そもそもなぜ災害時に電話は繋がりづらくなるのか?
近年、日本国内では地震や台風などの災害が相次いでいます。普段勤務しているエリアや出張先でそういった災害に遭遇すると、企業も個人も安否確認のために誰もが電話を利用しようとして、電話回線が混雑しまったく繋がらないという事態が起きます。
これは、電話をかける仕組みに「回線交換網」が使用されていることが原因なのです。
回線交換網は同時に利用できる数が限られている
回線交換網は通信回線の歴史のなかでも古いものであり、日本では一般家庭に黒電話(固定電話)が普及してきた頃から使用されています。1つの電話機からほかの電話機に1対1で接続される通信のため、共同利用や相乗りはできず、その回線を占有することで安定した通信を実現しているのです。
しかし、この仕組みにはデメリットもあります。回線数は有限であるため、同時に接続する回線数が増加すると上限数に到達し、ほかの人が利用できなくなってしまうのです。日本では現在でも、電話発信時にアナログの回線交換網を利用しています。そのため、災害時に多くの人が同時に電話発信をすることで回線が埋まり、電話がかからないという事態が発生するのです。
通話アプリの電話機能も受信側の状況によっては繋がらない
一方で、最近は通話アプリの電話機能を利用する人が増えています。個人用携帯だけでなく、社用のスマートフォンにも通話アプリをインストールしている人も多いでしょう。この通話アプリは、先ほどの回線交換網とは異なる「パケット交換網」という仕組みを使っています。
パケット交換網は1980年代頃から普及したデジタル回線網で、大量のデータを「パケット」と呼ばれる小包に分けて回線に流す通信方法です。メールやSNSにも利用されており、回線交換網のように回線を占有しないため、災害時に利用者が増えても問題なく通信できます。
ただし、送信側がパケット交換方式を利用していても、受信側の設定によっては回線交換式の接続になることもあり、その場合は接続できない(電話が繋がらない)状態になることが起こり得るのです。
電話での安否確認は難しい!
このように、普通の電話や通話アプリを利用しての安否確認は、災害発生時には確実性が低い手段といえるでしょう。では企業はどのような方法で、災害発生時の安否確認を行うべきなのでしょうか。
方法は2つあり、1つは通信キャリアが災害時に広く提供している安否確認サービス、もう1つは近年導入する企業が増えていている「安否確認システム」です。まずは、通信キャリアが提供する「災害用伝言ダイヤル(171)」「災害用伝言板(web171)」「災害用伝言板サービス」の3つの安否確認サービスについて解説します。
「災害用伝言ダイヤル(171)」とは
災害用伝言ダイヤル(171)は、被災した人が無事を伝えるメッセージを自宅の電話番号宛てに登録しておき、同じ電話番号に問い合わせた家族などに安否情報を伝えられるサービスです。利用できる電話は、携帯電話・PHS・固定電話・公衆電話と多岐に渡ります。残すことのできる伝言数は20個までで、1個あたり30秒間メッセージを登録できます。
災害用伝言ダイヤル(171)の利用方法
では、実際の使い方を確認しましょう。伝言方法と再生方法について解説します。
- ■災害用伝言ダイヤル(171)の録音方法
- 1 「171」をダイヤルします。
- 2 「1」をダイヤルします。
- ※暗証番号をつけて録音することも可能です。
- 3 連絡をとりたい方の「電話番号」をダイヤルします。
- 4 伝言を録音します。
- ■災害用伝言ダイヤル(171)の再生方法
- 1 「171」をダイヤルします。
- 2 「2」をダイヤルします。
- 3 連絡をとりたい方の「電話番号」をダイヤルします。
- 4 伝言が再生されます。
Webサービス「災害用伝言板(web171)」とは
災害用伝言板(web171)は、携帯電話や固定電話だけでなく、パソコンやタブレットからも伝言メッセージを登録・確認できます。1回の伝言で100文字まで登録可能です。なお、災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171)は連携しているため、それぞれに登録した伝言内容を相互に確認できます。
災害用伝言板(web171)の利用方法
実際の使い方は以下となります。登録方法と確認方法をそれぞれ確認しましょう。
- ■災害用伝言板(web171)の登録方法
- 1 「https://www.web171.jp/」へアクセスします。
- 2 連絡をとりたい方の「電話番号」を入力して、「登録」をクリックします。
- 3 「名前」「安否」「伝言」を入力して、「登録」をクリックします。
- ■災害用伝言板(web171)の確認方法
- 1 「https://www.web171.jp/」へアクセスします。
- 2 伝言を確認したい方の「電話番号」を入力して、「確認」をクリックします。
- 3 伝言が表示されます。
携帯電話キャリアの「災害用伝言板サービス」とは
「災害用伝言板サービス」は、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクなどの携帯電話キャリアが、契約者に向けて提供する安否確認のための伝言サービスです。被災地域に在住または滞在中の方が、携帯電話やPHSの文字入力によって伝言を登録できます。登録済みの伝言は、携帯電話・PHS・固定電話・パソコンなどを利用して、世界中から確認できます。
災害用伝言板サービスの利用方法
携帯電話キャリアごとに詳細は異なりますが、大まかな登録・確認方法は以下のとおりです。
- ■災害用伝言板の登録方法
- 1 各携帯電話キャリアの「災害用伝言板」にアクセスします。
- ※災害時は各社の公式サイトのトップ画面に、災害用伝言板の案内が表示されます。
- 2 「登録」をクリックします。
- 3 現在の状態について、「無事です」「自宅にいます」などの選択肢から選びます。
- ※任意で100文字程度のコメントも入力できます。
- 4 「登録」をクリックします。
- ■災害用伝言板の確認方法
- 1 各携帯電話キャリアの「災害用伝言板」にアクセスします。
- 2 「確認」をクリックします。
- 3 伝言を確認したい方の「電話番号」を入力して、「検索」をクリックします。
- 4 表示された伝言一覧から、「詳細を確認したい伝言」をクリックします。
企業向けに開発された「安否確認システム」とは
上記で紹介した3つの安否確認サービスは、災害発生時に誰でも無料で利用できます。しかしこれらは、家族間や友人間などの少人数で利用することを想定した個人向けのサービスです。企業が利用するには、確認すべき人数が多く現実的ではありません。そこでおすすめなのが安否確認システムです。災害発生時に、企業が社員の安否を素早く正確に把握できるように設計されています。具体的には以下のような機能があります。
- 安否確認メール配信機能
- 一定規模以上の災害発生時に安否を問うメールやSNSを自動配信する機能。特定のエリア勤務の社員のみを対象に配信することもできる。
- 回答状況確認機能(グラフ)
- 社員からの回答状況を自動で集計し、グラフなどで可視化する機能。アクセスしてすぐに回答状況がわかるダッシュボード機能もある。
- 掲示板機能
- 災害発生時に自由に書き込みできる機能。状況にあわせた柔軟な使い方が想定される。
いわゆる緊急連絡網のような使い方が想定され、全社員に対して一斉に安否確認連絡を送信し、社員からの回答をシステム上で集計するという流れが一般的です。連絡手段のメールやSNSは前述のパケット交換網を利用しているため、災害時でも受信可能です。災害発生時はシステム管理者が不在であっても、自動で安否確認連絡を配信できます。
また、社員数が何人であっても「全体の何%が回答しているか」「自宅は倒壊していないか」「出社は可能か」などの情報を素早くグラフで可視化してくれます。そのため、事業継続(BCP)が可能かなどの重要な企業判断の材料をすぐに用意できるのです。
電話の音声を使った安否確認システムを紹介
安否確認システムの多くは連絡手段にメールを利用していますが、電話の音声を使ったシステムも登場しています。ここでは、電話を活用したおすすめの安否確認システムを紹介します。
《Biz安否確認/一斉通報》のPOINT
- 【高信頼なシステム】有事の際に使う為、信頼のシステム設計
- 【社員の健康管理】毎朝の健康状態を問い合わせ、自動集計します
- 【複数の通信手段】 メール・電話・スマホアプリでユーザに通知
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社が提供する「Biz安否確認/一斉通報」は、電話の音声による安否確認連絡と登録が可能です。メール・スマートフォンアプリにも対応しており、組織階層別の柔軟な管理体制で、チームごとに安否確認やその後の指示出しを的確に行えます。アンケート機能を搭載しており、社員の健康管理や業務連絡ツールとしても利用できます。
参考価格 |
初期費用0円~200,000円 / 月額10,400円~(10 ID) |
無料トライアル |
○(14日間) |
提供形態 |
クラウド / SaaS |
対象企業規模 |
すべての規模に対応 |
通信手段 |
メール / 電話 / アプリ |
主な機能 |
アンケート機能、健康管理機能、業務連絡機能、一斉配信機能、設備確認機能、掲示板機能など |
いい点
情報処理、SI、ソフトウェア
50名以上 100名未満
改善してほしい点
放送・広告・出版・マスコミ
100名以上 250名未満
《エマージェンシーコール》のPOINT
- 24時間365日、安否確認はシステム任せ。連絡つくまで繰返し連絡
- 大手企業や官公庁を中心に幅広い業種で4,900社以上の導入実績!
- 300名まで月額10,000円で利用可能な「ライトプラン」も登場!
インフォコム株式会社が提供する「エマージェンシーコール」は、電話の音声やメール、スマートフォンアプリなど複数の通信手段に対応した安否確認システムです。音声通話はガイダンスに従って操作するだけなので、災害などの緊急時にも迷わずに利用できます。有料オプションでLINEの連携や、気象庁の地震情報システムとの連動も可能です。大手企業や官公庁を中心に、約4,600社の導入実績をもちます。
参考価格 |
月額費用40,000円~ / 入会金200,000円 |
無料トライアル |
○ |
提供形態 |
パッケージソフト / ASP / クラウド / SaaS |
対象企業規模 |
すべての規模に対応 |
通信手段 |
アプリ / 携帯電話 / 固定電話 / メール / FAX(LINEは有料オプション) |
主な機能 |
アンケート機能、健康管理機能、業務連絡機能、SNS通知機能、掲示板機能、家族向け伝言サービスなど |
いい点
人材サービス
1,000名以上 5,000名未満
改善してほしい点
その他製造
250名以上 500名未満
以下の記事では、ITトレンド編集部おすすめの製品を比較して紹介しています。安否確認システムについてより詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
企業が電話だけで安否確認するのは現実的ではない
ここまで解説してきたように、電話や通話アプリを利用した安否確認を災害発生時に実施するのは難しいといえるでしょう。またキャリアが個人向けに提供する「災害伝言板」などの安否確認サービスも、確認工数が膨大になったり、機能不足であったりと、実際に利用するのは現実的ではありません。
やはり、企業が素早く正確に社員の安否確認ができるように設計された「安否確認システム」の導入がおすすめです。日本に拠点を持つ企業である以上、地震や台風といった災害から逃れることはできません。この機会に、安否確認システム導入を検討してみてはいかがでしょうか。