ワークスタイル変革によるクライアント仮想化の需要増加
IDCジャパンの調査によると、国内クライアント仮想化ソリューション市場は2021年に8,927億円まで拡大すると想定されています。これに伴い、2021年のクライアント仮想化利用ユーザー数は745万人、モバイル仮想化利用ユーザー数は1,100万まで拡大すると予測しています。
出典:IDC Japan株式会社「国内クライアント仮想化関連市場予測を発表」
https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20170712Apr.html
多くの企業がデスクトップ仮想化を導入する背景として、冒頭でも言及したようにスマートフォン、タブレットなどモバイル機器導入、在宅勤務の増加などによるワークスタイルの変化が強く影響しています。
社内以外の場所でデータのやりとりや機密情報のダウンロードをする機会が増えることによるリスク低減対策として、クライアント環境にデータを残さず活用できる上、万が一端末が故障した場合でも端末を変えるだけで業務を継続できるデスクトップ仮想化は、セキュアで効率的に業務を行うには必須のソフトとなってきています。
HTML5対応のデスクトップ仮想化ソフトの登場
デスクトップ仮想化が再び注目されるようになったもう一つの理由が、2014年辺りからHTML5対応のデスクトップ仮想化ソフトが登場したことです。以前は特定のブラウザでしか稼働しないWebアプリケーションも多く存在し、それがデスクトップ仮想化を導入する上でも大きなネックとなっていました。ホストのコンピュータでは利用できるWebアプリケーションがIOSやAndroidといったモバイル機器では利用できないとなるとデスクトップ仮想化のメリットも半減してしまうからです。
しかしHTML文書を解釈するブラウザ側の挙動についても仕様として定義しているHTML5では100%ではないもののどのブラウザであっても同じように動作するため、デスクトップ仮想化においても大きく進化した形になります。
また以前はクライアント側の端末にもソフトのインストールが必要でした。しかしHTML5対応Webブラウザを搭載したクライアント端末であれば何もインストールすることなく仮想デスクトップにアクセスできるため、面倒な設定をせずとも利用することができるようになっています。
選択肢の増加によるデスクトップ仮想化の多様性
デスクトップ仮想化導入の問題点としてよく挙げられるのが、初期費用の高さです。しかしこれも最近ではサービス提供事業者の増加による低価格化や多彩なサービスによって、選択肢の幅が広がり比較的安価に導入できるタイプも増えています。当初は銀行や証券など金融系が中心でしたが、最近では大企業、中小企業はもちろん学校、市役所などの公的機関をターゲットとした製品も見られるようになりました。
今後、デスクトップ仮想化は導入したからといってすべての社員が同じように使うといった形ではなく用途に応じた使い分けをすることで、より効率的に業務を行うことが重要となります。
私物端末の業務利用(BYOD)に対応したものや外出先ではWebアプリケーションの1つか2つしか使わないためデスクトップすべてを再現させる必要はないと言った場合や、逆に複数のWebアプリケーションを使用し管理機能にも優れたものを使いたいといった場合などそれぞれの企業のニーズに合わせ最適なデスクトップ仮想化の実現が可能になっています。
デスクトップ仮想化は単純にセキュリティ強化、コスト削減、業務効率化といった側面もありますが、それ以上に現在のビジネススタイルを変革するための中心的なソフトとして大きな役割を果たします。最新のトレンドをつかみつつ自社の強みを伸ばすためのツールといった観点で選択されることが重要なポイントとなるでしょう。