企業が安否確認を行う目的
企業がBCP対策を講じて社員の安否確認を行う目的は、被災して建物が無事でも事業を動かす社員がいなければ業務は復旧できないからです。建物やデータなどの「モノ」は、事前にいくらでも対策を行うことができ、最悪なくなっても事業を継続することができますが、実際に業務を行う「ヒト」はそうもいきません。
被災した場合でも社員の安否確認が迅速に行えれば、事業を再開する目途が立ち、事業がストップした場合でも、連絡が取れた社員の人数によって復旧に向けて計画を立てることが可能です。もちろん被災した社員に対しても、最適な対応を行うことができるでしょう。
また、BCPは地震や洪水といった大規模な災害による対策と考えられています。しかし、台風や事故、停電などによって社員が出勤できない状態もゼロではありません。そのような場合でも迅速に社員の安否確認が取れることで、事業の見通しがつけられます。
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BCP対策における安否確認のポイント
つづいて、BCP対策における安否確認のポイントを見ていきましょう。
どこの部署が安否確認をするのか決める
安否確認を行うときには、まずどこの部署が安否確認を行うのか決めておくことが大切です。実際に安否確認を行う担当者を決めておかなければ、複数の人から連絡が来ることが想定されるでしょう。
この場合だと、「確認できた」という人もいれば「まだ確認できていない」という人も出て現場が混乱します。しかし、安否確認の担当者が被災した場合を考えると複数人体制で安否確認を行うことも大切です。
そのため、事前に誰が安否確認を行うのかを明確に決めて、社員に通知しなければなりません。基本的には安否確認を行う部署を決めて運用することで集計も楽になります。
複数の拠点を持つ企業であれば、複数人の担当者で連絡をすることは必須です。例えば安否確認システムを使う場合は、設定できる管理者の数や組織階層数に制限がないものを選ぶ必要があります。
誰に対して安否確認をするのか決める
安否確認をする場合は、事前に安否確認をする対象を決めておく必要があります。今ではさまざまな働き方があるため、正社員以外の従業員のことも考えなければなりません。
例えば、派遣社員や臨時社員は自社と雇用契約を結んでいないこともありますが、安否確認の対象になるでしょう。他にも仕事を依頼しているフリーランスの方や、在宅勤務で働いている人に対する安否確認も大切です。
また、従業員だけでなく従業員の家族に対しても安否確認を行うべきでしょう。家族に万が一のことがあれば出社できません。また出張中の従業員に対しても誰が連絡するか事前に決める必要があります。
複数の手段で安否確認する体制を整える
安否確認では複数の手段を使えるように整えることが大切です。地震などの自然災害が発生したときは、電話の回線がパンクして使えなくなる可能性もあります。メールの場合も、メールサーバがダウンしているかもしれません。
このように1つの手段でしか安否確認ができないと、非常時に連絡が取りにくいリスクが高くなるでしょう。電話・メール・SNSといった複数の手段で連絡できる体制を整えることが重要です。
安否確認を行う手段
複数の手段を用意することで迅速に安否確認を行えますが、実際にどのような手段が考えられるのでしょうか。
- ■メール
- 普段も利用しているメールで従業員の安否を確認することができます。ただし、災害時は一斉に利用されることからメールサーバに負担がかかり、連絡が取れないこともあるので注意しましょう。
- ■チャット・SNS
- 社内でも利用されることが増えてきたチャットやSNSで連絡を取る方法です。社内で普段利用しているものが好ましいですが、私用で利用しているLINEやFacebookであればほとんどの人がアカウントを持っているので、連絡がつながりやすいでしょう。チャットやSNSの場合は運用方法やルールを予め決めておきましょう。
- ■災害時用サービス
- 各通信会社から提供される災害時用の伝言ダイヤルや掲示板を用いて連絡を取り合う方法です。ただし、個人での利用に向きのため企業で利用するには向いていない手段と言えます。
- ■安否確認システム・サービス
- 安否確認を行えるシステムやサービスを利用する方法です。災害時の安否確認に特化したツールのため、利用ルールを決めなくとも簡単に連絡がとれ安否確認ができます。
安否確認システムを選ぶポイント
最後に安否確認システムを選ぶポイントを見ていきましょう。
自社の規模に合っているシステムか
安否確認システムは基本的に全社員に対して行われるため、自社の規模に合ったシステムかどうかが重要です。従業員数が多い企業であれば、大量のメールを一度に配信できるシステムでなければなりません。
また、社員の情報を入力する作業が発生するため、エクセルファイルと連携できるかも重要となるでしょう。連携が不可能な場合は、手入力で情報を登録しなければならず、時間と手間がかかってしまいます。
また、従業員の情報に変更が生じた場合に情報を編集しやすいかどうかといった操作性も重要です。かかるコストの確認も大事ですが、安くて使いにくいシステムだとデメリットが大きくなります。
必要な機能は搭載されているか
安否確認システムにも複数種類があるので、自社に必要な機能が搭載されているか確認することが大切です。システムを導入する前に自社にはどのような機能が必要か整理しておきましょう。基本的には以下のようなポイントを確認しておきましょう。
- ■時間や場所に制限されずに利用できる
- ■ITの知識や技術がない人でも簡単に操作できる
- ■インターネットがなくても利用できる
- ■画像や動画を共有することができる
価格が適正かどうか
安否確認システムはあくまでも非常時の対策になるため、導入・運用コストが高価に感じやすいです。実際に導入したは良いものの全く利用しないこともあるでしょう。災害は起きないに越したことはありませんが、万が一の対策は必要です。
特に従業員の規模が大きい企業に適したシステムであれば、価格も高くなるため導入する際は慎重になる必要があります。そのためにも、必要な機能を明確にし、必要な機能だけを搭載したシステムを選ばなければなりません。
重要なことは価格と機能のバランスです。安さだけを重視して選んでしまうと、いざというときに有効活用できないこともあります。
万が一のときのために安否確認の体制を整えよう
BCP対策では非常時でも事業を継続できるような体制を整える必要があるため、安否確認を行うことが求められます。
災害時に建物が無事でも社員と連絡が取れなければ事業の復旧は難しいでしょう。どこの部署が誰に対してどのような方法で安否確認を行うのかを明確にする必要があります。システムを導入するときは機能やコストのバランスも大事です。自社に最適な安否確認システムを導入して体制を整えましょう。
また、BCP対策を行うのであれば安否確認のあとにデータの復旧が必要になります。BCP対策を行いたい方は、以下の記事をご覧ください。