BCP訓練の必要性
BCPを策定しても、有事の際に行動に移せなければ意味がありません。そこで必要となるのがBCP訓練です。訓練を通じて従業員に必要な知識や技能を身につけさせ、それを継続することで災害への意識を定着させることが目的です。
また、BCP対策の内容に欠陥がないか確認するためにも訓練は欠かせません。机上で議論しただけでは見落としてしまう欠陥を、実際の訓練を通じて発見できます。計画・訓練・見直しのサイクルを繰り返すことで、BCPの内容をブラッシュアップしていきましょう。
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BCP訓練の種類と方法
続いて、具体的な訓練の種類と進め方を見ていきましょう。
机上訓練
机上訓練はもっとも一般的な訓練方法です。実際の環境でBCPの内容通りに動けるか、会議室などで議論します。計画書を見ながら、計画を実行するメンバーが内容を擦り合わせ、計画に問題がないか確認します。
電話連絡網・緊急時通報診断
災害時に従業員同士が適切に連絡を取れるか確認する訓練です。緊急連絡網を用意し、それに従って連絡がとれるか試しましょう。実際に災害が起きた際には、緊急連絡で人員を招集できるかにより、その後の復旧が円滑に進むかが左右されます。
一度連絡網を作成しても、メールアドレスや電話番号が変更されている可能性があります。それを発見するのも訓練の目的の1つです。
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代替施設への移動訓練
災害に備えて、オフィスや工場の代替施設を用意している場合に必要な訓練です。代替施設に移動し、そこで実際に復旧作業に取り掛かりましょう。たとえば、工場であれば実際に施設を稼働し、製品の製造や加工が可能か確認します。
バックアップデータを取り出す訓練
普段からバックアップをとっているデータを、緊急時に取り出す訓練です。復旧に使うシステムがあれば、それを稼働できるか確認しましょう。同時に、普段行っているバックアップが適切かも確認しましょう。バックアップをとる頻度やバックアップ先などを見直し、復旧に支障がない状態に整えます。
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BCPの総合訓練
BCP発動後から復旧までの流れを一通り訓練します。社内だけで実施するほか、近隣の企業や自治体と連携して行うのもよいでしょう。災害時の連携を円滑にするだけでなく、自社が適切にBCP対策を行っていることのアピールにもなります。
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BCP訓練に必要なシナリオの作成方法
BCP訓練におけるシナリオとは、災害発生から時系列に沿って事態がどのように変化するのかを設定したものです。適切なシナリオを作成することで、実際の災害を意識して訓練を実施できます。以下の順番でシナリオを作成しましょう。
- 1.骨組み
- 訓練の目的や従業員に期待する行動。これを決めることで訓練を通じて学ぶべき内容を明確にする。
- 2.登場人物
- 災害時に連携が必要な社内外の人物。さまざまな関係者を設定することで行動の選択肢を増やし、従業員が適切な選択をする判断力を養う。
- 3.発災日時
- 曜日や時刻、季節。これらの状況によってとるべき対応・とることが可能な対応が異なる。
- 4.被害状況
- 本社のオフィスや工場、データセンターなどの被害。何が使えて何が使えないのかをはっきりさせることで、とるべき対応が変わる。
始めはそこまで綿密な設定でなくても構いません。上記の4点を設定し、発災後の大まかな流れを決めましょう。
BCP訓練を行う際のポイント
続いて、BCP訓練を実施する際のポイントを見ていきましょう。
従業員にBCP訓練の意味や目的をしっかり伝える
BCP訓練には意味や目的があります。具体的には、社内外の人物と連携する能力の養成や、非常時に使うツールやシステムへの習熟などがあるでしょう。それを理解しないまま実施しても、従業員が得るものは少なくなります。訓練実施前の事前説明で目的をよく説明し、従業員に目的意識を持たせることが大切です。
ある百貨店の事例では、東日本大震災で建物が被害を受けながらも、1人も負傷者を出すことなく避難誘導できました。これは、年2回の防災訓練を実施し、パニックに陥る買い物客の誘導を練習していた成果です。
普段から明確な目的をもって訓練していれば、いざというときにも臆することなく行動に移せます。
災害地の特定は具体的に行う
災害地は固有名詞を使って具体的に想定しましょう。「自社の工場が被害を受けた」ではなく、「A地方の地震発生により電力供給が停止、工場Bが稼働不可」のように設定します。このように綿密に決めることで訓練が現実味を帯び、従業員に緊張感を持たせられます。
ただし、この段階であまり時間や手間をかけすぎるのは賢明ではありません。国や自治体が発表しているハザードマップなどを活用して災害地を設定するとよいでしょう。
BCP訓練後には評価を行う
訓練後には、参加した従業員が適切な行動をとれたか評価する必要があります。曖昧な評価だと問題点も曖昧になるため注意が必要です。以下の4点に分けて評価するとよいでしょう。
- 迅速性
- 対応に要した時間
- 正確性
- 与えられた状況を正確に整理できたか
- 柔軟性
- 検討できた対応の数
- 達成度
- 期待された行動をとれたか
定量的に計測できるものはできる限りそうして、次回以降の指標にするのが理想的です。
また、BCP訓練には、計画が実行可能か検討するという目的もあります。そのため、訓練後には計画に無理がないかも評価しましょう。計画の不備や不明点を洗い出し、より優れたものにブラッシュアップします。
災害時に的確な対応ができるようBCPの訓練を実施しよう!
BCP訓練は、災害時における従業員の対応能力を養うだけでなく、計画に無理がないか確認するために必要です。訓練方法には以下の5種類があります。
- ■机上訓練
- ■電話連絡網・緊急時通信診断
- ■代替施設への移動訓練
- ■バックアップデータを取り出す訓練
- ■BCPの総合訓練
また、訓練の際のポイントは以下のとおりです。
- ■意味や目的の明確化
- ■災害地の具体的な設定
- ■訓練後の評価
以上を踏まえて訓練を実施し、災害に備えましょう。
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