開発標準とは
開発標準とは、開発工程を標準化したものです。この開発標準は誰が開発担当になっても、成果物の品質に差が出ないようにすることが目的です。
システム開発は１人で行うのではなく、通常複数のメンバーで行います。そのため、技術や経験に個人差が出てくるでしょう。なかには能力が非常に高いエンジニアがいることもあります。
たとえば「〇〇という技術を持つAさんにしか、この開発は行えない」ということがあり、この状態を「属人化」と呼びます。属人化している工程があると、その担当者がいなくなると開発の進行が止まってしまうため大変危険です。
このような事態を防ぎ、確実に開発を進めるためにも、開発工程を標準化する必要があるのです。
開発標準を策定する効果
開発標準を策定することで、属人化のリスクを避けて開発を進められます。それ以外にも、どのような効果があるのか見ていきましょう。
開発を効率化できる
開発がスタートする時点で開発標準が決まっていなければ、開発をどのように進めたら良いか分からず迷ってしまいます。
また、プロジェクトマネージャーが開発工程を最初から考えなければなりません。それは時間がかかるだけでなく、開発が止まってしまうため効率的とはいえないでしょう。
開発標準が明確に決まっていれば、このような悩みが解消され、スピーディな開発が可能になります。
成果物の品質を向上できる
開発標準を定めると、作業の漏れや重複がなくなり、工程に必要なポイントを押さえられます。まっさらな状態から開発を進めるよりも、過去の経験などから作成された開発標準があれば失敗しにくくなります。
また、開発標準によって、使用する用語の認識や開発ルールを統一できます。システム開発では、さまざまな専門用語が使われます。
しかし、用語の中には開発分野や受け手によって解釈が異なるケースも少なくありません。開発メンバー間で認識の違いがあると、開発の進捗に影響が出やすくなります。さらに、開発に携わる人が増えれば増えるほど、認識がズレる可能性が高く、開発標準の策定が求められます。
このように開発標準を定めることで、工程の無駄を省き、成果物の品質の向上が期待できるのです。
開発標準の導入・運用方法
このように開発標準を策定することによるメリットは多いですが、どのように導入すれば良いのでしょうか。開発標準の導入・運用方法を見ていきましょう。
１．開発標準を取り入れる計画を立てる
開発標準の導入を計画的に行わなければ、せっかく定めても上手く活用されないことがあります。開発標準が浸透せず、途中で問題が生じてやり直しすることになっては非効率です。
まずは開発標準を決める前に計画を立ててください。どのような目的で開発標準を定めるのか、最終的なゴールを決めましょう。よく間違いやすいのですが、開発標準を取り入れることはゴールではありません。
あくまでも開発の品質を向上させるために開発標準を策定することを意識しましょう。このように計画を立てることで、適切な開発標準の導入と遵守が期待できます。
２．開発標準を策定する
次は、具体的に開発標準を決めていきます。開発標準の策定作業に参加するメンバーを招集しましょう。
このとき大切なことは、システム開発の経験が豊富な担当者が開発標準の作成を担当することです。開発がスタートしたときに、現場で具体的にどのようなことが起きるのかイメージする能力が求められます。
また、開発標準を策定しても実際に開発がスタートすると、想定と異なることがあります。そのため、開発標準は作成して完了ではなく、改善していくことが必要です。
３．開発標準の導入準備をする
完璧な開発標準を策定したとしても、活用できなければ意味がありません。開発メンバーが開発標準の目的や位置づけを理解できるようにトレーニングする必要があります。
また、開発の途中でメンバーが入れ替わることも予想されます。新しいメンバーが開発標準を理解し、その内容を実施できるような仕組みが必要です。
このように開発標準の導入に向けて研修や説明会の実施を計画しましょう。
４．開発標準を評価する
開発標準の導入準備が完了したら、開発が本格始動する前にパイロットプロジェクトで内容を評価する必要があります。そのため、開発標準の導入計画に、試行・評価と改善までの期間を設けることが大切です。
また、評価を行う際には、開発標準の運用に問題点がないかを重視しましょう。評価の対象がずれてしまうケースはよくあります。対象がずれてしまうと、開発標準の改善ができません。実際の開発を想定して、開発標準を評価・改善しましょう。
開発標準を導入する際の注意点
開発標準を導入すれば、開発の品質が向上するなどのメリットがありますが、注意点もあります。
たとえば、開発標準を遵守しすぎることで、開発全体の柔軟性が失われることがあります。開発標準に従うのみでは、開発メンバーの思考が停止して創造的な発想も出にくくなるでしょう。
また、ドキュメントを作成する際に開発標準に沿ったフォーマットを活用することがあります。この場合も作成者がフォーマットの意図を理解していなければ、ドキュメントの内容が本来の目的から外れてしまいます。
開発標準を決めさえすれば開発が成功するわけではないため、適切な運用が必要です。
開発標準を策定し、運用効率・品質を向上させよう！
適切な開発標準を策定すれば、システム開発は成功しやすくなります。
開発で使用する用語も統一でき、無駄な工程がなくなるでしょう。しかし、開発標準を意識しすぎると、プロジェクトの柔軟性が失われる可能性があるため注意してください。
開発標準を策定して運用効率やプロジェクトの品質を向上させましょう。
