キャッシュフロー計算書(CF)とは
キャッシュフロー計算書は英語で「Cash Flow statement」であるため、略してCFとも呼ばれます。では、その概要を見ていきましょう。
会社にどのくらいの現金があるのか示したもの
一定期間における企業の財政状態や経営成績をまとめた書類を財務諸表と呼びます。そして、その中でも特に重要な3つを財務三表といいます。その財務三表の1つがキャッシュフロー計算書です。
財務三表はそれぞれ以下のことを表します。
- 貸借対照表
- 資産や借金がどのくらいあるか
- 損益計算書
- どのように利益を上げているか
- キャッシュフロー計算書
- 会社にどのくらいの現金があるか
キャッシュフロー計算書とは、いわゆる家計簿のような役割を果たす書類です。期首にどのくらいのお金があり、期末にどのくらい残っているのかを確認できます。
上場企業以外の企業はキャッシュフロー計算書の作成を義務付けられてはいませんが、自社の状態を把握するうえで大きく役立ちます。起業初期から作成するのが理想的です。
資金繰りを悪化させないために必要
企業の状態を把握するには利益だけを見ておけば良いと思う人も多いでしょう。しかし、会計上の利益は手元にある現金とは異なります。たとえ利益は黒字であっても、現金がないせいで倒産する可能性があります。
簡単な例として、手元の現金が0円の状態で、100万円の商品を販売した場合を考えてみましょう。このとき、現金そのものはなくても、販売した100万円は後に支払われるため、会計上は100万円の黒字となります。しかし、その支払いが3カ月後だった場合、3カ月間は手元にお金がまったくないことになり、ビジネスを維持できません。
こうした事態を避けるためには、貸借対照表と損益計算書だけでなくキャッシュフロー計算書も作成・確認する必要があります。
キャッシュフロー計算書の読み方
キャッシュフロー計算書では、一定期間におけるお金の増減が「営業活動」「投資活動」「財務活動」「フリー」の4つに分類して記載されます。それぞれの読み方を見ていきましょう。
1.営業活動によるキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローには、本業によるお金の増減が記載されます。企業がビジネスによってお金を生み出す能力そのものを表す項目といえるでしょう。これがプラスの場合はビジネスが順調であることを示します。逆にマイナスであれば本業で現金を生み出せていないため、経営状態が危ういと言えます。
ちなみに、営業活動によるキャッシュフローの記載方法には直接法と間接法の2種類があります。それぞれの概要は以下のとおりです。
- 直接法
- 営業活動に関するお金の出入りを総額で捉え、詳細に記録する
- 間接法
- キャッシュの動きに関わる部分だけを計算する
直接法のほうが詳細に自社の状況を把握できますが、多くの手間を要するため間接法が用いられることが多いです。
2.投資活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローは、固定資産や投資有価証券といった投資に関係するお金の出入りを示します。固定資産などの売却により現金を得た場合はプラス、購入により現金を失った場合はマイナスになります。
これは、プラスであるほどビジネスが堅調というわけではありません。なぜなら、営業活動がうまくいっていないのを、資産の売却によって補っているケースもあるためです。むしろ、積極的に資産を購入してマイナスになっているほうが、今後の成長が見込める可能性があります。
ただし、営業活動によって得た現金よりも投資活動によって手放した現金のほうが大きい場合は注意したほうがよいでしょう。
3.財務活動によるキャッシュフロー
これは、財務活動に伴ってお金がどう動いたかを示す項目です。具体的には、自社株買いや借入などの活動が該当します。
自社株買いや借金の返済により、状況が好転した場合はマイナスの値になります。一方、借入や社債発行によって資金を調達した場合はプラスになります。
基本的に優良企業ではマイナスになることが多いです。しかし、経営状態が厳しいにも関わらず、金融機関から借金返済を求められて応じた場合でもマイナスになるため一概には言えません。また、借金をしてでも成長を優先したいスタートアップ企業などは、ビジネスが好調でもこの数値はプラスになることがあります。
4.フリーキャッシュフロー
営業活動と投資活動におけるプラスは、企業が自力で獲得した現金を意味します。一方、財務活動におけるプラスは借金や社債発行によって得たお金を指すため、自力で獲得したものではありません。
この違いを踏まえて、営業活動と投資活動によるキャッシュフローの和をフリーキャッシュフローと呼びます。これらは企業が自力で獲得したものであり、自由(フリー)に使えるからです。たとえば、営業活動で100万円獲得し、そのうち80万円を設備投資に費やしたら、残り20万円を自由に使えることになります。
フリーキャッシュフローが大きければ大きいほど、余裕のある資金繰りが可能です。借金の返済や株主への配当金などさまざまなことに投じられます。ただし、フリーキャッシュフローがあまりに大きいと充分な投資ができていない可能性があるため、成長性が危ぶまれます。
キャッシュフロー計算書を読む際のポイント
営業・投資・財務の3点から、企業の状況は以下の8種類に分類されます。
- 【営業+ 投資- 財務-】
- 本業で充分な利益を上げ、それを投資や借金返済などに当てられている状態です。
- 【営業+ 投資- 財務+】
- 本業・投資ともに順調ですが借金があります。
- 【営業+ 投資+ 財務+】
- 資産売却・借入で現金を得て、新事業に投じていく過渡期です。
- 【営業- 投資- 財務-】
- 本業が不調なものの、貯蓄を崩して投資できている状態です。
- 【営業- 投資- 財務+】
- 借入金による再建を図っている状態です。
- 【営業+ 投資+ 財務-】
- 採算が合わない事業を切り捨てている段階です。
- 【営業- 投資+ 財務-】
- 資産売却などにより借金を返済している危うい状態です。
- 【営業- 投資+ 財務+】
- 本業の失敗を資産売却と借金で補っている危うい状態です。
一番良いのは【営業+ 投資- 財務-】です。さらにフリーキャッシュフローがプラスなら理想的といえます。
キャッシュフロー計算書の作り方
キャッシュフロー計算書はどうやって作成すればよいのでしょうか。間接法による作り方を見ていきましょう。
必要な資料を準備する
キャッシュフロー計算書は、ほかの財務三表である貸借対照表と損益計算書を用いて作成します。貸借対照表は前期分と当期分、損益計算書は当期分を用意しましょう。また、固定資産・有価証券の取引や新株発行があった場合は、それらに関する資料も準備しましょう。
金額の増減を分類する
次は、上述した資料の内容をキャッシュフロー計算書を構成する要素「営業活動」「投資活動」「財務活動」に分類していきます。それぞれの分類対象は以下のとおりです。
- 【営業活動】
- 減価償却費や貸倒引当金、売上債権(売掛金・受取手形)、仕入債務(買掛金・支払手形)、棚卸資産など。
- 【投資活動】
- 固定資産、有価証券、固定資産売却益、固定資産売却損など。
- 【財務活動】
- 短期借入金、長期借入金、配当金、自社株式など。
フォーマットに入力して作成する
キャッシュフロー計算書のフォーマットを用意し、分類した項目を記入していきましょう。例として、一般的なフォーマットの一部を以下に示します。
(1)営業活動によるキャッシュフロー
税引前当期純利益
減価償却費
有価証券評価額
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(1)の合計
(2)投資活動によるキャッシュフロー
有形固定資産取得による支払
投資有価証券の取得による支払
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・
(2)の合計
フリーキャッシュフロー (1)(2)の合計
(3)財務活動によるキャッシュフロー
長期借入による収入
短期借入による収入
・
・
(3)の合計
現金の増加・減少額 (1)(2)(3)の合計
現金の期首残高
現金の期末残高
ポイントを押さえてキャッシュフロー計算書をマスターしよう
キャッシュフロー計算書とは財務諸表の1つで、現金の動きを示します。キャッシュフローが以下の4つに分類して記載されます。
もっとも理想的なのは【営業+ 投資- 財務-】かつフリーが+の状態です。また、キャッシュフロー計算書の作り方は以下のとおりです。
- 1.資料の準備
- 2.増減金額の分類
- 3.フォーマットへの記入
以上を踏まえ、キャッシュフロー計算書への理解を深めましょう。