企業における安否確認とは
地震などの災害が発生すると、企業は従業員に対する安否確認や事業継続の迅速な判断が求められるでしょう。営業のように外出している者から事務職などの内勤者まで、全従業員の居場所、怪我の有無、業務の継続は可能かなどを確認します。企業によっては、従業員の家族も含めて身の安全を確認するケースもあります。
近年、日本では地震や台風などの災害が相次いでおり、企業における安否確認の在り方について見直される機会が増えつつあります。
企業が安否確認を行う目的は?
企業が安否確認を行う第一の目的は従業員の身の安全の確認ですが、それだけではなく、企業として事業を継続できるかの判断材料として、安否確認を実施する必要があります。
実際に災害が発生した場合、医療機関やインフラ関係など、社会貢献的な意味合いで事業継続を求められることや、企業の存続のために経済活動を続けざるをえないケースもあるかもしれません。
企業は「人」で成り立っている組織です。企業として事業継続を実施するか否かは、構成員である人次第といえるため、災害発生の混乱の中においても、企業は速やかに従業員の安否確認を行わなければならないのです。
安否確認を行う具体的な方法
では、災害時に企業はどのような方法で、従業員の安否確認を行うべきでしょうか。確認手段はいくつかあり、代表的なものは以下の5つです。
- ■安否確認システム
- 一定の震度の地震が発生した場合に、自動で多くの従業員に安否確認のメールを送信したり、結果をリアルタイムで集計したりできる。
- ■緊急連絡網(電話連絡)
- 災害時の緊急連絡先を決め、緊急連絡網を作成する。しかし、災害時は回線混雑でつながりづらくなることや、一人ずつしか連絡が取れないことから、災害時は推奨されていない。
- ■安否確認の体制構築
- 安否確認の対策チームをあらかじめ構築する。安否確認が取れない従業員には、捜査チームを派遣するなどして対応する。
- ■災害用伝言板ダイヤル「171」
- NTT東日本が運営しているサービス。「171」にダイヤルし、安否確認したい相手の番号を入力して、伝言を残す。
- ■災害用伝言板「web171」
- web版の災害用伝言ダイヤルで、安否確認したい相手のメールアドレスを事前登録し、伝言板に入力する。
そのほか、各通信キャリアが提供する災害伝言版やアプリを活用するのもよいでしょう。またLINE・Facebook・TwitterなどのSNSは、音声通話よりもつながりやすく、自治体や報道機関の情報を入手しやすいようです。
参考:災害時の安否確認|東京都防災ホームページ
参考:中小企業BCP策定運用指針|中小企業庁
安否確認システムとは
安否確認システムとは、災害時に企業が従業員の安否を確認するために構築されたシステムです。安否状況の確認・集計・把握を自動化できるため、迅速性と正確性にすぐれています。
1995年の阪神淡路大震災をきっかけに、安否確認システムを導入する企業が増えたといわれています。また、2011年の東日本大震災の際に、あらゆるインフラやライフラインが崩壊したため、従業員の安否が数日間も確認できない事象が発生しました。その結果、安否確認システムの需要がさらに高まりました。
安否確認システムの機能
安否確認システムには、主に以下のような機能が搭載されています。一定規模以上の災害発生時に、システムから従業員向けに安否を問うメールが一斉に自動配信され、従業員が怪我の有無や出勤の可否を回答。集まった回答は自動集計され、グラフ等で可視化された結果が表示されます。
一斉メール送信機能
従業員それぞれに送信するのではなく、全員に対して一斉にメールを送信できる機能です。事前にメール文のテンプレートを登録しておけるので、緊急時に早急な連絡をとることが可能です。
自動メール送信機能
災害時は、防災管理責任者の安否も不明になりかねません。そのような場合に、地震発生にあわせてシステム登録者全員に、自動で安否確認のメールを送る機能です。災害情報をもとに送信するため、災害の種類や地域によって送信する相手を選定しておくこともできます。
リアルタイムでの安否確認データの集計
安否確認メールの回答状況をリアルタイムで自動集計し、状況を把握できます。事業継続の可否など、素早い判断にも生かせるでしょう。
安否確認システム導入のメリット
災害時に役立つ安否確認システムですが、具体的にどのような点がすぐれているのでしょうか。特にお伝えしたいのは下記の2点です。
- ・自動送信メールでの安否確認が可能になる
- ・連絡が取れるまで自動でリトライコールされる
安否確認システムは、気象庁から発信される災害情報をもとにして、メールなどによる自動的な一斉確認が可能です。災害発生時には管理者が対応できない場合も想定されるため、安否確認の連絡を自動化できるのは大きなメリットです。
また、災害時は一時的にインターネット通信が不安定な場合も考えられます。安否確認用のメールを送っても、従業員にメールが到着するまで1日以上掛かる可能性もあります。安否確認がとれない場合には、連絡が取れるまで一定間隔ごとに自動リライトコールが可能です。安否確認ができるまで複数回送信されるので、インターネット環境が復旧した後に迅速に安否確認が行えるでしょう。
以下の記事では、安否確認システムのメリットについて詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
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安否確認システム選定のポイント
安否確認システムは、製品によって機能が多岐に渡ります。自社で導入を検討する際は、特に以下の2点を踏まえた製品選定を行いましょう。
緊急時でも使い方に迷わないシンプルな操作が可能か
災害発生時は緊急事態であり、身の安全を確保しながら安否確認作業をしなければならないことも考えられます。そのような場面で使い方が不明であっても、サポートに問い合わせる時間はありません。直感的に操作できるものを選びましょう。
また、定期的に避難訓練などを実施して、実際に安否確認メールを配信し回答する流れを確認しておくとよいでしょう。管理者と従業員それぞれの立場で、システムの使い方を把握できます。
大災害でもシステムダウンせずに利用できるか
安否確認システムの提供形態には、自社内のサーバにソフトウェアをインストールするものと、クラウドサービスを利用するものの2種類があります。どちらも、災害時に安定して稼働できなければ意味がありません。
そのためクラウド型の場合は、導入の前に必ずベンダーに過去の災害時の稼働実績を問い合わせるとよいでしょう。自社で構築するオンプレミス型の場合は、データセンターを利用するなどして、安定して稼働できる環境を十分に整えておく必要があります。
安否確認システムの製品情報を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。おすすめのシステムを紹介しています。
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企業にとっての安否確認とはなにか正しく理解しよう
企業にとっての安否確認は、従業員の身の安全を確認することから始まり、自社の事業継続の可否を判断することを目的としています。素早く正確な安否確認の方法として、安否確認システムを導入する企業が増えており、今後もますます導入ニーズは高まっていくでしょう。
一度自社の安否確認方法を見直し、システム導入を検討してはみてはいかがでしょうか。