企業が緊急連絡網を作成する目的
企業において緊急連絡網とは、災害やトラブルなどが発生したときの連絡方法や、誰がどの順番で連絡するのかといったルールをあらかじめ定めたものです。危機管理マニュアルに必要な項目でもあり、緊急時の情報共有の迅速化や安否確認のほか、BCP(事業継続計画)対策の一つとして整備する企業が増えています。
2011年の東日本大震災以降、企業のBCP対策の必要性が訴えられてきました。近年では、台風などの危険性がある状況で、強制的に出社を求める企業は批判を受ける傾向にあります。そのため、企業は危険性のある天災が発生した場合に、従業員に対して出社か待機かを迅速に伝える必要があります。
- ■緊急連絡網の目的
- ・緊急時の迅速かつ正確な情報伝達や対応指示
- ・自然災害などにおける従業員の安否確認や情報収集
- ・感染症が流行した際の社内蔓延防止の呼び掛けや業務への影響確認
- ・システム障害など自社の緊急事態に関する社内周知
- ・BCP対策の一環
以下の記事では、企業から従業員へ行う安否確認の重要性について解説しています。より適切な緊急連絡網を作成するための参考にしてください。
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緊急連絡網の手段
会社用緊急連絡網を作成する前に、具体的な緊急連絡手段を決めましょう。従来は電話連絡が一般的でしたが、今はメールやチャット、専用アプリなどさまざまな緊急連絡方法を選べるでしょう。それぞれにメリットとデメリットがあるため、以下を参考にして自社にあう連絡手段を見つけてください。
携帯電話
会社用の携帯電話のほか、緊急連絡用として個人の携帯電話も活用されている。
- ■メリット
- 新たにシステム導入せずとも運用できる。メールやSNSに比べて通知に気付いてもらいやすい。
- ■デメリット
- 全従業員に連絡が行き渡るのに時間がかかり、対応が遅くなる。地震などの災害時には、通信制限や電波の届かないことが原因で電話がつながらず、情報の到達率が低くなる可能性も。
メール
社用のパソコンまたは個人のメールアドレスも、緊急連絡先として有効。
- ■メリット
- 一斉送信が可能なうえ、文字数などの制限もないため確認事項や連絡内容が多くても対応できる。
- ■デメリット
- LINEやSNSと違って既読機能がないため、メールへの返信やメール内のフォームから安否状況を回答するなど受信側でのアクションが必要。前もって送信テストをしておかないと、緊急時に迷惑メールと判断されたり、受信拒否設定になっていたりして届かないケースがある。
SMS(ショートメッセージ)
携帯電話番号を利用するSMSも、緊急連絡手段として活用できる。
- ■メリット
- 電話番号宛のため、スマホだけでなくガラケーにも安否確認メッセージを送信できる。
- ■デメリット
- 送信できるメッセージの文字数に制限がある。一人ひとりに個別送信しなければならない。メールと同様に既読・未読の確認ができない。
チャットツール
LINEなどのSNSや社内で導入しているビジネスチャットツールも、企業向けの緊急連絡ツールとして利用されている。「LINE安否確認」など安否確認機能を有しているツールもある。
- ■メリット
- すでに利用しているツールなら導入コストがかからない。電話のように相手の着信が必要ないため、好きなタイミングで一方的に緊急連絡や安否状況を伝えられる。既読・未読の確認もでき、全従業員への一斉連絡も可能。
- ■デメリット
- 社内に適した既存システムがない場合、導入コストや各端末へのアプリインストールなどの工数がかかる。
安否確認アプリ
ビジネスシーンで活用が広がっているモバイルアプリは、緊急連絡網でも導入が進んでいる。機能や料金設定などが異なる数多くのサービスが提供されている。
- ■メリット
- 電波がつながりやすく、高い到達率や回答率が期待できる。安否確認の自動配信や、個別の安否情報の自動集計、GPSによる位置情報取得などが可能。
- ■デメリット
- 導入にはコストがかかる。アプリの操作方法など従業員へのレクチャーも必要。
上記手段のなかでも、自動で安否確認メールを一斉送信したり、安否連絡の結果を自動修正したりできる安否確認アプリ(安否確認システム)は、正確性や迅速性が欠かせない緊急連絡において非常に有効です。安否確認アプリとはどのようなものか詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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企業の緊急連絡網の作り方
ここからは、企業向けの緊急連絡網の作成方法について順を追って詳しく解説します。
1.緊急連絡先を登録する
まず緊急時の連絡先を登録します。事前に決めた連絡手段をはじめ、万が一に備えてできるだけ多くの連絡先を登録しておくと安心です。連絡先登録で注意しておきたいポイントは以下のとおりです。
- ■電話番号・SMS
- 通信制限や電波の届かない可能性があるため、社用携帯電話番号のほか個人用携帯電話番号や固定電話番号、さらに従業員家族の携帯電話番号も登録しておくと安心でしょう。
- ■メールアドレス
- プライベート用のメールアドレスを登録する場合、メール受信リストが設定されて受信されなかったり迷惑メールに振り分けられたりする可能性があるため、事前にテスト配信して確実に届くか確認しましょう。
- ■チャットツール
- 業務上ですでに活用しているツールを緊急連絡用に使用する場合、緊急連絡は全従業員を対象とするため登録漏れがないように注意しましょう。
- ■安否確認アプリ
- 連絡先の登録方法はアプリによって異なり、従業員個人が行う場合とシステム担当者が一括して登録する場合があります。従業員数の多い企業は、一括登録に対応したアプリだと便利です。
2.緊急連絡時のルールを決める
連絡先の登録後は、緊急連絡時の役割や連絡順など細かなルールを決めましょう。
運用責任者や確認担当者などの役割を明確にする
危機管理担当者(緊急連絡網を発令する役割)、運用責任者(連絡状況をまとめる役割)、中間管理者(連絡の受け渡しをする役割)など、役割を細分化して担当者を明確にします。また、単方向の連絡だけでなく、従業員から安否状況や出社可否の返答が必要な場合には、回答結果の集計・確認担当者も必要です。部署やチームごとに任命し、回答結果をもとに迅速な判断ができるようにしましょう。
なお、緊急連絡網は一度作ったら終わりではありません。従業員の入退社や部署異動などによって、その都度連絡先やフローの更新が必要です。そのため、緊急連絡網の作成担当者も指定しておきます。
連絡する順番やフローを決める
緊急連絡網を発令後、どのような順番で連絡・報告を行うのか、具体的なフローを決めましょう。一般的には危機管理担当者から運用責任者、中間管理者、リーダー、一般社員へと順番に連絡します。
また緊急連絡は、いつどのようなタイミングで発令するかわかりません。出社前・勤務中・通勤中などの状況に応じて、従業員のとるべき行動は異なります。シチュエーションごとに、具体的に決めておく必要があります。
3.緊急連絡網の発動条件を決める
続いて、緊急連絡網をどのようなタイミングで使用するのか、発動条件を明確にしておきましょう。発動条件は、「自発的な発動」「外部要因による発動」の2種類に分けられます。
自発的な発動
社長などの危機管理担当者が、緊急事態だと判断して指示を出す場合です。例えば、「コピー機が発火して大きな火災につながる可能性がある」「会社のあるビル内に不審者が侵入して危険」などの緊急時が考えられます。従業員からの報告を受けて、危機管理担当者が緊急連絡を発動します。
外部要因による発動
気象庁や政府の発表などに従って、緊急連絡を行う場合です。気象庁の発表する震度や警報、特別警報にもとづいて判断します。例えば、「震度6弱以上の地震が発生したら緊急連絡網を発動する」「朝5時の時点で大雨特別警報が解除されていなければ、緊急連絡を回して出勤させない」など、発動条件を明確に決めておきます。
4.想定外の事態にも対応できるルール作りを行う
緊急連絡は、予測できない場面で必要になることもあります。危機管理担当者が不在だったり、次の連絡先につながらなかったりと、緊急連絡網がスムーズに進まないことが予想されます。そのため、前もって責任者の代理を決めておくとよいでしょう。
また、「中間管理者である部長に連絡がつかなかったら、責任者は課長に連絡をする」「部長にはその後、課長から連絡をする」など、さまざまなパターンを想定した細かなルールを策定します。その際、「5分以内に連絡がとれない場合」などと具体的な時間を明記することで、関係者が迷わずに行動できるでしょう。
以下の記事では緊急時における出勤ルールの策定方法について解説しているので、あわせて確認ください。
緊急連絡網作成時の注意点
緊急連絡網作成時に注意すべきことは、「連絡網の保管方法」と「個人情報の取扱い」です。緊急時にスムーズに対応ができるように、緊急連絡網はすぐ確認できる場所に掲示することが大事です。ただし、個人情報に関わるため、適切な場所での保管が求められます。例えば、セキュリティ体制の整った書庫やオンラインストレージなどがあげられます。緊急連絡先のリストの管理方法についても検討してください。
また、緊急連絡網を導入する際に、ビジネス用の連絡先ではなくプライベートの連絡先やアカウントを登録するケースもあるでしょう。このような場合は、事前に従業員の同意を得る必要があります。緊急連絡網を作成する際は、個人情報の取扱いについて慎重に協議し、従業員の理解を得ましょう。
管理にかかる負担やリスクを考慮すると、専用の安否確認システムを導入することが望ましいといえます。それにより、一定のセキュリティ性が担保されるだけでなく、緊急時の連絡を効率化できます。
【企業向け】安否確認システムのおすすめ製品を比較
ここからは、ITトレンド編集部がおすすめする安否確認サービスのうち、2023年上半期において資料請求の問い合わせが多かった上位製品を3つ紹介します。配信エリアの絞り込みや自動連絡が可能か、緊急時以外にもアンケートツールとして活用できるかなど、自社のニーズにあった機能をもつ製品を探してみてください。
《Biz安否確認/一斉通報》のPOINT
- 【高信頼なシステム】有事の際に使う為、信頼のシステム設計
- 【社員の健康管理】毎朝の健康状態を問い合わせ、自動集計します
- 【複数の通信手段】 メール・電話・スマホアプリでユーザに通知
ITトレンド上半期ランキング2023「安否確認システム」2位
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社が提供する「Biz安否確認/一斉通報」は、通信キャリアによる信頼性の高いシステム構築が特徴です。OCNのバックボーンに局内直収されているため、アクセス回線が不要で故障のリスクを軽減できます。組織階層別の管理者設定により、柔軟な運用が可能です。
参考価格 |
ライトプラン:初期費用無料、月額10,000円/100ID お手軽導入プラン:初期費用100,000円、額10,400円~/10ID 通常プラン:初期費用200,000円、月額10,400円~/10ID
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無料トライアル |
◯(14日間) |
通信手段 |
メール、電話、アプリ |
主な機能 |
アンケート機能、健康管理機能、業務連絡機能、一斉通報機能、設備確認機能、掲示板機能など |
業種 | 情報処理、SI、ソフトウェア |
従業員規模 | 50名以上 100名未満 |
Biz安否確認/一斉通報のいい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5 |
災害時の安否確認ツールとして導入していますが、重要周知などにも利活用でき、全社員の確認状況もリアルタイムに把握できるため重宝しています。 |
業種 | 放送・広告・出版・マスコミ |
従業員規模 | 100名以上 250名未満 |
Biz安否確認/一斉通報の改善してほしい点 |
★ ★ ★ ★ ☆ 4 |
UIが一昔前の感じなのが少し気になりましたが、肝心の機能の方は使っていて何不自由しませんでした。これからもお世話になろうと思っています。 |
《エマージェンシーコール》のPOINT
- 24時間365日、安否確認はシステム任せ。連絡つくまで繰返し連絡
- 大手企業や官公庁を中心に幅広い業種で4,900社以上の導入実績!
- 300名まで月額10,000円で利用可能な「ライトプラン」も登場!
ITトレンド上半期ランキング2023「安否確認システム」3位
「エマージェンシーコール」は、インフォコム株式会社が提供する緊急連絡/安否確認システムです。各従業員の連絡先を10件まで登録でき、連絡がつくまで自動で繰り返し発信します。音声通話の場合はガイダンスに従ってボタンを操作し、メールの場合はURLをクリックするだけで安否確認が可能です。
参考価格 |
ライトプラン:初期費用無料、月額10,000円/300ID レギュラープラン:初期費用200,000円、月額40,000円~ |
無料トライアル |
◯(30日間) |
通信手段 |
メール、電話、アプリ、LINE(オプション) |
主な機能 |
アンケート機能、健康管理機能、業務連絡機能、SNS通知機能、掲示板機能など |
業種 | 食品、医薬、化粧品 |
従業員規模 | 250名以上 500名未満 |
エマージェンシーコールのいい点 |
★ ★ ★ ☆ ☆ 3 |
自身の仕事で行く可能性のあるエリアを登録し、対象エリアで災害などが起こると連絡が来る。連絡優先度を決めることが出来て、例えば私用携帯メール→社用携帯に電話としておくと、メール安否連絡に返信なければ、次は社用携帯に電話…と安否連絡が取れるまで手段を変えて連絡をくれる。 |
業種 | 人材サービス |
従業員規模 | 1,000名以上 5,000名未満 |
エマージェンシーコールの改善してほしい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5 |
連携情報は多いとはいえ、メールアドレスや電話番号だけでなく、SlackやLINE、Chatworkとの連携できるようにしてほしい。業務中の場合、スマホを必ず見ているわけでは無いため。 |
確実な緊急連絡に備えて安否確認システムを導入しよう
災害時や緊急事態では、迅速かつ正確な情報伝達が不可欠です。しかし、緊急時で冷静さを失ったなかで、適切な判断を下すことは容易ではありません。多少のコストはかかりますが、安否確認システムを導入することで従業員の安全確認を素早くでき、その後の判断までのスピードを高められます。
無料トライアルが可能な製品も多いため、前もって資料請求を行い、試してみたい製品を絞っておくことをおすすめします。