人員計画とは
人員計画とは、企業の事業計画や目標を達成するための人員配置や、採用活動の計画のことです。英語では「manpower planning」「human resources planning」などとよばれます。
企業経営では一般的に「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の経営資源が重要とされますが、「ヒト」(人材)は企業の発展にとって特に不可欠なものといえるでしょう。適正な従業員数で人材を有効活用できていれば企業活動が円滑に進み、目標を達成しやすくなります。
まずは、人員計画とは具体的にどのようなものなのか、その概要について解説します。
事業計画を実現するための人員配置・採用計画のこと
人員計画とは、企業の目標を達成するために「ヒト」に関する計画を立てることです。主に人事部門の業務ですが、人員計画は企業の方向性にも大きく関わるため、経営陣抜きでは行えません。
具体的には、人員配置・人材採用・能力開発の計画を立案します。人事部門は各従業員の適性や能力、ポテンシャルを十分に理解し、適材適所な人員配置を行わなければなりません。
また、プロジェクトに必要な人員が不足していれば採用活動を行い、人員を補充します。在籍している従業員の能力開発も重要です。このように企業の資産である「人材」を有効活用し、組織の10年後・20年後の姿を見据えて最適な計画を立てることが求められます。
人事部の最重要課題ともいえる人員計画
従業員が多くなれば、比例して行える事業の幅も広がります。しかし、それにともない人件費も増大するため、人事部は常に人材の費用対効果を意識しなければなりません。
適正な人員計画を行うには、自社の資産である人材の情報管理と、企業の現状を詳細に把握する必要があるでしょう。この人員計画により、企業の利益や方向性が決まるといっても過言ではありません。そのため人員計画には精度が求められ、人事部門の最重要課題だといえるでしょう。
人員計画と要員計画の違い
人員計画と要員計画は同じ意味で使われますが、厳密には異なるものです。人員計画は、部署などの小単位で「この部署に必要なのはどんなタイプの人材か」「誰をどのポジションに配置するか」といった、具体的な人材配置(採用や異動を含む)を検討する計画を指します。
一方で要員計画は、経営計画や事業計画をもとに「この事業を進めるにはどのような人材が何人必要か」といったマクロな視点で検討する計画といえるでしょう。具体的には、以下の流れで行います。
- 要員計画の流れ
- 1.現状の把握(従業員の過不足)
- 2.各部署におけるニーズの調査、必要人員数の集計(ボトムアップ方式)
- 3.組織におけるニーズの調査、必要人員数の集計(トップダウン方式)
- 4.指標による人員調整の検証(労働生産性・直間比率など)
- 5.労働・採用市場の指標による人員調整の検証(求人倍率、新卒内定状況など)
- 6.必要人員数の決定、スケジュール設定
- 7.要員計画の策定(人材の管理を含む中長期計画)
- 8.要員計画の運用(経営計画との照らし合わせなど)
人材を調整するには、要員計画で「どの部署に何人必要か」を決め、人員計画で「そこに必要なのはどんな人材か」を決めることになります。よって人員計画と要員計画は、相互を補完する関係ともいえるでしょう。
人員計画を立てるステップ
すでに説明したように、人員計画は企業の目標達成のために必要不可欠な存在です。精度の高い人員計画を立てるには、まずは要員計画のなかでも要員調査をしっかりと実施する必要があるでしょう。
ここでは適切な人員計画を立てるステップについて説明します。
ステップ1.要員調査で必要な人材と人数を決定する
適切な人員計画を立てるには、まずは要員調査から行います。要員調査は、要員計画における人員調査のことです。具体的な実現したい事柄(目標・事業計画)から、どんな人材を何人確保すればよいのかを把握します。要員調査では「現場のニーズ」と「企業のニーズ」の2種類のニーズを把握するのがポイント。この調査では目標との差(要員ギャップ)も同時に見出します。
また労働生産性や直間比率、求人倍率や新卒内定状況などの指標を用いることも、適正な人数の算出に効果的です。
ステップ2.要員のギャップを解消する
要員調査を行うことで、目標達成に対する人員の過不足の度合いがわかるでしょう。この要員のギャップをどう解消していくかが課題です。解消のために採用や配置・育成をどのように行うか、コストはどれくらいかかるか、人員が長期的に活躍するにはどうしていくのがよいか、などを検討する計画が「人員計画」です。
例えば専門性の高い事業を展開するにあたり、有資格者が必要になったと想定してください。その場合、採用活動により有資格者を補充する、現在の従業員に研修を受けさせて有資格者にするという2つのパターンが考えられるでしょう。ただしどちらの方法を取るにせよ、メリットとデメリットがあります。
有資格者を採用すれば即戦力になりえます。しかし、その分人件費がかかり、また他の事業での活躍は未知数です。従業員に研修を受けさせる場合、新たな人件費は発生しませんが、資格取得までの育成期間が長期にわたる可能性があります。よって、どのような方法がギャップの解消に効果的かどうかを判断しなければなりません。
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要員調査の方法
前項の「人員計画を立てるステップ」を見ても、効果的な人員計画の作成には適切な要員調査が必須だとわかります。
ここからは、必要人員を適正に算定する要員調査の方法について具体的に説明します。
数的な調査には2種類の方法がある
必要となる人員数を調査するための方法に挙げられるのは、「ボトムアップ方式」と「トップダウン方式」の2つです。以下で詳しく解説しているので、参考にしてください。
ボトムアップ方式:業務量から要員数を決める
ボトムアップ方式とは、プロジェクトの業務量から必要人員を決めていく方法で、ミクロ的アプローチともいわれます。この方法では、主に各部門の業務量と従業員数、能力のバランスに重点を置いて調査します。以下の計算式で求められるので覚えておきましょう。
必要となる人員=総業務量÷(1人あたり標準業務量×所定労働時間)
この調査方法をもとに人員計画を立てれば、各部門の人員不足を解消できるでしょう。しかし、結果として人員が増えすぎてしまい、人件費の膨張で予算を圧迫するおそれがあります。そのためボトムアップ方式で要員調査を行うときは、予算を意識しなければなりません。
トップダウン方式:適正人件費から要員数を決める
トップダウン方式はボトムアップ方式とは対照的に、業務量ではなく予算である適正人件費から要員数を決めます。こちらはマクロ的アプローチともいわれ、以下のいずれかの計算式で求められます。
必要となる人員=(年間売上高×付加価値率×労働分配率)÷1人あたり人件費
必要となる人員=(目標売上高×適正人件費率)÷1人あたり人件費
この方法であれば、企業の予算を守りつつ人員補充が行えるでしょう。しかし予算を意識しすぎるあまり、現場に必要な人員が十分に行き届かない可能性があります。予算内におさえられたとしても、現状の人手不足を改善できないかもしれません。
このように、どちらの方法にも一長一短があります。よって数的な要員調査を行う際は、自社の状況も考慮しつつ、ボトムアップ方式とトップダウン方式の両面から必要となる人員を算定するのがよいでしょう。
質的な調査にはヒアリングや経営計画などから検討する方法をとる
必要な人員数と同時に、「どのような人材が必要か」もあわせて調査するとよいでしょう。現場の従業員や管理職へのヒアリング、業務分析や経営計画などが判断材料になります。
計画策定の際の注意点
人員計画は人件費などの予算・売上計画・現場のニーズなど、さまざまな角度から考察する必要があります。そして今後の予測も加味したものでなければなりません。
例えば必要人員数を算定する場合は、従業員の離職・休職や今後発生する業務についても想定すべきでしょう。また採用により人材を確保する場合、必ずしも適切な人材がタイミングよく獲得できるわけではありません。従業員の育成や中長期的な組織の展望、指標による検証なども踏まえて検討すべきです。
人員計画は、企業の目標や事業計画を達成するためのもので、容易に変更できるわけではありません。よって運用後は進捗状況の確認や目標との照らし合わせなどを行い、常に目を配る必要があります。
効率的に人員計画を進める方法
要員調査をしっかりと行ったら、それに沿った具体的な人員計画を立てていきましょう。項目や数値などを正しく記載し、精度の高い人員計画を策定するには、どのような手段があるでしょうか。ここでは効率的に人員計画を進める方法について説明します。
1.エクセルを利用する
一般的には、エクセルを使って人員計画を進める方法があるでしょう。まずは以下を参考に必要な項目を決めていきます。人
- ・プロジェクト名
- ・プロジェクトの想定工数
- ・現状の人員による工数
- ・現状の工数の過不足
- ・必要となる能力や技術、役職や部署
- ・備考
この項目を設定し、プロジェクトごとに必要なデータを入力していき、必要な工数に対する過不足を明確にします。エクセルで管理すれば、フィルターを使って条件を絞り込み、条件ごとの状況や必要となる課題を客観的に把握できます。ウェブ上でサンプルのテンプレートが公開されている場合もあるので、参考にしてもよいでしょう。
2.ツールを利用する
人員計画の課題が複数の部署にかかる場合、エクセルの管理では煩雑になる可能性もあります。その際は、人員計画システムを使用するのがもっとも効率的といえるでしょう。
人員計画システムでは従業員の情報を登録しておくことで、適材適所な人員配置を行えます。人員配置の状況や過不足といった課題までリアルタイムで確認・把握できるうえ、配置のシミュレーションや需要予測まで行えるため、人員計画がスムーズに策定・運用できるでしょう。
また勤怠管理システムとの連携により、残業が多い部署や、慢性的に人手不足な部署の分析・把握も行えます。システムを使い従業員と連絡が取れるので、要員調査のヒアリングにも効果的でしょう。
ツールを利用して効率的に人員計画を進めよう
この記事では人員計画について解説しました。適切な人員計画により、企業の目標や事業計画を達成しやすくなります。しかし、最適な人員計画を作成するには複雑な要因を把握しなければならず、人の手で管理すると膨大な時間がかかることは否めません。
人員計画の作成には、人員計画システムの導入がおすすめです。人員計画システムで自社にあった人員計画を効率的に策定・運用しましょう。