簿記とは
簿記とは、日々の取引など企業活動を数値化して「帳簿に記録すること」です。決算の際には財務諸表となる貸借対照表と損益計算書を作成し、企業にとって必須の業務といえるでしょう。簿記の目的は、企業の維持や発展を図るために、財政状態を明らかにして経営活動に役立てることです。
採用されることが多い傾向にある複式簿記を用いた、簿記の流れは以下のとおりです。
- ■日々の業務の流れ
- ・取引……代金や商品の受け渡しの発生
- ・仕訳……取引による金品の増減を日付順に仕訳帳に記録、勘定科目に振り分け
- ・勘定……勘定口座の用意、仕訳帳から総勘定元帳(勘定科目ごとに記録)への転記
- ■決算関連業務の内容と流れ
- ・試算表の作成・修正……勘定の集計、決算整理前後の試算表作成
- ・貸借対照表・損益計算書の作成……試算表をもとに作成
勘定項目を「資産・負債・純資産・費用・収益」の5項目に分類し、貸借対照表と損益計算書にまとめます。
- ■貸借対照表
- 目的:企業の財政状態の報告
- 示されるもの:資産・負債・純資産の増減
- ■損益計算書
- 目的:企業の経営成績の報告
- 示されるもの:費用・収益
単式簿記と複式簿記の違い
簿記には「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。どのような違いがあるのか特徴を紹介します。
【単式簿記】取引をお金の一面であらわす
単式簿記とはお金の増加・減少という一面で取引を記すもので、身近なものだとお小遣い帳や家計簿、預金通帳などが該当します。日々の業務では、収入と支出を記帳するだけのため、特別な知識を必要としません。開業から間もない小企業などでは、採用される場合もあるでしょう。
ただし、単式簿記は現金の出入りのみを記載するので、詳細な取引記録や財産の増減まではわかりません。例えば借金をした際には現金が増えた記録しか示せず、負債が増えた実態までは反映できないでしょう。
【複式簿記】取引を原因と結果の二面であらわす
複式簿記は、「仕訳」という形を用いて財産の増減を記録します。仕訳とは、左右に借方(かりかた)・貸方(かしかた)の欄を設け、ひとつの取引を両面からとらえることです。「先方が何をした」に対して「自社はこうなった」と把握でき、資産や負債の増減といった事象も容易にわかるでしょう。
以下の表は、家計簿をもとにした、単式簿記・複式簿記の違いを示したものです。「金(きん)を現金5万円で購入した」と仮定してください。
単式簿記
日付 |
項目 |
入金額 |
支出額 |
残額 |
4月1日 |
金 |
ー |
50,000円 |
0円 |
複式簿記
日付 |
借方勘定科目 |
借方金額 |
貸方勘定科目 |
貸方金額 |
摘要 |
4月1日 |
金(財産の受領) |
50,000円 |
金の購入代金(現金) |
50,000円 |
ー |
単式簿記では「5万円で金を購入し、残金がなくなった」ことがわかります。ただし、どのような支払い方法なのか、得た金はどうなったのかまではわかりません。
一方、複式簿記では「現金5万円で支払い金を購入し、財産(金)を得た」ことがわかります。「どのような理由で、何がプラスになったのか、マイナスになったのか」を示すことで、お金の変動をより詳しく把握できます。お金の増減と同時に原因や理由も記録するため、企業にとっては経営状態を正しく把握できる資料となるでしょう。
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単式簿記のメリット・デメリット
単式簿記のメリットとデメリットを紹介します。
【メリット】初心者でも記帳がしやすい
単式簿記の最大のメリットは、専門知識が不要なことです。機械的に日々の収支を記録すればよいので、誰でも手軽に行えるでしょう。起業したばかりで、簿記に割く余力がない場合は、単式簿記が好まれます。単式簿記からはじめ、複式簿記に切り替えるケースも少なくありません。
【デメリット】経営状態を把握できない
単式簿記は、お金の増減のみを記録するため、増減が発生した原因についての把握が困難です。例えば、単式簿記で現金の増加が記載されていたとします。一見すると資産が増加したように見えますが、借金による金額の増加かもしれません。利益か借金かの判別ができなければ、正しい経営状態の把握は難しいでしょう。
また「ある項目において、一定期間でどれくらい増減したのか」を知りたい場合などにも、一つひとつ情報を抽出しなければならず、膨大な時間がかかります。さらに、現金をともなわない取引の場合には、記録すらできないという事態に陥るかもしれません。単式簿記をもとに、正確な経営分析は困難でしょう。
複式簿記のメリット・デメリット
複式簿記のメリットとデメリットを紹介します。
【メリット1】財務諸表を作成できる
複式簿記のメリットは、財務諸表(貸借対照表、損益計算書)の作成が可能な点です。財務諸表は決算の際に、企業の財政状態や経営成績を利害関係者(従業員、株主、金融機関など)や税務署に示す重要な書類です。
さらに、複式簿記は単式簿記と違い、金額の増減と同時に理由も記録されています。勘定科目ごとに分類するので、条件にあった集計も容易です。すべてのお金の流れが明確になるので、企業の経済状況を把握し的確な経営判断につながるでしょう。
【メリット2】青色申告特別控除が受けられる
確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。青色申告であれば55万円(※)の控除を受けられるので、節税の面で有利でしょう。ただし、控除を受ける条件のひとつに、複式簿記での記帳があります。複式簿記は、網羅性・立証性・秩序性の3要件を満たした「正規の簿記」といわれるほど、信頼性の高い記帳方法とされています。
白色申告であれば単式簿記で問題ありません。また、単式簿記での青色申告も可能ですが、10万円の控除しか受けられないので注意しましょう。
※令和2年度分の所得税確定申告から、65万円→55万円に改正。ただしe-Taxでの申告や電子帳簿保存を行えば引き続き65万円の控除となる
参考:No.2070 青色申告制度|国税庁
令和2年分の所得税確定申告から青色申告特別控除額 基礎控除額が変わります!!|国税庁
【デメリット】記帳に専門知識が必要
複式簿記は単式簿記と違い、ある程度の専門知識が必要です。知識の習得に、多くの時間を費やす場合があるでしょう。さらに記帳する際も、複数の勘定科目の設定や仕訳、転記などの作業が発生するため、手間と時間がかかります。
業種や規模により異なりますが、個人事業主の経理では、日商簿記3級程度の知識が必要といわれています。
会計ソフトの活用で複式簿記の記帳が可能
近年、会計ソフトを利用すれば複式簿記で記帳できるようになりました。画面の指示にしたがって必要項目を入力すれば自動仕訳されるので、高度な知識は必要ありません。複式簿記のハードルが下がり、得られるメリットは大きいため、単式簿記は減少傾向にあるでしょう。
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事業規模や経営状況にあわせて記帳方法を選択しよう
単式簿記とは、取引をお金の増加・減少という一面であらわす方法です。専門知識不要で記帳できますが、お金の全体的な流れを把握できない場合があります。
一方複式簿記では、取引を原因と結果の両面から記録し、決算で必要な財務諸表の作成ができます。青色申告特別控除も受けられるため、節税につながるでしょう。時間と手間はかかりますが、会計ソフトの導入で知識が浅くても効率的な記帳ができます。自社にあわせた記帳方法を選択しましょう。