
VPNの活用パターン
VPNとは仮想専用線のことで通常のネットワーク通信を暗号化して、セキュアな環境で複数拠点でも接続できるシステムです。
VPNを活用するパターンは、以下のようなものが挙げられます。
- ・社外からノートPCを無料Wi-Fiに接続せずに社内にアクセスさせる
- ・遠隔地にある拠点とLANネットワークを構築する
- ・取引先や関係会社と特別な通信を行う
これら基本的な活用パターン以外にも、まだまだ活用方法があります。具体的な事例から見ていきましょう。
事例1. 運用の手間をかけずにIP-VPNを活用
本社と拠点との間で機密性の高いファイルをやり取りする必要のある中小企業A社が、セキュアな通信を行うためにVPNを導入する場合の想定事例です。
専任の担当者なしでVPN運用ができるのかという課題
A社では本社と4つの拠点間で、機密性が高くデータ量の大きいファイルを頻繁にやり取りして業務を行っていました。またファイルのやり取りは、自社サーバにアップしたものをダウンロードしてもらう以外にメールや無料のファイル転送サービスを使い共有していたそうです。
その頃企業の情報漏洩が大きな社会問題になっており、A社でもセキュリティ強化への取り組みを開始。その一環として通信ネットワークのセキュリティが検討事項になり、拠点間の通信の安全性を確保するためにVPNを採用することになりました。
しかし、通信やセキュリティなどに詳しい専任の担当者がいないA社では、導入後の運用管理に不安が募り始めます。
IP-VPNとサービス業者のサポートで解決
その解決策としてネットワークの専門家がいなくても、回線サービス事業者からのサポートによって安心して利用できるIP-VPNを採用しました。この導入により本店と4拠点間との間で容易にセキュアな回線を確保することができました。
この事例からもわかるように専任の担当者なしでも、IP-VPNの導入・回線サービス業者のサポートの利用でVPNを使った環境が運用できます。なのでまずはサービス業者に相談するのがおすすめです。
事例2. DR対策としてインターネットVPNを採用
次にIP-VPNをすでに導入しているB社の事例をみていきましょう。
障害により通信回線がダウンしてしまうという課題
B社はすでにセキュアな回線を利用しているものの、何らかの障害により通信回線がダウンしてしまうという課題がありました。またB社ではオンラインストアなども手掛けていることから、万が一のトラブルで回線がダウンしてしまうと大きな機会損失につながりかねません。
加えて、大規模災害などでのリスクを考えるとDR(ディザスタリカバリ)対策も視野に入れたいと考えたB社は、回線の冗長化を検討しました。しかしIP-VPNで冗長化するにはコストがかかり過ぎ、通常のインターネット回線では情報漏洩リスクが残ることが分かりました。
インターネットVPNを冗長回線として利用
そこで安価なインターネットVPNを冗長回線として採用。トラブル時にはインターネットVPNで対応しその間に復旧を行うような環境を構築しました。また最近ではクラウド型VPNやエントリー型VPNも登場していることから、次のリプレイス時には、そのいずれかに乗り換えを検討しているとのことです。
事例3. 新しいワークスタイルに対応するためにVPNを導入
次に人材不足が課題となっているC社の事例についてみていきましょう。
リモートアクセス環境のセキュリティを高めたいという課題
C社では今後も労働力人口の減少が続くことから、人員確保は大きな課題となりました。そのため既存の社員になるべく働きやすい環境を提供することを検討していました。特に育児や介護などのために就業時間が長く取れない社員への支援を視野に入れ、在宅勤務体制の強化を検討しました。
その時に問題となったのが、それぞれの自宅と企業間のネットワーク。情報を守るという観点のセキュリティならばシンクライアント(ハードディスクなどが無くデータを残さない端末)で対応できますが、その場合も安全なネットワークが必要です。
また同じ時期に営業部門でもより生産性の高い働き方に変革する一環として、モバイルワークの促進が検討されました。より顧客接点を増やすためにもスマートデバイスとSFAなどのツールを活用して、社外でも情報共有を促進するためです。これらの理由からMDM(モバイルデバイス管理)の必要性が生じたとともに、安全なネットワークの確保が必要となりました。
VPNを利用しセキュアな環境を実現
「在宅勤務」と「営業改革」という新しいワークスタイルに必要なことは安全なデバイスと安全な回線です。
そこでC社では家庭やマルチデバイスで社外からリモートアクセスできるVPN環境の導入を検討。現在も検討中ですが、担当者は「クラウド型VPN、エントリー型VPN、自社内にVPN機器を設置する…」という、それぞれのメリット・デメリットを比較して最も自社に適したVPN環境を構築したいと考えているそうです。
自社での活用をイメージしよう
さてここでご紹介した事例からも、自社での活用に合わせたVPNを選択して導入することが重要だとわかります。
特にVPNにはインターネットVPNとIP-VPNという2種類があり、自社に合わないものを入れてしまうと情報漏えいのリスクが高まり、また接続できない場合もあります。そのようなケースを引き起こさないためにも、しっかりと自社でどのような活用方法がよいのか、検討した上でVPN製品を比較することをおすすめします。
