VPNプロトコルとは
VPNプロトコルとは、VPN(Virtual Private Network)通信を行う際の「通信規格」や「手順」のことです。インターネット上に仮想的な専用線を設けて安全な通信経路を確保するVPNでは、このプロトコルにもとづいてデータの暗号化やトンネリングが行われます。
プロトコルの種類によって、通信の安全性や速度、安定性が異なります。そのため、VPNを導入する際は、利用目的やセキュリティポリシーにあわせて適切なプロトコルを選択することが重要です。
【比較表】VPNプロトコル一覧
VPNプロトコルごとにセキュリティ性・通信速度・安定性・対応デバイスなどが異なります。以下の比較表を参考に、自社や利用環境に合ったプロトコルを選びましょう。
| プロトコル名 | セキュリティ | 通信速度 | 安定性 | 特徴・利用環境 |
|---|---|---|---|---|
| OpenVPN | 非常に高い (AES-256対応) | やや遅め | 高い | 最も普及している安全なプロトコル。柔軟で多くのOSに対応。 |
| IKEv2 | 高い | 速い | 非常に高い (自動再接続対応) | モバイル利用に最適。移動中の通信切断にも強い。 |
| IPsec | 高い (暗号化標準) | 普通 | 高い | L2TPなどと併用されることが多く、企業ネットワークでの利用が多い。 |
| L2TP/IPsec | 高い | やや遅め | 高い | 設定が簡単で互換性が高い。安全性も確保されやすい。 |
| SSTP | 高い (SSL/TLS使用) | 普通 | 高い | Windows環境と相性が良く、企業向け利用に向く。 |
| PPTP | 低い (脆弱性あり) | 非常に速い | 普通 | 旧式プロトコルで、現在はセキュリティ面から非推奨。 |
※通信速度や安定性は環境によって異なります。セキュリティ重視の場合は「OpenVPN」または「IKEv2」の利用をおすすめします。
主要プロトコルの種類と特徴
VPNで利用するプロトコル5種類について、メリットとデメリットを交えながら比較紹介します。
OpenVPN
セキュリティが強固・導入シェア高
OpenVPNはVPNプロトコルの中でも比較的新しく、多くのプロバイダーが利用しています。
- ■メリット
-
- ■セキュリティが強固
- ・速度が速い
- ・オープンソース
→開発や研究が進んでいる - ・柔軟な設定が可能
- ・ファイアウォールを通過できる
- ■デメリット
-
- ・サードパーティのアプリが必要な場合がある
ほかのVPNプロトコルと比較して、速度・セキュリティ・安定性ともに優れていて非常にバランスが良いです。現時点のVPNプロトコルの中では、もっとも信頼性が高いといえるでしょう。
IKEv2
自動的に再接続を行える
Ciscoとマイクロソフトによって開発された安定性の高いVPNプロトコルです。IPsecと併用してVPNプロトコルとしての役割を果たします。
- ■メリット
-
- ・セキュリティが強固
- ・速度が速い
- ・通信を自動追従
→モバイル端末でWi-Fi通信からセルラー通信への移行がスムーズ - ・BlackBerry(スマートフォンの一種)に対応
- ■デメリット
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- ・サポートされている端末が少なめ
比較的新しく開発されたプロトコルであり、IKEv2も速度とセキュリティが強固な点ではOpenVPNと同じです。
IPsec
併用でセキュリティを強固にできる
IPsecは、IPパケットに暗号化や認証を行うためのプロトコルです。VPN接続において、認証・暗号化・認可の機能を提供します。
- ■メリット
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- ・セキュリティが強固
- ・速度が速い
- ・標準規格のため、多くのプロバイダーが採用している
- ■デメリット
-
- ・設定が複雑
IPsecは、VPN接続におけるセキュリティの基盤となるプロトコルです。IKEv2やSSTPなどのVPNプロトコルと併用することで、より強固なセキュリティを実現することができます。
L2TP
IPsecと一緒に使われる
旧来のVPNプロトコルであるPPTPの進化版です。通信速度は低下しますが、IPsecと併用することでPPTPよりも安全性を高めています。
- ■メリット
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- ・セキュリティが強固
- ・対応端末が多い
- ■デメリット
-
- ・速度が遅い
- ・ファイアウォールにブロックされることがある
複数の会社のネットワークを統一するなど、標準的な使い方に適していますが、脆弱性が懸念されており現在ではあまり使われていないようです。
SSTP
マイクロソフトに対応
マイクロソフトがWindows向けに開発したVPNプロトコルで、WindowsVistaで初めて導入されました。
- ■メリット
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- ・セキュリティが強固
- ・ファイアウォールにブロックされない
- ■デメリット
-
- ・不透明である
- ・Windows向け
→対応端末が少ない
高い安全性が特徴ですが、マイクロソフトの独占技術であることによる欠点が目立ちます。
PPTP
セキュリティ面で懸念がある
PPTPはWindowsが初めて対応したVPNプロトコルで、VPN確立初期から利用されています。
- ■メリット
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- ・多くの端末に対応
- ・速度が速い
- ■デメリット
-
- ・古いプロトコル
→最近の端末には対応していないものがある - ・セキュリティが弱い
- ・古いプロトコル
暗号化が複雑ではないため、速度が速いのが特徴です。ただし、その分セキュリティ面では弱く、最近はあまり使われなくなりました。
以下の記事では、実際の製品紹介とあわせて対応しているプロトコルタイプを確認することができるので、あわせてご覧ください。
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【シーン別】VPNプロトコルの選び方
どのプロトコルを選ぶべきかは、利用目的や環境によって異なります。ここでは、代表的な3つのシーン別におすすめのプロトコルを紹介します。
セキュリティ重視(企業利用)なら「OpenVPN」
企業の機密情報や個人情報を取り扱う場合、最も重要なのはセキュリティです。OpenVPNは、強力な暗号化技術と長年の実績があり、信頼性が非常に高いプロトコルです。多くの法人向けVPNサービスでも採用されており、ビジネス利用における第一の選択肢といえるでしょう。
速度重視(動画・大容量通信)なら「WireGuard」
リモートワークでのビデオ会議や、大容量ファイルの送受信、動画ストリーミングなど、通信速度が求められるシーンではWireGuardが適しています。軽量な設計により、他のプロトコルよりも高速な通信が期待できます。セキュリティも確保されているため、快適さと安全性を両立したい場合におすすめです。
スマホ・移動中なら「IKEv2」
外出先でスマートフォンやノートPCからVPNを利用する機会が多い場合は、IKEv2が最適です。ネットワークが頻繁に切り替わる環境でも、自動再接続機能によって安定した通信を維持できます。接続も高速なため、モバイル環境での利用に適しています。
古いプロトコル(PPTPなど)は避けるべき理由
PPTPのような古いプロトコルは、すでに暗号が解読される手法が確立されています。利用すると、通信内容の盗聴やデータ改ざんといったセキュリティリスクにさらされる危険性が極めて高くなります。速度が速いというメリットはありますが、それを上回る大きなデメリットがあるため、現在のビジネス環境では利用を避けるべきです。
まとめ
VPNプロトコルの選択には、セキュリティ、速度、用途、およびプライバシー保護など、多くの要素を検討する必要があります。総合的におすすめできるのは、汎用性が高く、セキュリティ面でも優れている「OpenVPN」でした。
どのプロトコルを選ぶにせよ、VPNの利点はオンラインプライバシーの強化や、セキュアなデータ転送を実現できることでしょう。自社で課題を感じていれば、資料請求から各社の製品を比較検討から始めましょう。VPNはオンラインセキュリティの要となり、適切なプロトコルの選択がその効果を最大限に発揮します。



