
「中小企業強靭化法案」とは
中小企業強靭化法案の概要を見ていきましょう。
BCP策定支援が盛り込まれた法
中小企業強靭化法案とは2019年7月16日に施行された、中小企業のBCP策定を支援する制度が盛り込まれた法律です。
この法律の特徴は、BCP認定制度によって中小企業が国から支援を受けられることです。中小企業が自社のBCPを国に提出し、その内容が適切であると認められれば財政的・非財政的援助を受けられます。
税制優遇・金融支援が受けられる
BCP認定制度で認定を受けた企業は、主に以下の優遇・支援を受けられます。
- 【税制上の優遇措置】
- 以下の設備に特別償却(20%)が適用可能(2020年末まで)
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- ■機械類(100万円以上):自家発電機、排水ポンプなど
- ■器具備品(30万円以上):免震ラック、衛星電話など
- ■建物附属設備(60万円以上):防火シャッター、排煙設備など
- 【金融支援】
- ■BCPに必要な資金における日本政策金融公庫からの低利融資
- ■信用保険の別枠付保など
- 【補助金】
- ■中小企業庁が所管する補助金採択に加点される
- ■自然災害が事業に与える影響の想定
- ■体制の構築
- ■事前対策(初動対応、取引先との連携、復旧手順の策定など)
- ■事前対策の実効性確保(定期的な訓練、計画の見直しなど)
- 宿泊業
- 観光客の減少
- 木造建築業
- 資材仕入の停滞、住宅建築需要が減少など
- 貨物運送業
- 取引先の被災、流通網の混乱など
- 製造業
- 納入先の被災、製造機器の故障など
- 酒造業
- 酒蔵などの崩壊
- 食品製造業
- 工場や設備に甚大な被害
支援を受けるためには条件がある
支援措置を受けるためには、BCPに経済産業大臣が定める以下の内容を盛り込んで申請し、認定を受ける必要があります。
経済産業大臣から認定された後は、受けたい支援措置に応じた手続きが必要です。
参考:中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案【中小企業強靱化法案】の概要|経済産業省
国がBCP策定において税制支援を行う理由
なぜ国は中小企業のBCP策定を支援するのでしょうか。
大規模災害により事業が停止してしまうことを防ぐため
大規模災害が発生すると事業が停止し、倒産に至るケースもあります。東日本大震災では、以下のような倒産事例があります。
倒産に至ったのは、BCPが適切に発動しなかったためです。国はこのような事態を防ぐために、中小企業のBCP策定を支援しています。
破損した機器を買い換えるなどの出費を抑えるため
災害で破損した機器の買い替えや建物の修復には多額の出費が必要になります。たとえば、東日本大震災で全壊した住宅を建て直すには、2,500万円程度の費用がかかったと言われています。
さらに、工場や事務所となると6~8千万円程度かかるケースも珍しくありません。建物だけでもそれほどの費用がかかり、事業を復旧するための機器や備品を揃えるとなると膨大な出費が求められます。補助金や税制上の支援で、これらの負担を軽減できます。
BCPの実施で可能になること
BCPの策定によりどのようなことが実現するのでしょうか。
事業の継続・企業の信頼度向上
BCPを策定すると、企業は被災時に事業を継続しやすくなります。たとえ大きな被害を受けても、事前対策や復旧手順の策定をしておけば、事業が停止する時間は最小限で済むでしょう。そして、このような対策をしておくことは企業の信頼度向上にも役立ちます。顧客や関連企業からの信頼を得ることは、取引量や売上の増加に貢献するでしょう。
さらに、BCP策定が自社の状態を客観的に把握する機会になるのもメリットです。BCPを策定するには、自社の中核事業やそれに必要な資材などを見直す必要があります。自社の強みと弱みを再確認することは、経営方針の決定などに役立つでしょう。
後継者の保護・育成
企業が倒産する理由の1つに、後継者不足があります。後継者になるには企業や社会を俯瞰できる知識や能力を備えていなければなりません。しかし、社長が高齢化したときそのような人材が社内におらず、事業の存続が難しくなるケースがあります。
BCP策定は、人材の育成にも有益です。適切にBCPを策定するには社内のリソースや経営状況を洗い出す必要が生じ、それが後継者の育成に役立ちます。
税制支援を受けながらBCPを策定し安全に事業を継続しよう
中小企業がBCPを策定する際には、中小企業強靭化法案の利用により国の支援を受けられます。
BCPを策定して申請し、必要な手続きを行うことで税制上の優遇や金融支援を受けましょう。BCPを策定すれば、自社の信頼性を向上させられるだけでなく、後継者育成にもつながります。以上を参考にしてBCPを策定し、安定した事業継続を目指しましょう。
