サイバー警察とは
サイバー警察とは、1998年6月に警察庁によって発表された、ハイテク犯罪対策重点推進プログラムに基づいて創設されたものです。
そのプログラムを実行するために、2004年に警察庁に情報技術犯罪対策課が設置されました。また、警察庁の地方出先機関と都道府県警察により、サイバー犯罪対策プロジェクトが設置されています。
当該プロジェクトは予防班・捜査班・技術班からなり、それぞれ以下の役割を担います。
- 予防班
- 市民や企業の相談・連絡窓口などは県警
- 捜査班
- ハイテク犯罪捜査を警察庁が県警を支援・指導
- 技術班
- 専門技術を駆使した捜査を警察庁が県警を支援
また、この体制を推進するために、警察庁には次の3つのセンターがあります。
- ナショナルセンター
- 最先端の技術を結集し、都道府県警察を主導する。
- サイバーフォースセンター
- 警察庁と地方出先機関に設置され、サイバー攻撃対策の技術部隊の司令塔として、サイバー攻撃への対応に当たる。
- インターネット・ホットラインセンター
- 市民から警察庁への通報窓口
参照:平成11年 警察白書 国境を越える犯罪との闘い|警視庁
安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現を目指して 第2節 サイバー犯罪に対する取組|警視庁
サイバー警察が対応可能な被害
自身がコンピュータに関する被害に遭った際、それをサイバー警察に通報すべきものなのか判断しかねることも多いでしょう。そこで、次はサイバー警察が対応可能な被害を紹介します。
不正アクセス行為の被害
不正アクセスとは、具体的には以下のネットワーク越しの行為を指します。
- ■他人のログインIDやパスワードを不正に取得したり、無断で第三者に教えたり、サービスにログインしたりすること
- ■ソフトウェアの脆弱性を突いてコンピュータに侵入し不正使用すること
また、不正アクセスの目的は以下のとおりです。
- ■ファイルの盗み見・改ざん・削除
- ■個人情報の窃取
- ■コンピュータの動作に対する妨害
- ■DDoS攻撃に加担
※DDoS攻撃とは、攻撃者が他人が持つ不特定多数のデバイスを踏み台にして、標的サーバにさまざまな手段で一斉に負荷をかけるものです。
具体的に生じる被害は不正アクセスされる対象によりさまざまです。たとえば、ネットバンキングに不正アクセスされれば金銭的被害が生じます。また、SNSのアカウントを乗っ取られると犯罪予告などに使われる危険性もあります。
コンピュータ・電磁的記録対象犯罪の被害
USBメモリやDVD、キャッシュカードなどでデータを保存することを電磁的記録といいます。その電磁的記録に関する犯罪もサイバー警察の管轄です。
たとえば、他人のキャッシュカードを使ってATMから勝手にお金を引き出す行為は「電子計算機使用詐欺罪」といい、コンピュータ・電磁的記録対象犯罪(サイバー犯罪)に該当します。また、サーバに保存されているデータを改ざんする「電子計算機損壊等業務妨害罪」もこれに該当します。
不正指令電磁的記録に関する犯罪の被害
不正指令電磁的記録とは基本的にウイルスのことです。したがって、正式名称は「不正指令電磁的記録に関する罪」ですが、一般的にウイルス罪とも呼ばれます。
具体的には以下の行為が罪に該当します。
- ウイルス作成・提供罪
- 正当な目的がないのに、使用者の意図とは関係なく実行されるようにウイルスを作り、他者に提供する行為
- ウイルス供用罪
- 正当な目的がないのに、ウイルスを使用者の意図とは関係なく実行される状態にしたり、その状態にしようとしたりする行為
- ウイルスの取得・保管罪
- 正当な目的がないのに、使用者の意図とは関係なく実行されるようにウイルスやそのソースコードを取得・保管する行為
ネットワーク経由の公序良俗に反する行為の被害
「ネットワーク経由の公序良俗に反する行為」とは、基本的に上述したもの以外でインターネットを利用した罪のことです。
具体的には以下のような行為が該当します。
- ■ネット通販詐欺
- ■掲示板などでの特定個人に対する誹謗中傷
- ■HP上におけるわいせつ図画の公然陳列
- ■インターネット上での違法薬物販売
- ■インターネット上での賭博、ねずみ講などへの勧誘
- ■脅迫恐喝電子メールの送付
サイバー警察の対応例
サイバー警察が対応した事件にはどのような例があるのでしょうか。
Webサイトに不正アクセスした人物を検挙
不正アクセスに関する事例を2つ紹介します。
- 【サイトのデータを削除した事例】
- ある男性が鉄道会社のWebサイトに、管理者のID・パスワードを利用して不正アクセスしました。そして当該Webサイトのデータを削除し、閲覧不可能にしたといいます。その後約半年が経過し、犯人の男性は「不正アクセス禁止法違反」と「電子計算機損壊等業務妨害」で検挙されることになりました。
- 【オークションで金銭的被害をもたらした事例】
- ある男性は他人のID・パスワードを不正利用して、インターネットオークションのサイトにログインしました。そして、そのオークションサイトでパソコンを架空出品し、購入者からお金を騙し取ったといいます。その後、犯人は「不正アクセス禁止法違反及び詐欺」で検挙されました。
不正なプログラムやアプリを供用した人物を検挙
不正指令電磁的記録に関する罪で検挙された人物の事例も2つ見ていきましょう。
- 【架空請求で現金を詐取した事例】
- サイトの閲覧者に架空請求画面を繰り返し表示させる不正なプログラムを供用し、被害者から現金を騙し取った事件です。犯人は、翌年「不正指令電磁的記録供用・詐欺」で検挙されました。
- 【不正なアプリで個人情報を抜き取った事例】
- ユーザーのスマートフォンから電話帳データを抜き取るアプリを作成し、電池を改善するアプリとして配布して個人情報を抜き取った事件です。犯人は「不正指令電磁的記録供用」で検挙されることになりました。
ネットワーク関連の被害に遭ったらサイバー警察に相談を!
サイバー警察はハイテク犯罪対策として警察庁が主導するプロジェクトのことで、プロジェクトの実行はいくつかの組織がになっています。
サイバー警察で対応可能な犯罪は以下のとおりです。
- ■不正アクセス行為
- ■コンピュータ・電磁的記録対象犯罪
- ■不正指令電磁的記録に関する犯罪
- ■ネットワーク経由の公序良俗に反する行為
上記のような犯罪の被害に遭ったら早急にサイバー警察に相談し、被害の拡大を防ぎましょう。