建設業界の会計業務が複雑化している理由
なぜ建設業界の会計業務が複雑化しているか、理由を以下3つのポイントにわけて解説します。
- ・着工から完成が長期
- ・建設業特有の勘定科目を使用
- ・複数現場の同時進行
着工から完成が長期
工事現場における工期は、造る建物の規模が大きくなるにつれて長期になりがちです。建設業における会計業務の考え方には、以下の2つの考え方が存在します。
工事完成基準:請け負った工事の売上・原価を、工事の完成・引き渡す日に一括計上する会計方法
工事進行基準:請け負った工事の売上・原価を、工事進行の都度もしくは進行割合に応じて計上する会計方法
上記のどちらを採用するかはそれぞれの企業で異なりますが、工期が長期であればあるほど会計業務も複雑化してしまうのです。
建設業特有の勘定科目を使用
一般の会計業務では使われない、建設業特有の勘定科目が存在します。主に、以下のとおりです。
- ・完成工事原価
- ・完成工事高
- ・完成工事未収金
- ・未成工事支出金
- ・完成工事総利益
- ・工事未払金
建設業界で長年会計業務に携わった人でないと、上記のような勘定科目はわかりません。そのため、業務の属人化が進んだり効率が悪くなったりします。
複数現場の同時進行
建設業界では、1社が複数の工事現場を受けもつ事例が多々あります。プロジェクトA、プロジェクトBなどといった工事現場を同時進行した場合、会計業務は現場ごとに処理しなければなりません。
さらに、工期の遅れが発生してしまうと、さらに会計業務が複雑化します。このような特徴から、建設業界の会計業務に精通した専門家がいなければ、複雑な業務を進行させることが難しいでしょう。
建設業向け会計ソフト導入のメリット
建設業向けの会計ソフトを導入することで得られるメリットは、以下のとおりです。
- ・工事現場ごとに会計処理ができる
- ・複雑な勘定科目をわかりやすく処理できる
- ・属人化を防ぎ業務効率化につながる
それぞれ解説します。
工事現場ごとに会計処理ができる
建設業向けの会計ソフトでは、業務の複雑化を防ぐために、工事現場ごとの対応が可能です。
製品のなかには、以下のような機能があります。
- ・工事名や請負金額などの工事情報の登録機能
- ・工事台帳機能
- ・現場登録機能
現場ごとのさまざまな状況が一目で判断でき、会計処理をスムーズに進行できます。
複雑な勘定科目をわかりやすく処理できる
会計ソフトの導入で、建設業特有の勘定科目に対応できることもメリットの一つです。複雑な勘定科目にどう対応してよいかわからないときのために、以下の機能があります。
- ・キーボードのカーソルキーで項目選択する機能
- ・自動起票機能
- ・入力ミスをした際のリカバリー機能
また、処理方法がわからない場合にリモート操作でサポートしてくれるサービスもあるため、安心して業務を行えるでしょう。
属人化を防ぎ業務効率化につながる
建設業向け会計ソフトの導入で、属人化の防止や業務効率化につながります。操作しやすいインターフェースを導入している製品が多いため、初心者だけでなく長年業界に携わっている従業員にとっても利便性が高いでしょう。
製品により異なりますが、以下のような機能や操作性によって、誰でも容易に専門性の高い建設業の会計業務を行えます。
- ・振替伝票と同じ見た目の操作画面
- ・仕訳入力機能
- ・自動起票機能
- ・自動会計レポート作成機能
- ・財務諸表の自動作成機能
建設業向け会計ソフトを活用することで、日々の会計業務だけでなく、決算に向けて漏れのない処理が可能になるでしょう。
なお、建設業に限らず会計ソフトのメリットを知りたい場合は、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
建設業向け会計ソフトの選び方
実際に建設業向け会計ソフトを導入する際は、以下の選び方を参考にしてみてください。
- ・建設業特有の勘定科目に対応しているか
- ・クラウド型かオンプレミス型か
- ・既存の他システムと連携できるか
- ・直感的な操作ができるか
建設業特有の勘定科目に対応しているか
建設業向け会計ソフトには建設業特有の勘定科目が適応されていることが多いですが、一般の会計ソフトでは対象とされていない場合があるため導入前にしっかり確認しましょう。
製品名や紹介文に「建設」や「建設業」などの文言が入っている製品であれば問題ないでしょう。その他の場合、製品情報を詳しくチェックし、項目があるかやカスタマイズ可能かを確認しておくとよいです。
クラウド型かオンプレミス型か
建設業向けの会計ソフトも一般の会計ソフトと同様に、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。それぞれのメリットは、以下のとおりです。
クラウド型のメリット:導入の手間や初期投資を軽減できる、情報共有しやすい
オンプレミス型のメリット:自社にサーバを構築できるため、セキュリティ対策がしやすい
それぞれメリットだけでなくデメリットもあるため、自社に合った製品を選定してみましょう。
既存の他システムと連携できるか
建設業向けの会計ソフトのなかには、以下のシステムと連携できる製品があります。
- ・業務管理システム
- ・給与管理システム
- ・経理システム
- ・Microsoft Office製品
すでに自社で採用しているシステムと連携ができるか、製品サイトや導入相談で確認してみましょう。
直感的な操作ができるか
会計業務の効率化のために会計ソフトを導入するため、直感的な操作ができるかも選び方の一つです。操作方法において着目するポイントは、以下のとおりです。
- ・ユーザーインターフェースがわかりづらくないか
- ・帳票類のテンプレート機能があるか
- ・無料お試し期間で従業員が実際に操作確認できるか
わかりやすく親切な画面になっているか、資料請求や無料お試し期間を通じて確認しましょう。
また、建設業に限らず会計システム全般の選び方を知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
建設業向け会計ソフトを徹底比較
ここでは、多くの建設業で導入されている会計ソフトを紹介します。
《MJSLINK DX 財務大将》のPOINT
- 管理会計機能が充実し、オプションが豊富な財務システム
- 多彩なモジュールと豊富なオプション
- 建設工事業、公益法人等の業種特有の会計基準にも対応
勘定奉行11(建設業編)
株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供する「勘定奉行11(建設業編)」は、「勘定奉行シリーズ」で有名な財務会計システムです。
建設業界の工事原価管理に特化しており、業務効率化と迅速化をサポートする点を特徴としています。主なサービス内容は、仕訳入力や会計帳票といった建設業会計全般と、債務管理や内部統制などです。クラウド型とオンプレミス型の2種類の製品を展開しています。今までリリースされた勘定奉行シリーズと連携されているため、ほかの勘定奉行シリーズを使用している他部門との業務連携もスムーズでしょう。
PCA建設業会計シリーズ
「PCA建設業会計シリーズ」は、ピー・シー・エー株式会社が提供するクラウド型建設業用会計ソフトです。工事別管理の鍵となる工事・工種マスターを搭載していることを特徴としています。
会計機能の充実をメインサービスとし、ほかには以下の機能が搭載されています。
豊富な連携対応:CSVデータから自動仕訳の作成、各種支払に関する取引など
セキュリティ面:電話・リモートなどのサポートサービス、リカバリ機能、内部統制機能など
視覚的にわかりやすいインターフェース:仕訳検索、ファイル受け入れ・出力機能など
初期費用0円で導入でき、クラウド版では月額料金17,160円(税込み)から、サブスク版では月額9,900円(税込み)から利用可能です。価格シミュレーションや無料体験もあるため、本格導入前に余裕を持って検討できるでしょう。
建設大臣NX
応研株式会社が提供する「建設大臣NX」は、建設会計業務を効率化させることに特化している会計システムです。オンプレミス型とクラウド型の2種類を展開しています。具体的な特徴は以下のとおりです。
- ・工事進行管理や通常の財務管理など日々の業務に対応
- ・直感的に操作できる画面設計を導入
- ・伝票入力後すぐに財務諸表が作成できる
- ・JIIMA認証(電子帳簿ソフト法的要件認証)を取得
また、ほかの「大臣シリーズ」とネットワーク経由で連携できるサービスもあります。すでに同シリーズを使用している場合は、導入・活用がスムーズに行えるでしょう。
スイート建設会計
「スイート建設会計」は、株式会社フォーラムライトが提供する、完全クラウド型対応の建設業向け会計ソフトです。主な特徴は、クラウド型特有の導入のしやすさと、公認会計士によるオンラインサポートに対応している点です。
新規購入する際は、275,000円(税込)がかかりますが、サブスクリプションサービスとして初年度費用が含まれています。そのため、次年度からは年額110,000円(税込み)で継続利用ができる仕組みです。
コストパフォーマンスに優れているだけでなく、日々の建設会計業務で不明な点はプロに聞けるため、はじめて導入する企業に適しています。
建設業向けの会計ソフトで業務効率化を目指そう
建設業向け会計ソフトを導入する際は、メリットや選び方など、製品を比較したうえでの検討をおすすめします。
まずは気になる製品の資料請求をして、製品について詳しく知ることからはじめましょう。