自治体がBCP対策を強化すべき理由
自治体がBCP対策を強化する背景には、以下のような理由があります。
- ■自然災害の増加
- 日本は地震や台風、大雨による洪水などの自然災害が頻発する国です。これらの災害は行政機能を麻痺させ、住民サービスの提供を困難にする可能性があります。自治体がBCPを策定することで、災害発生時にも迅速かつ的確に対応できる体制を整えられます。
- ■感染症やパンデミックの影響
- 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの自治体がリモートワークの導入や住民対応の見直しを迫られました。感染症対策をBCPに組み込むことで、行政機能を維持しながら円滑な対応が可能となります。
- ■行政サービスの継続性の確保
- 自治体の業務には、住民の安全確保や災害復旧支援など、社会的に重要な役割があります。適切なBCP対策により、災害時や緊急時においても行政サービスを安定して提供し続けられます。
- ■法令・ガイドラインの遵守
- 総務省や内閣府は、自治体に対してガイドラインに沿ったBCPの策定を求めています。これに対応することで、法令を守るだけでなく、住民からの信頼向上にもつながります。
自治体におけるBCP対策の基本
自治体が効果的なBCP対策を実施するには、基本的な考え方や構成要素を理解しておくことが重要です。ここでは、BCPの概要や自治体特有の対策内容、参考となるガイドラインについて紹介します。
BCP（業務継続計画）の概要
BCP（Business Continuity Plan）とは、災害や緊急事態が発生した際でも重要な業務を継続し、できるだけ早く通常業務へ復旧するための計画です。自治体におけるBCPでは、特に住民の安全確保や行政サービスの維持を最優先に策定されます。
自治体向けBCP対策の特徴と重要業務
民間企業のBCPとは異なり、自治体のBCPは公共性の高い業務の継続を目的としています。特に以下の業務は、災害や緊急時にも止めることができない重要業務として位置付けられます。
- ●災害対策本部の設置・運営
- ●避難所の開設・運営
- ●住民への正確な情報提供
- ●医療・福祉サービスの継続
- ●上下水道や道路など公共インフラの維持管理
自治体向けBCP対策の参考ガイドライン
総務省や内閣府では、自治体向けにBCP策定のためのガイドラインを提供しています。各自治体は、これらの指針を参考にしながら、地域特性や組織体制にあったBCPの整備が求められます。
特に、内閣府が公表している「市町村のための業務継続計画作成ガイド」では、BCP策定における重要な６つの要素が示されています。
- １.首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制
- ２.本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定
- ３.電気、水、食料等の確保
- ４.災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保
- ５.重要な行政データのバックアップ
- ６.非常時優先業務の整理
詳しくは、以下のガイドラインをご参照ください。
参考：市町村のための業務継続計画作成ガイド～業務継続に必須な６要素を核とした計画～｜内閣府
自治体におけるBCP策定の具体的な手順
自治体のBCP対策を効果的に進めるには、明確な手順に沿って策定することが重要です。以下の流れを踏まえれば、災害や緊急時にも実際に機能する実効性の高い計画を作成できます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| １.リスク分析と想定される被害の把握 | 地域特性や過去の災害実績をもとに、地震・台風・洪水・感染症など、発生しうるリスクと被害の範囲を具体的に洗い出します。 |
| ２.重要業務の選定と優先順位の決定 | 災害時にも継続が求められる業務を明確にし、それぞれの優先順位を定めます。住民の安全確保やライフライン維持など、停止できない業務を整理します。 |
| ３.緊急時の体制構築（役割分担・指揮命令系統） | 災害発生時に迅速に対応できるよう、各部門や職員の役割を明確にし、指揮命令系統を整備します。代行者の指定や連絡手段の確認も重要です。 |
| ４.代替手段の検討（テレワーク・クラウド活用など） | 庁舎が使用できない場合や出勤が困難な状況に備え、テレワークやクラウドサービスの活用、代替庁舎の確保など、柔軟に対応できる手段を検討します。 |
| ５.訓練・シミュレーションの実施 | 策定したBCPが実際に機能するかを確認するため、定期的に訓練やシミュレーションを実施します。課題を洗い出し、改善に活かすことが重要です。 |
| ６.定期的な見直しと改善 | BCPは策定して終わりではありません。法改正や組織変更、最新リスクの反映など、状況に応じて定期的に見直し、継続的に改善していきます。 |
自治体のBCP対策で活用できる補助金・助成金
補助金の活用により、自治体のBCP対策にかかるシステム導入費や設備費、人材育成の費用を支援してもらえる場合があります。例えば、以下のような補助金・助成金が利用可能です。
| 補助金・助成金 | 概要 | 参考元 |
|---|---|---|
| 国土交通省「防災・省エネまちづくり緊急促進事業補助金」 | 災害に強く、省エネルギー性能の高い公共施設やインフラ整備を支援する補助金です。BCP対策として防災機能を強化する改修や、設備導入にも活用できます。 | 参考：市街地整備：防災・省エネまちづくり緊急促進事業｜国土交通省 |
| 資源エネルギー庁「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」 | 災害発生時の燃料不足に備え、自治体が管理する重要インフラ向けに石油製品タンクや災害対応用燃料備蓄設備を導入する際の費用を補助する制度です。 | 参考：令和7年度「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」の公募について｜資源エネルギー庁 |
自治体DXに関連する記事をまとめて以下からご覧いただけます。自治体に適した各種システム比較記事など、ぜひご確認ください。
自治体のBCP対策を支援するおすすめソリューション
自治体での導入実績がある製品や、緊急時の対応力向上に貢献するBCP対策ソリューションを紹介します。
FIT-Cloudバックアップサービス
北電情報システムサービス株式会社が提供する「FIT-Cloudバックアップサービス」は、業務データをクラウド上に安全に保管し、災害時のデータ消失を防ぎます。LGWAN環境にも対応しているため、行政システムのBCP対策として安心して導入できます。
参考価格：ベンダーへお問い合わせください
エマージェンシーコール
インフォコム株式会社が提供する「エマージェンシーコール」は、災害時に自治体職員や関係者へ一斉連絡や安否確認を自動で実施できるシステムです。迅速な安否確認と指示伝達が可能になり、緊急時の指揮命令系統の維持に役立ちます。
参考価格：初期費用無料、月額10,000円/300IDまで（ライトプラン）
リアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood」
株式会社日立パワーソリューションズが提供するリアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood」は、洪水リスクを即座に予測し、被害想定を支援する防災対策システムです。水害発生時の状況把握に役立ち、自治体の防災計画や避難指示の判断材料として活用できます。
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さらに多くのBCP対策ソリューションを比較したい方は、以下の記事をご覧ください。 各製品の機能や特徴がひと目でわかる比較表も掲載しています。
まとめ
災害や感染症などのリスクが高まるなか、自治体におけるBCP対策は欠かせません。業務を止めず、住民の安全を守るためには、計画的な策定と継続的な見直しが必要です。さらに、BCP対策を支援するソリューションを活用することで、より強固な体制を構築できます。
まずは各ソリューションの詳細を確認し、自治体にあった製品の資料請求を進めましょう。
