IaaS運用で起こりやすい失敗の全体像
個別のケースを見る前に、運用体制の不備から生じる失敗の傾向と、失敗を防ぐための基本的な考え方を整理しておきます。
運用体制の不備から生じる失敗の傾向
IaaSの運用で起こる失敗の多くは、担当者の不足や役割分担のあいまいさに起因します。監視や設定変更を行う担当者が明確でないと、対応が後手に回りやすくなります。単一の原因に限らず、体制と運用ルールの両方が影響するケースも見られます。表面的な事象だけを見て対処すると、同じ失敗が形を変えて再発する懸念もあります。
そのため、失敗の事例を確認する際は、特定の担当者の力量不足として片付けるのではなく、体制やルールに改善の余地がないかという視点で捉えることが有効です。組織全体で対応する姿勢が、再発防止につながります。特定の担当者に責任を押しつける形での振り返りは、根本的な改善につながりにくい点にも注意が必要です。
失敗を防ぐための基本的な考え方
失敗を防ぐには、運用ルールを文書化し、担当者が変わっても同じ手順で対応できる状態を保つことが基本になります。属人的な運用は、担当者の異動や退職時に混乱を招きやすくなります。
あわせて、定期的に運用状況を振り返り、想定していなかった事象が起きていないかを確認する機会を設けることも重要です。振り返りの結果は関係者で共有し、次の対応に生かすことが望まれます。失敗の記録を蓄積しておくことで、同様の事象が起きた際の対応スピードを高めることにもつながります。記録は担当者だけでなく、関係者全員が参照できる場所に残しておくことが望まれます。
情シス1人体制で起こりやすい運用の失敗
情シス担当が1人しかいない体制では、監視や運用が行き届かなくなる失敗が起こりやすくなります。
監視・運用が回らなくなる失敗のパターン
情シス担当が1人の場合、日常業務に追われて監視が後回しになったり、担当者の休暇中に異常への対応が遅れたりする失敗が起こる場合があります。担当者1人に業務が集中すると、通知の見落としが発生しやすくなります。夜間や休日に異常が発生した場合、翌営業日まで気づかないまま放置される懸念もあります。
また、担当者が独自の判断で設定を行っていると、他の人が状況を把握できず、担当者不在時に何も対応できない事態につながる懸念もあります。業務量が処理能力を超えると、些細な異常も見落とされやすくなります。特に繁忙期に他の業務と重なると、監視作業が後回しになりやすい点にも注意が必要です。
属人化を防ぐためのポイント
属人化を防ぐには、監視や通知の仕組みを自動化し、担当者が常時画面を見ていなくても異常に気づける体制を整えることが有効です。加えて、定型作業を自動化できれば、担当者の負担を軽減しやすくなります。自動化する範囲を広げすぎると、想定外の事象に気づきにくくなるため、確認体制もあわせて整えることが望まれます。
あわせて、操作手順や設定内容を文書化し、緊急時に他の担当者やベンダーが状況を把握できるようにしておくことも欠かせません。定期的にサポート窓口への相談も活用することが望まれます。担当者が抱え込みやすい業務を洗い出し、外部への委託を検討することも選択肢の一つです。
情シス不在で起こりやすい運用の失敗
専任の情シス担当がいない企業では、セキュリティ設定が不十分なまま運用が続く失敗が懸念されます。
セキュリティ設定が不十分になる失敗
情シスが不在の企業では、初期設定のまま運用を続けてしまい、アクセス制御や通信の暗号化設定が十分でない状態になる失敗が起こる場合があります。専門知識がないまま設定を進めると、意図しない範囲まで公開されてしまう懸念もあります。デフォルト設定のまま運用を続けると、外部からアクセス可能な状態が長期間続いてしまう場合もあります。
また、設定を確認する担当者がいないため、不備に気づかないまま長期間運用が続くケースも見られます。定期的な確認を行う仕組みがないと、問題が発覚するまで時間がかかる懸念があります。外部からの指摘や監査で初めて不備が判明するケースも見られ、発覚するタイミングが遅れるほど対応の負担も大きくなりやすくなります。
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設定不備を防ぐための確認ポイント
設定不備を防ぐには、初期設定を代行してもらえるサービスを活用し、専門知識がなくても最低限の安全性を確保できる状態から運用を始めることが有効です。設定内容は導入時に確認しておく必要があります。
あわせて、定期的に設定状況を見直す機会を設け、必要に応じて情報システムの専門部署やベンダーへ相談する体制を整えておくことが、不備の早期発見につながります。専門知識を持つ第三者に定期的な確認を依頼することも、有効な対策の一つです。設定チェックリストを用意しておけば、確認漏れを防ぎながら効率的に見直しを進めやすくなります。
多拠点運用で起こりやすい権限設定の失敗
複数拠点からアクセスする体制では、権限設定が複雑になり、管理が混乱する失敗が起こる場合があります。
権限設定が混乱する失敗のパターン
拠点ごとに個別で権限を設定していくと、誰がどこまでの操作を行えるのか把握しづらくなり、意図しない権限が付与されたまま放置される失敗が起こる場合があります。拠点が増えるほど、管理の複雑さも増していきます。拠点ごとに担当者が異なる場合、権限設定の基準が拠点によってばらつく懸念もあります。
また、拠点担当者が独自に権限を追加してしまうと、本社側で全体の権限状況を把握できなくなる懸念もあります。権限管理が分散すると、誰が責任を持って確認するのかがあいまいになりやすくなります。退職者のアカウントが削除されないまま残ってしまう懸念も、拠点数が多い体制では起こりやすくなります。
権限管理を整理する
権限管理の混乱を防ぐには、拠点ごとに個別管理するのではなく、本社側で一元的に権限を把握できる仕組みを整えることが有効です。権限付与のルールをあらかじめ定めておくことも重要です。
あわせて、定期的に権限の棚卸しを行い、不要になった権限を削除する運用を取り入れることで、混乱を防ぎやすくなります。担当者の異動時には、権限の見直しを忘れずに行う仕組みも欠かせません。棚卸しの結果を記録として残しておけば、次回確認時の比較材料としても役立ちます。
情シスと開発部門の間で起こりやすい構成管理の失敗
情シス部門と開発部門で役割を分けている体制では、構成管理をめぐる認識のずれから失敗が生じる場合があります。
構成管理をめぐる認識のずれ
情シスがインフラを管理し、開発部門が個別の環境を利用する体制では、開発部門が独自に環境を追加した結果、情シス側が把握していない構成が増える失敗が起こる場合があります。管理外の構成が増えると、セキュリティ上の懸念にもつながります。開発部門が善意で追加した構成であっても、情シス側が把握していなければ、監視対象から漏れてしまう懸念があります。
また、双方の間で情報共有が不足していると、変更内容が伝わらず、意図しない設定変更が本番環境に影響を及ぼす懸念もあります。責任範囲があいまいなまま運用が進むと、対応の遅れにつながります。障害発生時にどちらの部門が一次対応を担うのか事前に決めていないと、原因の切り分けに時間がかかる懸念もあります。
認識のずれを防ぐ仕組みづくり
認識のずれを防ぐには、情シスと開発部門の間で構成変更の情報を共有する仕組みを整えることが有効です。変更履歴を双方が確認できる状態にしておくと、把握漏れを減らしやすくなります。
あわせて、定期的に情報共有の場を設け、双方の運用状況をすり合わせる機会を持つことも重要です。役割分担を明文化しておくことで、責任範囲のあいまいさを解消しやすくなります。双方の担当者が同じ情報を見ながら議論できる環境を整えることも、認識のずれを防ぐ一助になります。
運用の属人化を防ぎやすいIaaS製品の選択肢
ここでは、監視や権限管理を一元的に把握しやすく、少人数の体制でも運用しやすいIaaS製品を紹介します。運用失敗を防ぐための体制づくりにあわせて比較検討する際の参考にしてください。
Nutanix基盤のIaaS miteneCloud
- バックボーン回線に直接接続し、冗長を備えた高速で安定した通信
- 転送量に応じた課金は発生しないので、コストを気にせず利用可能
- 最適な地域でバックアップ用途として、DR/BCP対策にも活用可能
ミテネインターネット株式会社が提供する「Nutanix基盤のIaaS miteneCloud」は、Nutanixのハイパーコンバージド基盤を採用したIaaSです。仮想サーバやストレージを一つの管理画面で組み合わせて利用できるため、情シス担当者が少ない体制でも運用状況を把握しやすくなっています。国内データセンターでの運用に対応しています。
地域エッジクラウド タイプV
- 定額・シンプルなVMware採用クラウド
- 国内法に準拠した高信頼のクラウド基盤
- 豊富なネットワーク接続メニュー
NTT東日本株式会社が提供する「地域エッジクラウド タイプV」は、地域データセンターを拠点としたIaaSです。拠点ごとの利用状況を把握しながら基盤を構築できるため、多拠点にまたがる体制で権限管理を一元化したい企業の選択肢になります。必要なリソースを組み合わせて構成できます。
株式会社USEN ICT Solutionsのクラウドプラットフォーム
- ライセンスの発行から環境構築及び運用監視まで提案可能
- SaaS型のファイルサーバやバックアップとのサービス比較ができる
- 貴社に最適なクラウドサービスをご提案いたします
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供する「株式会社USEN ICT Solutionsのクラウドプラットフォーム」は、企業のシステム基盤をクラウド上に構築できるIaaSです。情シス部門と開発部門で利用範囲を分けて運用したい場合にも対応しており、体制にあわせてリソースを調整できます。
さくらの専用サーバPHY (さくらインターネット株式会社)
- 複数ネットワーク接続、オンプレミス構築が可能
- サーバー購入から設定までワンストップ処理
- 全モデルで電源・ネットワークスイッチ冗長化、障害に強い構成
IDCFクラウドコンテナ (株式会社IDCフロンティア)
- Rancher Prime基盤のどこでも構築可能なKubernetesサービス
- 追加料金なしで日本語サポート提供
- IDCFクラウドで複数インフラを一元管理。
まとめ
IaaSの運用で起こりやすい失敗は、情シス1人体制での監視不足、情シス不在でのセキュリティ設定の不備、多拠点での権限混乱、部門間の構成管理のずれなど、体制に起因するものが多く見られます。運用ルールの整備と定期的な見直しを通じて、失敗を防ぎながら運用を続けてみてください。失敗の兆候に早めに気づき、対応する体制を整えることが、安定した運用につながります。体制の見直しは一度きりではなく、組織の変化にあわせて継続的に行うことが望まれます。失敗を個人の問題として片付けず、組織として改善する姿勢を持ち続けることが、長期的な安定運用につながります。


