ROA(総資産利益率)とは
ROAとはどのような指標なのでしょうか。その概要と数値を判断する際のポイントを解説します。
ROA:総資産に対する企業の収益性
ROA(Return On Assets)は「総資産利益率」と呼ばれ、総資産に対する企業の収益性をあらわします。自己資本(返済義務のない資本)と他人資本(借入金や社債など)を含めた総資産を使い、どの程度の利益を上げたかを示す指標です。
ROAの数値が高いほど、効率的な経営だといえるでしょう。より少ない総資産で多くの利益を上げれば、それだけROAは高くなります。ただし銀行からの借入が多い場合でも、当期の純利益が高ければROAは高くなります。そのため、ROAだけでは企業の経営状態の良し悪しを判断できません。
目安となる数値:企業全体で5%程度
ROA(%)=(当期純利益÷総資産)×100
「当期純利益」とは、会計期間内の企業活動によるすべての利益から法人税などを控除した純粋な利益を指します。上の計算式で求めた結果、ROAが5%程度ならば優良企業とされますが、これはあくまでも企業全体の目安です。ROAの目標値は、業種別の平均値をもとに設定されなければなりません。総資産額の多寡は業種の影響が大きいためです。
例えば、製造業や不動産業などでは設備や不動産資産で総資産の割合が大きくなり、結果としてROAは低くなります。反対に、このような資産を必要としない業種ではROAが高くなるでしょう。よってROAは「同業種の企業」という条件下での比較、または同社を年度別に比較するなどの場合に有効といえます。
なお、経済産業省の資料によれば、日本の上場企業のROAは2018年で3.9%となっています。
参考:事務局説明資料|経済産業政策局 産業資金課(2019年11月)
ROAを改善する方法
それでは、ROAの数値を上げるにはどうしたらよいのでしょうか。改善方法は2つ挙げられます。
1つめは、当期純利益の割合を増やす方法です。売上高に対する利益が大きくなれば、おのずとROAは改善するでしょう。
2つめは、総資産を減らす方法です。企業で保有する固定資産(建物や機械設備など)の売却や売掛金の譲渡、借入金の返済を行えば、効率よくROAを高められるでしょう。
ROE(自己資本利益率)とは
次に、ROEについて解説します。概要と数値を判断する際のポイントを見ていきましょう。
ROE:自己資本に対する企業の収益性
ROE(Return on Equity)は「自己資本利益率」と呼ばれ、自己資本に対する企業の収益性を示す指標のひとつです。つまり自己資本を使い、どれだけの利益を上げられたかがわかります。ROEが高いほど株主の出資したお金で効率よく、たくさんの利益を出せているといえるでしょう。
目安となる数値:企業全体で10%程度
ROE(%)=(当期純利益÷自己資本)×100
ROEの目安は10%程度とされ、先ほどの経済産業省の資料によれば、日本の上場企業のROEは2018年で9.4%です。目標値を設定するならば、これらの数値を基準にするとよいでしょう。
なお、ROEは以下の数式でも算出が可能です。
- ■ROE = 売上高純利益率(当期純利益÷売上高) × 総資産回転率(売上高÷総資産) × 財務レバレッジ(総資産÷自己資本)
- ※売上高純利益率 × 総資産回転率=ROAなので、以下の計算式でもよい
- ■ROE=ROA×財務レバレッジ
財務レバレッジは、総資産に対して他人資本がどれくらいあるかの割合を示す指標です。総資産が100%自己資本であれば財務レバレッジは1倍、総資産における他人資本の割合が上がれば、比例して財務レバレッジも上昇します。
ROEを改善する方法
それでは、ROEを改善するにはどうしたらよいのでしょうか。これにはROEの計算式にかかる3項目を上昇させる必要があります。
第一に、売上高純利益率を上げることです。かかるコストを削減したり、販路の拡大などで売上を伸ばしたりすれば、売上高純利益率はおのずと上がるでしょう。
第二に、総資産回転率を上げることです。不要な資産や利益に結びつかないような資産・事業の削減により改善するでしょう。
第三に、財務レバレッジを上げることです。つまり他人資本の割合を上げれば解決しますが、企業の経営状態が悪化した場合に大きなリスクにもなりえます。そのため慎重に考えるべきでしょう。
ROAとROEの違い
ROA・ROEの違いがわかったところで、次に、それらの指標が誰にとって有益なのかを見ていきましょう。
ROAは経営者や利害関係者が見る指標
ROAは総資産を使い、どれだけの利益を生み出したかを示します。
総資産は自己資本だけでなく、負債である他人資本も含むため、総合的な経営効率を判断する材料になります。よって経営者や利害関係者(従業員や債権者など)が重視する指標だといえるでしょう。
なお、経営者や利害関係者がROAの数値を見る際は、以下の事柄を念頭に置きましょう。
- ■借金による先行投資はROAが一時的に悪化するものの、将来的には向上する
- ■所有する不動産や保有株の増減など、本業以外の要因でもROAは増減する
ROEは投資家や株主が見る指標
ROEは株主から集めた自己資本を使い、どれだけの利益を生んだかを示します。
投資の利回りの判断基準となるので、投資家や株主が重視する指標といえるでしょう。ROEが高い企業は稼ぐ力があると見なされるので、投資家が投資先を選ぶ際に重視します。株主も、自分の投資したお金がどの程度利益に直結したかを判断できるでしょう。
ただし、投資家や株主はROEだけを見ればいいというのは誤りです。強い経営基盤をもつ企業かを判断するには、ROAも必要です。借入金利と比較し、最低でもそれ以上、さらに同業種の平均的なROA以上であることが判断基準となるでしょう。
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関連用語も解説!ROI・ROICとの違い
ここではROA、ROEの関連用語であるROI、ROICについて見ていきましょう。
ROI(投資利益率)とは
ROI(%)=利益÷投資額×100
ROI(Return on Investment)は「投資利益率」と呼ばれ、投資に対する利益を示す指標です。特定の事業でどれだけの利益が出たかがわかり、数値が高いほど収益性のあるよい投資と判断できます。100%以下なら利益が出ておらず、事業を見直すべきといえるでしょう。
ROIには規模の異なる事業も採算性で比較できる、日々の業務など小規模な施策の効果測定も行えるメリットがあります。しかし長期的な効果検証には向いていない、ブランドイメージなどの数値化不能な価値は評価できないデメリットもありますので覚えておきましょう。
ROIC(投下資本利益率)とは
ROIC(%)=(営業利益×(1–実効税率))÷投下資本×100
- ・資本の「調達」面でのアプローチ……投下資本=株主資本+有利子負債
- ・資本の「運用」面でのアプローチ……投下資本=運転資本+固定資産
ROIC(Return On Invested Capital)は「投下資本利益率」と呼ばれ、投下資本に対する利益を示す指標です。企業全体の収益性、つまり調達資金でどれだけの利益をあげられたかがわかります。上で示したように、調達や運用などアプローチ方法を変えて算出できるのもメリットでしょう。企業評価を行ううえで有効な指標といえます。
しかし、ROICが「投下資本に対する利益」をあらわすならば、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)も同様に思えます。それらの違いは以下にまとめましたので確認してください。
- 【ROIC・ROAの違い】
- ROIC:計算式に営業利益、株主資本と有利子負債などを用いた経営者目線の指標
ROA:計算式に当期純利益と総資産を用いた投資家・株主目線の指標
- 【ROIC・ROEの違い】
- ROIC:計算式に営業利益や借入金などを含めた経営者目線の指標
ROE:計算式に当期純利益を用い、借入金を含めない投資家・株主目線の指標
ROAとROEを活用してよりよい経営を!
ROAは、総資産を使ってどれだけ利益を生んだかをあらわす指標です。それに対し、ROEは自己資本でどれだけ利益を生んだかを示します。
また、企業の収益性を判断する指標のROI・ROICもあわせて覚えておきましょう。ROIは個別投資案件の収益性を示し、ROICは企業全体の収益性をあらわします。
これらは企業経営を左右する重要な財務指標です。よって計算に用いる数値は正確なものでなければなりません。正確な財務諸表の作成には、会計ソフトの活用がおすすめです。日々の取引入力や仕訳の効率化、自動集計・レポート作成、データの一元管理などが行え、お金の流れを明確にできるでしょう。以下のページでは、おすすめの会計ソフトを紹介しています。この機会に導入を検討してはいかがでしょうか。