BCPとDRの違いは「対策範囲」
BCP(事業継続計画)とDR(災害復旧計画)は、どちらも災害や事故などの緊急事態に備えて準備しておく企業の事業計画です。BCPは緊急時の総合的な復旧対策で、DRは主にシステム復旧対策を指します。BCPとDRでは「対策を行う範囲」が異なり、DRはBCPの一部と捉えられるでしょう。
BCPは会社(事業)の存続を目的としているため、経営層も含めて策定します。緊急時のマニュアル策定やデータの分散保管、避難訓練やリモートワークの実施、災害時における連絡手段の用意などが一例です。
一方DRは、情報システム部門を中心に、災害発生時におけるシステム復旧の手段や計画を整えます。例えば、クラウドサービスを利用してデータのバックアップを行う、サーバ自体をデータセンターに移すなどの対策が考えられるでしょう。近年は、業務システムがダウンすると事業継続が困難になる企業は多いため、DR対策の必要性がいっそう高まっています。
BCP対策とDR対策について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
なお、BCPやDRの策定は企業リスクを減らすだけでなく、社会的信頼性の向上にもつながります。非常時にも安定した事業運営ができるようになるため、取引先との良好な関係を築けるでしょう。以下では、BCP対策やDR対策を支援するさまざまなツールを紹介しています。BCP対策やDR対策を行っていない企業は、緊急事態が発生する前にさっそく検討をはじめましょう。
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BCP対策・DR対策の策定状況
BCP対策・DR対策が大きく注目されるようになったのは、2011年に発生した東日本大震災のあとです。多くの企業が地震の被害に遭い、災害対策の重要性を認識しました。
例えば建物は無事でも、サーバルームの崩壊によりデータが破損した企業は少なくありません。データは一度失われれば元に戻ることはありません。システム停止による影響の大きな企業を中心に、BCP対策やDR対策が行われています。
内閣府が調査した「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(回答数1,651社)によると、2019年時点で「BCPを策定済み」と回答した大企業は68.4%、中堅企業は34.4%でした。「BCPを策定中」と回答した企業を含めると、大企業は8割を超え、中堅企業も半数以上を占めます。
東日本大震災が発生した2011年と比較すると、「BCPを策定済み・策定中」と回答した大企業は25.0%、中堅企業は25.7%も増加しました。企業のシステム化が加速するなか、緊急事態に備えてBCPを策定する企業は今後も増えていくことが予想されます。
参考:令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査|内閣府
BCP・DRを策定するときのポイント
BCP対策・DR対策を行う際には、RTO(目標復旧時間)やRPO(目標復旧時点/目標復旧地点)など設定すべき指標があります。さらに、防災やBCM(事業継続計マネジメント)との違いを把握することで、より適切な対策が講じられるでしょう。以下で詳しく解説します。
RTO(目標復旧時間)を考慮する
RTOとは、システム障害が発生してからどれくらいの時間で復旧させるかを示す目標値です。
例えばRTOを3時間に設定すれば、3時間以内に復旧させなければなりません。システム停止時間が長ければ、それだけ災害による被害は拡大します。企業の損失を最小限に抑えるため、RTOは短い方がよいでしょう。
ただし現実的に、設定した時間内で対処できるかどうかをよく考える必要があります。自社が行っている事業やシステムの内容にあわせてRTOを設定し、BCP対策・DR対策を検討することが大切です。
RTOについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
RPO(目標復旧時点/目標復旧地点)を考慮する
RPOとは、システム障害発生前のどの時点のデータまで復旧させるかを示す目標値です。
例えばRPOを0時間に設定すると、災害直前のデータまで復旧させなければなりません。RTOと同様、RPOも0に近い方が復旧対策として優れていることを意味します。そのため、金融業界や医療業界など高度なデータ保護を求める企業では、RPOを0時間に設定します。一方、データの更新頻度や重要度が低い企業では、RPOを1日や1週間など比較的長めに設定可能です。
システム復旧の質を上げるには、バックアップ体制の強化が必要ですが、その分コストがかかります。そのため、各システムやアプリケーションごとに重要性や正確性を検討し、個別にRPOを設定しましょう。
防災・BCM(事業継続マネジメント)との違いを把握する
BCP対策・DR対策を行う際には、防災やBCMとの違いを把握しておくことも大切です。
企業が行う防災とは、従業員や会社の建物、機材や情報といった「資産」を守ることです。主に、地震や津波、大雨による浸水など自然災害の種類ごとに対策・復旧計画を立てます。防災とBCPでは対策の範囲が異なり、BCPは災害の種類ではなく、あらゆる有事に対して事業を継続するための対策を考えます。
またBCM(事業継続マネジメント)とは、事業継続のための計画から運用までの活動全般のことです。BCMの定義は非常に広く、BCMの一つとしてBCPがあります。BCPで完璧な計画を立てたとしても、非常事態に計画を円滑に遂行できなければ意味がありません。そのため、BCPで実現可能な計画を立て、実行し、改善していくBCMが重要なのです。
BCMの構築方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
BCPとDRの違いを理解して最適な対策を講じよう
BCP対策・DR対策はどちらも企業が行うべき重要な災害対策です。BCPとDRの大きな違いは対策を行う範囲であり、BCPは総合的な復旧対策を意味し、DR対策は主にシステムを対象とした復旧対策です。
東日本大震災以降、BCPやDRの重要性を実感し、策定を進める企業が増えています。BCP対策やDR対策は企業の信頼性にも大きく関わるため、自社の業務環境やシステム環境に適したBCP・DRの策定を早めに検討しましょう。
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