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IFRSとは?J-GAAPとの違い・メリット・注意点をわかりやすく解説

IFRSとは?J-GAAPとの違い・メリット・注意点をわかりやすく解説

最近、日本でも広がりを見せている「IFRS」とはどのようなものなのでしょうか。会計業務について勉強する中で気になった人は多いでしょう。

この記事ではIFRSの概要から日本会計基準との違い、メリット・デメリット、導入時の注意点まで幅広く解説します。より自社に適した会計基準を考える参考にしてください。

この記事は2025年11月時点の情報に基づいて編集しています。
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目次

    IFRSの導入には、業務プロセスとシステムの変更が不可欠です。既存の業務フローを見直すとともに、システムの改修や新たなシステムの導入が必要になる場合があります。 また、IFRSの任意適用は連結財務諸表に限られ、個別財務諸表はJ-GAAPで作成されます。このため、経理担当者は両基準に対応できる高度な知識が求められます。経営陣もIFRSに基づく連結利益とJ-GAAPに基づく個別利益の両方を把握して意思決定を行う必要があり、経営判断はより複雑になります。
    こうした課題に対応するためには、IFRSとJ-GAAPの会計処理を可能な限り整合させ、組替調整を最小化することが重要です。さらにシステムを活用して業務を自動化し、経営層が必要な情報を一目で確認できる仕組みを構築することが重要です。

    IFRSとは

    さっそくIFRSの概要を見ていきましょう。

    広義のIFRS

    IASBの前身である「国際会計基準委員会(International Accounting Standards Committee:IASC)」が策定した会計基準である「国際会計基準International Accounting Standards:IAS)」の一部は、現在も有効な会計基準です。

    実務上IFRSというときは、この「IAS」と「IFRS」の2つの会計基準に加えて、IASの解釈指針である「SIC解釈指針」とIFRSの解釈指針である「IFRIC解釈指針」の2つの解釈指針の総称として使用されることが多く、「国際会計基準」と呼ばれることがあります。

    適用状況

    2005年に欧州連合(EU)で域内上場企業に対してIFRSの採用が義務付けられたことをきっかけに、世界各国へと一気に普及しました。現在では150を超える国や地域で採用されており、国際的な会計基準として定着しています。

    日本でも2010年にIFRSの任意適用が始まり、東証上場企業のうち280社を超える企業がIFRSを適用しています。適用企業は時価総額の大きい企業が中心ですが、近年では業種や企業規模を問わず、適用が広がりを見せています。

    J-GAAP(日本基準)とIFRSの違い

    GAAPとは「Generally Accepted Accounting Principles」の略で、J-GAAPは日本の会計基準をさし、「ジェイギャップ」と読みます。 J-GAAPでは「細則主義」を採用しています。「細則主義」とは詳細な判断基準や、判断の目安として数値基準が定められている方針です。

    一方でIFRSは「原則主義」を採用しています。「原則主義」とは考え方の原理原則のみを記載し、判断基準や数値基準を定めない方針です。詳細な基準を定めないことで、各国の商慣習や法規制に抵触しないようにし、より多くの国で採用できるように原則主義を採用しています。

    次に、会計上の利益概念について説明します。 J-GAAPでは「収益・費用アプローチ」が採用されています。これはフローである期間損益計算を重視する考え方で、「収益」と「費用」の差額を「利益」として算定します。

    一方、IFRSでは「資産・負債アプローチ」が採用されています。こちらはストックである「資産」と「負債」の増減に着目し、その差額である「純資産」の変動額を「利益」として捉えます。具体的には、期首から期末までの純資産の増加分を「利益」として計算します。近年では、IFRSの影響を受け、J-GAAPにおいても「資産・負債アプローチ」への移行が徐々に進んでいます。

    項目IFRSJ-GAAP
    基本設計原則主義細則主義
    利益計算のアプローチ資産・負債アプローチ
    (純資産の変動=利益)
    収益・費用アプローチ
    (収益-費用=利益)
    重視するもの資産・負債の増減(ストック情報)期間損益計算(フロー情報)
    財務諸表の特徴投資家への情報提供を最重視。国際的な比較可能性を重視投資家への情報提供に加え、配当規制・債権者保護・課税所得計算など国内法制と密接に連動
    適用範囲国際的に広く採用日本国内

    IFRSとJ-GAAPの差異縮小の流れ

    日本やアメリカでは、IFRSを強制適用せず、自国基準を維持しつつもIFRSとの相違を縮小する「コンバージェンス」が2010年代以降進められてきました。近年では、IFRS第15号に対応する新収益認識基準が2021年4月1日以降開始の事業年度から強制適用されました。さらに、IFRS第16号とほぼ同等の新リース基準も2024年9月に公表され、2027年4月1日以降開始の事業年度から強制適用される予定です。

    一方、「のれん」の会計処理については、現在も議論が続いています。J-GAAPでは、のれんは効果の及ぶ期間にわたり償却し、償却費は営業費用に計上されます。これに対し、IFRSでは償却は行われず、少なくとも年1回の減損テストが求められます。

    そのため、J-GAAPではのれんが償却により段階的に減少するのに対し、IFRSでは減損が発生しない限り減少しません。USGAAP(米国基準)においてものれんは非償却とされていますが、この論点については国際的にも長らく議論が続いており、「償却復活論」も浮上しています。

    現在日本では「のれんの非償却を含めた財務報告の在り方を検討する」との政府方針が掲げられ、日本の会計基準を策定している会計基準委員会(ASBJ)での審議が始まっています。

    IFRSのメリット・デメリット

    続いて、IFRSのメリットとデメリットを紹介します。

    メリット:有用性の高い財務諸表を提供できる

    IFRSは世界中で利用されている会計基準です。つまり、IFRSを導入すればグローバルレベルで有用な財務諸表を提供できることになります。

    これは、特にグローバルに事業展開したり資金調達する企業にとって重要なポイントです。IFRSに基づいた財務諸表なら海外投資家などの利害関係者に重要な情報を提供できるようになります。

    また、国内外の支社・拠点における会計基準がすべて同じであれば管理が楽になるのもメリットです。グループ企業全体の財務報告プロセスを効率化・透明化できます。

    デメリット:導入するのに時間と労力がかかる

    日本の企業がIFRSを導入する場合は多くの時間と労力を要します。例えば、売上計上基準では、J-GAAPでは一定の場合の国内販売については出荷基準が認められていますが、IFRSではこの例外処理は認められていません。販売先から検収書等を入手しなければならなくなります。

    このように、IFRSの導入にあたっては社内ルールや内部統制、報告プロセスの変更に加え、販売先にもIFRSに対応した証憑の提出を依頼する必要があります。そのため、会計システムやERPをIFRS対応のものへ切り替えることも検討しなければなりません。

    また、IFRSは原則主義のため詳細な細則が定められておらず、原則に基づいて企業が自ら判断する必要があります。したがって、経営陣や会計担当者には高度な専門知識が求められます。さらに、どのような判断を行ったのか、原則に基づいて自社が取ったポジションを明確に記録しておくことも重要です。加えて、J-GAAPと比べて公正価値(時価評価)を求められる場面が多く、市場環境の変動によって財務数値が影響を受けやすいというデメリットもあります。

    まとめると、IFRSは「海外子会社の管理」「比較可能性」「国際資本市場へのアクセス」には有利だが、「導入・運用コスト」や「判断の難しさ」、「業績の変動性」といったリスクを伴うことになります。

    メリットデメリット
    ■国際的な比較可能性
    世界共通の基準で財務諸表を作成でき、海外投資家や金融機関との比較や資金調達が容易になります。
    ■導入・運用コスト
    システム改修や教育、開示整備に多額のコストが必要であり、改訂対応も継続的に発生します。
    ■投資家への透明性向上
    公正価値や包括利益を重視することで、企業価値をより正確に反映でき、投資家に対して高い透明性を確保できます。
    ■会計処理の複雑化
    原則主義のため判断が難しく、高度な会計知識と経験が不可欠です。恣意的な判断リスクも増大します。
    ■M&A・海外上場対応
    海外企業との財務比較が容易になり、M&Aや海外市場での上場にも柔軟に対応できます。
    ■ 税務・法制度との乖離
    法人税法や会社法はJ-GAAPを前提としており、個別財務諸表はJ-GAAPで作成が必要となるため、二重負担が発生します。
    ■経営管理への活用
    グローバル子会社を含めた一元的な会計基準の適用が可能となり、経営実態に即した指標を把握できます。
    ■業績の変動が大きく見える
    公正価値評価により市場環境の影響を受けやすく、投資家に業績の不安定さを印象づける可能性があります。

    IFRSの導入を検討する際の注意点

    最後に、IFRSの導入を検討する際に注意すべきポイントを2つ解説します。

    個別財務諸表はJ-GAAP

    IFRSの任意適用が認められているのは連結財務諸表であり、個別財務諸表はJ-GAAPで作成することが求められます。IFRSが「投資家への情報提供」を主な目的としているのに対し、個別財務諸表は「配当規制」「債権者保護」「課税所得の計算」など、国内の法制度と密接に結びついています。そのため、日本では個別財務諸表においてJ-GAAPが維持されており、税務申告や配当規制などもJ-GAAPを基準として運用されています。

    このような背景から、同一の取引であっても連結(IFRS)と個別(J-GAAP)で処理を作り分ける必要があり、システム面や実務面での負担は大きくなります。特に子会社数の多いグループでは、調整や突合作業が膨大となり、経理部門への負荷が深刻化する傾向にあります。

    さらに、経理担当者にはIFRSとJ-GAAPの双方を理解して処理できる高度な知識が求められます。経営陣も「連結(IFRS)の利益」と「個別(J-GAAP)の利益」の両方を把握したうえで意思決定を行う必要があり、経営判断の基準は一層複雑になります。

    実務上は、期中はJ-GAAPに基づいて記帳を行い、税務申告書や個別財務諸表を作成します。その後、連結財務諸表を作成する段階で、個別財務諸表をIFRS基準に組み替えてから連結処理を行うのが一般的です。つまり、日本基準の連結決算に、IFRSへの組替え作業が追加されるイメージです。

    導入時初年度の注意点

    IFRSを導入する年度には、IFRS第1号「初度適用」に従う必要があります。簡単に言えば、「これまでもIFRSを適用してきたかのように見せる」ための基準です。具体的には、過去の財務諸表をIFRSに対応させて作り直す遡及的な作業が求められます。初めてIFRSに基づく財務諸表を作成する場合、原則として2期分のIFRS財務諸表を開示する必要があります。

    この規則の目的は、利害関係者が過去と現在の業績を比較しやすくすることです。財務諸表を通じて知りたいのは業績の推移であり、現状だけを示しても意味がありません。そのため、過去情報をIFRS基準で整える遡及作業が不可欠となります。

    遡及作業を伴うため、IFRS導入プロジェクトは通常数年単位で計画され、最低でも3年以上を要することが一般的です。なお、初度適用に際してはIFRS上いくつかの免除規定が設けられており、これらをうまく活用して対応しましょう。

    メリット・デメリットを理解した上でIFRSを導入しよう

    IFRSは、グローバルに事業展開したり資金調達する企業にとって重要な国際会計基準です。IFRSを導入すれば有用性の高い財務諸表を海外の投資家などの利害関係者に提示できるようになります。

    しかし、J-GAAPと差異ため、導入時の負担は侮れません。また導入後もJ-GAAPとIFRS二重で財務諸表を作成する必要があり、負担が大きくなります。導入すべきかどうかはメリット・デメリットのどちらが大きいかによって左右されます。自社の状態を踏まえて導入するか否かを決めましょう。

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