工期が延びる要因
取り組みを見る前に、どこで時間が失われるのかを押さえておきましょう。要因が分かると、どの取り組みが自社に効くかも判断しやすくなります。
計画と実際のずれが生じる場面
当初の工程表どおりに進まない要因は一つに絞れません。天候による作業の中断、資材の入荷の遅れ、協力会社の人員の確保、設計の変更、近隣への配慮による作業時間の制約など、複数の要素が関わります。
問題になるのは、ずれが生じたこと自体よりも、その影響が後続の工程へどう及ぶかを把握できないことです。影響が見えないまま進むと、後の工程で無理が生じ、さらに遅れが積み重なります。早い段階でずれを把握し、調整できる状態を作ることが取り組みの起点になります。
情報共有の遅れによる手戻り
設計の変更や指示の内容が現場に伝わるまでに時間差があると、古い情報にもとづいて作業が進む可能性があります。やり直しが生じれば、その分の時間と費用がかかります。
現場の状況が事務所に伝わるのが遅れる場合も同様です。資材の不足や不具合の発生が翌日に判明すれば、対応の着手も遅れます。紙の書類や口頭での伝達に頼っている場合、この時間差が生じやすくなります。
工程の見直しから見た取り組み例
事例で語られる取り組みのうち、工程の組み方に関わるものを三つに整理して確認します。
工程表の精度を高める取り組み
過去の工事の実績を参照し、各作業に必要な日数を見積もる取り組みです。経験にもとづく感覚だけで組むより、実態に近い計画を立てやすくなります。
実績が蓄積されていれば、季節や工事の規模による違いも踏まえられます。作業ごとの実績を記録する仕組みがあれば、次の計画づくりに活かせます。ただし、現場ごとの条件は異なるため、過去の数値をそのまま当てはめるのではなく、条件の違いを確認しながら使うことが求められます。
並行して進められる作業の整理
順番に進めていた作業のうち、同時に進められるものを見極める取り組みです。前の作業の完了を待つ必要がない部分を切り出せれば、全体の期間を縮められる可能性があります。
ただし、同時に進めるには人員や場所の確保が前提になります。無理に重ねると現場が混雑し、安全面の懸念が生じます。作業の順序を変える判断は、現場を管理する立場の担当者と協議しながら進める必要があります。安全や品質を損なわない範囲で検討することが前提です。
資材や人員の手配の前倒し
必要な時期から逆算して手配を進める取り組みです。工程表と資材の発注が連動していれば、入荷の遅れによる待ち時間を減らせます。
協力会社への依頼も同様です。人員の確保が難しい時期を事前に把握できれば、工程の組み替えを検討する余地が生まれます。手配の状況を工程表とあわせて確認できる仕組みがあると、遅れの兆しに早く気づけます。
情報共有の改善から見た取り組み例
もう一つの系統が、現場と事務所の間の情報のやり取りに関する取り組みです。二つに分けて確認します。
現場と事務所の情報のやり取り
現場の状況を写真や日報として記録し、その場で共有する取り組みです。事務所へ戻ってから報告する運用と比べ、対応の着手を早められます。
不具合が見つかった際に、写真とともに状況を伝えられれば、指示の内容も具体的になります。担当者が複数の現場を掛け持ちしている場合、移動せずに状況を確認できる点も時間の節約につながります。現場で使う端末と通信の環境を確認したうえで、無理なく続けられる方法を選びましょう。
図面や書類の版の管理
最新の図面がどれかを明確にし、関係者が同じ情報を見られるようにする取り組みです。変更があった際に通知が届く仕組みがあれば、古い図面にもとづく作業を防ぎやすくなります。
紙で配布する運用では、差し替えの徹底に手間がかかります。共有の場に最新版を置き、そこを参照する形にすれば、配布の作業も減らせます。ただし、現場で紙を使う場面が残る場合は、印刷した時点の版が分かるようにしておく配慮も必要です。
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事例を読み解く際の着眼点
公開されている事例をそのまま自社に当てはめると、想定と異なる結果になることがあります。読む際に確認したい点を二つ挙げます。
短縮の前提と安全や品質との関係
工期を縮めることは、それ自体が目的ではありません。安全の確保や品質の維持を前提としたうえで、無駄な待ち時間や手戻りを減らすという位置づけです。作業時間を延ばして期間を縮める進め方は、時間外労働に関する定めとの関係でも慎重な検討が求められます。
事例を読む際は、何を削って短縮したのかを確認しましょう。手戻りが減った結果なのか、工程の組み替えによるものなのかで、自社で再現できるかどうかが変わります。労働時間に関わる判断は、社内の労務担当や所管の窓口に確認しながら進めることをおすすめします。
効果の測り方と条件の違い
工期が短くなったという記述は、比較の対象となる工事の条件に左右されます。規模、工種、天候、地域の事情が異なれば、そのまま当てはめることはできません。
自社と比べる際は、工事の種類と規模、関わる協力会社の数、現場の数を照らし合わせましょう。効果が仕組みの導入によるものか、体制や手順の見直しによるものかを分けて読むと、参考にできる部分が見えてきます。
工事管理システムの選び方
ここまでの内容を踏まえ、システムを選ぶ際の確認事項を整理します。
対象工事と管理したい範囲の整理
最初に、どの範囲を管理したいのかを決めます。工程の管理が中心なのか、原価や請求まで含めたいのか、写真や書類の管理を重視するのかによって、選ぶべき製品が変わります。
あわせて、同時に進行する現場の数と、関わる担当者の人数も整理しましょう。人数や現場数に応じた料金体系を採る製品が多く、規模の想定は費用の試算に直結します。協力会社にも使ってもらう場合は、その扱いも確認が必要です。
現場での使いやすさと連携範囲
現場で使う端末での操作性は、定着を左右する要素です。屋外での画面の見やすさ、手袋をしたままの操作、通信が不安定な場所での動作を、実際の現場で確かめておきましょう。
既存の会計システムや積算のソフトとの連携も確認点です。実績の情報が原価や請求へつながる流れを組めれば、二重入力を避けられます。連携の方式に加えて、取り込みに失敗した際に気づける仕組みがあるかも確かめておくと安心です。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、現場数によるプラン分け、初期費用と月額の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。写真や図面の保存容量が費用に影響する場合もあります。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、初期設定や現場への展開を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。現場の担当者が使う仕組みであるため、利用者からの問い合わせに応じてもらえるかも判断材料になります。
工期短縮に役立つ工事管理システム
情報共有や工程管理にあわせて検討できる、工事管理システムを紹介します。
ANDPAD(アンドパッド)
- 建設現場の手間がかかる業務を効率化し、残業削減に貢献
- 粗利などの経営情報をリアルタイムで見える化し、経営改善へ
- ゼネコンや専門工事領域でも、ますます活用が広がる
株式会社アンドパッドが提供する「ANDPAD(アンドパッド)」は、工程管理と情報共有をあわせて扱えるクラウド型の工事管理システムです。写真や図面を現場担当者と事務所側で共有できる機能を備えており、確認のための移動や連絡にかかる時間を抑えやすくなります。多くの建設業者で導入されています。
現場DXサービスKANNA
- どこからでも最新情報を確認可能!現場情報をミスなく共有
- 複数現場の統合管理が可能!リアルタイム更新で最新状況を把握
- 協力会社のアカウント数は無制限!コスト面・運用面でも便利
株式会社アルダグラムが提供する「現場DXサービスKANNA」は、工事の進捗管理と書類作成を扱うクラウド型のサービスです。スマートフォンから現場の状況を報告できる機能を備えており、情報共有の遅れによる工程の停滞を防ぐ運用に活用できます。企業規模を問わず利用できる構成になっています。
現場Plus
- 豊富な機能が圧倒的なローコストで利用可能
- タブレットやスマートフォンに不慣れな方でも使いこなせる操作性
- CADやリモート現場管理アプリと連携可能
株式会社ダイテックが提供する「現場Plus」は、施工管理に関わる書類や写真を一元管理できるシステムです。工程表と連動した進捗確認の機能を備えており、遅延の兆候を早期に把握しやすくなります。現場と事務所の間での情報のやり取りを効率化する構成です。
工事スケジューラー (株式会社A-ZiP)
- 導入実績800社超。SEが営業担当。
- スマホ・タブレットで閲覧、オプションで入力も可能
- 年間の定期作業を翌年分へコピー可能
現場ナビ工程Auto (株式会社構造ソフト)
- 9つの建物情報入力で総合工程を瞬時に自動作成。
- RC、S、SRC造の工程を即座に作成。
- 工期算出の初期値変更と工程の標準化に活用可能。
工期と工事管理に関するよくある質問
取り組みを検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: まず何から着手すべきですか?
- どこで時間が失われているかを把握することが出発点です。手戻りが多いのか、待ち時間が長いのか、報告の遅れが影響しているのかによって、着手すべき取り組みが変わります。直近の工事を振り返り、遅れの原因を整理してみましょう。
- Q2: システムを導入すれば工期は短くなりますか?
- 情報の共有が速くなることで手戻りや待ち時間を減らせる可能性はありますが、それだけで結果が変わるものではありません。工程の組み方や手配の進め方の見直しとあわせて取り組むことが望まれます。
- Q3: 協力会社にも使ってもらう必要がありますか?
- 情報の共有を進めるうえでは効果がありますが、相手先の環境や負担への配慮が必要です。閲覧だけを許可する構成や、必要な情報に絞って共有する方法もあります。事前に相談し、無理のない範囲から始めるとよいでしょう。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 管理したい範囲や既存システムとの連携によって幅があります。写真や日報の共有から始める場合は短期間で始められる一方、原価管理や積算との連携を伴う場合は準備に時間を要します。一つの現場で試してから広げる進め方も検討できます。
まとめ
工期短縮の事例では、工程表の精度を高める、並行して進められる作業を整理する、資材や人員の手配を前倒しするといった工程面の取り組みと、現場と事務所の情報共有や図面の版管理といった情報面の取り組みが語られます。いずれも安全と品質を前提としたうえで、手戻りや待ち時間を減らすという考え方です。事例を読む際は条件の違いを確認し、対象工事と管理したい範囲を整理したうえでシステムを比べましょう。

