災害時に電源を確保する方法
災害時に電源を確保するにはどうすればよいのでしょうか。電力を蓄える・作るという観点から2つの方法を解説します。
蓄電池を利用する
蓄電池とは、その名のとおり電力を蓄積する電池です。一般家庭用と産業用の蓄電池があり、東日本大震災以降、産業用蓄電池の有効性が注目されています。産業用蓄電池が一般家庭用蓄電池と異なる点は以下のとおりです。
- 大容量
- 一般家庭用蓄電池の容量は6~8kWh程度なのに対し、産業用は10~20kWhが普通です。ただし施設の規模による必要容量の差は大きいため要注意です。コンビニなどでは10kWh程度で済みますが、工場では500kWh以上の容量を要する場合もあります。
- 種類
- 一般家庭用はリチウム電池が主流ですが、産業用はNAS電池が一般的です。低価格でメンテナンス性に優れ、頑丈なのが特徴です。
- 設置場所
- 産業用蓄電池は大きな熱を発するため、設置場所には注意しましょう。廃熱用の経路や冷却設備が必要になります。屋外に設置する場合は風雨を避けるための建屋を要し、新設であれば建造物とみなされないか役所に確認します。
発電機を利用する
もう1つの電力確保方法は発電機です。蓄電池で電気を賄いきれない場合に使われます。また、重さが10kg程度で持ち運びが容易なため、施設の外で電力を要する場合にも有効です。
実際、避難所での炊き出しや照明、またスマホやパソコンの電源に使われたケースも少なくありません。平時からレジャーや日曜大工などで使えることから、一般家庭での備えも推奨されています。
ガソリンを燃料として稼働するタイプが主流です。自動車やバイクのガソリンを転用できる製品もあり、非常時の燃料確保が容易なのが魅力です。また、ひもを引っ張る・ボタンを押すなど簡単な操作で動かせるため、非常時の混乱した状況下で使いやすいのも特徴です。
オフィスや公共施設での備えには出力5000VA程度の発電機が用いられ、50万円前後で購入できます。災害時にどのくらいの電力が必要なのか、機器ごとの消費電力を計算して発電機を選ぶとよいでしょう。
電源設備のBCP対策
災害に向けて万全な電源設備を整えるにはどうすればよいのでしょうか。企業の内外それぞれの要因に注目して2つの対策を紹介します。
外部要因対策:受電設備の複数化
災害時に電力を利用できなくなる原因の一つは、回線のトラブルで受電が途絶えるためです。そこで、受電方法を工夫することで停電を回避できる可能性が高くなります。
具体的には、本線予備線受電という方法があります。回線を2つ用意し、一方が故障した際にもう1つの回線に切り替える方法です。予備の回線で受電を継続できるため、停電が生じません。
また、ループ受電という方法もあります。ほかの顧客と回線を接続して環状構造を作り、2方向から受電。2つの回線を利用する点では本線予備線受電と同じですが、本線予備線受電は片方を予備として温存する点で異なります。
そのほかにも、3つ以上の回線を用意する方法や、複数の電力会社から受電する方法があります。いずれも1回線受電と比較してコストがかかりますが、その分堅牢な環境が実現します。大規模施設や重要度の高い施設ではこれらの対策をとり、停電のリスクを最小限に抑えましょう。
内部要因対策:受変電設備等の二重化
受電を途絶えさせないために必要なのは、外部の回線に関する対策だけではありません。施設内の設備にも工夫が求められます。具体的には、受変電設備などの二重化が有効です。受変電設備とは、受電した電力を低圧に変換して施設内の各電子機器に送信する装置です。
電力会社から受電する仕組みは、一般家庭と大規模施設で異なります。一般家庭では最初から低圧の電力を受け取りますが、大規模施設ではまず高圧で受け取り、受変電設備を使って低圧化します。
つまり、受変電設備が壊れると施設内で適切な電圧の電力を使えなくなるということです。高圧で受電することで電気料金を安く抑えられますが、受変電設備を利用する事業者にはその保安点検が義務付けられています。
そのほかにも、施設内の電力供給には幹線ルートや電灯盤、動力盤などが関わっています。これらの故障やメンテナンスに伴って停電が生じないよう、設備の二重化を行いましょう。
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電源確保にあたって必要なBCPの策定方法
適切なBCPを策定するにはどうすればよいのでしょうか。電源確保に限らず、一般的なBCP策定方法を2つ見ていきましょう。
独自でBCPを策定する
BCP策定においてもっとも一般的なのは、自社独自で策定する方法です。ほとんどの企業は自社で試行錯誤しながら独自のBCPを策定しています。特に理由がなければこの方法を採用しましょう。
ただし、とっかかりが何もない状態から考え始めるのは困難です。専門の書籍や政府が発表するガイドライン、テンプレートなどを参考にして策定するとよいでしょう。
自社で作るのが難しい場合は、プロのコンサルタントに協力を仰ぐのも有効です。完成度が高いだけでなく、自社に適したBCPが実現するでしょう。あるいは、従業員に防災士の資格を取得させ、BCP策定を先導させる方法もあります。
ただし、どの方法にしても初めから完璧なBCPを策定するのは困難です。多くの企業は、訓練や見直しを通じて問題点を発見しながら、日々BCPをブラッシュアップしています。BCP策定は長期的に取り組むべき課題だと考えましょう。
国際規格「ISO23001」を取得する
ISO23001とはBCPの国際規格です。
地震や洪水などの自然災害はもちろん、感染症のパンデミックや停電などさまざまな脅威を対象としています。BCP策定に利用可能なだけでなく、ISO23001を取得できれば、その企業が考え得る脅威に適切に備えていると証明されることになります。
取得に手間や費用はかかりますが、自社のBCPへの姿勢を取引先や協力企業、顧客にアピールできるのは大きなメリットといえるでしょう。
以前は英国国家規格のBS25999や、情報システムに特化した規格であるISO27001が利用されていました。しかし、2012年にISO23001が発行されて以来、BCPの質をアピールする材料としてこちらが使われるようになっています。
ISO23001を取得するには、以下の3つを満たす必要があります。
- ■事業継続を脅かす事象に対する組織的な対応の構築・運用
- ■BCPのパフォーマンスや有効性
- ■継続的な改善
災害時に電源を確保するため、BCPを策定しよう!
災害時に電源を確保する方法は、以下の2つに分けられます。
災害時に電力供給を途切れさせないために有効なBCP対策は以下のとおりです。
- 外部要因対策
- 受電設備の複数化
- 内部要因対策
- 受変電設備などの二重化
また、BCP策定の方法は以下のとおりです。
- ■独自で策定する
- ■国際規格「ISO23001」を取得する
以上を踏まえて適切なBCPを策定し、災害に備えましょう。