業種によってIaaS運用で異なる懸念点
個別の業種を見る前に、懸念点が業種ごとに異なる理由と、共通して確認しておきたい事項を整理しておきます。
業種ごとに異なるリスクの整理
IaaSの懸念点は、取り扱うデータの重要度やシステムの利用時間帯、法令上の要件によって業種ごとに変わります。24時間稼働が前提の業種と、日中のみ利用する業種では、想定すべきリスクの種類が異なります。業種による違いを踏まえずに他業種の対策をそのまま採用すると、実態にあわない懸念対応になる場合もあります。
そのため、他業種の事例をそのまま自社にあてはめるのではなく、自社の業務特性にあわせて起こりやすい懸念を整理することが重要です。業界特有の規制がある場合は、その要件も踏まえて確認する必要があります。同業他社の事例を参考にする場合も、自社と条件が異なる可能性を踏まえたうえで、あくまで一つの参考情報として扱うことが望まれます。
懸念を防ぐための共通確認事項
業種にかかわらず共通して確認したい事項としては、契約内容の理解不足によるコストの想定外の増加、既存システムとの連携不足、サポート範囲の誤認が挙げられます。これらは業種を問わず起こりやすい懸念です。
あわせて、契約前に見積もりの内訳やサポート範囲を確認し、疑問点をそのままにせず問い合わせて確認する姿勢が、懸念を減らすことにつながります。導入後も定期的に運用状況を振り返り、懸念が生じていないかを確認する習慣を持つことが望まれます。
製造業でのIaaS移行における懸念点
製造業では、基幹システムの移行時に起こりやすいトラブルが懸念点として挙がります。
基幹システム移行時に起こりやすいトラブル
製造業で基幹システムをIaaSへ移行する際、生産管理や在庫管理など複数のシステムが連携しているケースが多く、移行時にデータの連携が一時的に途切れる懸念があります。移行手順が不十分だと、生産計画に影響が出る場合もあります。特に24時間稼働のラインを持つ工場では、短い停止時間であっても生産量に影響が及ぶ懸念があります。
また、既存システムとの互換性が十分に確認されないまま移行を進めると、想定していた機能が使えないことに後から気づく場合があります。単一の原因に限定できず、システム側と運用側の両方に要因があるケースも見られます。生産ラインが停止する事態を避けるため、移行のタイミングは生産計画への影響が少ない時期を選ぶことも有効な対策です。
移行時のトラブルを防ぐ確認視点
移行によるトラブルを防ぐには、段階的な移行が可能かどうかを確認し、一括での切り替えを避けることが有効です。並行運用期間を設けることで、想定外の不具合に気づきやすくなります。
あわせて、移行にかかる期間やサポート体制、切り戻しが必要になった場合の対応方法も、契約前に確認しておくことが望まれます。移行作業に関わる社内外の担当者の役割分担を明確にしておくことも、トラブル発生時の対応を早めることにつながります。移行後もしばらくの間は旧環境をすぐに参照できる状態にしておくと、万一の際に安心です。
金融機関でのIaaS導入における懸念点
金融機関では、セキュリティ要件や可用性の基準が高いことから、導入検討が長期化したり、途中で見直しになったりする懸念があります。
金融機関で導入に至らないケースの傾向
金融機関でIaaSの導入が進まない背景には、監督官庁への報告義務やセキュリティ基準への適合確認に時間がかかることが挙げられます。要件を満たすかどうかの確認が不十分なまま検討を進めると、後から見直しが必要になる場合があります。
また、既存の勘定系システムとの連携要件が複雑な場合、対応可能な範囲を提供会社と十分にすり合わせないまま契約すると、想定していた運用ができない懸念もあります。検討に時間がかかること自体は珍しくないため、余裕を持った導入スケジュールを組むことも大切です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でIaaSの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
導入前に確認したいリスク軽減の観点
金融機関がIaaSを検討する際は、セキュリティ基準や監査対応に必要な機能を早い段階で洗い出し、要件を満たすかどうかを個別に確認することが有効です。要件確認を後回しにすると、検討の手戻りが発生しやすくなります。特に監査を意識した確認項目は、後から追加すると設計の見直しが必要になる場合もあるため、早い段階での洗い出しが望まれます。
あわせて、情報システム部門だけでなく、コンプライアンス部門や監査担当者を交えて要件を整理しておくと、後からの見直しを減らしやすくなります。関係部署の合意形成に時間がかかることを見越して、早い段階から検討を始めることも有効です。
EC通販でのIaaS運用における懸念点
EC通販では、セール時のアクセス急増にともなう想定外の費用が懸念点として挙がります。
セール時の高額請求につながる懸念
EC通販でセールを実施した際、アクセスの急増にあわせて自動でリソースが拡張される仕組みの場合、想定より多くのリソースが使用され、高額な請求につながる懸念があります。上限設定がないまま運用すると、想定外のコストが発生する場合があります。
また、セール終了後もリソースが自動で縮小されず、余分な費用が発生し続けるケースも見られます。利用状況を定期的に確認しないと、気づかないまま費用がかさむ懸念があります。特に短期間で複数回セールを実施する場合、その都度の利用状況を見直さないと、費用の増加に気づきにくくなります。
想定外の費用を防ぐための確認ポイント
想定外の費用を防ぐには、リソースの拡張に上限を設定できるか、上限に達した際に通知を受け取れるかを事前に確認することが有効です。セール前にあらかじめ想定されるアクセス数を提供会社に伝えておくことも役立ちます。あわせて、想定を超えるアクセスが発生した場合の対応フローを事前に決めておくと、当日の混乱を防ぎやすくなります。
あわせて、セール終了後にリソースが自動で縮小される設定になっているかも確認し、利用状況を定期的に振り返る運用を取り入れることが望まれます。過去のセール実績をもとに、次回の想定アクセス数を事前に見積もっておくことも費用管理に役立ちます。
医療法人でのIaaS運用における懸念点
医療法人では、患者情報を扱う特性上、運用面での不具合が懸念点として挙がります。
運用面で不具合が起こりやすい懸念
医療法人でIaaSを運用する際、電子カルテなどのシステムとの連携が不十分だと、データの反映が遅れたり、一部の情報が欠損したりする懸念があります。原因は連携設定の不備や、双方のシステム更新のタイミングのずれなど複数考えられます。データの欠損に気づかないまま診療業務が進むと、後から情報の整合性を確認する作業が発生する懸念もあります。
また、アクセス権限の設定が適切でない場合、本来閲覧できない部署の担当者が患者情報を閲覧できてしまう懸念もあります。権限設定は定期的に見直す必要があります。医療機関特有のガイドラインに沿った運用ができているかも、定期的に確認しておきたい項目です。
不具合発生時に備える確認視点
不具合が発生した際に早期に気づけるよう、エラーの検知や通知の仕組みが整っているかを確認しておくことが重要です。あわせて、データが欠損した場合に復元できる仕組みがあるかも確認しておく必要があります。復元にかかる時間や、復元できる範囲についても、事前にベンダーへ確認しておくと安心です。
権限管理については、部署異動や退職があった際に速やかに権限を見直せる運用ルールを整えておくことが、情報漏えいの懸念を減らすことにつながります。定期的な権限の棚卸しを行う担当者を決めておくことも、見直し漏れを防ぐ一助になります。特定の担当者だけに権限管理を任せず、複数人で確認できる体制を整えておくことも、見落としを防ぐうえで有効です。
業種特有の懸念に配慮したいIaaS製品の選択肢
ここでは、段階的な移行やリソース管理のしやすさに配慮したいIaaS製品を紹介します。業種特有の懸念点と照らし合わせながら比較検討する際の参考にしてください。
ベアメタルクラウド
- 用途に合わせてパブリック/プライベート、仮想/物理を選択可能
- データ転送料無料・10GbpsバックボーンNWで通信量が多くても安心
- 専門的なエンジニアによる「24時間365日」のサポート体制
株式会社リンクが提供する「ベアメタルクラウド」は、物理サーバをクラウドの操作感で利用できるIaaSです。仮想化のオーバーヘッドを抑えた構成のため、基幹システムの移行にあたって安定した処理性能を求める製造業などの企業の選択肢になります。管理画面からサーバ台数を調整できます。
地域エッジクラウド タイプV
- 定額・シンプルなVMware採用クラウド
- 国内法に準拠した高信頼のクラウド基盤
- 豊富なネットワーク接続メニュー
NTT東日本株式会社が提供する「地域エッジクラウド タイプV」は、地域データセンターを拠点としたIaaSです。利用地域に近い拠点で基盤を構築できるため、店舗数の多いEC通販や小売業など、拠点ごとのリソース管理を懸念する企業の選択肢になります。必要なリソースを組み合わせて構成できます。
株式会社USEN ICT Solutionsのクラウドプラットフォーム
- ライセンスの発行から環境構築及び運用監視まで提案可能
- SaaS型のファイルサーバやバックアップとのサービス比較ができる
- 貴社に最適なクラウドサービスをご提案いたします
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供する「株式会社USEN ICT Solutionsのクラウドプラットフォーム」は、企業のシステム基盤をクラウド上に構築できるIaaSです。既存システムとの連携を見据えた構成にも対応しており、業種特有の要件にあわせてリソースを調整しながら運用できます。
FUJITSUHybridITServiceFJcloud (富士通株式会社)
- 国内DC運用でデータ国外流出リスクを低減。
- 4モデルから最適なクラウド環境を選択可能。
- オンプレミスからクラウドへそのまま移行、高信頼な運用。
CUVICmc2 (伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)
- SAP ERPに最適化されたサービス
- 業界問わず中堅から大企業まで採用
- 基幹系システム(本番系含む)の稼働先として利用
まとめ
IaaSの懸念点は業種によって異なり、製造業では移行時の連携、金融機関では要件確認の不足、EC通販では想定外の費用、医療法人では運用不具合が代表的です。自社の業種特有の懸念を整理したうえで、資料請求を活用しながら比較検討を進めてみてください。懸念点を事前に把握しておくことが、導入後のトラブルを減らす第一歩になります。業種特有の事情に詳しい提供会社へ相談することも、懸念の解消につながる選択肢の一つです。同じ業種の他社事例を参考にする際も、自社の条件との違いを踏まえたうえで活用することが望まれます。導入後も定期的に業種特有の懸念点を見直し、必要に応じて運用を改善していく姿勢が大切です。


