仮想デスクトップとはどのような仕組みか
活用方法を見る前に、何を実現する仕組みなのかを押さえておきましょう。
仮想デスクトップの基本的な仕組み
仮想デスクトップとは、利用者ごとの作業環境をサーバ側に用意し、手元の端末には画面の情報だけを転送する仕組みです。操作の内容は端末からサーバへ送られ、処理はサーバ側で行われます。
データやソフトウェアはサーバ側に置かれるため、手元の端末には基本的に残りません。端末が故障しても、別の端末から同じ環境へ接続できます。管理者は、環境の設定や更新をサーバ側でまとめて行えるようになります。利用者ごとに独立した環境を用意する構成と、一台の環境を複数人で共有する構成があります。前者は設定の自由度が高く、後者は必要な資源を抑えやすい傾向があります。どちらを採るかによって費用も使用感も変わるため、業務の内容にあわせて選ぶ必要があります。
シンクライアントとの関係
シンクライアントとは、端末側に処理やデータを持たせない使い方や、そのための端末を指す言葉です。仮想デスクトップは、これを実現する方式の一つとして位置づけられます。
同じ考え方を実現する方式は他にもあり、一台のサーバの環境を複数の利用者で共有する構成や、必要なときだけ画面を転送する構成もあります。どの方式を採るかによって、費用も自由度も変わります。名称だけで判断せず、実際の構成を確認しましょう。
活用が進む場面
どのような場面で選ばれるのかを、三つに分けて確認します。
在宅勤務や外出先での利用
社外から業務を行う際、手元の端末にデータを保存させたくない場合に用いられます。画面の転送が中心となるため、端末を紛失しても保存された情報が失われる懸念を抑えられます。
自宅の端末から接続する構成では、業務用の環境と私的な環境を分けられる点も利点です。一方、通信の状態によっては操作の反応が遅く感じられます。利用者の回線環境を確認し、想定される使用感を事前に確かめておく必要があります。
機密情報を扱う業務
設計や研究、個人情報を扱う部署など、情報を端末に残したくない業務で採用されます。持ち出しの経路を制限しやすく、画面の記録や印刷の制御と組み合わせる構成も選べます。
外部の事業者に業務を委託する場面でも用いられます。委託先の端末にデータを渡さず、必要な範囲だけを操作してもらう構成が組めます。契約が終了した際の権限の解除も、サーバ側の設定で対応できます。
短期間だけ端末が必要な場面
繁忙期の応援要員、期間を区切った業務、研修や検証といった場面では、必要な期間だけ環境を用意する使い方が採られます。端末を新たに購入せず、既存の機器から接続する構成も可能です。
不要になった環境は削除できるため、機器を抱えておく必要がありません。ただし、用意と削除の手順を決めておかなければ、使われない環境が残り費用が発生し続けます。棚卸しの機会をあわせて設けておきましょう。
構成の選択肢
どこに基盤を置くかによって、費用も運用の担い手も変わります。二つの構成を確認します。
自社に基盤を構築する形
自社のサーバ室やデータセンターに基盤を設置する形です。設定を自社の要件にあわせて細かく決められ、データも社内に保てます。既存のシステムとの連携も設計しやすくなります。
一方で、機器の購入と設置、性能の見積もり、更新の計画をすべて自社で担う必要があります。利用者数が増えた際の増強も計画に含めなければなりません。運用を担える体制があるかどうかが、この形態を選べるかの分かれ目になります。
クラウドで提供される形
事業者が用意した環境を利用する形です。機器の管理を事業者が担うため、自社の負担を抑えやすく、利用者数の増減にも対応しやすい構成です。
短期間だけ使う用途や、拠点が分散している組織で選ばれます。一方、設定できる範囲は提供される機能の中に限られます。通信が事業者の環境を経由するため、経路と使用感の確認も必要です。事業者側で障害が発生した際の連絡手段も確かめておきましょう。
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導入前に確認したい注意点
期待した効果が得られない要因になりやすい点を、二つ挙げます。
通信環境と使用感
画面の情報をやり取りする仕組みであるため、通信の状態が操作の反応に直結します。文字の入力が遅れて表示される、画面の切り替えが滑らかでないといった状況が生じ得ます。
動画の再生や設計用のソフトのように、画面の更新が多い業務では特に影響が出やすくなります。導入の前に、実際に使う業務と回線環境で試用し、許容できる範囲かを確かめましょう。利用者が集中する時間帯の状況も、あわせて確認しておく必要があります。
費用と設計の見積もり
自社に基盤を構築する形では、初期の投資が大きくなります。利用者数に応じたサーバの性能、保存領域、ネットワークの構成を設計する必要があり、見積もりには専門的な知見が求められます。
クラウドで利用する形でも、利用者数に応じた費用が継続して発生します。既存の端末を使い続ける場合との総額を比べ、数年単位で判断することが望まれます。設計や移行の作業を委託する場合は、その費用も見込んでおきましょう。
仮想デスクトップの選び方
ここまでの内容を踏まえ、製品を選ぶ際の確認事項を整理します。
対象業務と利用人数の整理
最初に、誰がどの業務で使うのかを整理します。事務作業が中心なのか、設計や開発の業務を含むのかによって、必要な性能が大きく変わります。
あわせて、利用する人数と同時に接続する見込みも整理しましょう。全員が同時に使う前提と、交代で使う前提では必要な資源が変わります。人数に応じた料金体系を採る製品が多いため、規模の想定は費用の試算に直結します。
必要な機能と既存環境との関係
持ち出しの制御、印刷の制限、外部記憶媒体の利用可否、接続の記録といった機能のうち、必要なものを整理します。何のために導入するのかによって、重視する機能が変わります。
既存で使用しているソフトウェアが動作するかも確認点です。特定の機器を接続して使うソフトや、画面の更新が多いソフトでは、動作を検証しておく必要があります。既存の認証の仕組みと連携できるかもあわせて確かめておきましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用者数に応じた月額制、機器の購入とライセンスの組み合わせ、使用した時間に応じた課金など、構成によって考え方が異なります。数年単位の総額で比べると、構成ごとの差が見えやすくなります。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。管理者向けの窓口のみか、利用者からの問い合わせにも応じるのかは製品ごとに差があります。接続できない状況は業務に直結するため、障害時の対応時間帯も確認しておきましょう。
場面別に活用できる仮想デスクトップサービス
構成の選択肢にあわせて検討できる、デスクトップ仮想化サービスを紹介します。
AQStage仮想デスクトップ
- インスタントクローンで全端末に設定変更を即時反映
- プライベート型クラウドで閉域網接続の高セキュリティ環境
- 基盤運用を委託しIT人員不足による負担を軽減
NTT西日本株式会社が提供する「AQStage仮想デスクトップ」は、社外の端末から業務環境へ接続できる仮想デスクトップのサービスです。データを端末に残さず操作できる構成のため、テレワークや外出先からのアクセスが多い場面での活用が想定されています。
リモートPCサービス
- データセンターに用意された物理PCをサービスとして利用する形態
- 1台・1ヶ月からのスモールスタートもできるため導入がしやすい
- 1ユーザが1台を専有でき、安定したパフォーマンスを実現
株式会社リンクが提供する「リモートPCサービス」は、オフィスのPCへ遠隔から接続できるサービスです。既存の業務環境をそのまま利用できる構成に対応しており、新たな仮想デスクトップ環境を一から構築せずに導入したい企業での活用が想定されています。
Amazon WorkSpaces導入支援サービス
- オンプレミスと同等の強固なセキュリティを実現
- 正確なコストシミュレーション
- APNパートナーの豊富なノウハウ
株式会社TOKAIコミュニケーションズが提供する「Amazon WorkSpaces導入支援サービス」は、AWSの仮想デスクトップサービスの導入を支援するサービスです。要件定義から構築までを支援する体制になっており、クラウド型の仮想デスクトップを初めて導入する企業でも進めやすくなります。
Azure Virtual Desktop (日本マイクロソフト株式会社)
- Windowsのマルチセッション仮想化を多人数に低コストで提供。
- デスクトップ環境と単一アプリの配信に対応する柔軟な利用形態
- Azure管理でGW不要。運用・スケールが容易に。
CitrixVirtualAppsandDesktops (シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社)
- あらゆるデバイスにアプリとデスクトップを配信
- ハイブリッドワーク環境の最適化と生産性向上
- 高度なセキュリティでデータ保護
仮想デスクトップに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: リモート接続の仕組みとどう違いますか?
- 社内に置いた個々の端末へ接続する構成と、利用者ごとの環境を基盤上に用意する構成では、管理の方法と拡張のしやすさが異なります。人数が多く、環境をまとめて管理したい場合は仮想デスクトップが候補になります。
- Q2: 操作が遅くなる心配はありませんか?
- 通信の状態と業務の内容によって使用感は変わります。画面の更新が多い業務では影響が出やすくなります。実際に使う業務と回線環境で試用し、許容できる範囲かを確かめてから判断しましょう。
- Q3: 少人数でも導入する意味はありますか?
- 人数が少なくても、機密情報を扱う業務や外部への委託がある場合は検討の対象になります。クラウドで提供される形であれば、少人数から始めやすい構成もあります。目的を絞って検討するとよいでしょう。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 構成と利用人数、既存ソフトウェアの検証範囲によって幅があります。クラウドで少人数から始める場合は短期間で立ち上げられる一方、自社に基盤を構築する場合は設計と検証を含めて数か月を要することもあります。
まとめ
仮想デスクトップは、作業環境をサーバ側に置き、手元の端末には画面だけを転送する仕組みです。在宅勤務や外出先での利用、機密情報を扱う業務、短期間だけ端末が必要な場面で活用されています。自社に基盤を構築する形とクラウドで利用する形では、費用も運用の担い手も変わります。通信環境による使用感を試用で確かめ、対象業務と利用人数を整理したうえで比べて選びましょう。

