薬局BCPの必要性
薬局の事業継続は災害時の医療になくてはならない条件です。医薬分業体制が進んだ昨今では、病院だけでは医療機能を維持できないためです。
実際に、東日本大震災では多くの薬剤師が被災地で活動しています。被災地の住民からは医師や看護師と並んで高く評価され、薬剤師・薬局の必要性が広く認識されるきっかけになりました。東京都はこれを受けて「薬局のモデルBCP」を作成し、地域間での連携体制強化などを推し進めました。
災害時、薬局には早急な復旧と地域への貢献が求められます。そして、薬局BCPではいかにしてそれらの目標を達成するかを考える必要があります。
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薬局BCPと一般企業BCPの違い
薬局BCPと一般企業BCPの間にはどのような違いがあるのでしょうか。
災害時にすべき業務の量
一般企業は、災害時には平常時より業務量が減少します。災害時にできることが限られるだけでなく、災害時だからこそ求められる業務があまりないためです。
一方、薬局を含む医療機関の場合は異なります。災害時には負傷者が多く出るため、早急な治療体制の整備が欠かせません。また、使える設備が限られた状態で活動しなければならないのも業務量の増加に拍車をかけます。
業務活動範囲の規模
単に業務の量が増えるだけでなく、対象とする範囲・規模の拡大も薬局BCPの特徴です。たとえば、かかりつけではない患者が訪れることが多くなるでしょう。その場合、その患者のデータを持っていないため、近隣の薬局との連携などが求められます。
また、事前に近隣の医療機関と協議し、薬剤師が調剤対応に関わることもあります。そのほか、災害拠点病院・医療救護所への医薬品供給なども薬局が担うべき役割となります。
薬局BCPの作成方法
続いて、薬局BCPの作成方法を見ていきましょう。東京都におけるBCP作成を例に解説します。
被害状況の想定を行う
初めに、薬局の立地を踏まえた被害状況の想定を行います。薬局の周辺で大規模な災害が発生しうる場所を考えます。たとえば、東京都が想定している地震は以下の4つです。
- ■東京湾北部地震
- ■多摩直下地震
- ■元禄型関東地震
- ■立川断層帯地震
上記のいずれもマグニチュード7以上を想定した大規模な地震です。これらが発生した際に、薬局がどのような影響を受けるのか考えなければなりません。具体的には、以下の項目について被害を想定します。
- ■各種ライフライン
- ■交通機関・道路状況
- ■近隣医療機関が受ける被害
実際に起こった際にどのような事象が起こるのかを想定しましょう。
災害時の優先業務を定める
災害が発生したら、限られた資源や人手で業務を継続しなければなりません。そのため、重要な業務を優先的に行う必要があります。以下のステップで優先順位をつけましょう。
- 1.日常業務の整理
- まず、普段の業務内容を整理します。医薬品の調剤や発注といった基本的な業務に加え、学会や地域行事への参加、学生の受入など不定期に生じる業務もあります。
- 2.応急業務の把握
- 災害時にのみ発生する応急業務にはどのようなものがあるのか把握します。患者や従業員の安否確認、近隣医療機関への連絡、医療救護所への薬剤師派遣などがあります。
- 3.優先順位の決定
- 日常業務と応急業務の両方から、災害時に欠かせない業務を選定します。
優先順位をつけることで、被害が起こった際にも迷わず行動を起こすことができるので、重要なポイントです。
業務に必要な資源を把握する
続いて、優先順位の高い業務を行うにはどのような資源が必要なのか考えます。以下の4つの観点から必要資源を把握しましょう。
- ヒト
- 薬剤師、医療事務員など
- モノ
- 電子天秤、冷蔵庫、医薬品、薬包紙など
- 情報
- 患者の薬歴など
- ライフライン
- 電気、インターネットなど
たとえば、医療救護所に薬剤師を派遣する際は、人材だけでなく医薬品や調剤に使う器具が必要となるでしょう。また、電子天秤は電気がないと動かないため、電気も業務資源の1つとして数えます。
優先業務ごとの評価・対策を行う
次は、優先業務について評価と対策を行います。想定される被害を考え、その対策を検討しましょう。たとえば、レセコンは地震によって落下して故障する可能性があります。この被害を防ぐには、機器を固定するなどの対策が必要です。
また、道路が使えなくなり、医薬品の供給を受けられなくなるリスクもあります。これに備えて、最低3日分の医薬品を常備しておくなどの対策が必要です。このように、優先業務に必要なすべての資源について被害と対策を考えましょう。
業務継続目標を定める
最後に、優先業務を災害直後からどのように復旧・継続するのか定めます。災害から時間が経過するにつれ、ライフラインも整い可能な活動範囲が広がるでしょう。それらを踏まえて、いつまでにどの程度の業務を実現させるのか想定します。
その際に考えなければならないのは、業務を遂行する代替手段です。たとえば、電子機器類が使えないのであれば手作業で遂行する必要があるでしょう。具体的には、手書きによる薬袋の作成や、薬包紙を用いた手分包などが考えられます。このような手段・方策をすべての優先業務について定めましょう。
薬局の特徴を理解して災害時に対応できるBCPを作成しよう
薬局は災害時に大きな役割が求められるため、BCP作成の必要性が特に高いでしょう。薬局と一般企業のBCPは以下の点で異なります。
薬局は災害が起こった際に、多くの人が必要とする医薬品が揃っています。しっかりとBCP対策を行って、災害に備えましょう。
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