電子カルテにおける選び方の流れ
電子カルテの導入を効果的にするためには、適切な選び方の実施が重要です。製品を選定する際に、独断で進めてはいけません。どのような電子カルテを導入すべきか、プロジェクトチームを発足し現場の意見を集約しましょう。
プロジェクトチームメンバーは、医師や看護師、医療事務など各部門から代表者を選びます。各部門の課題を洗い出し、解決の優先順位を話し合いましょう。解決したい課題の優先順位をつけると、必要な機能が明確となります。搭載したい機能が明確だと、導入すべき電子カルテの候補が絞り込めるでしょう。
あわせて、診療所向けか病院向けか、クラウド型とオンプレミス型のどちらにするかといった前提条件も、この段階で整理しておきましょう。
導入する候補となる電子カルテを、デモンストレーションで操作性の確認をします。トライアルを実施している電子カルテがあれば、実務で試すのもひとつです。デモンストレーションやトライアルの実施でも、各部門における代表者の確認が必要です。電子カルテを使用する予定の担当者が、選定することで効果的な運用につながるでしょう。
電子カルテについて2026年に押さえたい国の動き
電子カルテを選ぶうえで、国の方針は欠かせない情報です。ここでは、厚生労働省の資料に基づいて、押さえておきたい2つの動きを紹介します。
標準仕様書と標準型電子カルテ
厚生労働省は、2026年3月31日付で「医科診療所向け電子カルテ標準仕様書 第1.0版」を示しました。標準仕様書は、電子カルテが目指す方向として、次の4つの要件を挙げています。
- ● 電子カルテ情報共有サービスと電子処方箋への対応
- ● ガバメントクラウドへの対応が可能となる、マルチテナント方式(いわゆるSaaS型)のクラウド型サービスであること
- ● 関係システムへの標準APIの搭載
- ● データ引き継ぎが可能な互換性の確保
対象は無床の医科診療所です。外部との連携に関する共通の仕様は、次の版以降に持ち越されています。
また、デジタル庁は標準型電子カルテを開発中です。このうち、無床診療所向けに国の医療DX対応の機能に絞った「導入版」は、2026年度中の完成を目指しています。
参考:医科診療所向け電子カルテ標準仕様書 第1.0版|厚生労働省
参考:第33回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ 資料3|厚生労働省
電子カルテ情報共有サービスと2030年の目標
厚生労働省のワーキンググループ資料によると、国は、2023年6月に医療DX推進本部が示した工程表で、2030年の目標を掲げています。「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」というものです。法律でも、2030年12月31日までに電子カルテの普及率を約100%にするよう、政府が情報の電子化を実現することが定められています。
電子カルテ情報共有サービスは、各医療機関の電子カルテが接続することで、全国の医療機関などと診療情報を共有できる仕組みです。
普及の状況を見ると、2023年の医療施設調査では、電子カルテの導入率は一般診療所で55.0%、一般病院で65.6%でした。これから電子カルテを選ぶときは、電子カルテ情報共有サービスに対応しているかを、あらかじめ確認しておきましょう。
電子カルテの選定ポイント
電子カルテを効果的に運用する選び方は、自院の課題解決や目的に沿った製品を導入するのが重要です。病院やクリニックにより、重視する選定ポイントは異なるでしょう。ここでは、電子カルテを導入する際に重視すべき5つのポイントを紹介します。
選定ポイント1.操作性を重視する
多彩な機能が搭載されている電子カルテを導入しても、使いこなせなければ効果を発揮できません。効果的に使用するためには、操作性が重要です。操作性を重視した選び方では、デモンストレーションの実施がおすすめです。導入候補に挙げた製品のデモンストレーションを実施し、現場の従業員が確認します。パソコンだけではなくタブレット端末の使用なども効果的でしょう。実務における使い方を把握しシミュレーションができるため、現場の意見を取り入れた電子カルテの導入が実現します。
操作性の見方について、詳しくは使いやすい電子カルテを選ぶ方法で解説しています。
選定ポイント2.国の標準化への対応を重視する
電子カルテの標準化は、国の動きで大きく変わりました。2026年3月に、医科診療所向けの標準仕様書(第1.0版)が示されました。電子カルテ情報共有サービスへの対応、標準APIの搭載、データ引き継ぎの互換性などが要件に挙げられています。ただし、標準仕様書の対象は無床の医科診療所です。病院や有床診療所の場合は、自院が対象になるかを確認したうえで、製品が電子カルテ情報共有サービスに対応しているかを確認しましょう。
地域で利用されている電子カルテを導入すると、薬局や診療所、地域の病院と患者情報を共有しやすくなります。地域で利用されている製品が異なる場合は、シェアの高い製品を選ぶのもひとつの方法です。
選定ポイント3.安定性を重視する
操作性がよく多彩な機能を搭載した電子カルテでも、障害発生が多く不安定だと効果的な運用が困難です。安定した製品の選定には、導入している企業のクチコミやレビューを確認しましょう。また、災害などトラブル発生時にどのようなサポートがあるかも重要です。コールセンターや相談窓口の営業時間などの確認がおすすめです。
クラウド型の場合は、障害が起きたときの復旧体制や、データのバックアップの方法も確認しておきましょう。
選定ポイント4.連携性を重視する
電子カルテは病院の基幹システムのため、他システムとの連携が欠かせません。また、会計業務の効率化には、レセコン(レセプトコンピュータ)と連携できる電子カルテが必要です。既存のレセコンと連携できるか、電子カルテとレセコンが一体になった製品に切り替えるかも、あわせて検討しましょう。レセコンについて、詳しくはレセコン(レセプトコンピュータ)とは?で解説しています。
既存のレセコンはもちろん、今後導入するシステムとの連携や、地域医療、薬局との連携も求められます。将来的に有効的な運用ができる電子カルテを選定しましょう。
選定ポイント5.提供形態(クラウド型・オンプレミス型)を比べる
電子カルテの提供形態には、インターネット経由で利用するクラウド型と、院内にサーバーを置いて運用するオンプレミス型があります。標準仕様書は、複数の医療機関で1つのシステムを共同利用するクラウド型(マルチテナント方式)を要件とし、オンプレミス型は高コストとなりがちと記しています。
どちらが合うかは、院内の運用体制や既存システムとの関係で変わります。クラウド型の製品について、詳しくはクラウド型電子カルテの比較で紹介しています。
診療所と病院で、電子カルテの選び方はどう違う?
診療所と病院では、国の施策も、選ぶときに見る点も異なります。
診療所(特に無床の診療所)は、標準仕様書や標準型電子カルテ(導入版)の主な対象です。まずは、国の医療DXへの対応を軸に、必要な機能が足りるかを確認しましょう。
病院は、規模によって事情が異なります。厚生労働省の資料によると、200床未満の病院の約40%は電子カルテを導入していません。小規模病院を中心にクラウド型が広まり始めている一方、病院向けにクラウド型を提供するベンダーは限られています。病院の場合は、規模や既存システムとの連携を踏まえ、提供形態と対応製品の幅を確認しましょう。
電子カルテの機能やサービスは、デモンストレーションやトライアルの実施、サポートや連携などさまざまです。以下のページでは電子カルテの特徴を比較しているので、製品選びの参考にしてください。
電子カルテの選定ポイントを理解して課題を解決しよう
電子カルテを効果的に運用するためには、適切な選び方をする必要があります。独断で製品を選定するのではなく、プロジェクトチームを発足し現場の声を収集しましょう。また、電子カルテの選定では、操作性・国の標準化への対応・安定性・連携性・提供形態の5つを重視するのがポイントです。自院の課題を明確にし、選定ポイントを考慮して効果的な電子カルテを導入しましょう。

