在宅診療の記録で生じやすい負担
外来の診療とは、記録の取り方も情報の使われ方も異なります。まずは、どこに負担があるのかを整理しましょう。
訪問先で記録を残しにくい
訪問先にパソコンがない場合、その場では紙にメモを取り、戻ってから入力し直すことになります。同じ内容を二度書くため、時間もかかります。書き写す際の間違いが起こる可能性もあります。
訪問の件数が多い日は、入力が夜まで残ることもあります。記憶が薄れてから書くと、内容が簡素になりがちです。その場で残せる形にできれば、こうした負担を減らせます。診療の内容を落とさずに残せる点も利点です。
移動と予定の管理に手間がかかる
訪問診療では、複数の患者さんを順に回ります。訪問の順番や移動の経路を組み立てる作業が毎回発生します。急な依頼が入ると、予定の組み直しも必要です。
誰がいつ訪問したかの記録も、報酬の請求に関わります。訪問した日時や内容を正しく残せていないと、後から確認する作業が生じます。予定と記録が別々に管理されていると、突き合わせにも時間がかかります。月末に作業が集中する原因にもなります。
多職種との情報共有が欠かせない
在宅の療養では、医師だけでなく、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、リハビリの担当者など多くの職種が関わります。それぞれが把握している情報を共有できないと、対応が食い違う恐れがあります。
電話や書面でのやり取りでは、伝えるまでに時間がかかります。緊急の連絡が必要な場面もあり、伝わるまでの時間が課題になります。誰がどこまで情報を見られるようにするかは、慎重に決める必要があります。
在宅診療向け電子カルテを使うメリット
この仕組みの効果は、記録が電子になることだけではありません。移動の時間や、連携の進め方にも関わります。3つの角度から整理します。
訪問先でその場に記録できる
持ち運べる端末から入力できるため、訪問先で記録を完結できます。書き写す作業がなくなり、戻ってからの作業時間を減らせます。前回の記録もその場で確認できるため、経過をふまえた対応がしやすくなります。
入力の手間を減らす工夫がある製品もあります。よく使う文章をあらかじめ登録しておく、選択肢から選んで記録するといった方法です。手書きで入力できる形に対応しているものもあります。撮影した画像を記録に添えられる製品もあります。
訪問の予定と記録をつなげられる
訪問の予定を登録しておけば、その日の回る先を端末で確認できます。訪問した記録が予定と結びつくため、後から突き合わせる作業も減らせます。地図と連動して経路を確認できる製品もあります。
複数の医師や看護師で分担している場合、誰がどこを訪問するかを共有できます。急な変更があった際も、その場で反映できます。ただし、どこまで自動で組み立てられるかは製品によって異なります。
関わる職種と情報を共有しやすくなる
記録を同じ場所で扱えば、必要な情報を関係者が確認できます。電話で伝える手間が減り、行き違いも起こりにくくなります。誰がいつ何を記録したかが残るため、経緯も確かめられます。
ただし、共有できる範囲は仕組みによって異なります。どの職種にどこまで見せるかは、法令や施設の方針にもとづいて判断する必要があります。判断に迷う場合は、関係する専門家や所管の窓口に確認しましょう。
導入前に確かめたい注意点
導入すればすべてが解決するわけではありません。次の点を押さえたうえで検討しましょう。
訪問先の通信環境に左右される
インターネット経由で使う形では、電波の届かない場所で操作できないことがあります。建物の構造や地域によって、状況は変わります。訪問する範囲でどの程度使えるかを、事前に確かめておく必要があります。
通信がなくても入力でき、後からまとめて送る形に対応した製品もあります。この機能があるかどうかは、訪問の範囲によって重要度が変わります。使えなかった場合にどう記録するかの手順も、あらかじめ決めておきましょう。紙での控えを用意する方法もあります。
費用と対象範囲を確かめる
料金は、利用する人数や機能の範囲で決まる形があります。持ち運ぶ端末の購入費や通信の費用も別に必要です。訪問する職員の人数分を見込んで、総額を確かめましょう。
費用を比べるときは、いま記録や事務にかかっている時間を書き出す方法があります。戻ってからの入力時間、予定の調整、請求の準備にどれだけ使っているかを見積もりましょう。設定を手伝ってもらう費用が別かどうかも確認します。
患者さんの情報の取り扱いに配慮が必要になる
診療の記録は、特に配慮が求められる個人情報です。端末を外に持ち出すため、紛失や盗難への備えも欠かせません。画面の表示を他の人に見られないようにする配慮も求められます。
端末をなくした際に遠隔で使えなくする設定があるか、記録が端末に残らない形かを確かめましょう。誰がどの情報を見られるかの設定と、閲覧の記録が残るかも重要です。院内の方針を定め、職員への説明もあわせて行いましょう。持ち出す端末の管理方法も決めておく必要があります。
製品を選ぶときの確認項目
製品を選ぶ際は、訪問先での使いやすさ、請求や他のシステムとの連携、緊急時の対応体制という3つの点から確認しましょう。
訪問先で使いやすい形かを確かめる
実際に使うのは、移動しながらの限られた時間です。端末を立ったまま操作できるか、片手でも入力できるかは、使い心地に関わります。試用の機会があれば、実際の訪問に近い場面で確かめる方法が確実です。
対応している端末の種類も確認しましょう。手持ちの端末で使えるのか、指定されたものが必要なのかで費用が変わります。画面の大きさによって、見やすさや入力のしやすさも変わります。電池の持ちも、一日回るうえでは確かめたい点です。
請求や他のシステムとのつながりを確かめる
記録した内容を、診療報酬の請求に使う仕組みへ渡せるかを確認します。手入力が残ると、その分の手間と誤りの可能性が残ります。訪問看護など他の記録とあわせて扱えるかも、体制によっては重要です。
つなぐ仕組みが動かない場合、製品の仕様、院内のネットワーク設定、つなぐ相手のサービスの制限など、複数の原因が考えられます。止まったときに管理者へ知らせが届くか、相談できる時間帯はいつかも聞いておきましょう。
緊急時にも使える体制かを確かめる
在宅の療養では、夜間や休日に連絡が入ることがあります。当番の担当者が過去の記録をその場で確認できるかは、対応の質に関わります。院外からでも安全に閲覧できる形かを確かめましょう。
仕組みが使えなくなった場合の備えも必要です。停止したときにどう記録し、どう対応するかの手順を決めておきましょう。提供元へ連絡できる時間帯と、復旧までの目安も契約前に確認しておくことが重要です。
訪問先で記録できる在宅診療向け電子カルテ
訪問診療の現場での記録のしやすさに着目した、在宅診療向けの電子カルテを紹介します。
エムスリーデジカル
- 初期0円、AIによる自動学習で入力時間80%削減!
- 15年利用で約1,000万円のコスト削減が可能!
- 金融機関・政府機関も利用する安全技術
エムスリーデジカル株式会社が提供する「エムスリーデジカル」は、訪問診療の現場での利用を想定した電子カルテです。タブレット端末を使って訪問先でその場に記録を残せる構成になっており、戻ってから記録を転記する作業を減らせます。他の医療機関との情報共有にも対応した機能を備えています。
CLIUS (クリアス)
- 事前カルテの記入、訪問スケジュールの調整もラクラク
- Mac、Windows、iPadで自由に運用!書類一括印刷もOK
- 在宅医療を低コストでスタートできる
株式会社DONUTSが提供する「CLIUS (クリアス)」は、クラウド型の電子カルテで、訪問診療にも対応した機能を備えています。スケジュールの管理とカルテの記録をあわせて扱える構成のため、訪問先の移動計画と診療記録を一つの画面で確認できます。通信環境が不安定な場所での利用にも配慮された設計です。
homisNursee (メディカルインフォマティクス株式会社)
- オマハシステム搭載で、看護問題とケアプランを簡便に作成可能。
- ITに不慣れでも直感的に操作可能。
- ケア実績を見える化し、業務量やケアの偏りを改善。
在宅診療向け電子カルテに関するよくある質問
導入を考えるときによく寄せられる疑問をまとめました。院内で話し合う際の参考にしてください。
- Q1: 外来向けの電子カルテでは対応できませんか?
- 外来向けは、院内で使うことを前提に作られている場合があります。訪問先での入力や、予定の管理に対応していないこともあります。在宅診療で必要な機能が含まれるかを、確かめたうえで判断しましょう。
- Q2: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 患者さんの情報を移す作業と、端末の手配にかかる時間で変わります。既存の記録をどこまで引き継ぐかによっても異なります。職員への説明の時間も含めて計画しましょう。
- Q3: 小規模な診療所でも導入できますか?
- 規模にあわせた契約を用意している製品もあります。訪問の件数と関わる職員の数を伝えたうえで、見積もりを取りましょう。まず一部の機能から始める進め方も考えられます。
- Q4: 職員が操作を覚えられるか不安です。
- 操作の説明を受けられるか、手順の資料が用意されているかを確認しましょう。導入後しばらくは、質問を受ける担当を決めておくと安心です。担当を1人に固定せず、複数人が把握しておくことが重要です。
まとめ
在宅診療向け電子カルテには、訪問先でその場に記録できること、訪問の予定と記録をつなげられること、関わる職種と情報を共有しやすくなることというメリットがあります。一方で、通信環境や費用、患者さんの情報の取り扱いという点も押さえておく必要があります。まずは訪問の件数と、記録にかかっている時間を確かめましょう。資料請求を活用して比べてみてください。

