の仕組みもあわせて見直し、安全かつ快適に使える環境を整えることが、業務継続の土台となります。
安全なリモートアクセスと情報管理
自宅から業務システムへつなぐ際は、通信経路の安全を確保する必要があります。社外からの接続を暗号化し、本人確認を多重に行う仕組みを組み合わせることで、なりすましや盗み見を防ぎます。アクセスできる範囲を役割ごとに分ける設計も、被害を最小限にとどめるうえで有効です。
あわせて、在宅勤務時の情報の取り扱いルールを定めておくことが望まれます。画面の覗き見や家庭内ネットワークの弱点など、オフィス外ならではのリスクがあるためです。導入だけで終わらせず、運用ルールと社員教育を組み合わせることで、平時にも災害時にも機能する体制を築けます。
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業種を問わず確認したい選定の比較観点
業種ごとの要件を踏まえたうえで、どの製品にも共通して確認すべき視点があります。導入の成否を分けやすい3つの観点を見ていきます。
必要な機能の範囲と既存システムとの連携
BCP対策の製品は、安否確認に特化したものから、復旧基盤まで広く担うものまで幅があります。まず自社に必要な機能の範囲を定め、過不足のない製品を選ぶことが大切です。機能が多すぎると使いこなせず、費用も増えるため、優先する業務に直結する機能から検討するとよいでしょう。
あわせて、既に使っている人事システムやコミュニケーション基盤と連携できるかを確認します。社員情報を二重に管理する手間が省け、最新の名簿で安否確認を運用できるためです。連携の方式や対応するサービスは製品により異なるため、自社の環境に合うかを事前に見極めることが重要です。
運用負担とサポート体制を見極める
BCP対策は導入して終わりではなく、平時の訓練や情報の更新を続けて初めて機能します。そのため、管理者の操作が分かりやすく、日常の運用負担が小さい製品を選ぶことが長続きの条件です。訓練機能が備わっていれば、定期的に手順を確認でき、いざというときの対応力が高まります。
提供元のサポート体制も確認したい点です。災害時に問い合わせが集中しても対応できる窓口があるか、導入時の設定を支援してくれるかは、安心して使ううえで差が出ます。費用だけでなく運用を支える仕組みまで含めて比較することで、自社に定着しやすい製品を選べます。
クラウドとオンプレミスの特性を比べる
BCP対策の基盤は、提供元の設備を借りるクラウド型と、自社内に機器を設置するオンプレミス型に分かれます。クラウド型は自社の拠点が被災しても外部の設備で稼働し続けられ、初期費用を抑えやすい特性があります。一方で、通信が途絶えると利用に影響が出る点には留意が必要です。
オンプレミス型は自社で構成を細かく管理でき、機微なデータを社外に置きたくない場合に向きます。ただし設備の維持や更新を自社で担うため、運用の負担は大きくなりがちです。両者を組み合わせる構成もあるため、守りたいデータの性質と予算を踏まえて選びましょう。
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BCP対策ソリューションのよくある質問
ここでは、業種別のBCP対策を検討する際に寄せられることの多い質問をまとめました。導入の判断に役立ててください。
- ■Q1. 中小企業でもBCP対策ソリューションは必要ですか
- 規模の大小を問わず、事業を止めないための備えは有効です。人員が限られる中小企業ほど、災害時に一人が複数の役割を担うため、安否確認や情報共有を自動化する仕組みが負担の軽減につながります。まずは優先度の高い機能から導入し、段階的に広げる進め方が現実的です。
- ■Q2. 業種別の製品とは別に汎用の製品も検討すべきですか
- 双方を比較することをおすすめします。業種特化の製品は固有の課題に強い一方、汎用の安否確認や情報共有基盤は幅広い業務に使えます。中核業務に直結する部分は特化型、全社共通の連絡手段は汎用型というように、役割を分けて組み合わせる考え方も有効です。
- ■Q3. 導入後に効果を確認する方法はありますか
- 定期的な訓練を実施し、想定どおりに運用できるかを点検する方法が一般的です。安否確認の回答率や、対策本部の立ち上げにかかった時間などを記録すると、改善点が見えてきます。訓練で見つかった課題を計画に反映し、更新を続けることがBCPの実効性を高めます。多くの製品に訓練を支援する機能が備わっているため、活用するとよいでしょう。
まとめ
BCP対策ソリューションは、業種によって守るべき対象や許される停止時間が異なるため、自社の中核業務を見極めたうえで選ぶことが大切です。製造業はサプライチェーン、医療はデータ保護、金融は止まらない設計というように要点を押さえると検討が進みます。機能の範囲、既存システムとの連携、運用負担とサポート体制を確認し、自社に定着しやすい製品を選びましょう。


