BCP(事業継続計画)の発動基準
BCPの発動とは、実際に災害に直面した際、BCP対策を実行に移すことです。自社の事業への影響を最小限に抑え、速やかな復旧を目指します。
適切なBCP発動において鍵となるのが発動基準です。いざというときに尻込みしないように、どのような状況に陥ったらBCPを発動するのか明確な基準が求められます。
基本的に、以下の2つの条件を満たしたらBCPを発動します。
- ■中核事業のボトルネックが影響を受けた
- ■目標復旧時間内に中核事業を復旧するためにはすぐにBCPを発動する必要がある
一般的な自然災害での発動条件は以下のとおりです。
- 台風
- 事業所在地の都道府県に超大型台風が直撃
- 火災
- 事業所で火災が発生
- 地震
- 事業所在地の都道府県で震度6強以上の地震が発生
この条件は一般的な基準なので、震度5で対応するなどの企業によって必要な要件に変更する必要があるでしょう。

BCPの発動フロー(初期対応)
続いて、BCP発動のフローを見ていきましょう。

1.緊急事態対策本部を設置する
最初に行うべきは緊急事態対策本部の設置です。BCP発動後24時間以内に設置し、以下のようなグループで対応を行いましょう。
- ■緊急対策本部
- ■事務局
- ■情報収集チーム
- ■広報チーム
設置場所は基本的に本社ビルなどを使いますが、その場所が使えなくなった場合を想定し、複数の場所を決めておきましょう。
2.被害状況の確認をする
二次災害を防ぐために、事業所からの撤退や負傷者への応急手当、火災であれば初期消火などを行います。また、就業時間外にBCPを発動した場合は、出社可能な従業員を招集します。従業員が自主的に参集できる基準を設けておくのが理想的です。
続いて、以下について被害状況を確認しましょう。
- 事業所内外
- 事業所が中核事業を復旧できる状況にあるか確認します。また、パソコンなどの機器の異常や、建物の危険性がないかを確かめ、その後の指示を出す場所を確保します。
- 周辺地域
- 社外と連絡が取れるか、ライフラインを使える状況かなどを確認します。災害を俯瞰的に把握することが目的です。
- 取引先の安否
- 自社の損失が少なくても、取引先が甚大な被害を受けていれば事業の復旧が困難になります。
3.代替手段による事業継続と復旧活動をする
被害状況を把握し次第、代替手段を用いて事業の継続と復旧を図ります。具体的には建物の修理依頼や経営資源の確保を行います。経営資源の調達方法は取引先や交通の状況などによって変わるため、臨機応変な選択が必要です。
ある程度の初期対応を行ったら、従業員の帰宅時間も考慮しなければなりません。今後どのような方針で対応するのか従業員に周知し、指示を出したうえで帰宅させましょう。
初期対応後に行うべき復旧対応
続いて、初期対応後に行う復旧対応を見ていきましょう。
従業員への後方支援対応をする
従業員の中には災害によって大きな被害を受けた人もいるでしょう。企業はその従業員の後方支援を行わなければなりません。食糧や仮住居の提供を行いましょう。本人や家族に死傷者が出た場合は、できる限りの配慮が必要です。
一方で、活動できる従業員には積極的に指示を出さなければなりません。常に情報共有し、従業員が円滑に活動できる体制を整えましょう。
顧客や取引先への対応をする
中核事業を復旧するには、顧客や取引先とのやり取りも欠かせません。電話やメールなどのあらゆる手段で連絡を図り、お互いの被害状況を確認して取引調整や取引復元を行いましょう。
取引調整とは、顧客に今後の事業の説明をし、納品物などに関して理解を得ることです。協力会社との連携や代替設備などにより、可能な限り顧客に満足してもらえる体制を整えましょう。
取引復元とは、無事に中核事業が復旧し次第、元の取引体制に戻してもらうことをいいます。
自社の財務対策をする
目先の運転資金に加え、事業復旧のための資金を獲得する必要があります。
資金獲得の手段の1つは損害保険の請求です。総務部は被害状況を元に、必要な修理資金などを算出しましょう。そして、書類を作成して損害保険の請求手続きを行います。また、自治体からの支援金や緊急貸付を受けられる可能性もあります。そのほか、証券等資産の売却などが必要な場合もあるでしょう。
フローをあらかじめ確認し、緊急時の迅速なBCP発動を!
BCPは中核事業に被害を受け、緊急な対応が求められる際に発動します。発動条件は企業によって異なりますが、予め条件を設定し広報しておくことで、有事の際に従業員もどう動けばいいのか明確になります。
発動の各フローは担当者を事前に決め、速やかに行動に移すことが大切です。以上を踏まえ、組織で一丸となって対応しましょう。
