データの保管・バックアップができるITシステム
まずは事業を継続するために、企業にとって必要なデータの保管・バックアップができるITシステムをご紹介します。
データセンターソリューション
データセンターソリューションは、災害対策やセキュリティ対策が施された施設に対してサーバを設置したり、サーバを借りられたりできるサービスです。クラウドサービスの場合、多くの事業者がデータセンターにサーバを保管していることが多いため、近年ではBCP対策としてクラウドサービスを利用する企業も増えてきています。
サーバになにか不具合があった際にすぐに駆けつけられるよう、近くのデータセンターにサーバを置く場合もあります。しかしBCP対策の観点から見ると、地震などの災害が起こった際に同時に被災する可能性があるため、分散させてサーバを管理することをおすすめします。
BCP対策ソリューション
BCP対策に特化したサービスで、データのバックアップをIDC(インターネットデータセンタ)に保管することで自社のデータを守ります。また、復旧のためにデータを分散保管したり、VPNや専用線を利用してサーバに接続したりするサービスもあります。
自然災害時の破損や廃棄・人為的災害の故障や盗難の場合があっても、インターネットに繋げられれば、保管されたデータを簡単に復元することが可能です。予め設定した期間ごとにバックアップでき、常に最新の情報を残せます。
提供会社の中にはコンサルティングを行っている企業もあるので、データ保管にお困りの方は相談してみてはいかがでしょうか。
テレワーク・リモートワークを支援するITシステム
会社に来れなくなっても仕事ができる環境を提供するITシステムをご紹介します。
リモートアクセス
リモートアクセスツールにより、社員の自宅のPCから社内ネットワークにアクセス可能に設定しておくことで、社内の業務システムを安全に使用できます。したがって、オフィスに直接出向かなくても最低限の業務が行えるのです。
緊急時のみではなく、リモートワークを推進することで働き方改革の一旦にもなるので、導入検討することをおすすめします。
グループウェア
グループウェアとは、組織内のコミュニケーションを円滑にして、業務の効率化を推進するツールです。
クラウド型のグループウェアなどを利用しているのであれば、災害時の対応など情報を共有できます。これにより、社員のスケジュールを決められ、統制がとれます。
通知・連絡・安否確認ができるITシステム
災害時や事故があった際、従業員への連絡が必要になりますが、普段利用しているメールはサーバに負担がかかり、利用できないこともしばしばあります。ここでは、緊急時でも連絡できるITシステムをご紹介します。
社内SNS・ビジネスチャット
近年ではメールの代わりに、社内SNSやビジネスチャットを導入している企業も増えてきています。メールよりも気軽に利用できるので、コミュニケーションの活発化や業務の効率化が見込めます。
インターネットさえつながっていれば利用できるので、緊急時にも従業員に連絡が取れるだけではなく、既読機能がついている製品もあるので安否確認も同時に行うことも可能です。
安否確認システム
安否確認システムとは、災害時に従業員の安否を確認できるように、一斉メール配信や状況の集計、掲示板などの機能をもつシステムです。災害時の利用に特化しているので、マニュアルやルールを作らずとも活用ができます。
災害時の社員の安否確認や、関係者の情報提供および通知を、専用のシステムを利用することで、メーラーを介さずに送ることが可能で、設定によっては社外からの操作もできます。
自然災害時には、社員の安否確認の連絡も大事です。ITシステムを利用することでアクセスが混みあう回線を通さずに、連絡することが可能になります。
被害想定が甘いと十分に活用できない可能性も
経営資源を守るためのITシステムについてご理解していただけましたでしょうか。
残念ながら、このようなITシステムをもってしても先の大震災においては、十分に機能させられないケースも多かったようです。機能が不十分だった原因として、災害規模の想定を、過去にあった特定の規模に限定していたことが多かったからです。首都圏で数10年に1度の規模の大震災と想定していた企業が多い中、東日本大震災は1000年に1度と言われているようにはるかに規模が大きいものでした。
東日本大震災では、電力1週間、上下水道・ガス3週間程度の停止期間で被害想定をしていましたが、場所によっては、数ヶ月に渡る被害期間がありました。その上、原発事故の影響から、夏に節電の政策の促しにより、業務を一貫して行うことが困難でした。
このように被害想定が予想より上回ると、BCPの適用が難しくなる場合があります。
- データの保管・バックアップ
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広範囲による被害であるため、情報を蓄積していた地域も被災したときは、バックアップしていたデータが消滅します。
- テレワーク・リモートワーク
- 平時と異なる業務手順のため、操作が鈍重になります。
- 通知・連絡・安否確認
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ネットワークが繋がらない場合、通知がくることはありません。
ITシステムの機能させるためには
将来の企業の見直し指針にBCP対策を組み込んでいなければ、効果を発揮するのは難しいでしょう。では、どのように改善していけばよいのでしょうか。
現状では、「見直し指針」の作業とBCPの対策を別部署で行っており、意識の不一致が起こっているのです。例えば、「見直し指針」が業務の効率化だけに視点があり、災害時の事業継続性の視点が抜けているケースがあります。
業務の効率化のみの視点では、データをバックアップする手間・テレワークの試し運用・関係者に通知する設定に至らない可能性が高いでしょう。
BCPを策定しても「事業継続性」と「見直し指針」に一過性がなければ、災害時にきちんと機能できません。
災害等が起こる前に早めのBCP対策をしよう!
BCPを支援するシステムの紹介から始まり、実際に使用する際の壁、その取り組み方はいかがでしたでしょうか。どんなに運用しやすく策定を見直しても、見直しを続ける必要があるのです。経営資産を災害から守るためというよりは、災害により経営資産が失われた際の備えをしましょう。
また、しっかりとBCP対策を行いたい場合は、自社だけではなく、専門家に相談をしながら策定しましょう。BCP対策は自社への被害だけでなく、他社への2次被害も考えられるため、策定をしているかどうかで信用を得られるかに関わります。
まずはBCP策定を行って、どんな対策が必要なのかを洗い出しましょう。