専用線とは
専用線とは、2拠点間を物理的に接続する自社専用の通信回線のことです。専用線接続は、主に拠点間の内線通話のために用いられ、通信事業者による回線工事のうえで利用できます。初期費用などのコストがかかるものの、通信速度の安定性や安全性が非常に高いネットワークです。また、インターネット接続時にアクセス回線として活用することも可能です。
専用線導入のメリット・デメリット
専用線を導入するメリットとデメリットを以下にまとめました。
- 専用線のメリット
- ●安全性に優れている
- ●通信品質が安定している
- ●可用性が高い
- 専用線のデメリット
- ●コストが高い
- ●導入準備や保守に手間がかかる
- ●3拠点以上での接続ができない
公衆回線であるインターネットとは異なり、自社専用のネットワークである専用線は、ほかの利用者の影響を受けない点が大きなメリットです。利用者が限定されるため、高いセキュリティを確保できます。通信回線の帯域を広く契約すれば、安定した通信品質や速度で大容量データのやりとりが可能です。
一方デメリットは、一般的なインターネット回線に比べてコストが高く、導入までに期間を要する点です。接続する拠点の距離が遠く、通信帯域が広くなるにつれ、コストは増加傾向にあります。また、専用線はあくまでも2拠点間の回線接続に特化しているため、3拠点以上での拠点間通信を行いたい場合は、専用線ではなくVPNによる接続が必要です。
VPNとは
VPNとは、Virtual Private Networkの略で、仮想プライベートネットワークのことです。専用線と同じ機能を仮想的な専用回線として提供する技術で、2000年代前半に登場しました。VPNは定められたユーザーのみアクセスでき、送受信の際にデータを暗号化します。そのため、外部から情報を見ることは不可能です。
VPNには複数の種類があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
- ■インターネットVPN
- 既存のインターネット回線を利用し、VPN接続のためのルータを各拠点に設置して社内ネットワークを構築する。比較的低価格で短期間導入が可能。通信方式により、IPsec-VPN・SSL-VPN・L2TP/IPsecなどに分類される。
- ■IP-VPN
- 大手通信事業者がもつ閉域網を利用する。インターネットVPNに比べて高セキュリティだが、ややコストが高め。一定の帯域が確保されており、通信速度が安定しやすい。
- ■広域イーサネット
- IP-VPNと同じく閉域網を利用する。高速通信に対応し、セキュリティ性も高い。IP-VPNとの違いは、カスタマイズ性の高さと設定の煩雑さ。
インターネットVPNは低コストで利用できるため、導入ハードルが低い傾向にあります。インターネット回線のブロードバンド化によって通信品質が向上したため、広く普及しました。しかしセキュリティ面を重視するなら、閉域網を利用したIP-VPNや広域イーサネットなどのVPN接続サービスがおすすめです。一般的には拠点数が多く、高度な設定が不要な企業にはIP-VPNの導入が推奨されます。
対して拠点数が少なく、高度な設定が必要な企業には広域イーサネットが適しています。広域イーサネットサービスとして有名なのは、NTTが提供する「ビジネスイーサワイド」です。なお、2拠点間の専用線をイーサネット方式で接続する「イーサネット専用線」など、通信回線にはさまざまなサービスが提供されています。
VPNのメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
専用線とVPNの違い
専用線とVPNの違いについて、特徴を一覧表にまとめました。
|
専用線 |
VPN |
コスト |
回線工事など初期コストが高価 距離により金額が変わる |
既存の回線を共同利用するため専用線より低コスト |
信頼性 |
障害により回線が切れると 使用できなくなる |
インターネットの迂回経路を 自動選択するので信頼できる |
柔軟性・拡張性 |
物理的な線を利用しているため 拡張が簡単ではない |
既存の回線を利用するため 拡張や変更が容易にできる |
セキュリティ |
物理的に隔離されている 専用回線のため 強固なセキュリティ |
種類により異なるが 専用線と同等のセキュリティを保つのは困難 |
パフォーマンス |
直接接続するので 保障できる |
共同利用の場合 保障は難しい場合がある |
複数拠点での接続 |
不可 |
可能 |
専用線とVPNの大きな違いは、セキュリティ性能とコストです。機密情報の取り扱いの頻度や予算から、自社に適したものを選ぶとよいでしょう。コストを抑えつつ安全性も確保したいという場合は、IP-VPNや広域イーサネット(ビジネスイーサ)などを検討してください。
専用線とVPNそれぞれのおすすめ企業
専用線とVPNの違いを踏まえたうえで、企業はどちらを導入すべきなのでしょうか。専用線とVPNそれぞれに適した企業を解説します。
- 専用線がおすすめの企業
- ●強固なセキュリティと可用性を必要とする企業
- ⇒鉄道・電力会社などのインフラ企業
- ⇒警察・消防などの行政機関
- ⇒金融機関・ネット証券会社・ECサイトなど、重要な個人情報を拠点間でやりとりする企業
- ●大容量データを送受信する企業
- ⇒動画のライブ配信を行う企業
- ⇒データセンター
- VPNがおすすめの企業
- ●遠距離での拠点間接続が必要な企業
- ⇒海外に生産拠点や販売会社を置くメーカーなど
- ●3拠点以上での接続が必要な企業
- ⇒各地に支社や出張所をもつ企業や地方自治体など
- ●テレワークや在宅勤務などの柔軟な働き方を推進したい企業
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専用線とVPNの歴史
ここで、専用線やVPNが登場した背景と、歴史について解説します。
電話回線の普及に伴い登場した専用線
電話回線など、一般に利用されている回線を「公衆回線」と呼びます。初期の電話網の誕生とともに登場し、シェアが拡大してきました。
しかし、公衆網というだけあって誰でも接続できることから、盗聴や情報漏えいの危険性があります。そのため、官公庁や金融機関、一部の機密性の高い情報を取り扱う企業は自社専用の回線を希望し、このニーズに応えたのが「専用線」です。
専用線の歴史の始まりは1960年代
物理的に離れた拠点をクローズド環境で接続する専用線の歴史は、1960年代から始まります。まず拠点間をダイレクトに結ぶアナログの専用線が登場し、1980年代にデジタル化されると、多くの企業が専用線サービスを利用するようになりました。
現在専用線は、警察電話・消防電話・鉄道電話・電力保安通信線・水運用電話などの重要通信分野で広く活躍しています。そのほか、機密情報を多く取り扱う大企業や金融機関にも導入されています。
VPN=「仮想的な専用線」の誕生
専用線は、物理的に隔離された環境での拠点間通信によって、強固なセキュリティが保たれています。しかし、敷設にかかる時間やコストが課題として指摘されていました。
2000年以降に注目されたのが、ブロードバンド化が進み、高速転送が可能となったインターネットです。このインターネットを仮想的に専用線に使えないかと検討が開始され、結果としてVPNの誕生につながりました。
「仮想的」とはいえ、VPNの概念はさほど難しいものではなく「暗号化」を意味しています。具体的には、データを送る際に暗号化して、受け取る際に復号します。この特性により盗聴の危険性を減らし、専用線に近いセキュリティを実現できました。
低コストで利便性の高いVPNは、現在では拠点間接続における主流といえます。VPN製品を詳しく知りたい方は、以下の記事にてどのような製品があるのかそれぞれの特徴を見比べてみましょう。おすすめのVPN製品を比較して紹介しているので、製品選びの参考にしてください。
専用線とVPNの違いを理解して最適な環境を構築しよう
専用線は、よりセキュアな環境での通信が可能な反面、VPNよりもコストが割高で導入に時間がかかります。また、本社と拠点を結ぶ通信には適しているものの、3拠点以上での拠点間通信には、ビジネスイーサ網やVPNを利用する必要があります。
VPNはクラウドサービスも一般化しており、テレワークや在宅勤務が広まっている昨今、さらに導入は進んでいくでしょう。必要となるセキュリティ・信頼性・保守やサポート体制・スマートデバイス対応・コストなどを比較するためには、製品の一括資料請求がおすすめです。各製品の特徴や機能を見比べ、自社に最適な通信環境を構築してください。