運用体制から逆算してツールを選ぶ
ノーコード・ローコード開発ツールは、現場の社員でもアプリを作れる点が特徴です。その分、作成と管理の役割をあいまいにしたまま導入すると、運用の負担が一部の人に偏る恐れがあります。まずは体制を決めてから、必要な機能を洗い出しましょう。
アプリを作る人と管理する人を先に決める
導入前に決めておきたいのは、アプリを作成する人、利用者を管理する人、ベンダーとやり取りする人の3つの役割です。小規模な会社では1人が兼任する場合もありますが、役割を書き出しておくだけでも、必要な管理機能を判断しやすくなります。
製品によっては、管理者とアプリ作成者の権限を分けて設定できます。自社で想定する役割分担に沿って権限を設定できるかを、試用の段階で確認しておきましょう。役割ごとに操作できる範囲を実際の画面で確かめると、導入後の設定作業も見通しやすくなります。
管理者に必要な作業量を見積もる
ツールの管理者は、利用者の追加や削除、権限の変更、アプリの棚卸し、ベンダーからのお知らせの確認といった作業を定期的に行います。作業の頻度は、利用人数や組織変更の多さによって変わります。導入前に月あたりの作業時間を見積もっておくと、体制に無理がないか判断できます。
見積もりの際は、人事システムや社内の認証基盤と連携し、利用者情報を自動で同期できるかも確認しましょう。自動化できる作業が増えるほど、少人数でも管理を続けやすくなります。
情シスが1人または不在の運用体制で確認したい点
情シス担当が1人の会社や、専任者がいない会社では、ツールの管理に割ける時間が限られます。管理画面のわかりやすさと、社外の支援をどこまで受けられるかを中心に比較しましょう。担当者に作業が集中しない工夫もあわせて紹介します。
管理画面のわかりやすさとテンプレートの有無
管理画面で利用者や権限の設定をまとめて確認できる製品は、専門知識が少ない担当者でも状況を把握しやすくなります。試用の際は、利用者の追加から権限の付与、アプリの公開までを担当者自身が操作し、迷う箇所がないかを確かめましょう。
業務別のテンプレートが用意されていれば、ゼロからアプリを設計する手間を減らせます。テンプレートをそのまま使うのではなく、自社の項目にあわせて修正できるかも確認しましょう。操作手順を解説したヘルプページや動画の有無も、自力で運用する際の支えです。
ベンダーや販売パートナーの支援範囲
情シスが不在の会社では、社外の支援をどこまで受けられるかが運用の安定性に関わります。問い合わせ窓口での操作案内、初期設定の支援、アプリ作成の代行、運用ルールづくりの相談など、支援の内容は製品や契約によって異なります。
「サポートあり」という表記だけで判断せず、どの作業を誰が行うのかを契約前に具体的に確認しましょう。有償の支援を利用する場合は、費用と支援期間もあわせて確かめておくと、導入後の予算計画を立てやすくなります。
1人の担当者に依存しない仕組み
情シス担当が1人の場合、その担当者が不在になると設定変更や問い合わせ対応が止まる可能性があります。管理者権限を複数人に付与できるか、操作手順や設定内容を社内で共有できるかを確認しておきましょう。
アプリごとに作成者と目的、更新日を記録する台帳を用意しておくと、引き継ぎの際に役立ちます。業務部門にも簡単な設定変更を任せられるよう、権限と手順を整理しておけば、担当者1人に作業が集中する状態を避けやすくなります。
多拠点のアプリを本社で一括管理する仕組み
支店や工場など複数の拠点で使う場合、拠点ごとの自由度を残しながら、本社で全体を把握できる仕組みが必要です。権限の設計とアプリの管理方法の両面から、比較の際に確認したい機能を見ていきましょう。
拠点ごとの権限とアプリの公開範囲
多拠点で利用する場合は、拠点ごとにグループを作成し、アプリやデータの公開範囲を分けられるかを確認しましょう。拠点の担当者は自拠点のデータだけを扱い、本社は全拠点のデータを確認できるといった設定ができると、情報の取り扱いを整理しやすくなります。
拠点の統廃合や異動が多い企業では、組織変更のたびに権限を手作業で修正すると負担が大きくなります。組織情報をまとめて更新できる機能があるかも、比較の材料にしましょう。
アプリ一覧と利用状況の把握
本社で一括管理するには、どの拠点でどのアプリが作られ、どの程度使われているかを把握できる必要があります。管理画面でアプリの一覧や作成者、最終更新日、利用者数を確認できるかを試用で確かめましょう。
似た目的のアプリが拠点ごとに作られている場合は、共通のアプリにまとめることで管理の手間を抑えられます。定期的に一覧を見直し、使われていないアプリを整理する運用ルールも決めておきましょう。見直しの頻度は、四半期ごとなど業務の区切りにあわせると続けやすくなります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でノーコード・ローコード開発ツールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
グループ会社のアプリとデータを統合管理する方法
グループ会社がそれぞれアプリを作っている場合、データの形式や管理ルールがばらばらになりやすくなります。統合管理を進めるには、環境の持ち方とデータの整え方を決めることが出発点です。順に確認していきましょう。
環境を共有するか会社ごとに分けるかを判断する
グループ会社の統合管理では、1つの契約環境に各社が参加する方法と、会社ごとに環境を持ち本社が横断して管理する方法があります。前者はデータを集約しやすく、後者は各社の独立性を保ちやすい点が異なります。
どちらを選ぶかは、グループ内でどこまでデータを共有したいか、各社の情報管理ルールがどの程度異なるかによって変わります。複数の環境をまとめて管理できる機能や契約形態の選択肢があるかを、ベンダーに確認しておきましょう。
マスタデータとコード体系をそろえる
グループ全体でデータを集計するには、取引先や商品、部署などのマスタデータ(業務の基本となる共通データ)の形式をそろえる必要があります。会社ごとにコードの付け方が異なると、集計のたびに変換作業が発生します。
統合を進める際は、共通のマスタを本社で管理し、各社のアプリから参照する形を検討しましょう。既存のデータを移行する際は、重複や表記ゆれを事前に整理しておくと、移行後の手作業を減らせます。マスタの更新手順と担当者も文書で定めておくと安心です。
各社の担当者と本社の連絡体制を決める
グループ会社ごとにツールの窓口となる担当者を決め、本社の管理者と定期的に情報を共有する体制を整えましょう。新しいアプリの作成予定や、外部サービスとの連携の計画を事前に共有してもらえば、重複した開発やルール違反を早い段階で把握できます。
連絡体制は、担当者が替わっても続くよう、共有する項目と頻度を文書にしておくことが大切です。各社の担当者が集まる定例会で活用事例を紹介し合うと、グループ全体でノウハウを広げる機会にもなります。
情シスと業務部門で分業する運用体制のコツ
業務部門がアプリを作り、情報システム部門が全体を管理する分業は、ノーコード・ローコード開発ツールの利点を生かしやすい体制です。ただし、役割とルールを決めておかないと、責任の範囲が不明確になる恐れがあります。
作成・承認・公開の役割を分ける
分業体制では、業務部門がアプリを作成し、情報システム部門が内容を確認してから公開する流れが考えられます。公開前に承認を挟めるか、作成中のアプリを本番環境と分けて試せるかは、ツールごとに対応が異なります。
個人情報を扱うアプリや、ほかのシステムと連携するアプリは、情報システム部門の確認を必須にする方法があります。リスクに応じて手続きを変えるという考え方です。どのアプリにも同じ手続きを求めると、確認作業が滞る可能性があるためです。
開発ガイドラインと相談窓口を整える
業務部門が迷わずアプリを作れるよう、項目名の付け方や権限設定の基本、利用してよい外部連携などをまとめた開発ガイドラインを用意しましょう。ガイドラインは最初から完成させる必要はなく、運用しながら改訂していく形でも十分です。
あわせて、困ったときに相談できる社内窓口や、作成者同士が質問し合えるチャットのグループを設けると、ノウハウを共有しやすくなります。よく出る質問をまとめておけば、情報システム部門の負担も抑えられます。
情シスと現場で分担して運用できる開発ツール
アプリを作る人と管理する人を分けて運用することを想定し、業務部門が自ら作成できる製品や、導入・運用を支援するサービスを紹介します。支援範囲や管理機能は、資料請求で具体的に確認しましょう。
キントーン
- AIとノーコードで業務アプリをシュシュッとつくれる
- 部署・業種別ですぐに使えるサンプルアプリ
- プラグイン・連携サービスを組み合わせて業務がより効率的に
サイボウズ株式会社が提供する「キントーン」は、AIとノーコード・ローコードで業務アプリを作成できる業務改善プラットフォームです。部署別や業種別にすぐ使えるサンプルアプリが用意されており、現場の業務にあわせたアプリを作成できます。情シスが1人または不在の会社でも、現場主体で導入を進める際の候補です。プラグインや連携サービスを組み合わせて業務を広げることもできます。ワークフロー自動化やテンプレートの機能を備え、クラウド・SaaSで提供されます。
SmartDB
- ノーコードで業務部門でも開発できます
- 豊富な標準機能で幅広い業務をデジタル化できます
- 大企業ならではの複雑なワークフロー/権限制御に対応できます
株式会社ドリーム・アーツが提供する「SmartDB」は、Webデータベースとワークフロー機能を備えたノーコード開発プラットフォームです。ノーコードで業務部門でも開発できるため、作成は現場、統制は情シスという分業を組み立てる際に検討できます。大企業ならではの複雑なワークフローや権限制御にも対応しており、拠点や部署ごとに公開範囲を分けたい場合の候補です。クラウド・SaaSで提供されます。データベース統合やテンプレートの機能も備えています。
AppSuite
- 多種多様なアプリライブラリから業務に合わせたアプリを選択可能
- 直感操作でデータ編集や検索、並べ替えなどが簡単に行えます
- 集計データをポータルで共有してスムーズに社内で情報共有可能
株式会社ネオジャパンが提供する「AppSuite(アップスイート)」は、カスタムメイド型のノーコード業務アプリ作成ツールです。多種多様なアプリライブラリから業務にあうアプリを選べるため、ゼロから設計せずにアプリを用意できます。直感的な操作でデータの編集や検索、並べ替えが行え、集計データをポータルで共有すれば、多拠点の情報を本社で確認する運用にも活用できます。オンプレミス、クラウド、パッケージソフト、SaaSで提供されます。
パーソルクロステクノロジー株式会社のシステムインテグレーションサービス
- パッケージ製品ではフィットしきれない業務課題も課題解決へ
- 現状整理や構想策定、上流~保守までを一貫して伴走支援
- 調査・ツール選定や外部システム連携まで最適な全体構成を実現
パーソルクロステクノロジー株式会社が提供する「システムインテグレーションサービス」は、SIer(システム開発を請け負う事業者)によるサービスです。本質的な問題検知から課題解決までをワンストップで提供します。現状整理や構想策定から上流工程、保守までを一貫して伴走支援します。調査やツール選定、外部システム連携も支援対象のため、社内に専任者が少ない会社で外部の力を組み合わせたい場合の選択肢です。オンプレミス、クラウド、パッケージソフト、ハードウェアなど幅広い形態に対応します。
RapidTable (株式会社Rapid Table)
- ドラッグ&ドロップで誰でも簡単に入力フォームを作成
- データビジュアライゼーションでビジネス課題を可視化
- 画像や動画、音声ファイルなどあらゆるデータを一元管理
まとめ
ノーコード・ローコード開発ツールを選ぶ際は、アプリを作る人と管理する人の役割を先に決めましょう。そのうえで、自社の体制で無理なく運用できるかを確認することが大切です。情シスが少人数なら管理のしやすさと社外支援、多拠点やグループ会社なら一元管理の仕組み、分業体制なら承認とルールづくりが判断の軸です。
自社の体制に照らして、候補の製品を資料請求で比較してみてください。

