BCP(事業継続計画)対策とは
BCP(事業継続計画)は、緊急事態発生時に従業員を守りつつ、企業の事業継続・早期復旧をするための計画書です。緊急事態を想定した対策を策定し、BCPを作成することを総じて「BCP対策」と呼びます。
BCPは地震をはじめとする自然災害だけでなく、感染症やサイバー攻撃なども想定して作成するのが特徴です。一般的な防災マニュアルとは異なり、人命を守ることのほかに、事業を継続するための計画を詳細に記載します。被害を最小限にして、事業の継続性を高めるためにはBCPの策定が必要です。
BCP策定の手順
BCPは、以下の4ステップに沿って策定するとよいでしょう。
- ●自社の存続に寄与する中核事業を特定する
- ●人材や原料、施設などの必要な資源を洗い出す
- ●リスクや被害を想定して復旧手順や代替手段を決定する
- ●復旧時間の目標を設定する
BCPの発動基準を明確にすれば、従業員が迅速に行動できます。例えば「震度6以上の地震が起こったら発動する」などがあげられます。また、責任者は誰か、誰が何を担当するか、といった組織体制についても定めておきましょう。
BCPの策定手順は、下記の記事でわかりやすく解説しています。策定例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
BCP対策を意識したオフィスビル選びのポイント
BCP対策はオフィスビル選びからはじまります。緊急事態でも事業の継続性が高いオフィスビルを選び、さらにオフィス内に対策を施すことが重要です。まずはオフィスビル選びのポイントを見ていきましょう。
耐震性能が高いか
地震で建物が損傷・倒壊したら、事業継続はおろか従業員の人命に大きなリスクを及ぼします。まずはオフィスビルの耐震性能を確認しましょう。
オフィスビルの耐震性能でまず確認すべきは、「新耐震基準をクリアしているか」という点です。新耐震基準は1981年6月1日に制定された耐震性の最低基準で、以下の強度があることを示しています。
- ●震度5強までの地震:ほとんど損傷しない
- ●震度6強~7の地震:倒壊しない
参考:住宅・建築物の耐震化に関する現状と課題|国土交通省
つまり建築確認日が1981年6月以前のビルは、新耐震基準を満たしておらず耐震性が不足している可能性があります。不動産会社の所有する建築確認通知書で建築確認日を確認しましょう。新耐震基準以前の建物だった場合は、補強工事により基準を満たしているか、同じく建築確認通知書で確認してください。
非常用電源があるか
比較的新しいオフィスビルには、蓄電池や発電機といった非常用電源が備えられています。非常用電源があれば、地震や台風で停電になってもPCや通信機器が止まらないため、最低限の事業継続ができます。避難の際も、照明のついた明るい空間を通れるので安心です。
ただし、非常用電源は蓄電容量や燃料の量に限界があり、無限に稼働できるわけではありません。人命救助のタイムリミットといわれる、72時間の継続稼働が可能な非常用電源を備えたオフィスビルをおすすめします。
周辺環境に危険がないか
オフィスビルの立地によっては、津波の到達予想区域に入っていたり、周辺にある川が氾濫したりするリスクも考えられます。各自治体が発行する「ハザードマップ」を見れば、津波や水害などの災害ごとのリスクを個別に確認できます。
ただし、オフィスビルの周辺環境の危険性は、ハザードマップだけでは測れません。周辺に危険物を扱う工場がないかといった点もチェックして、ビルの安全性を確認しましょう。
その他の防災対策が充実しているか
その他の防災対策の充実度は、ビルの管理会社がどれだけ防災面を重視しているかによって異なります。主に以下の防災対策がなされているか確認しましょう。
- ●非常食や飲料水が確保されているか
- ●防災マニュアルが作成されているか
- ●定期的な防災訓練が実施されているか
- ●避難経路や非常口が整備されているか
緊急事態でビルから避難する際は、自社のみが訓練や対策をしていてもスムーズに動けません。入居するすべての企業が円滑に避難できるかが被害拡大防止のポイントとなります。
オフィスのBCP対策の具体例
実際のオフィスのBCP対策としては、どのようなものが考えられるでしょうか。具体例を5つ紹介します。
家具類やOA機器の転倒を防止する
物が倒れたり、落ちたりする可能性があるのは震度4以上の地震といわれています。2023年の地震の回数をみると、震度4以上の地震は一年間で41回も起こっていました。
参考:令和5年(2023年)の地震活動について|気象庁
そのため、以下のような家具類やOA機器の転倒対策は必須です。家具の転倒による従業員のケガや、重要なOA機器の物理破損を防止しましょう。
- ●OA機器をベルトやワイヤーで固定する
- ●家具類やOA機器に耐震マットを敷く
- ●床にカーペットを敷く
- ●耐震ラッチで家具を固定する
- ●棚の上に物を置かない
避難場所と避難経路を確保する
緊急事態発生時の安全な避難を実現するためには、避難場所と避難経路を事前に決めておくことが重要です。火災や損傷により通路が通れなくなる場合を想定し、複数の避難経路を確保しておくのもポイントです。また、定期的な訓練時には以下の点を確認し、避難経路の見直しも行いましょう。
- ●転倒リスクがある危ないものはないか
- ●出入口を塞ぐリスクのあるものはないか
- ●避難経路上に防災グッズがあるか
さらに、BCPや防災マニュアルに避難経路の図や写真を挿入し、誰が見ても避難方法がわかりやすいように作成することが推奨されます。
迅速に安否確認できる仕組みをつくる
BCPの初動となる安否確認は、従業員の命を守り、事業継続における人的リソースを配分するための重要なポイントです。以下の点を押さえて、迅速に安否確認ができる仕組みを整備しましょう。
- ●誰が安否確認をするのか
- ●どの連絡手段を利用するのか
- ●確認した安否をどこに記録するのか
メールや電話を使用して個別に連絡を取る方法では、安否確認担当者のリソースを大きく奪ってしまいます。また、大災害時にはインフラの状況次第で電話が使用できない可能性もあるでしょう。
確実かつ迅速に安否を確認し、担当者のリソースも確保するなら「安否確認システム」の導入がおすすめです。下記の記事で詳しい機能やメリット、おすすめの製品を解説しているので参考にしてください。
重要データをバックアップする
企業の財産ともいえる顧客情報や契約情報、帳票などの重要データはバックアップを取っておきましょう。
ただし、社内のハードウェアへの保存は、災害時の物理破損のリスクが高いため推奨しません。複数の拠点でのデータ保存やクラウドの活用が求められます。
普段からテレワークができる体制を整備する
災害による交通アクセスの麻痺や、感染症の拡大を想定し、いつでもテレワークができる体制の整備が必要です。なお、普段からテレワークを業務に取り入れることで、BCP対策においては以下のメリットがあります。
- ●社屋の被災から従業員を守れる
- ●帰宅困難者の発生を抑制できる
- ●防災備蓄の量を減らせる
- ●感染症の拡大を抑制できる
- ●営業時間外の被災でも自宅・出先から業務ができる
テレワークにより従業員を保護しつつ、円滑な業務継続が実現できるでしょう。
なお、安否確認の仕組み構築や重要データのバックアップ、テレワーク体制の整備はBCP対策システムを活用するのがスムーズです。下記のページでおすすめのBCP対策システムを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
従業員の人命を守りつつ事業の継続性を高めるには、BCPの策定が不可欠です。BCP対策を意識したオフィスビル選びや、テレワークなどの対策で、緊急事態でも事業がストップしない体制を整えましょう。また、緊急事態には人的・物的なリソースが限られます。BCP対策に関するITシステムの導入で、多様なトラブルに備えましょう。